【3行要約】
・成長を渇望する若手社員と、育成しているつもりの管理職。その認識には深刻な乖離が生じています。
・PDCAの学校の宮地尚貴氏は、管理職の4割が部下から「放置されている」と思われている現状を挙げ、旧来の背中を見る教育の限界を指摘します。
・「研修だけでは人は育たない」という不都合な真実に向き合い、仕事を通じた経験の質を最大化させるために組織は何をすべきなのでしょうか。
管理職育成が企業の命運を分ける時代
宮地尚貴氏:本日は管理職研修の説明会ということで、弊社の行っている管理職研修が、主にどんな内容なのかをお伝えさせていただく回でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

今、管理職育成はいろいろな企業さまでテーマになっていると思います。最近ですと、例えば(経済産業省・中小企業庁が推進する)「100億円宣言企業」の会社さまとよくお取引させていただくのですが、会社の規模が大きくなっていけばいくほど、管理職がしっかりと役割や責任を果たしていかないと統制が取れなくなってしまったり、次世代の管理職やリーダーが育ってこないというお悩みを多くうかがいます。
では、主な内容なのですが、いきなり冒頭から弊社の研修の説明会をさせていただくというよりは、データから読み解く職場の実態・課題や、今の若手はどういう不満を持っているのかだとか。
まずはそういった部分からお伝えをさせていただき、その上で人を育てていく、要は人材育成がしっかりと回っている文化ってどういうふうに構築していけばいいのか。PDCAの学校ではどんな取り組みを行っているのか。といった段階を踏んでお伝えできればなと思っております。
もちろん弊社での育成の取り組みもお伝えさせていただきはするんですけども、社内で活用できる施策などもお伝えできればなと思っております。
若手社員が切望する「自らの成長」と管理職の役割
さっそくなのですが、まずはデータから読み解く職場の課題・実態ですね。管理職の責任によく挙げられるのが人材育成です。
人材育成と業績の責任と部下の保護管理責任。もちろん企業さまによって異なる部分はあるとは思うんですけども、だいたいこの3つが一般的なマネージャーの仕事としてあり、役割責任の中で人材育成は必ず入ってくるのかなと思っております。
代表的なところで言うと、やはり若手育成ですね。管理職は今の若手を引き上げていかないといけないというのがテーマになっております。
じゃあその若手はどういうニーズを持っているのかを、管理職の方々がしっかりと把握していないと、お門違いなマネジメントになってしまう可能性がある。というところで、まずは若年層のニーズをお伝えできればなと思っております。
少し前ぐらいから言われているのが、働く価値観が変わってきております。新人・若年層のニーズとして挙げられますのが「自らの成長が期待できる会社に入社をしたい」。
これが何のデータなのかと言いますと、「就職先を確定する際に決め手になった項目は何ですか?」と新入社員に問いました。「自らの成長が期待できる会社に入社をしたい」(という回答が多い)。
2020年のデータですけども、なんとこのぐらいからずっと高いんですよね。今の若手の方々を見ていると成長意欲を感じることができると。
データで露呈する「育成ができているつもり」の管理職
じゃあ、その成長を後押しできているのか。いわゆるキャリア開発みたいなところができているのかと言いますと、こちらのデータも見ていただければなと思っております。
管理職が「行動が取れていない」と思う割合ですね。いろいろ下に業務内容が書いてあります。「公平・公正な業務執行に対する組織意識の向上」とか「コスト意識を重視した業務運営や改善・改革」「ワークライフバランス意識の浸透や多様な人材活用」「部下のキャリア形成や人材育成に対する支援」。
これらの挙げさせていただいた項目を管理職自身はできていると思っていますか、というのが赤色のグラフですね。青色のグラフは何なのかと言いますと、「自分の上司はこれができていないと思います」というのを一般社員に回答していただいたデータです。これは内閣府のデータでございます。

