フィードバックの第一歩として確認すべき前提条件
篠田:仮に、すごく優秀で真面目で、「部下と個人として信頼関係を作れます」という立派なマネージャーの方がここにいらっしゃったとして。いわゆるパフォーマンスフィードバックは、「良いほうも悪いほうもやれ」と言われて「……」みたいな方がここにいるとしたら。
日頃、部下を見るでもいいですし、コミュニケーションという観点でもいいので、「まず、ここから始めたらどうでしょうか?」ということをちょっとお話しいただけたらありがたいんですが、どうでしょう?
水野:じゃあ、たまには私からいきましょうか? 今聞きながら思ったんですけれど、フィードバックをされたくない人っているんですよね。したくない人もいるんですが。私はしたいし、されたいと思っていた人だったんですよね。
比較的我々の部のメンバーは、フィードバックについてはウェルカムですよね。前提条件が、やはり「成長したい」という気持ちなんですよ。
篠田:成長したい?
水野:という気持ちがメンバーの人にもあったり、マネージャー自身にもあるから、積極的に「フィードバックをください」と言う人はけっこう多かった。それから、まず前提として部下に「我々、成長したいよね」というコンセンサスがあって初めて、フィードバックの意味が出てくると思うんですよね。
さっきの1on1の話にも入っていきますけど、例えばさっきの、ローパフォーマーにイグジットするみたいな話があった時も、キャリアプランみたいなのはやはり事前に話しているんですよ。ふだんの関係性の中で、「将来的に3年後、5年後、こうなりたいよね」、最終的には「いつ卒業する?」みたいな話までしていたぐらいなので。
「タイミングは違うけど、次にいく時なんじゃない?」みたいな話もできる関係性の時が……そうじゃない時もあるけど、だいたいそうだったと思うんですよ。そこにいきたいからこういう少し厳しいことも(意見)交換しますよ、という前提があったからフィードバックが成立していたと思うんですよね。
篠田:なるほどですね。
キャリアの出口まで見据えた、深い対話の積み重ね
水野:成長したくない人にフィードバックをしたら、ただの拷問だと思うんですけど(笑)、そこのコンセンサスが最初に来たらいいんじゃないかなと思います。
篠田:なるほど。ちょっと1個だけ、追加質問していいですか? 成長の方向性とか内容とかスピードが、そのチームとか会社、大きく言うとGoogleという会社と合っている時とそうじゃない時と、ちょっとグラデーションじゃないですか。今おっしゃった成長というのは、どういう感じでおっしゃっています?

(例えば)本人は成長したいんだけど、漫画家になりたいんだと。漫画家として成長したいが、Google社員としてはクビにならない程度でいいのだという……。
水野:そこはまず、面接はちゃんとしましょうということですね(笑)。
篠田:(笑)。採用時にね。
水野:Googleっていろいろ、本流じゃない採用基準があるんです。例えば私が面接した時に、私はちゃんとうちの部で成し遂げたいことがあって、その後、どこにいきたいというものがある人を採りたいと思っています。
やはり少しずつ、必死に吸収してくれるじゃないですか。その方向性が合っているんだったらいいし。僕としては「漫画しか描きません」と言っている人は、そりゃあ落としますよ(笑)。
(一同笑)
篠田:お二人にも、ここにマネージャーの人がいたらということで質問を続けるんですが。見ている方に向けて整理をすると、今お話があった前提は、ご自身の部門の採用にけっこう強く関与されているんですよね。言ってみればGoogleさんは自分の部下を自分で採用することができているけど、ほぼすべての日本企業はそうではない。人事部がまとめて採って、あてがわれてくる。
キャリア採用も実はそうで、ここの(ポジションの)オープニングに対して採用したいということは、もちろんその部門発なんだけれども。実際に採用プロセスを動かすのは人事部なので、ちょっと「あれ?」という採用がある。
本当、先進的なIT系の日本企業ではちょっとずつ始めているという差はあるのかもなと、今おうかがいして感じました。
マネージャー自身の解像度を上げ、サプライズを防ぐ
篠田:すみません、ちょっとまた(話を)戻します。そういうわけで、自分が採用していない部下がいて、そのパフォーマンス評価をしてくれと言われた。まずはどこから始めたら?
