【3行要約】
・若手が辞める原因を「本人の根性」や「相性」の問題だと思っていませんか? 実はその裏には、組織が自覚していない「育成設計の不備」という構造的な欠陥が隠れています。
・株式会社シンプルプランの丸茂喜泰氏は「若手離職は若手自身の問題ではなく、期待役割の不明確さや育成対話の不足による自社の問題である」と厳しく指摘します。
・採用・教育コストの損失以上に深刻な「組織エネルギーの低下」を防ぐため、リーダーが今すぐ見直すべき上司自身の行動変化と仕組みの連動について解説します。
若手離職を防ぐ「エンゲージメント向上」の視点
丸茂喜泰氏:株式会社シンプルプランの丸茂と申します。本日は、「離職を防ぐ“エンゲージメント向上”の実践策」ということで、「若手が辞めない組織は、何をしているのか?」をテーマに、50分ほどお話をさせていただければと思っております。

今回ご参加いただいているみなさまにおかれましては、今の若手をいかに組織に残していくか、離職の問題等を抱えている企業さんもいらっしゃるかもしれません。その中で何か1つでもお役に立てる情報があればと思って進めてまいります。
いろんなお話を聴いていただく中で、全部が全部ということではなくて、自社で取り入れているものがあれば「あっ、できているな」とか、「これはちょっと取り入れていないから、やってみようかな」なんていうものを見つけていただけたら幸いです。
また、今回のセミナーの内容ですけれども、どうしていくべきかについてお伝えはさせていただくんですが。聴いていただいて、取り組んでみたいことがあれば社内でチームを組んで取り組んでみたり、場合によっては、自社と関わりのある専門家の方に相談するのがいいのではないかと思っております。
最後になりますが、弊社は研修会社として事業を行っておりますので、現在お付き合いのある企業さまを通じて感じている、若手社員の定着する会社としない会社の違いなんていうことも、内容によって触れながら進めていければと思っております。必要に応じて、お手元でメモ等をお取りいただきながら聴いていただければ幸いです。
若手離職は「若手の問題」ではなく「育成設計の不備」
では、最初に「若手離職は、『若手問題』ではない」という打ち出しを、(スライドに)少し入れさせていただいております。

もちろん、若手自体に問題がないのかといったら、ないわけではないと思っています。でも、そうしてしまうと矢印が外に向いてしまって、自分たちの改善というよりは「そちらをどうするか」になってしまうので、やはりまずは自分たちの問題であると捉えていただければと思っています。
(スライドの)左下に「各種調査データより」ということで2つほど載せておりますが、「期待役割の不明確」「育成対話の不足」が、離職の要因の1つではないかと考えております。
期待役割の不明確というのは、(若手が)何を求められているかがわからないケースや、フィードバックがなく成長実感がない「育成対話の不足」というものが退職理由の1つに挙げられます。
そのためにも、設計の見直しを行っていくことが大事だと思っています。何の設計かといったら、若手人材の育成における設計を一度見直してみましょうということで、上司自身の行動変化と仕組みの連動。ぜひ、この2つを考えていただきたいと思います。
離職がもたらす、目に見えない巨大なコスト
では、そもそも若手の離職に応じて各社さんが負担しているコストはどんなものなのかを、ちょっと確認していければと思っております。

