【3行要約】
・部下を管理職に登用する際、一方的な「引き上げ」で部下を困惑させていませんか。成果を出すリーダーと、期待が空回りするリーダーの決定的な違いは「伴走」にあります。
・株式会社NOKIOOの古賀氏は、上司の役割は単なるアサインではなく「本人にとっての難所」を引き出し、共に歩むことだと語ります。
・古賀氏は形骸化したマネジメントの定義を「成果を生むあらゆる活動」へアップデートし、組織全体で挑戦を支える仕組みを構築することが効果的だと提言します。
前回の記事はこちら 上司に求められる「期待の伝達」と「適切なアサイン」
成瀬岳人氏(以下、成瀬):(管理職候補の登用を行う上司のほうにも課題があるという話を受けて)とはいえ「いや、上司支援をしなさいよ」という話で、古賀さん、ここはどう考えたらいいんですか?
古賀奈津紀氏(以下、古賀):はい、ありがとうございます。先ほどの左側の「能力がある」のところを企業にヒアリングすると、例えば係長クラスから管理職になった時に、てきめんに女性比率の数字がシュッと細くなるケースは、このバイアスの部分が強く効いてくるかなと思っています。

今回は女性管理職という話でお話ししておりますけれども、やはり長期では中核人材を意識的に作っていく視点で見ていく必要があるなと思っています。チャットでも「男女にかかわらないよね」というコメントがちょこちょこ出ています。
上司は最終的に登用を後押しする重要なキーパーソンだと考えた時に、やはり評価がついてこないと(候補者として)挙げようがないと思うんですよね。じゃあ、その評価につながるところをどう作っていくか、設計していくかということだと思っています。
もし挙げるとすればですけれども、大きく3つかな? 1つは、候補者をラインナップする前提として、「あなたに期待して、一緒にがんばっていきたいんだよ」というやり取りを本人としていますか? ですね。
一方的な「引き上げ」ではなく、対話と伴走から始める
古賀:ここで一方的に「あなたはもう候補者だ。引き上げるんだ」となると(笑)、受け手が「えっ?」と驚いてびっくりして終わってしまいます。だけど、そこで本人が抱える難しさとかをキャッチボールしながら、きちんと一緒にやっていくスタート地点が必要であるということ。
そこがあって初めて、次の段階として評価の前にアサインが必要になってきます。「サブ的な仕事をずっとしています」だと、たぶん上司も推したくても推せない状態になるので、やはり次に必要なのはアサインですね。ちゃんと重要な、限られた時間であっても業績とか成果にインパクトのある何らかの役割を担っていただくことが必要になってくる。
(その場合も)「じゃあ、これで任せたよ」ではなくて。次はやはり、それをなし得るように伴走していく必要があります。ここでも上司側もけっこう(仕事を)与えられて、「目指せ!」という感じでマネジメントされてきたケースが多いので(笑)、「支援と言われても、ちょっとイメージが湧かないな」とか。
あと、なんなら上司も別に育成だけをやっているわけじゃないので、忙しい限られた時間でどうやればいいのかが見えていない。もしくは意欲が高い一部の人だけがやっている状態になっているのかなと思っています。
伴走のコツは「本人にとっての難所」を引き出すこと
成瀬:なるほど。もう1個、深掘ってもいいですか?
古賀:はい。
成瀬:伴走という話があったと思うんですね。これは私の反省も述べながらですけど、私はけっこう期待をかけていました。「無茶ぶりの成瀬」と言われていたので、アサインもけっこうしております(笑)。
私は「制約から入らない」という主義を持っているので、成果と本人のキャリアイメージをちゃんと棚卸しして、制約が出てきたら、いったんそれは置いておいて、何がしたくて何をやらなきゃいけないかみたいな話で、「じゃあ、ここまではサポートするし一緒にやるからやってみよう」みたいな感じでアサインしてきたと思うんです。(だけど)「足りないよ」とよく言われてきたのが、この伴走支援なんですよ(笑)。
古賀:なるほど。
成瀬:任せるところまではやれているんですけど。これは、どうすればよかったんですか(笑)?
古賀:ケースにもよるので、もちろん1つ(の答え)で解決するものではないと思うんですけれども。1つは、難しい理由が人によって違うので、そこをちゃんと引き出していくのは大事かなと思っています。
計画立てて準備をして進めることが得意な方もいれば、逆にその領域は苦手だけど、人と話したり関係構築するのは得意だよみたいな方もいる。人によって、同じポジションをアサインされた時に難しいと感じる領域は違うので、「本人にとってはどうなのか」というところをきちんと押さえていくのは大事かなと思っていますね。
成瀬:どこを伴走してほしいのか、支援してほしいのかが人によって違うということですね。
古賀:そうです、そうです。
成瀬:すみませんでした(笑)。
現場の困りごとを組織でカバーする仕組み作り
古賀:いいえ。でも、この1、2、3を挙げましたけど、トータルで言えるのは、上司側も試行錯誤しているし、困っているということだと私は思っています。
成瀬:はい、そうですよね。わかってほしい(笑)。
古賀:なので、そこを組織としてどうカバーしていくかが大事です。私、まさに今週お客さまと話をしている時に、「そうなんだよ」と言っていただけた要素がありまして。上司向けの研修とかもやっていないわけではない。アンコンシャス・バイアスとか、対話の研修もしている企業が増えてきている。
それを実践とか実務にどうつなぎ込むかまで到達し切れていないケースが非常にあるので、「困っている」をカバーすることと、事業現場にどう組み込んでいくかを考えられると、より良くなるのかなと思っています。
成瀬:確かにね。これは研修とか人材育成をプランニングする側からすると、ちょっと耳が痛いかもしれませんね(笑)。
古賀:人事の方も、そこまでやり切るリソースがあるかというと、難しいところもあるかと思います。なので、理想論を掲げて大変にしたいということじゃなくて、一緒にやっていくヒントを見つけることで、この2番、3番も引き続きお聴きいただけるといいかなと思います。
成瀬:ありがとうございます。いいですね。上司に対しても企画側に対してもフォローがあるという(笑)。ありがとうございます。
マネジメントの定義を「成果を生むあらゆる活動」へアップデートする
成瀬:じゃあ、2点目にいきましょう。本人が自信をつけるための「機会設計」ということで。私はこの話を聞いた時に、「まぁ、そうだよな」とちょっと反省をしたので、教えてもらってもいいですか?
