【3行要約】・部下の成長を見守りたいが、つい手を出してしまう「待てない問題」は、多くのマネージャーが抱える共通の悩みです。
・仲山進也氏は、この問題は指導者の性格によるものではなく「制約条件の設計スキル」が原因だと指摘。
・学習者から失敗体験を奪う「失敗泥棒」を避け、やる気のない人材も自然と巻き込まれやすくなる「1対n対n」の関係構築が重要な解決策となります。
前回の記事はこちら 待てないのはお題がちゃんと設計できていないことが原因
仲山進也氏(以下、仲山):質疑応答タイムを取って終わろうかなと思います。疑問、質問などあったらください。
(スライドを示して)間違えてこのスライドを出しちゃったので、先に話してしまおうと思うんですけど、「待てない問題」の原因は、お題がちゃんと設計できていないからです。
お題がちゃんと設計できている、制約条件のチューニングをちゃんとできているなら、「学習者側が試行錯誤するのにこのぐらいの時間がかかるだろうな」ということは教える側で織り込み済みなわけなので、うまく進まないのを見ていてイライラするみたいなことは起こらなくて済むようになります。
なので、イライラして待てないのは、「まだ自分がお題を上手に作れていると思えていないこと」が原因になります。

他に聞きたいことはありますか?
(会場挙手)
どうぞ。
失敗する権利を守りながら上手に失敗させる方法
参加者1:今日はありがとうございました。あまり教えないで成長をさせるみたいなことを自分の中でもいろいろ考えてやろうとしている中に、僕が「失敗する権利」って勝手に名前を付けているものがあって。
要は、自分の部下とかチームメンバーとかに成長してもらいたいから、もちろん最短経路で行ってもらいたいっていうのはあるんですけど、個としての成長を得るためには、大けがはしないけど、転んでかすり傷をしちゃうぐらいの経験はさせたいなと思うんですけど。
これをビジネスの中でやろうとすると、けっこうコントロールが難しいっていうか、失敗する権利を守りながら失敗してもらうっていう設計がすごく難しくて……。うまいこと転ばせるためのお題の作り方みたいなところを……。
仲山:はい。制約条件を過度に言い過ぎると、要はマニュアルを渡すみたいなことになってしまいます。しかも、機械の操作マニュアルみたいなやつじゃなくて、接客の仕方をマニュアル的に記述したような、ベテランの人が見たら「別にこのやり方じゃなくてもよくない?」と思うようなものになりがちです。「新人に失敗させ過ぎないように」という配慮が表に出過ぎている時にそうなると思うんですけど、そういう感じにしたくないということですよね?
参加者1:そうです。そこを転んでも大けがしない程度の制約条件にした上で、「後は自由にやってください」っていうふうにして、転んでいたら「あぁ、転んでいるな」って思いながら見ていたらよいですか?
仲山:そうですね。「自分の想定の範囲内の転び方だな」ということを確認する感じですね。
参加者1:制約条件を付け過ぎると、転んでいるけど、学びにはなっていないみたいなこともあるじゃないですか?
仲山:フェアウェイにしかボールが行かないように、こっち側で先回りしてガードレールを作っちゃう感じですよね。ラフだったらぜんぜんOKなのに。僕もそれは「失敗泥棒」と呼んでいます。
参加者1:そうですね(笑)。
お題設計アプローチは「エコロジカル・アプローチ」を参考にしている
仲山:他にありますか?
(会場挙手)
参加者2:実はまだ書籍を読んでいなくて素人質問で恐縮なんですけど、お題設計アプローチはオリジナルなんですか?
仲山:エコロジカル・アプローチという運動学習理論があるんですけど、それを知って、「本当にそうだな」って興奮したんです。
僕が楽天大学を立ち上げて以来、「いいお題を作って渡すこと」はずっと実践してきて、「こういう理論があるってわかるとめっちゃインスパイアされるし、言語化が進む!」と思ってできたのがお題設計アプローチです。
僕は学者じゃないので、その理論を研究するわけではなく、「自分がやってきたことを別のかたちで言語化してくれている人がいる」と思って、参考にする感じです。
参加者2:ありがとうございます。
やる気のない人を行動させる「たき火の法則」
仲山:じゃあ最後に1個だけ。一番よく聞かれがちな、「やる気がない人はどうしたらいいんですか?」という話をして終わろうと思います。
質問ですが、たき火をする時に、湿った薪って投入するタイプですか?
(会場笑)
あんまりしないですよね。投入したら火を消しちゃったり、くすぶり始めて目が痛くなったりとかするから。
でもそのままほったらかしておくと、いつまで経っても使えないから乾かしますよね。乾いた薪でおこした火の近くに置いておいて、乾くと使えるようになる。
(薪であれば)こういうことをやると思うんですけど、人もそれでいいのではないかと思っていまして。湿った薪に火を付けようと努力して、燃えているほうが力尽きたら意味ないし。なので、まずは火が付いている人とか乾いている人だけで、火をちょっとずつ大きくしていきます。
「乾かす」とは何をすることかっていうと、熱量が届く状態を作ることです。燃えている活動をクローズドでやっていると熱が伝わっていかないから、やっていることをちゃんと発信をしていく、(つまりそれは)コミュニケーションを設計するっていうことだと思うんですけど。
そうすると、その熱量を受け取っているうちに乾いた人から「すみません、俺も入りたいんですけど」と手が挙がるようなことが起こっていきます。「なんか楽しそうでいいな」みたいな感じで、だんだん燃える人が増えていく。
そのために、「1対n対n」の関係を作っておくと、学習者の間で「自分と仲の良いやつが燃え始めた。俺もやってみよう」と、どんどんいい感じに燃え広がっていきやすくなります。それが「n対nの威力」です。これを「たき火の法則」と呼んでおります。

以上です。本当におしまい。ありがとうございました。
(会場拍手)