【3行要約】・「手順書を整備する」「管理職がダブルチェックする」といった対策はよく使われますが、原因とひもづいていない場合、ミスの再発は止まりません。
・高松康平氏は、業務ミスの再発防止には“得意な対策”ではなく、行動・スキル・知識・マインドなど原因の種類に応じて打ち手を設計することが重要だと指摘します。
・対策は「実行できるか」「効果・コスト・時間に見合うか」を基準に絞り込み、現実的な運用まで落とし込むことが成果につながります。
前回の記事はこちら 「手順書を整備します」ではミスの再発を止められない
高松康平氏:なぜなぜ分析を成果や業務改善につなげるためのポイントの4つ目です。これも重要なポイントです。対策はいつも同じではなく、「原因に合わせて打つ」ということです。
業務ミスが起きると、業務改善の報告書などが上がってきますよね。ただ、それを見ていると「結局、対策がいつも同じではないか」と感じることがあります。もちろん同じ対策が悪いわけではありません。ただ、再発防止のためにいろいろ分析した結果なのに、「あれ、打ち手がいつも同じだな」となってしまうのは、あまり良い状態ではありません。
ではどうすればいいのか。答えはシンプルで、原因に合わせて対策を打つことです。なぜ問題が起きたのか、「なぜなぜ分析」を行ったのであれば、その原因に合わせた解決策を検討する必要があります。いろいろな原因が絡み合っているわけですから、その原因を直すための解決策を考え、具体的に何をやるのかを決める。つまり、原因に対応する打ち手を設計するということです。
ところが、よく出てくる対策があります。例えば「業務手順書を整備します」などです。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、「毎回その対策を言っていませんか」と思うこともあります。今回のミスが起きた原因と、その業務手順書は本当に関係していたのでしょうか。業務手順書を整備すれば許される、という発想になっていないでしょうか。
報告書としては見栄えがいいんですよね。「業務手順書を整備し、再発防止を図ります」と書くと、対策をしたように見える。ただ、もし以前にも同じ対策をしていてミスが起きているのであれば、それでは不十分です。
また、そもそも「なぜ業務手順書が整備されていなかったのか」という問いも必要です。令和の時代になっても手順書がなかったのはなぜなのか。そこまで踏み込む必要があります。
企業によって、この「得意な対策」は違います。手順書を整備するのが好きな会社もあれば、研修に落とし込む会社もあります。あるいは「風土づくり」「心理的安全性」といった言葉にまとめてしまう場合もあります。
しかし大切なのは、好きな対策に持っていくことではありません。起きた問題がなぜ発生したのか、その原因に合わせて対策を設計することです。
原因に合わせて打ち手を変えないと再発は止まらない
原因はいろいろあります。「行動、スキル、知識、マインド、ルール」、「体調、人間関係、環境、制度」などです。その中で、どの原因を直すのかを考える必要があります。

すべてを同時に直すのではなく、どこを重点的に直すのかを決める。そしてその原因の種類に合わせた打ち手を考えることが重要です。
例えば行動を変えたいのであれば、業務目標や評価の内容を見直すという方法があります。スキルを上げたいのであれば、基礎練習と実践を組み合わせる必要があります。体を使うスキルと頭を使うスキルでは鍛え方が違いますから、その基本的なセオリーを理解したうえで対策を考える必要があります。
知識を増やしたいのであれば、インプット学習や社内事例の共有が有効です。しかも、知識は一度の学習では定着しません。受験勉強の時に英単語帳を何度も繰り返して覚えた経験があると思います。企業でも同じで、知識は繰り返し学ぶことで定着します。
また、マインドに原因がある場合です。最近はコーチングが流行っていますが、コーチングは数ある手法の1つにすぎません。マインドを安定させるトレーニングを行う方法もありますし、そもそもマインドに依存しなくてもよいように習慣化するという方法もあります。なんでもかんでも1on1に持っていく必要はありません。
ルールが原因であれば、業務フローの見直しやマニュアルの作成が必要になります。体調が原因であれば、休息や産業医との面談などが考えられます。
人間関係に問題がある場合は、なぜ人間関係が悪くなっているのかを探る必要があります。権威関係が崩れているのかもしれませんし、価値観が合っていない可能性もあります。例えば「コストを重視するのか」「スピードを重視するのか」という価値観の違いが背景にあるかもしれません。心理的安全性も、人間関係の問題の一部として考えられます。
環境に原因がある場合は、環境整備やシステム導入、5S活動などが対策になります。制度が原因であれば、役割の見直しや社内ルールの改善、あるいは既存制度の活用方法を見直すことも考えられます。
このように、得意な対策に持っていくのではなく、原因の種類に合わせて打ち手を設計することが大切です。
対策がうまくいかない前提で打ち手を設計する
そして対策のアイデアを出す際には、少しひねった考え方をしてほしいと思います。

例えば、スキル不足が原因だったとします。素直に考えると「スキルを高めるための教育研修を実施する」という対策になります。もちろんそれも重要です。しかし、そこで一度立ち止まって考えてほしいのです。もしスキルが思ったように上がらなかったらどうするのか。
ミスは絶対に減らしたいわけです。「研修をやりましたが、うまくいきませんでした。だからまたミスが起きました」では困ります。ではどうするか。スキルが上がらない可能性も前提にして対策を考えます。例えば、そのスキルが不要になるように仕事の仕組みを変える、あるいは担当者を変えるという方法もあります。
つまり、素直に対策を考えるだけで終わるのではなく、それでもうまくいかなかった場合にどうするかまで考えるということです。このように、対策はいつも同じではなく、原因に合わせた打ち手を考えることが重要です。これが4つ目のポイントです。