【3行要約】・「目標を決めなければ」と焦るビジネスパーソンは多いですが、過度な計画志向が自分らしさを失わせる問題も指摘されています。
・AI、技術革新の加速により、小櫃翔真氏・門拓馬氏は「従来の仕事の定義が根底から覆される時代が来た」と警鐘を鳴らしています。
・自分の哲学を育て、失敗を「神回」と捉え直す姿勢こそが、変化の時代を生き抜く唯一の指針だと両氏は語ります。
前回の記事はこちら 最初に必要なのは目的地ではなくざっくりした方角
小櫃翔真氏(以下、小櫃):特徴なのかはわからないですけど、みなさん「決めなきゃ!」ってなってるじゃないですか。決まらなかったら「決まらない……」って不安になる。
でも本来、最初から細かく決める必要はないんですよね。みなさん、同じ船に乗っているわけなので、方角くらいのざっくりで十分なんです。人生は航海の旅で、航海士がいて、船長がいて、乗組員がいる。
最初に方角だけ決める人がいる。目的地って、そのあとについてくるだけなんですよ。1回達成したら「次はどこ行く?」となるわけで。別に1回決めても、更新すればいいし、変えてもいい。
子どもたちって、直感で「あれしたい」「これしたい」「はしゃぎたい」といって、そのとおりにやっているんですよね。あれが一番のお手本なんです。みんな、大人になりすぎちゃったんですよね。
門拓馬氏(以下、門):大人になりすぎちゃいましたね。
小櫃:自分も含めて。今、自分に言ってるので、めちゃくちゃ刺さっているんですけど。
門:マネジメントされすぎた感じですよね。今までそれが社会を作ってましたから。ルールが変わっているし、過渡期なので、そこを本当に理解したほうがいい。だから、技術革新を追ったほうがいいんですかね。
小櫃:うん。
技術革新は十数年で仕事をごっそり置き換えてきた
門:今までもずっとそうですから。例えば1900年とか、ニューヨークで車が出始めるまでは全部馬車だったんです。写真があるんですけど、1900年代の写真は全部馬車なんです。それがその10年後か15年後ぐらいには、T型フォードっていう最初の車……ルパンの車みたいなものに、全部置き換わった。
そのタイミングで、今まで馬を育てていた人、馬の運転手、馬車を作っていた人、馬車のメンテナンスをする人が、10年とか15年の間で一気に失職したんです。一撃必殺で本当にそうなる。
電話もそうですよね。電信って、ずーっとダダダダッと打っているじゃないですか。電話が出てきたことによって、電信を打つ人が一気に失職しました。それまでは正確に電信を打つ人がパフォーマンスが高い「お仕事ができる人」認定だったのに、「もう『もしもし』できちゃうから関係ないです」みたいな。
それと同じことが、今AIで起きている。思った以上に早く、バーンッと食べられると思うんですよ。
だから、自分が出せるパフォーマンスや、自分が出せる意味、やりたいことなどにもっと自分に素直になって、「本当に自分がやりたいことって何だろうな?」って(考える必要がある)。その中で問いながら言語化もしていく。どうせ答えは出ないので、やりながら。問いながら。
哲学があれば何かを失ってもまた立ち上がれる
小櫃:確かに、そうですね。技術を追っていくこともそうですけど、自分の中にあるものを掲げておくことで、1回何かがなくなるかもしれないけど、また立ち上がれるよね、というところですよね。
門:そうですね。『ONE PIECE』で例えてばかりで申し訳ないんですけど、ルフィって別に勝ちまくっているわけじゃない。けっこう負けている。負けるたびに、自分の中で問い直して「やっぱり海賊王になりたいんだよな」ってなるじゃないですか。だから、そういうのが大事なんだよなって。
それがセルフプロデュースだし、そういうのがないとメタ認知できない。自分の弱さをある程度把握できないと、派手に転ぶ。だから、自己研鑽とか、メタ認知の問い直しをしまくらないといけない。しまくった人が経営者や組織の上の人にならないと、要件が変わったら一気に指針を見失ってバンッと解散します。
フリーランス集団って、組織形態としては同じでも、上の人の方針ひとつで「みんなでガッと集まって仕事しよう」となると、バンッとフリーランスが抜ける事例があるじゃないですか。あれと一緒です。条件で集めると、結局そうなる。
今まさにそれが起きていて、生き方をシンプルにすればコストを下げられる、という事例が出てきているので、「お金が稼ぎやすい」とか、「衣食住がある」という条件で集めたところで逃げられる。「あ、いけるじゃん!」って思うから、事例として一度出ちゃうと、もう終わりなんですよね。だから良くも悪くも、僕はそういう事例を作りたいんです。
小櫃:一定いますもんね。
門:「こんなおもしろい生き方ができるじゃん!」っていう事例が1つできたら、みんな真似をする。みんな事例が欲しいだけだから、その事例を自分の言語で体現して話せる人についていくし、スーパー素直であることが、1周まわってめちゃくちゃ賢い。賢さの定義も変わっちゃいますね。
小櫃:そうですね。
失敗を神回に変えられる人に人はついていく
門:(スライドを示して)「失敗を神回と思う」って、めちゃくちゃいい言葉だなと思って持ってきたんですよ。「神回じゃない?」みたいな。ニコニコ動画を見ていた人は、よくわかると思うんですけど。アニメとかでもありますよね、神回。

さっきも言ったんですけど、平穏無事が何かと言ったら「無」です。みんな寝て、天井向いて……みたいな状態になる。もしそれを平穏無事と言うなら、僕はちょっとつまらないなと思っちゃう。僕はわがままな人間なので、「もうちょっとおもしろいことがあってもいいな」って思っちゃいます。
例え仕事がダメでクビになっても、今はたぶん生きていけるんですよ。まぁ僕はクビになったことがないから、ちょっとあれなんですけど(笑)。僕、新入社員で入った会社を3ヶ月で辞めていますからね。でも生きています。意外と生きられる。
SNSで「そんなことやったら死んじゃう」みたいなネガティブなタイムラインが流れますけど、あれもある意味演出なので、そこに引っ張られすぎる必要も、あまりないのかなと思っています。
小櫃:そうですね。
門:なので、みなさんには本当に、自分の言語を取り戻してほしい。自分の人生が応援されるかどうかって、本当に大事だなって思います。そういう人に人はついて行くんですよね。
みなさんの中でも、応援したくなる人、応援している人いますよね。それはどういう人かって、想像しやすいんじゃないかなと思うんです。
小櫃:「素直だなぁ」と思う人とか、全身全霊でがんばっている人とか。自分が憧れる要素があったり、共感できる要素があったり、いろいろあると思うんですよね。
そこを深く掘っていくと、自分が今まで積み上げてきた価値観から見ている憧れや、共感できるものなど、つながりがあると思います。シンプルに「自分が応援している人って、どんな人だろう?」って見てもらえたら、わかりやすいかなと思います。
「どんな人を応援したいか」にその人の哲学が表れる
門:本当に。小櫃さんは、どんな人を応援したいですか?
