【3行要約】
・「課題を解決しろ」という正論が組織を停滞させる一方で、自ら考え動く「自律型チーム」には共通の思考プロセスが存在します。
・自走型組織設計アドバイザーのつっちー氏は「原因を特定しないまま課題だけを指示する状態こそが、部下を迷走させる罠だ」と語ります。
・つっちー氏は、指示待ち集団を脱却させるためにリーダーが向き合うべき「問題と課題の定義」や「関係の質」を重視したマネジメントを紹介します。
指示待ち集団を「自走」させるための失敗と実践
つっちー氏:みなさんこんばんは。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。本日のテーマは「『課題を解決しろ』が組織をダメにする!」です。私自身が30名の指示待ち集団を、自ら考えて動く自律型チームへ変革させた失敗と実践のストーリーをお話しします。みなさま、ご自身のチームと重ね合わせながら「明日から使える思考法」として、ぜひお持ち帰りください。
まずは講師紹介です。講師の土田と申します。ニックネームは「つっちー」です。「つっちー」で覚えていただければうれしいです。私は現在、会社員として事業所の運営を統括する所長を努めており、30名の部下を持っています。専門は、自走型組織設計のアドバイザーです。30名の指示待ち集団を自律型チームへ導いた実体験をもとに、組織の自律化を支援しています。

また、
BLUE CRUX(ブルー・クラックス)というプロフェッショナルチームにも所属しています。会社とは別につながった同志5人で結成しており、AIやWeb、組織など、5つの専門性の集合知で、お客さまの事業の核心(CRUX)を加速させるチーム支援を行っています。今回はBLUE CRUX主催のセミナーになります。
自律型チームを構築する3つの重要ステップ
(スライドを示して)まずは目次です。セミナーは、3つの章で進めていきます。実は、上から順番に自律型チームを生み出すための重要な要素になっています。

まず1つ目です。一番の土台であり、部下が動かない最大の要因です。それは、組織が陥りがちな「定義の罠」、すなわち「問題」と「課題」の混同です。つまり、問題と課題を混同しないことが、部下を動かすために重要です。
2つ目は「関係の質」です。部下との信頼関係づくりになります。
3つ目は、起爆剤となる「配置転換」です。部下の業務環境を物理的に変えることです。この3つが重要な要素になります。それぞれについて説明していきます。
1章の説明になります。「なぜ部下は動かないのか? (問題と課題の罠)」です。指示待ち人間ばかり。言われたことはやるが、それ以上はやらない。良かれと思って指導しても反応がない。「なぜ部下は動かないのか?」というのは、組織の規模を問わず、多くの経営者やリーダーが抱えるトップクラスの悩みです。みなさまの中にも、同じようなもどかしさを感じている方がいらっしゃると思います。

ここで一番お伝えしたいのは、実は、これらは部下の責任ではなく、私たちリーダーのアプローチに原因があるということです。
ここで私たちが無意識に陥ってしまっているのが、「定義の罠」です。具体的には、問題と課題の混同です。問題とは、「あるべき姿(理想)」と「現状」とのギャップのことです。

そして課題とは、そのギャップを埋めるためのアクション(行動)のことです。つまり、問題は解決するもの。課題は問題を解決するために行うアクションですので、達成するものになります。この定義が大事です。世間では、よく「課題解決」という言葉が一括りに使われていますが、これが大きな誤りになります。
リーダーが、問題(ギャップ)の原因を明確にしないまま、部下に「これをやれ」と漠然と課題(アクション)だけを指示してしまう。これは、よくあるケースです。「原因が不明確なまま、課題だけを指示してしまう状態」こそが、部下を必ず迷走させてしまう「罠」の正体なのです。
部下が迷走する真の原因を特定する
もう一度繰り返して説明します。本来であれば、問題に対してその原因を特定し、その原因を取り除くための具体的な行動が「アクション」になります。つまり、原因を明らかにしない限り正しい課題は設定できず、部下は迷走してしまうのです。原因を明らかにしない課題の設定というのは、行動内容が曖昧になり「何をすべきかわからない」状態に陥るため、部下は迷走します。混乱するのです。これを次のスライドで詳しく説明します。
それでは、課題を設定するまでに至るプロセスの詳細を説明します。例えば、目標売上が2億円に対して現状が1億円の場合、ギャップは「1億円足りない」になります。そして、「なぜ1億円足りないのか?」と、原因を探ります。
例えば、「競合A社に顧客が流出している」からという理由だったとします。しかし、これは競合A社の動向に依存することですので、自社ではコントロールできません。ですから、自社では解決しようがありません。したがって、これは、自社が解決すべき真の原因とは言えないのです。そこで、「競合A社に顧客が流出しているのは、なぜか?」とさらに掘り下げます。
すると「自社の強みが、今の市場に適合していない」ということがわかったとします。これなら自社で、市場ニーズに合うように製品を作り変えることができます。これは自社でコントロールできるので、原因として扱えます。すなわち、「1億円足りない」の問題に対して、「自社の強みが、今の市場ニーズに適合していない」が真の原因になります。
正論の押しつけが招いた1年半の停滞
ここで言いたいのは、リーダーの大事な仕事はアクション(課題)を急ぐことではなくて、問題の真の原因を明らかにすることです。それを明らかにした上で、原因を取り除くために課題を設定することが正しいプロセスになります。
ここの課題で言いますと、例として書いている、「未開拓のターゲット層へシフトする」とか、今の機能に、「もっと別の〇〇機能を強化する」ことが課題になります。
ここからは、2章になります。1章では、リーダーとしての「正論」を語ってきましたが、実を言うと私自身、この正論を部下に押しつけて失敗しました。事業所長として、事業所にとって絶対にメリットがある正しい問題と課題の定義を打ち立て、部下に対して多くの業務指示を発信しました。さらに、私の考えや思いを浸透させるために組織スローガンを作りました。また、事業所のあるべき姿を話し合うワークショップを開いたり、オフィス環境を改善するために、オフィスリノベーションもしました。
それでも、部下は動きませんでした。それも、1年半もの間です。その間、私は「なぜ、私の思いが伝わらないんだ?」と、深く悩みました。今振り返ると、当時の私は「自分の説明が悪いから、部下に伝わらないんだ」と勘違いし、さらに正論をぶつけ続けるという、最悪の悪循環に陥っていました。

