【3行要約】 ・目標管理が「絵に描いた餅」になる原因は、人間の記憶の限界や管理職の属人化にあり、放置による若手の離職リスクも高まっています。
・TAKE A株式会社の木村翔氏は、年次の後追い評価から「継続的なパフォーマンス管理」へシフトする、未来志向で柔軟な目標調管理制度を紹介します。
・週次単位での「チェックイン(定点観測)」を会社のOSとして仕組み化し、記録に基づいた高頻度・低負荷な対話を回すことが組織の自走を促すと提言します。
前回の記事はこちら パフォーマンス全体を管理していく制度を紹介
司会者:杉山さま、ありがとうございました。次にTAKE A株式会社の代表取締役 木村さまよりお話をいただきます。それでは、よろしくお願いいたします。
木村翔氏(以下、木村):はい、よろしくお願いいたします。後半パートでは「制度を絵に描いた餅にしない」という観点で、私からは運用の仕組みについてお話しさせていただければと思っております。

まず簡単に自己紹介させていただければと思いますが、私はTAKE A株式会社を設立して、「働く人が活き活きした世の中をつくる」というミッションを掲げ、現在パフォーマンスマネジメントという事業領域を展開しております。

パフォーマンスマネジメントとは何かというと、シンプルに言えば「働く人が高いエンゲージメントで自走していけるような組織作りをしていく」という観点で、しっかりとパフォーマンスを管理していく領域です。
今日、杉山さまからもお話があった、パフォーマンス全体を管理していくというところがパフォーマンスマネジメント領域になってくるので、運用方法に関しては今日、具体のところもお話しできればと思っております。
もともとは広告会社にいて、執行役員として採用やマネジメント、人材戦略全般など、組織規模としては10人ぐらいのフェーズから100人ぐらいで、マネジメント基盤や制度設計にもがっつり関わってきています。なので、いろいろなフェーズでのご支援や、ノウハウもご提供できるかなと思っているので、今日はぜひ、そういった観点もお話しできればと思っております。
「目標制度が形骸化してしまう」という悩み
木村:後半パートの流れとしては、ざっくりと3点です。杉山さまからそもそもの制度設計という観点もあったと思うんですが、それを運用していく管理職や現場の方のところで、どうして(制度設計の)形骸化(が起きるのか)や、機能しなくなってしまうかという観点。そこの原因の理解が次の打ち手につながってくるので、まずはこの原因についてお話しできればと思います。

加えて世界の先進企業や、国内でも成長スタートアップで取り入れられている概念も簡単にご紹介させていただいて、最後に明日からみなさんにも活用いただけるような、具体的な管理方法・運用方法もお話しできればと思っております。
先ほど杉山さまから、上司の方が期中の管理をしっかりと把握していくところ、そもそもパフォーマンスという観点を評価していこうねという、いわゆるパフォーマンス全体を管理していくお話があったと思うんですが。その上で制度上に細かいフィードバックをしっかりと設けていくとなった時に、実際にみなさん、いかがでしょうか? 今、細かいフィードバックは現場で本当に回っていますでしょうか?
記憶ベースのフィードバックが生むデメリット
木村:ここのフィードバックの観点に関しては、みなさんの中で、構造的にさまざまな問題が非常に起きがちな部分もあるかなと思っています。まず1点目に関しては、そもそもの人間の記憶の限界という観点があると思います。2つ目は、目標と行動の断絶。3つ目が、管理基盤の属人化です。

適切なフィードバックや評価をしていく、期中の管理をマネージャーの方がしっかりとメンバーの状況を把握して、コミュニケーションを取っていく。それにあたって、なんだかんだ記憶ベースでコミュニケーションを取ってしまうと、そもそも人間の近接性バイアスというものがあり、鮮明に覚えられる期間が7日ほどしかないというデータも出ているような状況です。
だからこそ例えば半年間、1年間の評価・ふりかえりをする際に、記憶ベースでフィードバック・評価してしまうと、結局それは透明性も具体性もなく、納得感もないものになってしまう。当たり前のようなことかもしれないんですが、ちゃんと記録を残していくことがまず一番重要なところです。
目標管理のよくある失敗パターン
木村:2つ目は、目標と行動の断絶です。みなさんの環境もぜひ思い浮かべていただければと思うんですが、いかがでしょうか。目標の管理は人事や経営層から指定されたフォーマット、例えばタレントマネジメント、人事評価システムを使っているけども、期中の目標管理は完全に管理職の方任せ、管理職依存になっているケースは非常に多いのではないでしょうか。
なので結果的に、目標管理自体は人事の仕事だったり、「評価のため」という意識が根深くついてしまう部分かなと思っております。だからこそ目標と行動という日々のタスクをできる限り近づけられるかが非常に重要なので、今日はそこの運用の方法に関しても簡単にお話しさせていただきます。