見ていただきますと、管理職自身に質問させていただいたものですね。「管理職として、この行動ができていないと思うものはどれですか?」。一番数字が高いのが、やはり「部下のキャリア形成や人材育成に対する支援」ができていないと。
ですので、部下育成ができていないという管理職の方々は多くいらっしゃるのかなと思っています。もしくは、やってはいるけれども育たないとか、そういった感情を抱いている方々が多いのかなと。
そして青色のグラフを見ていただきたいなと思っています。中でも一番高いのが同じなんですよね。「部下のキャリア形成や人材育成に対する支援」ができていない。ですので、若年層は「自分の上司は育ててくれません」と思っている可能性があるというのが、こちらのデータからわかります。
管理職と部下の間に横たわる認識のギャップ
1つ怖いなと感じておりますのが、赤色のデータで言うと25.4パーセントの管理職の方が「部下育成に課題がある」と回答されています。ただ一般社員からすると、42.4パーセントの方が「自分の上司、人材育成は正直何もしてないですよ」「放任されてますよ」と回答されています。
なので17パーセントぐらいの管理職の方が、自分はできていると(思っている)。ただ部下からすると、できていないと思われているという、少し残念な状態に至っていると考察できます。
なので育てていると思っている、これでいいと思っている状態だと、解決のしようがないんですね。周囲からフィードバックをされるほかない。なので管理職に全部一任していては育たない、管理職としての役割を全うしてくれていない可能性がある、というところも言えるのではないかなと思っております。
ですので成長意欲のある新入社員・若手も、入社をしてみるとこういった不満が多いんですね。「フィードバックがない」「キャリアプランが見えない」「OJT研修で仕事のやり方がわからない」。要は「背中を見て学べ」というような教育だということですね。
あとは「残業時間が長い」「上司と合わない」と、だいたいこういった悩みが毎年、弊社の新入社員研修を行わせていただいていても悩みとして挙がってきます。
「成長できる環境」の整備が採用と定着のカギ
新人・若年層のニーズに少し戻らせていただきますけども、「自分の成長が期待できる会社に入りたい」という言葉だけを鵜呑みにしてしまうと、要は自分で勉強してとか、環境だとかはいったん置いておいて「自分でできる範囲でなんとか登っていくぞ」という方が多いのかなと思いきや。
この不満だとかを見ていると「キャリアを見せてほしい」「フィードバックが欲しい」。なので「成長できる環境に入りたい」というニーズが、今すごく増えているところなのかなと思っております。

やはりキャリア開発をテーマとされている企業さまが多いのかなと思っておりますし、ISOの人的資本みたいなところを取得されている企業さまもすごく増えている印象がございます。
やはり人材育成はけっこう注力をしていかないと、新しい人材の確保が困難になっていきますし、社内である程度は育てられる状態を作っていかないと次のリーダーが台頭してこない。
そういうところが企業さまの悩みの種として挙がってきますので、もうご理解いただいているとは思うんですけども、中長期的に必ず取り組んだほうがいい課題なのかなと思っております。
指導方法を知らない管理職が抱える「育成の停滞」
ここまでをまとめさせていただきますと、若手は成長したいと(思っている)。ただ、管理職側が放置している、指導が行き届いていないと思われている。結果的に若手の活動力も高まっていないがゆえに、次のリーダーが育たない。
中には管理職層も(管理職としての仕事のやり方を)教わったことがないですし、管理職になってから「何をしたらいいのか? 10年前に自分の上司だった人を真似てみよう」とか。
そこでうまくいくこともあれば「新しくこっちもやらないといけないのか」「最近はハラスメントに気を配らないといけないのか」だとか、対応できていない管理職の方々も多くいらっしゃいます。もちろん中には知らないだけという方もいらっしゃるのかなと思っております。
成長につながる仕事の経験をどう最大化するか
では、次にお伝えさせていただきたいのが、どうやって人が育つ仕組みを整えていくのか。人が育つ職場環境チェックということで、まずは人材育成の領域において、何がきっかけで人は育っていくのかというところからお伝えできればなと思っております。
これは海外のデータですね。成長のインパクトというデータがございまして、「Learning in The Flow of Work」という、要は人は何がきっかけで伸びていくのかが、割合で分かれています。
(その結果が)10パーセントが研修。20パーセントが上司、お客さま、部下、後輩、先輩との携わりなので、周囲からのフィードバックによって伸びていく。あとはなんと、70パーセントが仕事の経験や体験によって伸びていくと言われております。

何が言いたいのかといいますと、例えば研修を導入したものの効果が出ない、効果を感じられていないという企業さまもすごく多いと思うんですね。
結論、研修では人が育たない。弊社が言う話ではないかもしれないのですが(笑)、こういったデータでも言えるところです。
属人化した育成を脱却し、経験と研修をリンクさせる
ですので着手しないといけないポイントといたしましては、仕事の経験と体験の質をいかに深くできるか、いかに良質なものにできるかを、会社としてしっかりと注力していかないといけないのかなと思っています。
他者との関わりが20パーセントもありますが、じゃあただ単に仕事の経験・体験だけ、OJTを勝手にやっておけばいいのか。そういうわけでもないのかなと思っています。人によって、伸びる時は仕事の経験・体験によって伸びていく。
ただなんとなく働いている方々もいらっしゃいますし、すごくいろんなところにアンテナを張りながら働いている方もいる。やはりアンテナを張りながら動いている方は、70パーセントの仕事の経験・体験の中でいろいろとキャッチアップできるものがありますので、どんどん伸びていく。
ですので伸びる人は伸びる、伸びない人は伸びない。属人化している会社さまの場合だと、ここが特に言えるのかなと思っています。
なので研修はまったくやらないでいいというわけではなく、仕事の経験・体験としっかりリンクする研修が必要だということです。他者との関わりも、現場でのフィードバックを密にやっていかないと、仕事の経験・体験の質が上がっていかないんですね。