諸橋:僕は、2つあるかなと。僕がやっていたやり方ですけど、1つは、もちろんダイレクトに「パフォーマンスはこうでした」と伝えるのもいいんですけど、フィードバックに慣れていない人からするとすごく抵抗があると思うんですよね。
なので、ちょっと考える余地を与えるために、「私から、こういうふうに見えている」「こういう行動や、こういうアクションが、こう見えているんだけど、どうか?」という会話に1回持っていっちゃう。
そこで本当に認識しているのか、していないのかを理解した上で、そこで「実はそういうことって、こうなんじゃないの?」と、少しクッションを置いたフィードバックを投げかけていくのが1つですよね。
あともう一つは、僕は今でもよくやっているんですけど、例えばこの期間に対して振り返った時に、良かったこと、悪かったことを1個ずつ聞くんですよね。
それで自分たちの中で1回反すうしてもらって内省した上で、「これは良かった、これはもうちょっとチャレンジだな」みたいなことを思い出してもらいながら、もう少し深掘りをしていくみたいな。入り口のところでそういう仕掛けはしていますね。
篠田:けっこう時間をかけて?
諸橋:かけますね。瞬間的にフィードバックしなきゃいけないところは、もちろん誰とでもしますけど。パフォーマンスフィードバックは、やはりけっこう時間をかけてしっかり理解してもらうまでやったほうがいいので、そこはあまり焦らずにやったほうがいいかなとは思います。
篠田:ちなみに、いろんな時期があったでしょうけど、ネオさんのパフォーマンスフィードバックを差し上げる対象者は、当時だいたい何人ぐらいいたんですかね。
諸橋:多い時で十数人ですね。
篠田:十数人にその粒度のフィードバックをするって大変。というのは、まず十数人となると日頃の仕事の接点量も部分しか見えない。もう当然じゃないですか。しかもそれだけ時間をかけるのは、今想像を巡らせると、かなり……。
諸橋:いや、めちゃくちゃ大変です。一番多かった時は、毎日1on1しかしていなかったぐらい。基本、僕らはチームで週1回やるんですよ。だから週1回は動きが見えるので、そういう意味ではけっこう解像度高く見えるんですよね。その分僕らは、そういうミーティングにひたすら時間を取る。でも、そこがやはりマネージャーの大事なところなんだと。
ネガティブなフィードバックこそ小出しにする
篠田:なるほどですね、ありがとうございます。じゃあ、公三さん、お願いします。
中谷:1つ前のローパフォーマーの話もそうなんですけど、僕はゼロヒャク(0か100か)じゃないと思っていて、ローパフォーマーでもその中でできていることとできていないこともある。できていない中でも、半年前に比べてちょっぴり改善したところとかあるじゃないですか。
そこをしっかりと理解した上で、「相変わらずローにはいるけど、ここは半年前より伸びているからこの調子でいこう」とか、「ここはできていないけど、こっちができていたから、ここが隠れないぐらいこっちを元に戻そう」という会話をして、一刀両断にしないことが大事かなと。
さっきのフィードバックの話になると、正式には会社の人事評価のフィードバックは半年に1回でいいんですよ。だけど、僕はいつもネオさんとジュンさんに「ネガティブなフィードバックをしたい時には、事前に(小出しに)コミュニケーションを取ってきているか?」と確認していたんですよ。
じゃないと、半年経ってから「いやぁ、もうぜんぜんできていないじゃん」と言われると、みんなもう「ちゃぶ台をひっくり返してきた」と大炎上するので。
ちゃんと日々の週次ミーティングだったり、1on1だったり、あるいは何かのイベントの後のフィードバックで、ある程度は「私たちの期待値に達していない部分があるよ」ということを小出しに伝えることによって、相手が食べられる粒度に(笑)。
(一同笑)
篠田:苦い薬もだんだん……。
中谷:ちょっとずつ食べて、「まぁ、そう思われていたよね」となるのがコツかなと。
諸橋:よく、「サプライズをしない」とは言いますね。その瞬間に「え? 聞いていないんだけど」というのは、かなりマネージャーに対しての不信感につながるので。
篠田:確かに。