3点目、管理基盤の属人化です。おそらく本日参加されているみなさんの中でも、プレイングマネージャーの方は非常に多いのではないでしょうか。やはり会社として「管理しろ」とは言っても、プレイングしながら忙しい中ですべて管理職任せ、現場任せになってしまう。結局、どうしても個人技に依存してしまうところがあります。
例えば忙しくてぜんぜん手が回っていない、フィードバックもできていない、期中の管理ができていない。こういったところも往々にして出てしまう部分だと思うので、この属人化状況は、まずは経営層の方や人事の方に「管理職の能力の問題ではない」と認識いただくのが一番重要かなと考えております。
管理職が忙しすぎてメンバーとのギャップが発生
木村:例えば忙しすぎる、そもそもメンバーとの対話時間が取れていない。対話やフィードバックが不足してしまうと、メンバーは貢献・成長実感も感じられなくなったり、キャリア不安、評価への不信をどんどん感じてしまう。それが離職につながってしまう。
特に今の若手世代だと、本当にリアルタイムのフィードバックを求めている。あとは転職の理由に関しても「成長実感」とか「キャリア安全性」という観点を重要視している方が非常に増えています。
だからこそ、ちゃんと期中に放置しないでコミュニケーションをとっていくところが一番重要な領域になってくる。そのため、まずは期中にコミュニケーションを取り、パフォーマンス全体をしっかりと記録していって、ちゃんとこまめに見られるような状態を作っていくことが、少なくとも離職を防いでいく観点としては非常に重要になります。
(スライドを示して)みなさんもご存知かもしれないですが、実は離職の損失も非常に大きな部分で、実は採用コストはこの10年で2倍ぐらいになっています。それ以外にも、1人が離職した時に、だいたい年収の100パーセントから200パーセントぐらいの損失が生まれているとも言われております。

だからこそ、人手不足やそもそも採用コストが上がっているような状況の中で、1人の離職も非常に大きな損失なので、まずはしっかり組織全体として、できる限りパフォーマンス全体を管理していく。そういう観点を意識していただくだけでも、より組織が自走して、よりメンバー自身も目標に向かって走っていけるような組織作りにつなげていただくことが可能かと考えております。
海外で注目される、短いスパンでのフィードバック
木村:その上でまずは、記録と接続と標準という観点です。本当に精神論ではなく、そもそも仕組みをしっかり整えていかないと、どうしても個人技に依存してしまって回らないような状態になってしまう。ぜひ今日はみなさんに、この3つの観点を覚えていただければと思っております。

(スライドを示して)では、具体的にどういう運用方法がトレンドなのか、直近で運用されているのかというお話をさせていただければと思うんですが。グローバルだとここ5年、10年で継続的なパフォーマンス管理がどんどん浸透していっている状況です。

何かと言うと、過去軸で半期もしくは1年経って「あなたの評価はこうでした」というフィードバックをするのではなくて、例えば1週間サイクルといった高頻度で、ちゃんと適宜フィードバックする。あとは定期的な更新、目標の管理をしっかり高頻度かつ低負荷で回していくような仕組みが、継続的なパフォーマンス管理のトレンドになっております。
人事評価は期初・期末に目標設定して会社全体のイベントとしてやっていると思うんですが。期中に関しては管理職ごとの管理になってしまっているところを、期中のフィードバックやコミュニケーションも会社のイベントとしてしっかり管理していこう、というのが継続的なパフォーマンス管理です。
変化の激しい世の中に対応できる制度が必要
木村:なので過去軸から、より未来思考にしていく。先ほど目標管理に関して柔軟性を持つ、一定変更できるようにするという話もあったかなと思うんですが、今だとVUCAの時代と言われているような中で、そもそも不確実性や変動性があったり、日々いろいろな世の中の変化がある状況です。
なので目標も、設定したものをそのまま遂行することが、会社として必ず達成したいKGIや会社の業績達成につながるとは限らない。あくまでも期初に立てたものが一番確率が高いとしても、それが期中でどんどん変わっていくことはあると思います。
組織がより確実に高いパフォーマンス、会社としての目標を達成していくというところで、柔軟な調整や、ちゃんと定期でチェックしていくことによって、何が問題なのか、どこを変えるべきなのかが検知できるようになる。
それだけでも大きく組織のパフォーマンス向上にもつながってくるので、継続的なパフォーマンス管理が、グローバルを含めて、国内でもメルカリさんだったりサイボウズさんとかでも、どんどん取り入れられているような概念・仕組みになっております。
成果だけでなく離職率などにも影響
木村:(スライドを示して)例えば具体的なところでいくと、AdobeさんやDeloitteさん、アクセンチュアさんとかでは、年次の評価はどちらかというと廃止の方向に持っていって、しっかりと週次単位でのチェックインというサイクル。

いわゆる定点観測や定期の更新を会社のOSとして整えられている企業はグローバルでもどんどん増えています。国内の成長企業、特にスタートアップでも、今はこの考え方・概念が取り入れられています。
結果的になぜポジティブな変化になってくるかはけっこうシンプルで、メンバー自身が目標に接触する回数が増えるのもそうですし、マネージャー自身もよりメンバーの状況を把握した上でフィードバック(できる)。そしてフィードバックの対話の質も上がってくる。そしてコミュニケーションの量も、メンバー状況を把握した中でちゃんと伴ってくる。
その中で具体的なフィードバックが行われたりすることによって、当然ながら目標の達成度だったり、エンゲージメントだったり、あとは離職率という観点にも影響してきます。これは本当にグローバル全体でも、さまざまな研究や事例でも証明されています。