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髙桑由樹氏:「部下への影響力」って何なんだ? とか、どのように発揮されるのだろうか? ということを整理してみたいと思います。部下への影響力は大きく5種類あります。
上からいきますと「強制力」。これは、未達成の人に対して懲罰を与えることで促していくということですね。それができる権限です。「報酬力」というのは、達成した人に対して報酬を与えることで、より一層ストレッチを促していく力みたいなものですね。
「人事権」は、まさに昇格とか降格を決められるということ。これは部下に強い影響力を及ぼします。「専門性」は、その業務自体の優れた能力とか経験、スキルや知識といったものになります。
最後は「尊敬性」ですね。部下が上司に対して憧れていたり尊敬しているとなると、その上司の言葉を聞いたりしますし、そういった意味でやはり影響力の源になってきます。こういった5つの影響力があるわけですけども、この5つはさらに分類ができるんですね。
上の3つは「ポジションパワー」、立場がもたらす力です。なので、つまりは「あの人は人としてはあんまり尊敬できないけど、課長だから言うことを聞いとかないと」みたいな(笑)。これはポジションパワーですね。
ただ、やはりこれは諸刃の剣というか、脆い部分があって。その人が「課長」という立場を降りちゃうと、まったく(部下が)話を聞いてくれなくなる、みたいなものでもあります。なので、本当に影響力として強いものかというと、ちょっと脆さがあります。
ポジションパワーに頼っちゃいけないというのは、多くの方が理解されていると思います。ただ、これを盾としてマネジメントしている方がけっこう多いのも事実です。では、なんでこうなるんだろうか? ということを整理してみます。
管理業務を全うしようと意気込むと、「ちゃんとやらなくちゃ」「管理職たるものこうあるべき」みたいなことを意識する。そうすると、ポジションパワーが助長されるというのがメカニズムとしてあります。ここは意識しながら、あまりポジションに頼らないコミュニケーションを行っていくことが大事ですよね。
下半分の2つ(専門性・尊敬性)は「パーソナルパワー」ということで、本人自体の魅力になります。その仕事がよくできるとか、エースであったとか、第一人者であるみたいなこともそうですし、やはり「人としての尊敬」みたいなところになるわけです。
そもそも管理職をやっていく上で、尊敬性というのは非常に根底の部分となります。ただ、多くの管理職が「尊敬されないと」と思って、いい管理職であることや、耳ざわりのいい管理職であることを演じようとしている人が多いなと思っています。
そうすると部下への忖度をしてしまうとか、言うことを言えなくなってしまうということもあって、ここはなかなか取り扱いも難しいなと思っています。そうなってくると、今は管理職として管理業務をうまくできていない方々に尊敬性ばかりを求めていっても、なかなか突破口が開けないことがあるかと思います。
カギとなるのは専門性にあります。プレイヤーとして実績を残した人が、多くの会社で管理職に登用されていることを思うと、その専門性を活かしていくことが1つの大事な道になります。
多くの管理職の方々は、「管理職になったら部下を立てなくちゃいけない」ということで、それまでプレイヤーとして活躍していた部分をちょっと押し殺す、みたいなことも多々見受けられるんです。けれど、管理職としての立ち上がりでどこに突破口を見出すのかと言うと、専門性を活かしていくことが非常に有効です。
ただ、プレイヤー業務のノウハウをそのまま管理職になっても使い回していくとうまくいきません。私自身もその経験がありますので、身をもってそう思っています。実際にプレイヤーとしての専門性を管理業務に活かしていくには、ちょっとチューニングが必要なんですね。
ここで出てくるのが、「団体戦へのシフト」と「三人称視点へのシフト」になってきます。ということで、じゃあ実際に管理業務へ強みをシフトさせるにはどうしていくんだ? ということを見ていきたいと思います。
まず1つ目の「団体戦へのシフト」ですね。目指す姿としてはやはり団体戦ですので、上司と部下の連携がなされる状態です。ただ、これをやろうと思った時に陥る問題点としては、上司・部下が双方に遠慮して対話が滞る。
「連携しているようで、言いたいことをぜんぜん言えていなかった」みたいなことってありますね。ここを突破しなくちゃいけません。こうなってしまう原因はどこにあるんだと考えていくと、上司と部下がいる時に、どんな人であっても部下は上司の人に多少は遠慮します。
