【3行要約】・「商品が丸くなってしまう」から会議はあえて3人で。大反対を押し切って誕生した「丸ごと!! カニバーガー」が大ヒットした裏側には、ある逆転の発想がありました。
・株式会社ドムドムフードサービスの藤﨑忍社長は「美味しいはお客様との最低限のお約束」とし、その上で付加価値を生むための独自の組織論を語ります。
・現場のオペレーション負荷やコストの壁を越え、全社一丸となって「遊び心」を形にするために、リーダーが貫くべき信念とファンとの対話術とは。
前回の記事はこちら 他のハンバーガーチェーンとは一味違う、ドムドムの「遊び心」
司会者:他のハンバーガーチェーンとは一味違う、おいしさはもちろんなんですけど、遊び心と独特のハンバーガーでいつも楽しませてくれるドムドムなんですけど、そんな独自性とか遊び心の裏側に迫ってまいります。
最初に「藤﨑さんお気に入りのメニューとその開発秘話をうかがいたい」というお話でした。
藤﨑忍氏(以下、藤﨑):私、すべての商品を「美味しいので召し上がってください」って言って販売している身ですから、どれが好きだとか言っちゃいけないとは常々思っています。だけど「どれが好き?」って言われたら「丸ごと!! カニバーガー」。
(会場笑)
たぶん精神的な面もあると思うんですよ。あの「丸ごと!! カニ(バーガー)」、私はすごく美味しいと思って販売したんですけど、やはりうちの業績も知名度もグッと変わったんですね。そんな刷り込みもあって、人間なんて本当に単純ですよね。だから、もしかすると一番好きなのかもしれません(笑)。
司会者:「食べたことあるよ」っていう方、いらっしゃいますか?
(会場挙手)
藤﨑:ありがとうございます。美味しいですよね。スイートチリが好きな人?
(会場挙手)
私もそう思います。でも一応、毎回同じソースじゃ申し訳ないということで、いろんなのをやらせていただいています。開発の秘話なんだけど、本当に毎月1つ、1個ずつ新商品、期間限定商品を販売しているんですね。
だいたいイメージとしては、1月に出たものが3ヶ月あって、1、2、3ヶ月、売れるようになっています。要するに3ヶ月ずつ商品が販売できるようになっているので、期間限定メニューが3つずつあるようなイメージです。
中には特に早く完売してしまうものも、2025年の「春菊(かき揚げ)バーガー」みたいなこともありますけど、そんなイメージでやっています。
なので、商品開発の人たちは大変なんですよ。毎回すごく期待値が高いので、その期待に沿うものを作らなきゃいけない。今日も私、ハンバーガーを2つ、昼に食べてきたんです(笑)。うちの商品開発会議って、例えば「毎月何週目の何日にこういう会議をやります」っていう「商品開発会議やります」みたいなかたちじゃないんです。
いい商材が入ったら、商材の中にソースも入りますけど「こういうソースが入りました」なんていう時に、気軽に「社長、今週何曜日いますか?」みたいな。「今日は講演があるけど、昼間はいいよ」とかって言うと「じゃあ、その時間、空けてください。商品を2つ食べてください」みたいな感じです。
それで、カットしてもらって食べたりっていう感じなんですね。なので、あんまり枠にはまって「いついつとか、この季節だからこれ」みたいな商品開発をしていない。
商品開発の会議は“たった3人”で行う理由
藤﨑:それから、これはよく報道されているのでご存じかもしれませんけど、商品開発の会議をやるのは3人です。どうしてかっていうと、昔は私どもの親会社はホテルでしたので、シェフとかがいっぱいいたんですよ。だから本当に大勢でやっていました。なのでそうすると、商品がどんどん丸くなっちゃうんですよ。
みんなの意見を聴いたら「甘い」とか「しょっぱい」とかいろんな意見を聴いたら、どんどん商品って丸くなっちゃうじゃないですか。なのである時、あんまり丸くならないほうがいいねということで、3人体制を取るようになりました。
こう聞いていると、独自性の模索でやった独自性のハンバーガーを作っている商品開発だけがすごそうな感じがするんだけど、ぜんぜんそんなことはないと思っています。
この商品1個、販売するにはマーケっていう部署の人たち、要するに広報マーケをやる人。SNSを書いたりビラを作ったりポスターを作ったりする人たちも毎月やらなきゃいけないから大変。毎月出すものを、ポスターとか全部の店舗に配るからすごく大変。
それから店舗の人たち、すごく大変。どうしてかっていうと、いろんな商材がお店に増えれば増えるほど、その原価率を守るのが大変なんですよ。
