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第一部「歴史の構造と最新の調査からみる、戦略的ハードワーク時代を生き抜く視点」(全3記事)

長時間労働型の組織で“優秀な才能”が埋もれてしまう理由 日本の歴史が繰り返す「戦略なき根性論」の罠 [2/2]

長時間労働では世界に勝てない理由

深井:じゃあ、簡単に。COTENの深井龍之介と申します。今日はよろしくお願いします。COTENはすごく変わった会社なんですけれども、歴史や哲学や社会科学を経営判断とか、本当は政治にも活かしてほしいなと思っています。政治家からお金をもらったことはないんですが。そういうものがまったく活かされない世界って、ちょっと危ないよねというふうに思っている集団というかグループです。

今回の(テーマである持続可能な)働き方に関しても、ジェンダーギャップの歴史をずっと見ていったら、手法としてそれをするしかないなとまったく別のルートから我々も思い至りました。それで今回、こういうイベントを一緒にさせていただきましょうという話になりました。今日はよろしくお願いいたします。

大塚:よろしくお願いします。さっそく中身に入っていきたいなと思っているんですけれども、深井さんは最近の日本の働き方を調査をされたり、またご自分も経営者としてスタートアップをやられている中で、「これ(長時間労働という働き方)はちょっと無理が出てきてるな」って思われるポイントはどんなものがありますか?

深井:ものすごく端的に言うと、長時間労働みたいなことをやりながら、このあとの世界の市場競争で勝つことがそもそも不可能だなと、いろんなものの因果関係を見ていて今は考えています。

我々が思い至った一番の理由は、やはり今の日本という社会では女性に家事や育児がめちゃくちゃ偏重している。それから核家族が都市部にすごく多いとなった時に、未だに都市部の核家族の人たちは男性が賃金労働で通勤して、リモートワークがあるとはいえ家の外に出ていっていることが多いじゃないですか。

その状態で「長時間労働をやる」って、高市(早苗)さんが(総理に)なられた直後にもう1回言っちゃったじゃないですか。もう1回言ってしまうと、男性が賃金労働に出て長時間働いて育児・家事に参加しないという構図が、あらためて固定化され続ける現象がまた起こってしまう。

普通に時空間の制限として、それをやってしまうと育児参加や家事参加は本当にできなくなるんです。「性別分業規範」と言うんですが、仕事をする人や家事をする人を性別によって分けることになってしまうんです。

当然、女性の中にもビジネス的な意思決定が得意な人っているじゃないですか。そして当然、男性の中にもビジネス的な意思決定が苦手な方もいらっしゃる。

大塚:当然、そうですね。

深井:ビジネスの意思決定に対して性差がないというのは、これはもう科学的に証明されているんです。

人口の半分の才能を活かせていない日本の危機

大塚:男性脳・女性脳みたいな話はあるけれども。

深井:そうなんです、よくあるんですけどね(笑)。あれも最新の脳科学ではいったん否定されていまして、個人差のほうがぜんぜんデカいと言われているんですね。

そうなってくると極端な話、人口の半分いる女性がビジネスのものすごく重要な意思決定に参加できない。参加していない人たちの中には、実はめちゃくちゃそれ(ビジネスの意思決定)が得意な人たちがたくさんいる。そして無理やり参加させている男性の中には、実はそれがすごく苦手な人たちがたくさんいる。

先進国の中では、ぶっちぎりで日本がそういう状態になっています。アメリカやイギリスやドイツとかのほかの国はそうしていないのに、その人たちとグローバル市場で戦うわけですから、すごく困難な状態になると思っています。

大塚:なるほど。冒頭で「市場競争に勝つために」というキーワードをおっしゃっていたんですけれども、私がいろんな経営者にお話をうかがっていると、「市場競争で勝つために、もうちょっと働かないといけないでしょ?」っておっしゃるケースもけっこうあるんです。その点はどんなふうにお考えですか?

深井:そうですよね。まず、経営者として感覚は理解できるんですが、それは戦略として違うし、状況理解として違うというふうに見なしているって感じですね。

大塚:状況理解として違う。

深井:構造的に、さっき言ったように「リソースをどう活かすか」という話を考えた時に、そもそも「長時間、もっと働かなきゃ」という選択をしてしまった結果、意思決定に非常に向いている人たちのリソースの半分を失っているわけですよね。

大塚:そうですよね。

AI時代における「代替不可能なリソース」

深井:人材プールの半分を失っている状態になりますから。意思決定が得意な人たちが、女性の中にも男性と科学的には同数いるわけですよね。

生成AIが出てきて、意思決定以外の仕事がかなりAIに回収されていく次の時代に、例えば何らかの意思決定が非常に得意とか、リーダーシップが取れるとか、その事業に強い思いを持っているとか、要はAIやお金で代替できないリソースがあるじゃないですか。動機があるとか、やる気があるとか。

