【3行要約】・AIの普及により従来の雇用関係が変化し、会社に所属する意味が問われる時代が到来しています。
・門拓馬氏は、AIが単純作業を代替し個人の選択肢が広がる中、多くの人が会社に意味づけを依存していると指摘。
・組織も個人も、資本的価値ではなく自分なりの意味や哲学を持ち、ワクワクを演出する力を身につけるべきです。
前回の記事はこちら AIが仕事の前提を変え個人の選択肢を広げていく
門拓馬氏(以下、門):次のページをお願いします。AIが出てきたことで、ここに大きなパラダイムシフトが起こっている。家庭の例で言うと自動化。皿洗い、洗濯物を干す。最近は畳むものも出てきたらしいですね。
小櫃翔真氏(以下、小櫃):おぉ(笑)。
門:すごいですよね。僕が世界で一番欲しかったもの(笑)。
小櫃:畳む派ですね。
門:畳む派なんですけど、畳むのって意外と時間がかかる。そういう単純作業をAIが持っていく。海外の事例だとわかりやすいですよね。知的労働が取って代わられて、大規模リストラが起こっている。

手作業の部分がいらなくなって、「コスト的にこっちのほうがいい」となる。日本は法律上ややこしいけど、流れとしてはそうなっている。戦い方が変わる。オープンワールド化するイメージです。
次のページをお願いします。だから「ギルド」や「船に乗る」みたいなイメージです。今までの就職は、福利厚生やお金の基準で選んでいた。僕もそうでした。でもAIの登場、副業、投資……。お金を留保する技術が個人に降りてきている。
今までそれが理由で組織に所属していて、組織も手作業に対価を払っていたのに、その関係値が消滅する。消滅した時に「会社に所属する意味って何ですか?」になる。
小櫃:急にね。
門:そう、急に。今までだってお金を得るために会社に所属していた。自分で仕事を作るのは大変、フリーランスはツライ、アルバイトは(給与が)低い。だから正社員のほうが効率が良かった。派遣との差が問題になる。
会社に所属する意味が問われる時代が始まっている
門:でも今後、派遣を好んで選ぶ人もぜんぜん出てくると思います。実際にいるらしいです。大学生の意識調査で、就職や出世にポジティブじゃないという結果が出ています。
「なんで?」と理由を聞くと、フリーランス的な働き方や、お金を留保するやり方など考えればいろいろあるから就職や出世に消極的になる人が増えた。企業側も人件費が一番かかるので手放したい。そこにAIが出てきた。「これはAIがやってくれるじゃん」がどんどん見つかっている。
AIはまだまだ弱小ですが、ASI(人工超知能)やAGI(汎用人工知能)が登場すれば、知的労働の領域は早い段階で、組織がAIによって回る状態になっていくと思います。
個人としては、「お金を稼げます」「留保できます」という状態になる。さらに先の未来では、AIが勝手にお金を稼ぐようになるかもしれない。そうなった時、みなさんは何を基準に会社を選びますか。というか、「会社に行きますか?」行きませんか? の2択です。
会社に行かなくなったら何をしますか。「えー、何しよう?」ってなる。意味を失う。会社に意味づけを頼っていたことが見えてくる。だから会社も、土地にズーンッとあるものではなく、船として、わけわからないところに行く集団のほうが選ばれる。
今の若い人は「チャレンジしたい」と外に目が向く。若い人に選ばれる会社じゃないといけない。選ばれる組織じゃないといけない。若い人は自由性、経験、成長、発展性、価値観を育てることを大事にしている印象です。
だから本当に、選ばれる組織じゃないと、「従来型の組織は無理ゲーじゃね?」と思っている。ここまででコメントはありますか?
