【3行要約】
・「研修は外部、現場は上司」と部下の育成施策がバラバラになっていませんか? 点在する施策が一貫性を欠くと、若手は組織のメッセージに矛盾を感じてしまいます。
・株式会社シンプルプランの丸茂喜泰氏は「現場の9割を占める上司との日常をデザインし、優先順位を『仕組み』で固定することが不可欠だ」と提言します。
・個人の能力に依存せず、1on1の実施率やフィードバック内容を可視化し、組織全体で若手の成長をキャッチアップするための実践的な管理指標を提示します。
前回の記事はこちら なぜ多くの施策はバラバラになるのか?
丸茂喜泰氏:もうちょっと話を進めていきます。多くの会社が(若手の育成を)うまくできない理由として、施策同士の連動が弱いと思っています。結局現場の育成は上司任せになっていて、年に1回とか2回とか、もしくは毎月1回の外部研修が行われていて、人事評価制度は人事が作って、「また1on1はやってくださいね」というかたちで人事サイドが現場に依頼している。一つひとつが一貫した設計になっておらず、点で行っているケース。これがうまくいかない要因の1つだと考えております。

若手の定着が強い会社の共通項は、上司だけに任せるんじゃなくて、本部や経営陣がいかに関わるかということをすごく大事にしていますので、ここはぜひ参考にしていただきたいなと思っています。
今の1つ目。上司というのが実はけっこう重要なキーワードです。なんでかというと、やはり上司の関わりですべて決まると思っています。(スライドを示して)左側に書いてあるんですけど、人事制度や研修といった仕組みだけでは、現場の若手の日常をカバーしきれないんですよ。
現場の9割を占める「上司との日常」をデザインする
なんでかといったら、結局は9割以上の時間が現場の業務だからなんですよね。だから上司の、現場で若手を育てるための教育をしないと、そりゃあ本社や人事や経営陣が何をやったとしても無理が出ますよということなんです。
その1つに、例えば1on1をやるとか。1on1の目的は関係の質なんて言いますけど、人間関係をしっかり構築することと、仕事における成長実感を持ってもらうためのフィードバックを上司がきちんと行っていく。
1on1の面談スキルとフィードバックをするスキル、そしてその中で「こういう期待をしているんだよ」ということを伝えるスキル。一言で言ったらコミュニケーションスキルですけど、マネージャー陣がこれらの能力を高めていくことが大事になると考えていただければと思っています。
また、今言った1on1に関してたまにあるのが、「最近どう?」と口癖のように聞いちゃう方がいらっしゃるんですよね。会社から「やって」と言われたからやっているんだけども……ということで、業務の延長線上でやってしまう。
そうではなくて、ここに書いてあるように、「今週できるようになったことって何かある?」と聞く。これがまず1つ、事実の確認ですよね。その人の小さな進歩を承認していくということです。
自律を促す1on1と、成長を加速させるフィードバック
例えば、うちの会社では毎日必ず、昨日あった出来事の中でうまくいった出来事を共有しています。それによって、自分が行った行動に価値を感じることができるので、自己効力感を高めるために行っています。これはうちの会社でそうしている内容なので、みなさんの会社でどうかはわからないんですけども。
「次に伸ばしたいことは?」というのは、さっき言ったフィードバックとはちょっと違いますけど、次にどこを目指すかですよね。やはりそこを自分で考えて発言してもらうのは大事です。そして、そのために「何か手伝ってほしいことはある?」ということで、助言・アドバイスを含めて、上司にしてほしいことを本人からしゃべってもらう。
もちろんフィードバックも1つだと思いますけども、こういったものを組み込んでいくのが大事です。私は今3つ、こういうやり方でやったほうがいいですよとお話ししていますが、今日ご参加の人事の方がやるべきはやり方を伝えるんじゃなくて、運用ルールを固定すること。私はそれが大事じゃないかなと思っております。