そうなると、上司が遠慮させてしまうところに問題があるわけですけれども、これは「管理職として管理業務を全うしよう」という思いや、「管理職らしくいなくちゃ」という部分が、上司と部下の間に壁を作ってしまっているところがあります。
なので、これを取っ払うための解決へのアクションですが、「立場抜きに部下と関われる管理職像」みたいなロールモデルを持つことが必要になります。
2つ目は、立場を差し置いた対話を実際にやっていくということですね。例えば多くの会社では1on1をしようということで、そういう時間を制度として設けている会社も増えてきています。ただ、実際問題は「何をしゃべればいいのだろうか?」みたいな(笑)。「時間はあるけれど……」ということをよく聞きます。
そういう時に、まったく(仕事の話とは)違う世間話をしていては意味がないんですけれど、「課長として」と「部下として」ではなくて、完全に肩書きを横に置いて仕事における問題を据えて、立場を差し置いた対話をしていくという使い方が1on1としても活きるのではないかと思います。
ちなみに、この「立場抜きに」みたいな話で言うと、50代以上の方々に多いかなと思うんですが、その方々はけっこう上からトップダウンで「ドン!」と、一方的なコミュニケーションを取る特性があるかと思います。
それはそれでリーダーシップのあり方ですが、団体戦をやっていこう、連携していかなくちゃとなると、「部長だから」といった考えは横に置いておくことが有効です。
続いて、今度は「三人称視点へのシフト」です。「三人称って何だ?」ということですが、先ほどのゲームの例でいくと、テレビの外側からコントローラーを持って、画面の中のキャラクターを動かす。つまり方向性を示すとか、指示を出すみたいなことですね。これが三人称視点であるかどうかになってきます。
「指示を出さなくちゃ」というふうにやっても、それがうまくいかない問題点としては、上司のアドバイスが部下にフィットしないことがよくあります。
この原因としては2つありまして、1つは「上司が自分の成功パターンを部下に当てはめてしまう」ことですね。適切なアドバイスになっていなかったということがあります。
あと、もう1つは「近視眼的すぎる」ことです。方向性を示すというのは、少し俯瞰して大きく進むべき道を示すことになりますが、あまりにも具体的な業務・タスクに目がいってしまうと近すぎて方向性にならない。
なので部下としても、アドバイスをもらったもののタスクでしかなくて、「あれをやったか? これをやったか?」という上司に対して、「やったんですけど、次はどうすればいいんですか?」という部下のように、指示待ち人間を生み出してしまうところはありますね。なので、やはり近視眼的にならないことが大事になってきます。
ということで解決へのアクションとしましては、1つ目の「管理職自身の成功パターンを部下に当てはめてしまう」というところで言うと、部下の見えている景色をちゃんと聞くことができるようにする必要があります。
あとは「近視眼的すぎる」で言うと、方向性を示すというのは目的地があって、現在地があって、これを結んで初めて方向性になります。そうすると、「今の目的地ってどこだったっけ?」「現在地ってどこだったっけ?」「じゃあどうする?」という思考回路を管理職の方々にインストールする必要があります。
プレイヤーとして強かった人は目の前のタスクをうまくこなしていくことが上手で、それこそ近視眼的で、少し引いて目的地や現在地を意識しなくても進んでいける人が多いなと思います。なので、(管理職としては)この視点をインストールすることが非常に大事です。
この解決へのアクションは、私自身も管理職になった時にすごく悩みました。これって管理職自身が自分の力で乗り越えられるものかというと、そうではないんじゃないかと思っています。やはりこれは、部長や会社として管理職に関わっていくことによって、高めていく必要があるなと思っています。会社として後押しするべきポイントですね。
ぜひこの辺りを管理職の方と、さらにその上の部長さんとで話し合ってトレーニングしていくようなことをやっていければ、もともと持っていた専門性を活かしていける突破口になってきます。
本日のまとめです。部下への影響力については、ポジションパワーに頼らずに、やはりパーソナルパワーが大事です。ただ「尊敬性で売り出していこう」みたいになると、逆に言いたいことが言えなくなって空回りしちゃうことがあります。
そこでプレイヤー時代に培ってきた専門性を、そのまま素直に突破口にしていくという視点。これが管理職を早く立ち上げていくポイントになると思っていますし、先ほどのようなアクションを実際に各社でやっていただければと思います。以上をもちまして、今回のセミナーを終わります。ありがとうございました。
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