そんな1年半の停滞の中、私はあるコーチングセミナーに参加しました。そこで、ダニエル・キムが提唱する「成功循環モデル」に出会い、ハッとさせられました。私はずっと、「結果の質」つまり、正論の押しつけからスタートしていました。(スライドを示して)それが左側のサイクルになります。「結果の質」から始まって、「関係の質」、「思考の質」、「行動の質」の順ということです。私は常に結果を求めて、「結果の質」からサイクルが回っていました。

これでは部下に対して対立やギスギスの関係を生み、部下はどうしても行動が受け身になってしまいます。これが、バッドサイクルというものです。そうではなく、すべては「関係の質」、つまり、相互信頼から始めなければならなかったのです。これがグッドサイクルになります。部下との信頼関係ができていれば「思考の質」も前向きになり、自律的な行動となり、「結果の質」もグッドとなるようなグッドサイクルになります。
私が一生懸命やっていたことは、部下にとっては単なる正論の押しつけだったと気づかされました。正論の発信からスタートしてはいけない。すべては「関係の質」から始まるということを認識しました。
部下の「本音」に耳を傾け、信頼という土台を築き直す
そこで、成功循環モデルを信じて、部下へのアプローチをガラリと変えました。正論の発信をやめ、次の3つを実践したのです。1つ目は1on1ミーティング。タスク管理は横に置き、ひたすら部下の傾聴に徹しました。

2つ目は雑談や食事会で、カジュアルな対話を増やしました。3つ目は部下への業務メリットの提示です。「この業務はあなたのキャリアにとって、こんないいことがあるよ」と、部下一人ひとりのメリットと結びつけて伝えるようにしました。そして1on1ミーティングを通じて、部下が動かなかった本当の理由がようやくわかりました。
私は以前から「業務の属人化をなくし、先を見据えて育成したい」と伝えてきたのですが、部下のリアルな本音は「育成よりも、今の業務量を各担当者に平準化させることで精いっぱいです」というものでした。部下は、正論を理解していなかったわけではなかったのです。予測不能な現場作業を工期内に終わらせることに必死で、私の正論を受け入れる心の余裕がなかったのです。

私は、この切実な実情を理解し、受け止めました。それにより、部下が「自分の苦労を上司がわかってくれた」と感じたのでしょうか。私はだんだんとお互いの信頼関係が高まっていくことを実感しました。
ここからが3章になります。押しつけになっていた1年半の正論の発信をやめ、部下との「関係の質」の向上に注力したというのが、2章までのお話です。しかし、その信頼関係づくりに6ヶ月経ちましたが、相変わらず部下は自発的には動きませんでした。正論を押しつけていた1年半と、信頼関係づくりの6ヶ月を合わせて、すでに2年間が経過していました。
私としては、将来の事業継続のために新たなコア技術を習得してほしいのに、部下は現在の慣れた業務への執着が強すぎて、自ら新しいことに挑戦しようとはしませんでした。そこで、今の安定への執着を強制的に断ち切るために、私が最後に打った手が、大胆な配置転換という物理的な環境変化でした。部下30名のうち1、2名ではなく、7名規模で一気に配置換えすることで過去の執着を強制リセットし、新たな挑戦へと向かわせたのです。
結果として、これが起爆剤となり、部下は一気に自律型へと向かいました。物理的な環境変化の効果を実感した次第です。
自律型組織を完成させる「真の方程式」とリーダーの使命
ここで、みなさまに絶対に誤解していただきたくない、重要なポイントがあります。(スライドを示して)この神殿の図を見てください。配置転換は、それさえやればすべて解決するような特効薬ではありません。もし私が最初の1年半の停滞期に配置転換をやっていたら組織は崩壊していたでしょう。なぜなら、「関係の質」という土台がなかったからです。

では、なぜ混乱せず、自律への起爆剤になったのか。それは、神殿の重厚な土台である、「正論の共有」と、1on1ミーティングですり合わせた個人のキャリアプランとそのバックアップ体制という「関係の質」があったからこそです。この2つの強固な土台を2年かけて地道に築き上げていました。だからこそ、環境変化というショックがプラスに働いたのです。
以上より、部下を動かす真の方程式は、こうです。「 正論 × 熱意 × 関係の質 × 配置転換 = 自律 」。真の原因を正しく定義し、熱意を持って伝える。そして、信頼関係を築き、最後に環境を変える。この掛け算こそが、指示待ち集団を自律に変える思考法なのです。

まとめです。「課題を解決しろ」という言葉を捨て、「真の原因」を定義することからすべては始まります。そこから逃げずに、ビジネスの核心(CRUX)を突き動かすことが、私たちリーダーの最大の使命です。私からの説明は以上となります。