フィードバックに関しては、事実とその行動が示す能力や価値の解釈、そして次の期待というかたちでフィードバックされるのがいいのではないかと思っています。例えば、「今回の会議で顧客の要件を自ら要約して、資料に反映してくれたね。言われたことじゃなくて主体的に情報を整理してくれて、○○さんの論理性が発揮されていたと思うよ」。
ポジティブな行動を定着させる「褒める・叱る」の真の目的
「次は、リスクと代替案という別のものも併記できるようになると、さらに信頼度が上がるよね」というようなかたちで、事実と、そこに自分が感じた意味づけと、次の期待を連動して伝えることによって、意外と人はざっくりと「褒められた」ということになります。
ちょっとズレますが、「褒める、叱る目的って何?」というのは、褒めることは、褒めたことを繰り返してもらうためですよね。叱るのはなんでかといったら、叱る内容を二度と繰り返してもらいたくないから叱るわけです。目的はそこですよね。
だから、褒めるのは繰り返してもらいたい行動ですので、やはり事実に対しての意味づけとして、「これを繰り返してもらいたいな」と思うことを相手に浸透させていくのが非常に大事なんじゃないかなと思います。
行動を連動させるための仕組みとルール
最後に、「若手サーベイの扱い方」ということで、先ほどちょっとサーベイの話が出ていたと思いますので、これは参考までにサーベイをやっている企業さんにおいてはですが、全体を出した上で、もし若手の教育とかに課題があったら、若手の部分だけを切り出していただいて、その中で数字とか内容をネタに現場のマネージャーと人事サイドで対話をして、「じゃあ、決めていきましょう」と。

「何を決めるんですか?」というのは、誰が何に困っているのか、上司の関わりをどう変えるのか。この2点を会議の中で話して決めていただいて、それを現場で実践したことに対して2週間経ってから実行の有無を確認していきましょうというイメージです。
これもシンプルな話で、先週、ある上場企業さんであった内容なんですが、そこの会社では毎週全国で行われている営業組織のうまくいったことを共有するらしいんですよ。
(それに対して)共有した内容を現場で実行できるマネージャーと実行できないマネージャーがいる。「これはなんでですか?」と聞いたら、「実行できない人は、頭で聞いて、それで満足しちゃうんです。要するにやる気がないんです。」と言うんですよ。「ということは、そもそもやりたくないと思っているんですか?」と聞いたら、「いや、そんなことはないです」という話だったんですが、実はこれ、私は論理破綻をしていると思っているんです。
なんでかといったら、頭の中で満足して終わってしまっているということは、指示内容と行動が連動してないわけであって、当然やる気の問題じゃないんです。その聞いた内容を具体的にアクションとして指示を出して、それをどうキャッチアップするかというルールが決まっていないことが問題なんですよね。
だから、「本人がそれでやめてしまっているんです」ではなくて、組織としてせっかくそういう共有をするんだったら、共有された内容を、いつ、誰に対して伝えて、いつまでに結果をキャッチアップするか。
個人の能力に依存せず、「優先順位」を仕組み化する
ちょっと子どもじみていて恐縮なんですけど、「いつ」ですよね。「いつ、誰に伝えて、その伝えた内容の結果をいつキャッチアップするか」という、この3つをインプットした時点で、会議のうちにマネージャーたちにアウトプットしてもらう。で、次週その結果がどうだったかとやっていったほうが絶対に効果的ですよという話をしたんですが、これはもう設計の問題なんですよね。

だから、多くの組織ではそれを一人ひとりの能力に依存したやり方をしちゃうんですけど、そうすると、本人の忙しさとか状態によって、やったりやれなかったりと優先順位が変わっちゃうんですよ。なので、一番の問題は優先順位が変わることなんですよね。だから、優先順位を上げてもらいたいんだったら、仕組みで走らせることのほうが私は大事じゃないかなとは思っております。
今はサーベイの話をさせていただいたきましたが、サーベイで若手の現状をデータで可視化して、数値をネタにグループで話し合った後に、行動を決めて再測定しましょう。
その中で追うべき1つの指標の考えとして、例えば1on1の実施率や、どれぐらい実施できているか、フィードバックの記録率。(あるいは)どのようなフィードバックをしたかを残していくとか。結果、若手のエンゲージメントの変化が半年、1年でどんなふうに変わっていったか。
なんていうのを、管理指標として人事サイドが追っていくことを通じて、単なる「やらせ」で終わりじゃなくて、キャッチアップの仕組みになるんじゃないかなと思っております。サーベイをやられている企業さまは、ご参考にしていただければと思います。