当然ながら採用コスト、これは当然かかってくるわけで、エージェント会社や求人広告を使ったり、さまざまなかたちでキャッシュアウトしているかと思います。現在、単価目安50万円~となっていますけど、たぶん100万円から、場合によっては150万円ぐらいかかっているのではないかなと思っております。
そこに人事の方の稼働コストや教育コストが発生します。入社から退職までにかかった研修費。弊社のような外部研修を使うケースもあれば内部研修も含めて、OJT担当者の指導時間や人件費などのコストがかかっているかと思います。
またその後、早い企業さんでは本当に1、2日の本部研修の後で現場に入る。長い企業さんですと、新入社員として4月に入ったら1、2ヶ月は本部で研修して、その後で現場にというケースもあります。その現場においても、やはり負担が発生するわけです。
人材が辞めることによって業務のしわ寄せであったり、(スライドの)右上のOJTにも近い要素ではあるんですけど、「数ヶ月も教えたけど辞めていった」という疲弊感であったり。どちらにしろ人材不足による現場の大変さが生まれてくると思います。
そして、最後に「組織エネルギーの低下」ということです。やはり「また辞めた」という疲弊感が組織全体に生まれてきますし、当然ですけどナレッジが蓄積されないので、継続した組織の学習が進まない。ということで、今々ではなくて少し先を見た時、組織の成長速度が低下すると言えるのではないかと考えております。
また、「心理的安全性の低下」と書いてあります。結局、人が定着しないと組織の雰囲気が悪くなってきますよね。「本当のコスト」と書いてありますが、入る人材や採用コストだけではなくて、今の組織にも及ぼす影響がすごく大きいのではないかと思っております。
管理職が直面する「プレイングマネジメント」の歪み
もちろん問題意識があって今日、みなさんご参加いただいていると思うんですけども。余談ですけど、最近、弊社でご依頼が多い研修のテーマの1つに管理職研修があります。じゃあ、なんで管理職研修のご依頼をいただけるかというと、もちろん階層別で(研修を)やっていこうというのも1つあるんですが。
一番多いのは、「管理職がチームの担っている数字はクリアしてきたけれども、人材が育てきれなくて中間層がどんどん辞めていってしまっている。このままいくと3年後、5年後、今の管理職の次の人材が生まれなくて、人材不足による成長鈍化がもう想像がつくから、本格的に人材を育てることを管理職がやっていかなきゃいけない」ということで、依頼をいただくことが増えてきました。
要するに、目的としての若手人材の育成が、結局はマネージャーが自分のプレイングマネジメント……というより、プレイヤーとしての力によって目標を達成することのひずみとして、人材が育てきれなかったという問題が起こり出しているのではないかと考えております。
実際の若手社員の退職のリアルな声ということで、みなさんの会社に当てはまるかどうかは存じ上げない部分もあるんですけども。1つは、「何を期待されているかよくわからない」なんていう声が上がっております。また、「成長している実感がない」「自分自身がこのままこの職場にいて本当に成長できるんだろうか?」とか。

先日もあったんですけども、「自分の組織の上の人を見た時に、やっている業務と顧客との付き合いの長さ以外、今の自分と何も変わらないなと思った時に、入社して1年経って仕事を全部覚えたら、このままここにいていいんだろうか? と不安になりました」という方がいました。
また、最近は減っていますけれども、「結局、上司が忙しそうで相談しにくい」とか。もちろん上司サイドは、「いや、いつでも相談していいよ」と言うんですけど、実際は上に相談しにくい空気があって、期待されていることがわからないから聞きにいったとしてもわからないし、どうすれば成長できるかも相談しにくいとか。
若手の意欲を奪う「ポジションがない」という一言
あとは、これも実際に私のクライアントさんであったことなんですけども。自分の上司、経営層なんですけども、上司に「どうすれば自分は役職者になれるのか? どうすればもっと立場が上の仕事ができるのか?」ということを、毎日じゃないですよ。数ヶ月に1回とか、1on1とかのフィードバックがあるタイミングで聞いていったと。
その方はストレートに「自分はこの会社に、管理職になりたいと思って入りました」と。入社するタイミングでは「うちの会社、3年待たずしてなれるよ」みたいな話を入社前に聞いていたらしいんですよ。本当か嘘かわかりませんよ? で。入社後に「どうしたらなれますか? どうがんばったらいいですか? 教えてください」と、彼は上司に何度も聞いたらしいんです。
そうしたら、悪気はないと思うんですけど、上司が言っていたのが、「そのポジションはうちにはない」と。要は「2、3年で君が上がれるポジションは、今のうちの仕事じゃ生みようがないから難しいよ」と。本人いわく、「結局、何を言ったって『できない』としか言わないですよね」ということに3年経って気づいたので、「私はもう、言われたことしかやりません」。そして「転職活動をします」という人がいるんですよね。
上司と部下の認識ギャップを埋める
これ、実は先月面談した方でそういう方がいたんですけど、たぶん上司からすれば「そんなことは言っていない」となるんですよ。「そんな話はしていないし、本人が辞めたい理由づけじゃないか」とか「本人の努力不足があってまだ無理だと思っている」みたいなことを言うんです。結局は、ここのコミュニケーション。要は本人が見ているところと上司が見ているところにギャップがあるんですよ。
だから、コミュニケーションだけの問題だと今日は言うつもりはないですよ。ですけど、そもそも上司が部下が本当に前向きになったり、やる気になったりするコミュニケーションを取れているかは、けっこう大事じゃないかなと思っているんです。
(スライドを示して)なぜならば、やはり「日々の些細な詰まり」と書いてあるんですけど、結局は(社員は)日常の問題で辞めていくんですよね。「人事の方と面談したから辞めます」という人はあまりいないんですよ。結局は日常の業務の中でさまざまなことが起こって、そこで退職することになっているので、上司力を高めるというのはすごく大事なキーワードなんじゃないかなと思っています。また後で出てきますが、その際に少し触れられればとは思います。