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「勘と経験」から「データドリブン」な人事に移行するための乗り越えるべき論点(全3記事)

「データドリブンな人事」にありがちな落とし穴 「勘と経験」からロジックで説明できる人事へ [1/2]

【3行要約】
・「なんとなく」の意思決定から脱却する「ピープルアナリティクス」が注目されていますが、高価なツールを導入しても「データの箱」化してしまう落とし穴が少なくありません。
・人材研究所の代表・曽和利光氏は、人事データは「選抜された後のサンプル」しか残らないという構造的な不完全性があり、相関と因果を混同する危険があると指摘します。
・AIによる効率化と「真実の発見」を両立させるために、人事はどのような倫理観を持ち、将来を見据えて今から何のデータを蓄積すべきかを具体的に解説します。

前回の記事はこちら

「勘と経験」からロジックで説明できる人事へ

曽和利光氏:今データドリブンな人事が来ているわけなんですけど、別の言い方で言うと、ピープルアナリティクスって言葉も最近流行っていて、よく使われます。

ピープルアナリティクスって、そのまま直訳すると「人の分析」ってことなんですけど、要は人と組織に関するデータを使って、人事や経営の意思決定の質を高めていくと。使うデータは、採用のデータ、評価、異動歴、研修受講データ、あるいは適性検査。これが大事ですね。

パーソナリティ、性格の検査のデータがよく使われるようになっています。その人が、モチベーションが高いのかどうかみたいなことで、エンゲージメントサーベイとかストレスチェックとか、いろんなデータがあるわけなんですけど。こういったものを、統計学であったりAIを駆使して、勘と経験+ファクトとロジックで説明できる人事。

なぜそういう判断をしたのかっていうのを、「なんとなく」とか「良さそうだと思ったから」とか「長年の勘と経験で」というのじゃなくて、そういうデータ面からも裏付けを取っていながら、人事の判断をできる。先ほど精度を見ていただきましたけど、人はかなりのバイアスがかかっているので、判断がぶれることがあります。

それを、ちゃんとやっていこうというのが、データドリブンな人事、ピープルアナリティクスと呼ばれるものです。実際使われているっていうのは、みなさん、日頃すでにやっておられる方が多いと思いますが、(スライドを示して)一応例を挙げておきます。

例えば採用で言ったら、どの媒体から採った人が1年後一番活躍しているのかっていうのを全部データで見て、どの媒体から採ったほうがいいのかとか、紹介会社から採ったほうがいいのか、スカウトがいいのか、リファラルがいいのかっていうのを見直していくようなところで使われたり。

配置も、どの部署に配属された人が成長速度や定着率が高いかっていうのを考えて、もう人を使い潰すような部署には配属しないようにしようとか、あるいは性格の相性を見て、配置をするところもどんどん増えてきていると思います。

新卒で3年以内に辞める人は34.9パーセント

育成で言うと、この研修を受けた人は、その後の評価とかエンゲージメントがどう変わったか。研修の評価ってなかなか昔から難しいと言われていますけど、それを見ることによって研修を続けるとか止めるとか中身を変えるとかっていう判断につなげていく。

あと定着。新卒で3年以内に辞める人は、最新の数字で言うと34.9パーセント、この15年で一番高いという状況になっています。早期離職に苦しんでおられる会社さんとかあると思うんですけど、そういう早期退職をする人たちに共通するようなパターンはあるのかと。

先ほど見たような適性検査のデータとか残業のパターンとかですね。評価、異動、上司との相性とか、文化との相性とかですね。こういったものをできるだけデータで可視化することによって、似た状況の人に早めにケア、配置転換を行ったり。

あるいは極端な言い方で言うと、そういう人はあんまり採らないようにする。こんな感じで使われているというのが今の実態ではないかなと思います。

目的は「精度の向上」や「効率化」にとどまらない

目的は、大きく分けると2つあると思っています。1つは、データドリブンな人事、ピープルアナリティクスによって人事判断をすることによって、人間はバイアスがかかるので不正確だってありましたよね。より正確に、かつ人の手を借りないってことは、特にPC、コンピューターでやるっていうことですから、スピードもめちゃくちゃ速いわけですね。

例えば1万人の面接をやるとすると、何百人と動員して1ヶ月ぐらいかかったりします。ところがAI面接をやったら、下手すると1日で終わります。もちろんその後の作業はいろいろあると思うんですけど。

そのような正確性と効率化を求めて、このピープル・アナリティクスとかデータ、AIを使った人事をやっていくというのが、あるわけなんです。もう1つの側面というのも期待されていますね。

何かというと真実の発見です。つまり人間のやれていることを単にオートメーション化するのは、正確性とか効率化っていうことなんですけど、要は人間ではよくわからないこと、意外な事実みたいなものを、データを使うことによって発見するんです。

さっき見ていただいた「素直な人がいい」と思っていたのに、実は素直な人は、ローパフォーマーもしくは早期退職者に近いということって、真実の発見ですよね。そういう人間が気づきもしなかったこと、意外なことがこのデータドリブンな人事をやることによって出てくるっていうことなんです。

この2つの方向性が、データドリブン人事、ピープルアナリティクスの期待されていることなんじゃないかと思います。

正確性&効率化の事例

この正確性と効率化の事例は最初の頃のデータで言うと2017年、かれこれ10年前ぐらいになりますけど、ソフトバンクさんの例っていうのが記憶にありますよね。

IBMのこれは「IBM Watson」というAIを使って、エントリーシートを自動で読み込ませると、人事担当者のデータ、評価データっていうのを教師データとして、それを代理で「Watson」でできるようにしてやると。

当然落とすっていう作業は、後でも出てきますけど、人にものすごく影響を与えるようなことをコンピューターに全部任しちゃいけないみたいな倫理的なコードがあったりします。

あげる場合、AIが「OK」って言ったらそのまま面接。AIが「ダメ」って言ったら人の目で一応見てチェックして、最終判断を人がするみたいな感じでしたけど、まさにこれは正確性と効率化の好事例、最初の例ではないかなと思います。

真実の発見の事例

(スライドを示して)真実の発見の事例っていうのは、先ほども見ましたけど、例えば適性検査を行って、これ、クラスター分析っていう、似たような人たちを群に分けていくような分析なんですけど。例えばそれを全社員に行って、こういうふうに、どういうパターンに分かれるかっていうのを見てですね。

先ほど言ったように、この1群、2群、3群、4群の中で、ハイパフォーマーはどれぐらい含まれているのかとか。ローパフォーマーはどれぐらいなのかって見ることによって、例えば職種別だったり事業別だったり、中途新卒だったり。管理職メンバーで、どういうタイプがうまくいっていて、うまくいっていないのか。

あるいは組み合わせを考えたりとかしながら、「このタイプとこのタイプの上司部下の関係っていうのはあんまりよくないよね」とか「いいよね」みたいな感じで見ていく。これが真実の発見で使うような典型的なパターンかなと思います。

この2つを、目的に使っていくっていうのが、今後進展していくんじゃないかと思われているということです。ここまでは、データドリブンな人事、ピープルアナリティクスっていうのがいかにすばらしいかというか、どういう価値があるのかっていうところばっかり言ってきたわけなんですけど。

ここからは、どんな落とし穴があるのかっていうことを一緒に考えていきたいと思っています。

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