「この本の存在が今、支えになっています」
中谷:ネオさんの記憶は飲み会なんでしょう? 僕の記憶は、年始にマネージャーミーティングをした時に、「今年は何をやろうか? マネージャーの目標が欲しいよね」と言っていて、「じゃあ、本を書いてみようか。3人でやるか」と話をしたことがあると思っていたの。飲み会が先なのかな?
諸橋:いや、どっちが先かはちょっと……。
中谷:わからないけど(笑)。
篠田:もうさっそくコメントで、「この本の存在が今、支えになっています」。
中谷:そうなんだ(笑)! ありがとうございます。良かったです。
篠田:やはり2年がんばられたことがこうやって(かたちになっている)。
さっきのお話に戻ると、本屋さんでこの本を手に取って、やはりパッと見てユニークなのは、表紙の情報量がすごく多くて漫画っぽいなと思って、開いてパラパラ見たら「本当に漫画だ」ってちょっと驚くんですよね。それはジュンさんがたまたま3人でご飯を食べた時にいたからそうなったという理解で合っています?
諸橋:そうです、そうです。
篠田:もしその時に呼ばれていなかったら、この体裁にはなっていなかった?
諸橋:単なるGoogle本。
水野:そうです。
中谷:でも、それじゃあつまらないですよね。
篠田:この本の強烈な個性だなと思いました。それはやはり描いていらしてどうでしたか? ふだん漫画を描く時と、この本では何か違う感じがしましたか?
水野:どうでしょうかね。あえて普通の漫画を描いています。一般的なビジネス書の漫画は、いわゆる情報が主役になっているケースが多いと思って。
篠田:確かに。
マネジメントに関する3つのテーマで書籍を深掘り
水野:こういうノウハウがありまして、ストーリーは二の次というね。キャラクターがいて、一応キャラクターがいるのは一般的ですけど、どっちかというとノウハウがあって、情報を説明するのが主役だと思っていて。
今回私は、話している時もなんですけど、「いや、普通の漫画を描きますよ」と。おもしろくないから。情報の漫画って誰が描いてもあんまり変わらないので、それじゃあ描いている身としておもしろくないので「普通に漫画を描きます」と言って、テーマだけ決めたんですよね。
3人で(テーマを)集めて、ノウハウとして大事なところでこういう章構成にする。それぞれのキーメッセージはこれだねと言って、キーメッセージだけ僕が預かって、じゃあ、これをテーマに普通の漫画を描きましょう、ということになりました。
篠田:なるほど、そうか。いや、これは正直ちょっと量が多いので、まず全体をバーッと把握したい時に、私は漫画を先に読みました。それだとパラパラパラッと、そんなに長時間かからずに全体のメッセージみたいなものが受け取れて。あらためて字を見ると時々難しくなるから(笑)、漫画で救われる。今読み途中の方に、私はそんな読み方もしましたという参考でお伝えしました。
じゃあ、この本の成り立ちが少しわかったところで、さっそくみなさんのご質問に基づきながらテーマに入っていこうと思います。
大きく3つテーマをご用意していますが、みなさんのコメントをいただきながら私も臨機応変に振っていきたいと思います。3つのテーマの1つはやはり、心理的安全性の話ですね。2つ目が、「マネージャーとして、自分のコピーじゃなくチームの力をつけていくってどうやるの?」と。
3つ目のポイントが、これは私も読んでいて一番わかりづらいなと正直思ったのが、「コミュニティ」というキーワード。これをどう理解して、私たちは自分の職場でどういうふうにやっていったらいいのか。大きくこの3つを考えていきたいと思います。
心理的安全性は「目的」か「方法」か?
篠田:じゃあ、まず1個目の心理的安全性ですね。これは私がエールで仕事をしていても、日本企業ですごく注目されていると感じます。心理的安全性を高めるための研修とかワークショップ(がたくさん行われていて)、本屋さんに行っても本がいっぱいあるんだけれども、ちょっとよくわからない(笑)。
実際にいただいた質問でも、「職場でちょっと私語が多い人がいて、それに対して注意をしたら、『私の心理的安全性が損なわれます』と反論されて、それ以上注意ができなかったんですけど、どう考えたらいいだろうか?」とか。
「心理的安全性を損なわないでください。だから、きつく言うのをやめてください」というものとして言われてしまう。
私が関わっている(顧客)企業でも、本当にパフォーマンスと心理的安全性が、ある種対義語のように受け取られている。経営層は「心理的安全性が大事です」と言うんだけど、現場を預かっているマネージャーは、「ちょっとねぇ……」というのを聞くんですよ。
まず今の入り口から、「いやいや、心理的安全性とはこういうことであって、こういうことではないんです」というのを、あらためてお話しいただけますか?
中谷:じゃあ、口火を切るからフォローしてくださいね。たぶんね、心理的安全性が目的なのか方法なのかで違うのかなと思っています。要は会社で働いているから、基本的には「結果を出す。実行する。成果を出す」が目的であって、そのために心理的安全性があるほうがより成果が出やすい。
そして失敗とか間違いとかも見つけやすい。異なる意見が出やすい。対話の中から新しいアイデアが出やすい。なので、心理的安全性のために「他を全部捨象してOK!」じゃないと思っていて、「最終的な目的のために」心理的安全性が確保されるべきという考え方かなと思っています。
Googleでも直面する「心理的安全性」の誤解と難しさ
篠田:お二方は、それぞれいかがですか?
