【3行要約】• 日本企業のエンゲージメント向上が世界的に注目される中、実際は「完全な指示待ち」と「ほぼ指示待ち」の社員が42%を占める深刻な状況です。
• 製薬メーカーの事例では、成功報酬と失敗罰則を同時に導入した結果、社員の提案がゼロになり、野田稔氏は「信賞必罰」の思い込みが問題だと指摘。
• これからのAI時代には規則や書類作成ではなく価値創造が重要になるため、個人が会社を作る一員として目覚め、組織がそれを支える体制への転換が急務です。
本記事では、特に反響が多くあった同イベントの2記事目を再掲します。
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大野誠一氏(以下、大野):私個人は、まさに今、野田先生がまとめてくれたような変わらない状態に対して、本当に変わらなきゃいけないよねという1つのきっかけが、「人生100年時代」という時代の変化なのかなと思っています。
企業対企業の関係の中では、なかなか変わらなかったんだろうなということが、やはり個人と会社の関係が変わることをきっかけに変わっていくんじゃないかなと、ある種の期待を持って語ってきたと思いますが。そこの関係性を、野田さんはどう思われますか?
野田稔氏(以下、野田):まったくその通りなんだろうなと思います。しかも、これがまた悪いことに、誰か犯人がいれば簡単なんだけど、まさに共同幻想的にこうなっていったわけですよね。それは怖かったんだなと思います。ですが、冒頭にちょっと申し上げましたけど、私たちは被害者なんです。そう言うと、どこかに加害者がいるはずじゃないですか。でもね、これには加害者がいないんですよ。
というのは、我々は我々の首を自分たちで絞めた。すなわち被害者であり、実は我々は自分たちに対する加害者ですらあるんですね。そう認識をしないと、この問題は解けないと思うんですよ。ちょっとこんなことを言うと語弊があるけど、労働組合的に赤い旗を振って、「経営者が悪いんだ!」と言っていても何も変わらないと思いますね。
それぞれ一生懸命に働いているのに、なぜか閉塞感がある
大野:うん。そういう意味でも、まさに一人ひとりが作った会社の幻想にみんなが囚われていたことで、みんなが加害者でもあり被害者でもあるという感じになっちゃったんですかね。
野田:まず、そういう認識をしたほうが健全かなというところでしょうかね。犯人探しをしていても見つからないと思うんですよ(笑)。
大野:その幻想の部分を豊田(義博)さん、社会構成主義的なところから言うと、どうですか?
豊田義博氏(以下、豊田):野田さん、ありがとうございます。本当に野田さんの話を聞くにつけですけども。例えば企業の方と話をしても、最近でいうと「両利きの経営」とか、いろんなことを言っている。実は「そういうことをやろうじゃないか!」とちゃんと思っているし、やろうとしている。
けれど、それがぜんぜん回らない。それこそ誰かが「サボっている」とか、誰かが「能力がない」とか言うんですけど、決してそうではなくて。実はそれぞれが持ち場の中で一生懸命いろんなことをやるんだけど、結果的にすごく閉塞状態になっている。それは実は本当に思っていることと、やっていることの食い違いが起きているということだと思うんです。
多くの人たちが、「そうは言いながらなかなかできない」と思っている時に、本当はもっともっとやっていいことがあったりするはずなのに、それができないかのように、会社・組織・職場を眺めていたり、「そうは言っても無力だよな」と口をつぐんでしまったり。そんなことがすごく至るところで起きているような気がしています。
失敗を怖れてチャレンジできなくなる社内の仕組み
野田:すごく典型的な話があります。これはある製薬メーカーさんから頼まれた仕事だったんですが。今までも少しは出ていたんだけど、社員から新しい創薬のアイデアをいろいろ出したいので、そこをより加速させるために提案制度を作りました。「提案して、それがうまく薬として上市されて利益が出たら、それをその本人とかチームに還元することにしました」と言うんですね。「あ、いいじゃないですか」と。
ところが、その制度を入れたら、ちょっとは出ていた今までの自主的なアイデアがゼロになったというんですよ。それで「なんでですか? ちょっと調べてください」と言って聞いたら、確かに「うまくいったらご褒美」と書いてあるんですが、逆に「失敗したら罰を与える」とも書いてあるんですよ。
ご存じの通り、薬は千三つどころじゃないので、もっと確率が低い。しかも出来上がるまでに、だいたい15年とか20年かかるじゃないですか。ということは、ほぼほぼ100パーセント失敗するんですよ。めったに成功しない。しかも成功するのは、だいたい15年後ぐらいですから、大部分の人は会社人生がもう(定年で)終わっちゃっていたりするわけですよね。
でも、失敗はいつでもある。そうすると必ずそこで罰点をくらうということは、100パーセント罰点じゃないですか。だから誰も出せないんですよ。当たり前ですよね。なので、「この罰点を与えるのをやめればいいじゃないですか」と言ったんですね。そうしたら、「いやいやいや、信賞必罰って言うじゃないですか。だから失敗したら罰を与えなければバランスが取れない」と言うんですよ。
これは思い込みです。いいんですよ、罰なんか与えなくたって。加点でいいんです。なんの問題もないです。ところが、どうしてもその縛りから出た囚われの身なんですね。これは、古い常識が永続しちゃってるんですよ。これは、すごく不幸だった。でも結局そこは社長がわかってくださって、最後まで固執した人事部長さんは外れました。
でもやはり、人事部長さんも悪気はないんですよ。だけど、囚われているんですね。だから、こういうことがいろんなところで起こって、それが相対として閉塞感になっているわけですよね。これが今の状態だと思うんです。
大野:ありがとうございます。野田さん、そんな働く人の意識を、もう少し後半でご説明いただいていいですか? よろしくお願いします。
日本企業では「指示待ち」の人が42パーセント
野田:そうですね。じゃあ、もう少し続けたいと思います。実際に、従業員の意識調査をすると、やはり日本人の閉塞感というのは、かなり強烈なものがあるなと思っております。

Gallup社が行った職場の従業員意識調査でエンゲージしている人のパーセントを見ると、ご覧のとおりグローバルに比べると日本はかなり低いです。
ただ私は、その低さそのものに問題があるのではなくて、傾向値に問題があると思っています。逆に世界ではだんだん、人々のエンゲージメントを上げていこうじゃないかという施策もいろいろ行われているし、社員のWell-beingを真剣に考えることが、逆に会社にとっても、ものすごくメリットがある。
特に新しい価値を生むようなアクティビティに関しては、この幸せ度合いがめちゃめちゃ関係すると言われている。なので戦略的にそのエンゲージをさせるような、いわゆるOD、Organization Developmentが行われているんですね。ところが日本は、それは甘やかしであるというような考え方を、どうしても持ちがちになる。

その意識の違いは随分大きいと思っています。結果、どうなっちゃったかというと、状況はさらに悪くなってきております(笑)。「完全な指示待ち」と、「ほぼ指示待ち」を合わせると42パーセントという(笑)。どこが自主性やねんという、こういう状態にすでに日本企業は陥っている。
もうこうなった以上、抜本的に会社改革をしないと。少なくとも会社というものを、もっと言うと仕事というものに対する見え方・見せ方改革をしないと、どうにもならないと思っています。