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「勘と経験」から「データドリブン」な人事に移行するための乗り越えるべき論点(全3記事)

「真面目で素直な人」を採用したら、ローパフォーマーだった…… 採用基準が「けっこう間違っている」理由 [2/2]


人間の主観とデータにはズレがある

今言っただけじゃないですが、このようにもっとたくさんバイアスはあるんですけど、こういったものに、我々はまみれているわけですね。当然これは別に悪いことではなくて、なんでこんなことが起こっているかっていうと、すべてバイアスなしで物事を決めていこうとすると、一つひとつの判断に時間がかかりすぎるんですね。

このバイアスっていうのは、当然間違うこともあるんですけど、多くの場合はたいてい合っています。だいたいのラグビー部の主将はリーダーシップがある。「そりゃそうだよね」みたいな感じで。完璧じゃないし、間違っている場合もあるんだけど、たいてい合っているので、日頃はそれでいいです。

ただ、人事評価とか採用とか、配置とか昇格とか、ものすごくその人の人生に影響を与える、あるいは組織にも影響を与えるような状況で、だいたい7割ぐらいは合っているだろうというので、決めちゃダメです。残りの3割である可能性だってぜんぜんあるわけですよね。

ということで、その人の目だけではなくて、データドリブンの判断を補完させるかたちで使っていこうというのが、現在のデータドリブンな人事が、盛り上がってきた背景にあるのではないかなと思います。

実際、この人間の主観とデータには、かなりズレがあるっていうのは、もうあるあるです。
私、別に学者じゃないんで学術的な何かを出せるわけではないですけど、いろいろな会社でそういう主観とデータの突き合わせみたいなことをやっているわけですね。

例えば、(スライドを示して)細かいデータで申し訳ないんですけど、ある会社で、この右側に詳細ってありますけど、どんな人がうちには向いているのかっていうのをこうやってブレストしたんですね。言ってみれば人間の主観です。

偉い人、できる人を集めて、私たちがファシリテーションを行って「どういう人がいいんだろうね」みたいなことを、みなさんで話し合っていただいて、それをまとめたものです。

採用時の基準はけっこう間違っている

その会社は、例のリクルートのSPIっていう、適性検査、性格検査をやっていました。「このブレストで出てきた主観的な話と対応するようなSPIの尺度ってなんだろう」ということも話し合いまして「これだね」と。

小さくて申し訳ないんですけど、HP合致度っていうのがそこで、実際にハイパフォーマーが、その特徴になっているのかとか、非合致度はローパフォーマーの特徴にはなっていないだろうねと。

早期退職度っていうのは、「早期退職者の特徴じゃないよね」みたいなことをちゃんと見たものがこれです。何かっていうのは簡単に言うと、○っていうのは、確かに主観とデータが合っていましたってやつなんですね。

△っていうのはあんま関係なかったと。例えばここに親和力とかかわいげ。SPIで言うと「社会的内向性が低い」みたいなものに近いという話だったんです。それは好き嫌いって言われたら仕方ないんですけど、別にハイパフォーマーとかローパフォーマーとか早期退職者を見分けるデータではなかったっていうことですね。

「真面目で素直な人」を選んだ結果、ローパフォーマーだった……

まだこれならマシなんですけど、この逆のとこ、「素直なやつとか真面目なやつが欲しい」みたいな感じでその会社さんは言っていたんですね。SPIの対応する尺度でいうと、この従順性っていうものがそれに当たるわけですけど。

なんと、その「素直な人、真面目な人がいい」って言っていたんですが、その特徴である「従順性が高い」っていうのはローパフォーマーの特徴だったりとか早期退職者の特徴だったっていうことですね。

要は採用時の基準っていうのはけっこう間違っています。あえてローパフォーマーになるような人とか早く辞めてしまうような人を、好んで採っていたっていうことが発見されて、けっこう大騒ぎになったことがあるわけです。

ですから、先ほど見ていただいた心理バイアスがあることによって、こういう人間の主観と、客観的なデータっていうのは、ズレがある場合が多いので、人事判断をする時には「多面的に見ていきましょう」ということになります。

実際これは右下に出所を書いていますけど、各種の評価方法の精度を研究したものです。

例えば認知的能力テスト。これは適性検査の能力試験みたいなものです。構造化面接っていうのは超マニュアル化面接。非構造化面接っていうのは、これが一般的な面接ですね。構造化面接ってほとんどやっているところがないので、みなさんがやっている面接はこの非構造化面接だと普通は考えていいと思います。

ワークサンプルっていうのは、実際にやる仕事を実際にやらせてみる。インターンシップみたいなものです。職務に関する知識テストっていうのは、これはそのとおり。シチュエーショナル・ジャッジメントっていうのは、ケーススタディ。アセスメントセンターっていうのは、(スライド内の)上にあるやつを混ぜたものです。

見ていただくと妥当性係数、これが高いほうが精度が高いということなんですけど、一番高いのはワークサンプル、入ってからやる仕事をやらせてみるってやつですよね。当たり前かもしれませんが、これが高かったら入社後も高い、評価も高い。なんとこの面接(非構造化面接)って(妥当性係数が)一番低いんですね。

当然ながら、認知的能力テストみたいなところは、見てみると、実は意外と構造化面接とほぼ同じ。ワークサンプルと、並ぶぐらい妥当性が高いです。こういったところから、実は人間が物を見る、あるいは人を判断するよりも、適性検査などの客観的な検査によって、見るほうが精度が高いこともあるというのが常識になってきたということなんです。

人的資本経営が可視化を推し進める

さらに、これを推し進めているのが人的資本経営ですね。要は人的資本っていうのは、その他のこういう固定資産とか技術とか、その人事的な側面っていうのは、バランスシート(貸借対照表)に載るようなものじゃなかったわけですね。

本来企業の資産っていっぱいある中で、人的資産って、特に最近どんどん知的な仕事になってきている、事業になってきている世の中においてはすごい大事なものです。人的資本というのは大事なものになってきている割には、つまりその会社が良い会社なのかダメな会社なのかっていうのを分ける上で、人の価値っていうのはすごく大事だと。

なのに株主とか投資家が、その株を買おうとする時に、「何見たらわかるの」っていうことで、「ちゃんとそれを数字で可視化しましょう」と言っているわけですよね。

つまり可視化っていうのが数値化・データ化っていうことですね。だから「うちの会社は、けっこう人に対しては力を入れて、がんばっているんですよ」と。

「うちの人的資本は高いんですよ」っていうことを、人事であったり経営が、証明しなきゃいけなくなってきています。こういったことが、データドリブンの人事を推し進める、可視化を進める1つの背景にもあるのかなと思います。

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