会社の役割に埋没すると都合のいい人になってしまう
小櫃:みなさんはどうですか? 会社員の方もいると思うし、働いてた方もいると思うし、独立されている方もいる。いろいろ状況があると思うんですけど、今のお話は、なんとなく感じているところがあるんじゃないかなと思います。
「意味がなくなった場合、何をしますか?」と言われた時に「え、どうしよう……」と考えたと思うんです。どうですか? (リアクションを見て)「うん」「うん」って感じですね。
自分のことをわかっていたり、哲学とか、自分の中で何かを持っている人だと「え、何しようかな?」になる。この違いはけっこうあります。
門:本当に。(自分は)AIにすごくポジティブで、早く「全部やれよ」って思う(笑)。そしたら好きなことできるのにって。
小櫃:決まっちゃっている人はこうなるんですよ。
門:そう。
小櫃:一方で、会社という技術の中に仕組みとして入っている、手段として入っているとなった時は、「意味がある・ない」が見えてくる。僕も働いている時は、一生懸命に意味を探していたなと思います。
今は「一人ひとり何がしていきたいのか」を深掘りする仕事をしてますが、当時は、上司、社長、お客さまにいかに好かれるか。怒られてもめげずに立ち向かう自分であるか。役割をセットして向かっていました。
そうすると回る口コミは、「めちゃくちゃがんばってくれてる」「めちゃくちゃいい人」「話を聞いてくれる」「すごく考えてくれてる」になる。一見いいんですけど、「あなたって何がしたい人なんですか?」と、ふと言われる。これは独立した瞬間に言われたんですよ。
門:役割にハマって、役割の意味づけで生きていた人は「都合のいい人」になる。
小櫃:そういうことですね。ちょっと痛いですよね。
門:「都合のいい人」ってイヤだな(笑)。優しいけど本命じゃない、みたいな(笑)。
小櫃:ちょっとセカンド的な。
門:でもマジでそんな感じ。役割に規定される。
小櫃:そうですね。
意味を会社任せにすると引退後に一気に老け込む
門:なので本当に、会社に所属している人たちも、どこかお客さまみたいなところがある。会社に所属しながらも、会社にロールや意味を与えられているだけ。会社の目的・目標をそのまま自分の理念に、劣化コピーして無理やり入れている会社員の方が多かった。
引退したビジネスパーソンが一気に老ける、というのもそう。意味がはく奪される。意味って大事なんですよね。自分の中でどんな意味を持っておくか。今は会社に依存できなくなるから、自分で意味を持たないといけない。
小櫃:(スライドを見て)これ、すごい絵ですね。
門:でもこんな感じだと思うんですよね(笑)。給料分だけ働いて、「ヤバいな」と思ったら「契約外です」みたいに切り分ける感じ。
メタ認知ができていない人が多い。地方の中小企業の人が「今ぐらいでいい」と言っているのを見ると、「超やばくないですか?」と思う。AIが出てきて領域を食っていくのに「現状維持でいい」は衰退じゃないか。「ピーンチ!」。
これは個人でも起こっている。個人は降りるのが早い。まったりしているとやばくない? だから「言語を取り戻す」にもつながっていく。資本的な価値、お金的な価値で測ってきたパラメータがある。会社員の友だちに会うと「年収いくら?」って聞かれる。
小櫃:ちょっと寂しいですよね。
門:寂しい。正直に答えると「あぁ、そっか……」って言われるから答えないんですけど(笑)。その評価軸しかない。資本的な価値に評価を委ねるのは危険です。
一方で、「自分のバッファがどのくらいあればいいか」は把握しなきゃいけない。最低限把握した上で、「じゃあ自分にどんな意味が出せるか」。
これからは管理よりワクワクを演出する力が求められる
門:組織の上に立つ人たちも、「自分はどういう意味づけで生きているのか」「社会に対してどんなパフォーマンスを出すのか」を問い続け、その前提で組織をつくらなければならない。
そうでなければ、工場のように機能する組織ではなく、ただ漂う船のような組織になってしまう。それって、かなり難しいことですよね。