水野:ちょっとお話をすると、今ケースに挙がったような話があったじゃないですか。別にGoogleでもあるんですよ。
篠田:Googleでもある?
水野:難しいんです。難しい。私が聞いたことのある話だと、新卒の方が同じようなことを言っていると。強いフィードバックを受けたら、「受け止められない」と言ってHRに駆け込んだみたいな話も聞いています。
篠田:なるほど。
水野:なので、やはりそこも同じような話ですよね。フィードバックをすること・されることについて、心理的安全性なのかそうじゃないのかという議論があったりする。これは私の身の回りであった、聞いた話ですけどね。だから、まず原則難しい話です。簡単ではない。
本の中でも記載があったと思うんですけど、何をもって心理的安全性とするかの中に、まず「意見をいつでもちゃんと安心して話せる場であると思うこと」や、「自分がこの組織にいる価値を実感できる」みたいなことがあったと思うんですけど。そのあたりがたぶん、足掛かりの言葉としては良いと思うんですよ。
例えば、会議で話をしても否定をされないとか、自分の意見が取り入れられて、ちゃんとチームに還元されている実感を持つとか。私としてはそういった事柄が、たぶんコアのほうで。よく誤解されがちな、いわゆる何をしていてもいいわけではないです。何を言ってもいい、何をしていてもいいとは別の話。
やはり、私は個々人が貢献を遠慮なくできる環境が、心理的安全性なんじゃないかなと解釈しています。
信頼関係の土台なしには心理的安全性を語れない
篠田:なるほど。これはネオさんにうかがいたいんですけど、Googleに入社されてくる方々は、先ほど私がダラダラと言ったような誤解をなんとなく持ちながらGoogleに入ってこられると思うんです。そこは、どういうふうに理解をそろえているんでしょう?
諸橋:まず、「心理的安全性」って、すごく繰り返し言うんですよね。僕らがいた時は、ほぼ毎日のようにどこかで心理的安全性という単語が出てきていました。
例えばミーティングでも、ちょっとした発言に対して誰かが何かを返した時に、「いや、それってちょっと心理的安全性がないんじゃない?」みたいなことをキーワード的に使うんですね。それをやりながらだんだん「心理的安全性って、これが良い感じなんだ。これが良くないんだ」と、肌感として得るんですよね。
あとは、やはり会社として心理的安全性がこうあるべし、というものは、かなりトップダウンで強くメッセージとして伝えている。例えば僕らがいた時に1回やったのは、僕らだけではなくてGoogle広告の営業チームを全部集めて、心理的安全性の理解を深めるためだけに丸一日拘束してワークをやったり、セッションをやったり。それぐらいコミットが必要ですね。
篠田:コミットが必要だし、さっきジュンさんがおっしゃったように、理解するのがちょっと難しいからこそ、それだけのことをやる?
諸橋:はい。
成果を出せていないメンバーにどう向き合うか
篠田:ちょっと行きつ戻りつしてしまうんですけれども、やはりGoogleという会社の環境が、けっこう高い成果を求めているのが前提としてあるからこそ、それだけ強調するのかなと思ったんです。今は他の会社でそれぞれご経験があるかと思うのですが、どうですか?
中谷:まず心理的安全性のうんぬんの話をするには、その土台にある信頼関係がないと、それ自体の話ができないような気がしているんですね。
なので、今の例にあった私語の話だと、この私語が「良い」のか「悪い」なのか。悪いんだったら、どうして悪いと思っているのかというところ、つまり、話す手前の段階で「駄目・良い」の判断もたぶん(マネージャーと部下とで)違っていて。
マネージャーは私語を止めてほしいと思っているけど、「本当にマネージャーが言っていることは正しいの?」と。ひょっとしたら私語があることで円滑なコミュニケーションが取れているかもしれないので、そこの相対性をマネージャーがちゃんと理解した上で、本音で話ができるような信頼関係がないと、「言った・言われた」の関係になるんじゃないかなと思います。(私たちは)会社の中で信頼関係は、すごく時間をかけて作るようにしているかもしれません。
篠田:その話もよく聞きますね。「どの口が」という感想はちょっと棚に上げますが(笑)、心理的安全性の文脈でも、少なくない日本企業が1on1を採り入れているんだけれども、この本で書かれているような粒度の高い理解というよりは、なんだか「とりあえずやって」みたいな。
そうすると何が起きるかというと、まさに今、公三さんがおっしゃったような、そもそもの信頼関係が弱いが故に、部下からすると拷問でしかないわけですよ。「こんな人と1対1で同じ空間に30分いるだけでつらいんですけど」みたいな。それこそ、「一緒にいるだけで、あなたの存在が(私の)心理的安全性を損ないました」みたいなことに……(笑)。
水野:そんなことがあるんですね。
篠田:ある。
(一同笑)
というふうになっちゃうのに、うまく気がつけない。「Googleは心理的安全性は大事だと言っています」「Googleは1on1をやっています」という、ある意味で遠くから表面的に見たところだけを採り入れることが先ほどの質問には表れていたし、今のご説明で、その土台が信頼関係によって……というところを補足していただいたなと思いました。