小櫃:おぉ……。
門:(笑)。
小櫃:これは先ほどの話とあえてつなげて言うんですけど、自分自身が自分の命に従っているというか。僕は燃え尽きたいんですよ。燃え尽きるような生き方をしたいので、燃え尽きるような生き方をしている人が、やはり好きなんです。
ただ、その「燃え尽きるような」って、僕の主観なんですよね。みなさんが思っている「燃え尽きるような」とは、違うと思います。
僕の中で「いいな」と思うのは、仕事を自分の好きなことでやれていて、しかもちゃんとバリバリがんばっている人です。さらに言うと、仕事だけじゃなくて、プライベートもきちんと充実させている人。
その「プライベートの充実」を、僕は一次産業のイメージで捉えているんですよね。例えば農業をやって、地域の人たちと関わりながら、食べ物や暮らしを循環させていく。そういう生き方って、物も心も両方が豊かな感じがするんです。
それを自分で体現して、周りにもいい影響を与えている人を見ると、「この人、人生をちゃんと生きてるな」というか「命をいい感じに使ってるな」と思うんですよね。
門:いやぁ本当に。結局、自分の信念とマッチしているという話なので、こういうふうに、自分で明確に「ついていきたい人」「応援したい人」を言えるかどうかなんですよね。小櫃さんの信念、価値観、哲学がそれなんですよね。
小櫃:そうですね。
門:言語って、自分の哲学の延長線上からしか出てこないので。
小櫃:めちゃくちゃいい感じに回収してもらった感じです。
門:(笑)。いや、本当に思っているんですよ。基本的に人は、自分の哲学の延長線上の人にしかついていきたくない。
メタ認知は自分だけでは完結しないから人が必要になる
門:だから今、見つかってなくても先ほど小櫃さんがおっしゃったように問いを持ち続けることで育てることが大事です。「私って、どんな意味を持ちたいんだっけ?」。もっと簡単に言うと、「何がしたいんだっけ?」。シンプルな問いだけど、答えは出ない。
でも、それによって自分が引っ張られる、みたいな感覚を習得できるとすごくいいと思います。これは僕の見解ですが、この習得には「メタ認知するしかないよね」と思っています。
小櫃:そうですね。おっしゃるとおりです。自分の顔って、自分では見られないじゃないですか。そういうことですよね。「メタ認知する」は、人に見てもらうとか、そういうところから始めていくもの。
門:そうなんですよ。「自分の顔を見たことがありますか?」と聞くと、「動画や鏡で見たことがあります」と屁理屈をこねる人がいるんですけど、「そうじゃねぇ!」って。
本当に加工されていない、真の自分の顔、もしくは自分の心臓ですよね。動いているのもわかるし、ここにあるのもわかるし、心拍数も何回か測っているから、「なんとなくこういうリズムで鼓動を打っているんだな」「どのぐらいの心拍数で動いています」ってことはわかる。でも、今この瞬間の状態は、わからないじゃないですか。
だから、わからないけど一生懸命に見にいく。これがメタ認知なんですよね。血液検査をするとか、心電図を測るとか、聴診器を当ててもらうとか。心臓の今の状態を見にいく。
これは外部環境の力を借りなきゃ難しい。外部環境なり、先人の知恵なり、先人のストーリーを辿るなり。物語を読むのも、すごく効果的だと思います。
理念が共有されると条件より先に人が集まる
門:そうやってメタ認知しながら、自分の哲学を育てる。育てていく中で「俺は海賊王になりたいんだ!」と。でも海賊王になるためには……「ちょっと1人じゃ無理だなぁ」みたいな。
小櫃:そうですね。
門:だから「手伝ってくれない? 条件はこうなんだけど……いい?」ってなる。それで「いいよ」ってついてきてくれているのが、『ONE PIECE』のクルーですよね。
小櫃:そうですね。
門:ゾロなんて、船がない時からついてきてるんですから。
小櫃:うん。確かに。
門:わけわからないですよね。普通じゃない。
小櫃:普通じゃないですね。
門:普通じゃないけど、ビジョンとか理念が一致しているから「行こう!」ってなる。そういうのは本当に大事だと思っています。応援したい人を辿っていくと、自分の理念にもつながったりする。そういう辿り方をするといいんじゃないかなと思います。