古賀:まずは、これは打ち手を一律で何かをやれば効くということではなくて。今は企業によって女性活躍のフェーズがいろいろとあるので、「どこを作っていく取り組みか」を最初に決めてステップを踏んでいくのがいいよ、ということでまとめたものになります。
じゃあ、トータルで何をやりたいかというところを補足させていただきます。先ほどマネジメントのイメージ、参加者のみなさんからもたくさん意見をいただいたなと思っています。やはりそこのアップデートを仕掛けていくのが、トータルとして共通しているところかなと思っています。

(スライドを示して)一番上に、「『管理職になってから育てる』『選抜して育てる』ではなく、管理職がキャリアの選択肢に入る人を計画的に増やす」というところはまさにそうで、役職がついている人がやるものとか、何でもできる人がやるもの、何でも決めて引っ張るものみたいな。そこ(の意識)を変えていかないと、成り手が増えない構造は変わらないということです。
NOKIOOがアプローチをさせていただく時に、取り組みの最初に参加者や上司のみなさんとも握るんですけれども、「マネジメントは役職じゃない。大変な仕事を分配しようということではなくて、成果を生み出すあらゆる活動ですよ」とお伝えするんですね。
なので、役職がついてからやるものじゃなくて、なんなら人と一緒に成果を出す活動をしている人であれば、意識をして実践できるものであるとお伝えする。そうすると、まずは女性社員のみなさんも(マネジメントは)ハードルが高いものというよりも、身近にあったり「自分は一部をやっているかも」と思えるものに変わっていきます。なので、ここを仕掛けていくことが(表の)全体で表現しているところだなと思っています。
当事者だけなく、上司を含めた支援の仕組みを回す
成瀬:なるほど。これを見た時に、もう1つ私が重要だなと感じたのが時間軸なんですよね。現場にいた身からすると、「来期に向けて必要だから、今(候補者を)挙げて」と言われるんです(笑)。
古賀:まぁ、そうですよね(笑)。私も「出して」と言う側の方々と一緒にやり取りをするので。そうすると、やはり「直近登用し得る人材は、どこに何人ぐらいいるんだ?」ということを知りたいので、その流れもめちゃめちゃわかります。
成瀬:コメントをいただきました。これ、マジで共感するんですけど(笑)、「自信を持たせるために任せて、『こうしなよ』『こうだよね』とかアドバイスをすると、『やはり私には無理です』みたいな(ことを言われてしまう)」(笑)。
古賀:(笑)。
成瀬:でも、さっき古賀さんがおっしゃっていた中で、確かにそれはあるかもと思ったのは、もう(マネジメント的な仕事を)やっているよという。
古賀:そうそう。
成瀬:やはり、このプロセスの中で意図的に作っていくんですか?
古賀:そうですね。何らかの取り組みをするんですけれども、NOKIOOが一番おすすめするのは、当事者だけではなく上司を組み込んだ設計にして、接点頻度を作って、「ちょっとでもいいので、変わったところをきちんと伝えてください」と。今日は構造の話がありましたけど、義務というよりも、それが回る学習設計の仕組みにしていくことは、かなり意識をしていますね。
変化は自分では気づきにくいからこそ、他者の視点が必要
成瀬:なるほどね、ありがとうございます。
古賀:やはり、変化って自分では気づきにくい。
成瀬:いやぁ、本当にそうなんですよね。しかも、そんなにすぐには出ないですからね。……もうね、チャットの中だけでライブが成立していますけど(笑)。
古賀:すごくアドバイスも出ていて。いいと思います。
成瀬:すでにいろいろとコメントが出ましたけど、ちょっとまとめましょうか。古賀さん、1つ目が、やはりマネジメントの定義を変える。
古賀:そうですね。そこはもう必須ですね。
成瀬:これは「うちの会社はこういうふうにするから」とかいう話じゃないんですよね。
古賀:そうです、そうです。よっぽど「力を入れるぞ」みたいな企業は、そもそもの管理職の要件を変えられるケースもなくはないんですけれども、それだと大仰になってしまうので。
こういった育成の場面で「チームで成果を出すあらゆる活動だよ」と発信していくだけでも、「あっ、違うイメージを持っていました」というお声はだいぶ出てくるなと思っています。
成瀬:なるほど。