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第二部「令和型ハードワークの再定義 — 成果を出し続けながら、燃え尽きないチームをどうつくるか?」(全3記事)

週40時間以上の労働で、子どもを持ちたい意欲が急激に低下 育児や介護を“仕事を奪う敵”にしないための組織改革

【3行要約】
・特定の数人が残業で支える組織はもう限界。多様な人材が「美しいパス回し」で業務を完結させるチームへの転換こそが、令和の生存戦略です。
・株式会社ワーク・ライフバランス代表の小室淑恵氏は、週40時間を超える労働が次世代への意欲を削ぎ、国の活力を奪うと警鐘を鳴らします。
・人生のわずか15パーセントしか存在しない「残業できる時期」に頼らない働き方を、いかにして組織の文化として根付かせるべきかを提言します。

前回の記事はこちら

「70歳まで健康に働ける職場」の重要性

小室淑恵氏:では、最後に私からもお話しできればと思います。もう今日は十分にいろんなお話が聞けたと思うので、データでさらに示していけるようなものを最後にご紹介していきたいと思います。

まず、「この日本社会はもう経済的に終わりの国では?」という非常に悲しい話もよくあるんですが、大きな希望があります。日本の今の労働力人口の比率を見ると、赤い点線でありますが、64歳までの人を労働力として見た時の比率がどんどん減っていきます。

つまりこれが、私たちの負担や税金が毎日増えていく、同じ暮らしができなくなっていくと感じている、日に日に重くなっていく負担の正体なんですね。より少ない人で多くを支えるようになっていくから、日々悪くなっていく。ところが70歳までを労働力と見たらどうなるかというと、2070年まで今と同じ比率で支えることができる。

でも、じゃあどうして今はその年齢の人までが労働力人口に入れてないのかというと、最大の要因が働き方なんですよね。70歳まで健康に働けるような職場であれば、日本社会は支える側の少なさによって崩れてしまうことがない。

つまり、「少子化そのものはすぐには解決しないけれども、少子化で起きる課題(支える側と支えられる側のバランスの崩れ)に関しては軟着陸するプランがあるということ。そして一番重要なのは、もっと多様な人が労働参画できる働き方に変えていくんだということなわけです。

特定の数人ががんばる組織はもう限界

今日は「持続可能なハードワークって何なのよ!」というご質問がいっぱいあったんですけれども、私はそれは1人の単位で成り立つというよりはチームで完成するものなんだと思っています。特定の数人ががんばって、誰かの欠けた分を誰かの残業で全部賄ってがんばっていくタイプの労働は、もう限界が来ています。

なぜなら、社会全体の若い人の比率がどんどん減っていく日本社会では、時間外労働ができる人の比率はどんどん減っていくんですね。今、経済界が言っている労働規制を緩和して(残業できる人に)いろいろ乗っけていこうという議論なんですが、肝心の乗っけられる人が減っていくから、ここに乗っけてなんとかしようというけれども、その作戦は先細りになります。

こういうチームを作ってしまっているリーダーや、「自分は長時間できる側にいるから活躍してる」と思っている方は、ちょっと思考を変えてみてください。チームとしては右側のようなチームになっていかないと、サステナブルじゃないんですね。

育児中や介護中の人たちが雑用を投げつけられるようなチームではなくて、本当にリスペクトされて、いちチームメンバーとして、お互いに仕事を美しくパス回しして仕事をしていく。

右側のようなチームを作っていくとまだまだ仕事量はこなせるし、一人ひとりは時間内で働いているし、責任ある仕事ができてるという自負もプライドも持って仕事ができるけれども、ちゃんと納期どおりに仕事が終わっていくんですよね。

一人ひとりは長時間労働をしていなくても、美しいパス回しで、ちゃんと納期どおりに時間内で仕事ができるというチームを作っていくと、特定の数人の体力的ハードワークで支える職場から、多様な人材の生産性高いハードワークで支える職場に飛び移っていきます。

実は日本は今、過去最多の労働力人口

これは経営者がしっかりとビジョンを変えてやっていく必要がありますし、「俺はまだ長時間労働できるから、それで価値を出していきたい」なんて言っていると、そんな人にだって介護は突然来ますし、自分の体調不良だって急に来るんです。ですので一人ひとり、自分自身が早く右側に移っていくことが重要かなと思っています。

日本は今、働き方を変えたことで労働力人口が増えてきているまさにその瞬間なので、働き方改革をやめてしまうのは非常にもったいない。働き方が柔軟になったからこそ、育児中や介護中、残業・転勤不可の人材など、今まで家庭に眠っていた人材が労働市場に出てきたんです。なんと日本は今、過去最多の労働力人口になってるんです。

政権に対して「労働力不足だ。だから労働時間規制の上限緩和を」と言っているところでは何が起きてるかというと、(スライドの)緑の三角形の部分があなたの業界を選んでいないということなんですね。人手不足なんじゃなくて、自社が選ばれてないっていう話なんです。