やる気ってどれだけがんばってもお金で買えないです。人事もやる気ってお金では買えないじゃないですか。

大塚:はい(笑)。

深井:なので、お金で買えないし、AIでも代替できない才能やリソースみたいなものに対するアクセス権限を完全に失っている状態になります。長時間労働を進めるという決定をやってしまうと、自ずとそうなっちゃう構図になることを構造として理解していない。

気持ちはわかるんですよ。がんばって働くとか、「長時間働かないと勝てないかも」って思うのはわかるんだけれども、一番最初にまずは状況を理解することと、それに基づいた戦略を作ることが非常に重要なんです。

歴史の失敗に学ぶ「戦略なき根性論」の罠

深井:実際に歴史を勉強していて、実は日本人はかなりこれが苦手です。

大塚:苦手?

深井:めちゃくちゃ苦手です。日露戦争の時にも同じことをしていたし。

大塚:もうちょっと、そこをうかがってもいいですか? 日露戦争の時に何が起きて……?

深井:第二次世界大戦でも同じことをしているんですが、状況理解と戦略を立てる前に、日本人ってものすごくがんばろうとするんですよね。

大塚:根性論というか。

深井:そうですね。すごく雑な言い方をさせてもらうと、まさに根性論ってやつですね(笑)。もう少し日本人なりの哲学に基づいたり、いろんな職業倫理に基づいて、そういうふうな傾向があると見なしているんですけど。

結果論としては、戦略を立てたり精緻な状況理解をする前の段階で、今やっていることや目の前のことに全力でがんばろうとしてしまう。

大塚:確かに、私も全力でがんばったことがあります。

深井:状況理解と戦略抜きで全力でがんばろうとしてしまうと、今までやってきたやり方を踏襲してがんばることになっちゃうんです。それが男性の長時間労働なんですけど、時代と構造はもう(今は)そんな感じにはなっていないんですよね。

日本のビジネスシーンは「状況理解と戦略がない」状態ではないか

大塚:イギリスやアメリカやドイツとかは、現時点ですでに女性の意思決定力を日本の3倍から4倍活かしているわけですね。3倍から4倍の方々が一緒にチームとして働けるような状態になり、その中でリーダーシップが取れる方とか、意思決定するのが得意な方に対して光を当てていくから。

深井:そうです。優秀な意思決定者とかリーダーシップが取れる人間は、たぶん全大企業の人事やスタートアップの社長たちが、本当に喉から手が出るほど欲しい人材だと思うんですけど、その人材プールの半分を社会構造によって失い続けている。けれども、それを理解せずに長時間労働を推奨してしまうと、それを加速させてしまうんですね。

男性に対しての長時間労働でも、女性に対しての長時間労働でも、論理的に考えて時空間が「子育て」「家事」というものと「仕事」でコンフリクトするじゃないですか。場所が違うし、一緒の時間で同時には行えないから。

これをどうやって戦略的に解決するかという思考を使わずに、「いや、それは無理だからがんばる」というふうになっちゃうと、僕から見るとまるで近代化する時に失敗した朝鮮みたいな感覚に近いんですね。

大塚:今、ちょっとゾワっとしました。

深井:いろんな歴史を出して申し訳ないです。知らない方がいらっしゃったら、たぶん「何が?」って感じだと思うんですが。

大塚:もうそれは『コテンラジオ』を聞きましょう、ですね。

深井:明治維新の時に日本はなんとか近代化に成功して、植民地化を避けられましたよね。列強の浸潤を避けることができた。一方で朝鮮は内部でけっこういろいろとがんばったんだけど、できなかったんですよね。

だから彼らはそのあと南北で分断するところまでいって、今は韓国はすごく良くなってきていますけど、この150年間の歴史って本人たちの本意ではなかったと思うんです。150年前の朝鮮の彼らはすごくがんばっていたんですが、状況理解と戦略がなかったんですよね。

大塚:とすると、今の日本のビジネスシーンも状況理解と戦略がない状態。

深井:僕はないと思います。だって、それがあれば長時間労働を代案なしで言うってことは起こらないと思うんですよね。

別に長時間労働のすべての戦略を否定するわけじゃないので、言ってもいいと思うんですが、その前提となる状況理解がないように自分からは見えますね。それによって女性の社会参与というか、意思決定層への参与が確実に阻害されると僕は思うので、それに対しての説明もなければ代案もないというふうに見えるんですよね。

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