リモートが封印されたから「働き方が柔軟じゃない」と辞める人が出てくる。当たり前の現象が当たり前に起こっている。人が多くなくていいならAIに代替していくし、会社は大企業ほど取り入れるのが早い。大企業が早いと中小企業の仕事がなくなる。という構図です。次のページをお願いします。なので、マネジメントというスキルがなくなるんじゃないかなと(笑)。
小櫃:そこなんですね(笑)。
門:端的に言うと、マネジメントじゃなくて「ワクワクをいかに演出できるか」みたいにテンションを上げてくれる人にみんなついていくんじゃないかなと思っています。
小櫃:本当におっしゃるとおりだと思っています。中間管理やマネジメント職の時代は、「一人ひとりのプロデュースをどうやってやるか」という感覚でした。
1on1は機能としてあると思うんですけど、「関係性を近づけたほうが仲が良くなって、事業がうまく回るんじゃないか」という感覚の人は「最近どう?」から始めてしまう。話す側が、その人をプロデュースする観点で話せない。
そうじゃなくて「どういうことをしたいのか」「これまでどうしてきたのか」「これからどうしたいんだっけ?」を話さないといけません。
某金融会社さんも、それがボトルネックになっていたので、社長が「ゼロからぶっ壊して作り直すんだ!」と言って、全国の店舗のスタッフから支店長までを巻き込んで、1日8時間×1ヶ月みたいな会議体をやっていました。
門:やばい(笑)。
小櫃:でもそこに気づいた社長はすごいと思います。末端で動いている人たちには、もともと伝わっていないので「何を言ってるんだ」「お金をくれればいい」みたいになっている。だからビジョンを持つ、演出する、はまさにそう。「どうやって自分が演出されるか」という観点もある。意味もそうだし、何をしたいかを考えられるといい。
1on1は仲良くなる場ではなく内側を引き出す場である
門:管理ではなくプロデュースというスキルに変遷していく。マネジメントは「工場で、たくさんの人を同時に使うにはどうしたらいいか」というスキル。でも作業的なものがAIに流れると、一人ひとりのパフォーマンスはクリエイティビティにしかいかない。
「この人がいることでどんな価値が発揮されるか」は、その人にしか宿らない。それが新しいマネジメントスタイル。演出できるかのスキルはぜんぜん違う。スキルセットのし直しです。
小櫃:本当にそうですね。
門:これに気づいている人がどれくらいいるのか(笑)。
小櫃:どうですかね。
門:いまだに大企業のマネジメントの人は、「部下とどのように距離を近づけるか」みたいな(ことを言っている)。距離を近づけることに意味ないんだよなぁって。
小櫃:そうなんですよ(笑)。何かがズレていますね。
門:仲良くなる必要はない。「彼の内側に眠っている哲学は何だろう?」みたいにわかってあげることが大事。それがないと若い人はすぐ抜ける。
小櫃:目的がズレてしまっている。上司が「1on1で1日潰れちゃったよ」と言うけれど、目的が違うのに仲良くなるための1on1を組んで、時間が圧迫されて仕事ができない。どこにも何もない時間を過ごしている上司ほど、「俺めちゃくちゃ大変なんだよね」と言う。これはどうしたものか、とずっと思っています。
門:本当にそう。1on1も西洋的なもので、日本の土台に合わないところもある。日本は寄り合い文化で決めていた。元上司に「1on1が大変でさ」と言われて、「やめたらいいんじゃないですか? 意味ないですよ」「仲良くなったあとにどうするんですか?」と言ったことがあります(笑)。
小櫃:ネクストアクションを決めちゃうから、最初は機能した気分になるんです。でもそれは“なんちゃって”で、次に機能してなかった瞬間、「おい、お前何やってるんだよ!」となる。期待していたものに裏切られたから、両方にとっても良くない。仲良くなるためにやっていたつもりが、仲が悪くなってる、というのはめちゃくちゃあります。