ここから導き出される答えは、人手不足解消の鍵は「選ばれる企業になる」ことであり、家庭内にも様々なケア労働を抱える人口が多くなると、休日労働や残業を前提としない組織を徹底して作っていくことが、非常に有効なんだということかなと思います。

週40時間以上の労働で、子どもを持ちたい意欲が急激に低下

つい先週出てきたおもしろい記事がありました。まだまだ私も研究し尽くしてないので、もともとの記事をぜひ読んでいただければと思いますが、中国の2つの大学の共同研究によって大規模調査をしたら、週の労働時間が40時間を超えると、子どもを持ちたい意欲が急激に低下することがわかったんですね。

中国、韓国、そして日本という超長時間労働の国が揃って極端な少子化になっています。この調査結果からわかるのは、週の労働時間が40時間を超えると、子どもを持ちたい意欲が半分ぐらいになっちゃうということです。40時間を超えないで働き続けられる国が次世代の労働力も再生産することができて、サステナブルに経済発展するよねということです。

日本は人口が減ってきている国ですが、若者の比率が少なく高齢者の比率が高まることによって、社会全体に負担や負荷が強まることを「人口オーナス期」と言います。ただ、オーナス期なので経済成長できないかというと、そんなことはないです。

もちろんボーナス期だったら、若者が長労働をして稼いでいくというモデルで経済成長できたんですが、オーナス期になっても別のやり方があるんです。それは、オーナス期になったらいろんな労働力を支える側に入れていくという戦略。まさに、そのために働き方を変えていくということです。

そして未来の労働力を確保するために、2人で働いていても2人以上の子どもが持てるようなさまざまな社会の環境を整えていく。そのために働き方も重要だよねということです。

現在と未来の労働力を同時確保するという2つのことができると、オーナス期でもまだ経済成長ができます。過去と違う経済成長の方向なので不安だと思うんですが、過去と同じ経済成長はできないですから、新しい経済成長に乗っていきましょう。

おそらく経済界の男性と議論すると言われると思いますが、最近アナリストが「日本人の1人あたりの労働時間が短くなったから、日本のGDPが減ったんだ」という分析を出している。これは半分事実です。

労働時間1人あたりが減ってGDPが減っている。しかしながら、一人当たりの労働時間が減少した理由は「高齢者比率が上がったから」という人口構造上の理由ですので、気合いがなくなったとか働き方改革で上限規制ができたせいではない。人口が理由で1人あたりの労働時間が減ったものは、短期間で戻すことはできませんので、労働時間が減った中で新しい成長の方法を目指す必要があり、それは不可能ではありません。

図の右側の働き方に変えるという新しいやり方で、1人あたりの労働時間が短い中でも経済成長できる方向に舵を切っていく。

ビジネス人生の中で時間外労働ができるのはたった15パーセント

ボーナス期は男性ばかりで長時間労働をして、軍隊のように「右向け右」という同じ条件の人でビシッと揃えると、大量生産に成功して勝てる。オーナス期は男女をフル活用して、育児・介護などをしながらでも、短時間で、しかも集中力を睡眠によって保つ。

そして睡眠と倫理感は非常につながっているんですが、睡眠によって倫理観と集中力を担保して、かつ違う条件の人たちがフラットに議論するからこそイノベーションが生まれる。今までにはなかったような高い付加価値を出せるというかたちで、オーナス期はボーナス期の真逆のやり方で勝つというセオリーがあります。

これはハーバード大学のデビッド・E・ブルームが実は90年代にもう出している論文なんですが、日本だけ乗り遅れていますので、オーナス期の勝ち方に乗っていこうよということです。

これは先ほど私がQ&Aの時に少しご紹介した、「ビジネス人生の中で時間外労働ができるのはたった15パーセントの時期です」ということを私の場合で書いたものです。

今までだったら「育児が一段落」と言われた、お子さんが9歳から15歳ぐらいの時期は非常に不登校が起きる時期ですよね。なので、そこで一段落なんてぜんぜんならない。

また幸運にも、元気なら受験があります。このどちらかで男性の出番がものすごくある時期ですので、ぜんぜん時間なんて空きません。また、今のビジネスパーソンは親と年齢が離れているので、早い時期に親の介護が始まるというのも若い人の特徴なんですよね。

ですので、(ビジネスパーソン人生の)最初の15パーセントの時期だけに一番フィットしたようないくらでも残業可能な働き方で成果を出す癖をつけてしまうと、その後の85パーセントの時期は「ずーっと自分は思うように働けていない。周囲に申し訳がない。こんなの自分じゃない」というふうに、すごく自分を責める。もしくは「これは家族のせいだ」というふうに家族に対してネガティブな気持ちを持ったり、育児や介護が辛くなったりします。

この15パーセントの時期にも、残りの85パーセントの時期に通用するような仕事のやり方を最初から身につけるべきだよ、と若い人にはアドバイスをしてあげてください。

また真に若い人のためを思うならば、収入、成長、評価、どれをとっても時間内で成果を上げることが重要なんです。ここの部分は今日はちょっと詳しく話せませんでしたが、私がいろんな動画のコンテンツでお話をしているので、また見ていただければと思います。

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