原価率って「1つのハンバーガーをいくらで販売しますよ」と。だけど、その原価は何パーセントだと。よく、30パーセントとか33パーセント、それを守らないと利益にはなりませんっていう指数があります。その原価率を守らないと会社って赤字になっちゃうから、「それをちゃんと守ってくださいよ」っていう話をしているわけですね。
ところがうちの場合、例えば新商品、生の梨が届きますよと。皮をむいてカットして梨バーガーを作りなさいとか。カニに至っては冷凍のカニが届きますよと。これ、流水解凍して優しく丁寧に水気を切って、優しく丁寧に粉を付けて、優しく丁寧に揚げてください。そして挟んでくださいと。
こんな、いろんなもの、商材が届く。サツマイモが入っていたり、今春菊が入っていたり、いろんなものが入ると材料がいっぱいになっちゃうわけですよ。そうすると原価率を守るのって大変ですよね。
当初大反対された「カニバーガー」
藤﨑:例えばお家で3つぐらいの野菜があれば、ダイコンとニンジンとキャベツだけだったらうまく使えるけど、これにアスパラが入ったりマッシュルームが入ったりすると、それを残さずうまく使うのは難しいじゃないですか。会社の冷蔵庫も大変なことになるから、原価率を守るには商品数が少ないほうがいいんですよ。
だけど、それをやらないから、現場の人たちはすごくうまくコントロールしながら発注をして、使い切ってくれる。
なおかつ、さっき言ったとおり、うちの商品ってソースを変えたり中身を変えたりするだけじゃない。順番が、組み立てが全部違います。なので、これをみんなが覚えなきゃいけない、カニの揚げ方も覚えなきゃいけない。なので、こういったことも現場の人たちはすごく大変な思いをしています。
私どもの商品開発がすばらしいですねって言っていただくことは多いんだけど、それだけじゃなくて全社がまとまってがんばってくれているから、こんなことができるんだっていうことです。商品開発の裏話ではなくて、こんなもんなんですよっていうお話ですかね。
「カニバーガー」大ヒットの裏側
司会者:ありがとうございます。このカニバーガー以上に物議を醸したものとかはあったんでしょうか? この時、ちょっと反対されたとかっていうこともあったじゃないですか。
藤﨑:カニはとても反対されました(笑)。これ「なんで社長が反対されるの?」っておかしな話だと思うんですけど、私今はちょっと株を持っていますけど、かつては雇われ社長っていうやつなんですよ。
うちはすごく小さい会社だから、取締役会って数名いて、その下に経営会議っていうのがあって、その下に店長会議みたいなのがある感じなんですね。
取締役会が商品を当時決めていたんだけど「丸ごと!! カニバーガー」は絶対駄目だって言われたんですよ。どうしてかっていったら、見た目が気持ち悪いと(笑)。それから、さっき言った調理の工程が難しい。それで、それをちゃんとした状態でお客さまに出せるかどうかが難しいから。
もう1つが、値段が高過ぎると。今、単品で1,280円です。ファーストフードで、特にうち、レンジが低い金額でやらなければいけないのに、絶対無理だってすごく反対されたんですよね。
だけど、やはり私どものコアコンセプトの中に「美味しいはお客様との最低限のお約束」っていう考え方があるんですね。どういうことかっていうと、今、どこに行っても何を召し上がっても美味しいじゃないですか。コンビニのスイーツも、何のお弁当を食べたって、あんまり外れはないじゃないですか。
なので、美味しいのは最低限で、その上で付加価値のある商品を販売しましょうという意味では、この商品はすごくいいと思って、やったんですけどね。
司会者:大反対を1個1個打ち崩しながらされていったんですね。
藤﨑:これ、大反対の中でイノベーションが起きたんですよ。どういうイノベーションかっていうと、とってもくだらないんですけど、旗を作ってカニのはさみにはさんだんですよ。そうしたら「かわいい」ってなったんですよ。
(会場笑)

ちなみに恥ずかしながらですけど、今本社の営業のスタッフってけっこう人数がいるんですよね。昔はぜんぜん人がいなくて「カニバーガー」も売れるかどうかわからないじゃないですか。旗ってオーダーすると何万本とかじゃないとオーダーできないので、自分たちでようじでくるんで、作っていたんですよ。
実は私の母とかにも家に持って帰ってやってもらって。そしたらすごく売れたから、「これオーダーしよう」と思ったらもう間に合わないということでやったという秘話ですね。
司会者:すごいですね。それも、手作り感あふれるところから、こんなに大ヒットバーガーになって。
藤﨑:ありがたいですね。