【3行要約】
・チーム全体のパフォーマンス向上には上司の「任せるスキル」が欠かせませんが、適切な任せ方を知らない管理職が多いのが課題です。
・伊庭正康氏は、任せることは部下への「投資」であり、経験を通じた成長こそが人材育成の本質だと強調。
・上司は任せる際の5つの明確化を実践し、「信頼するが信用しない」姿勢で、部下に対して継続的なサポートを行っていきましょう。
“任せる”のが下手な上司が今スグやめるべき習慣
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。今日のテーマは「“任せる“のが下手な上司が今スグやめるべき習慣」についてお届けします。任せ上手になることは、良き上司になる大きな条件なんです。
(画面を示して)メニューはこちらです。まず1つ目は「任せるのは投資である」と別の動画でお伝えしていますので、今日ももう1度確認します。そして2つ目に「任せる際の原則」があります。5つ紹介しますので、任せ上手になるポイントを確認してください。
そして3つ目「丸投げと任せるの違い」。これには大きな違いがあるんですね。それを紹介します。そして4つ目が「部下を信頼しながらも、信用はしない方法がいい」という話をしていきます。「え? 信頼と信用、難しい」。大丈夫です。ここを押さえられれば、任せる方法はクリアになります。最後までお付き合いよろしくお願いします。
任せることは投資である
それではいきましょう。「任せるのは投資である」と別の動画でお伝えしています。任せることで部下は伸びます。教えることで伸びるのではないんですよ。教えたあと、任せることで、その経験によって伸びるわけですよね。ですから「どれだけの経験をしてもらえるか?」が1つのKPIといってもいいでしょう。どうでしょうか? どれだけの役割を部下に任せていますか?
任せるのが上司にとっては重要なことなんです。上司のプレイング業務、チーム業務で任せられるものがあったら、どんどん任せていきましょう。
人を動かす経験が特に大事という話と、「管理職になりたくない」という人と、「なりたいよ」という人に分かれるという話をしました。ポイントは「人を動かせる自信があるか・ないか」でした。
そして、その自信を養うためには「プレイングの時に、人を動かすリーダー的な練習をしていたかどうか?」ということが大事だという話もしました。だからこそです。
任せる際の原則1 期限の明確化
「任せた」はいいけれども、「いや、それは丸投げですよ」と思われることもよくあるんですよね。ですから、最初に任せる際の原則を5つ紹介します。
1つ目にいきましょう。「期限の明確化」。「いつまでにやってね」ということをちゃんと伝えること。意外と伝えていないことが多いんですよね。
例えば「キャンペーンの企画を考えてね」と言ったとしましょう。「販売計画を達成するためのキャンペーンを考えてね」と。(部下は)「わかりました!」と。
そこで「明後日に一度見たいんだけども可能?」「明後日ですか? はい」というふうに、期限が明確にしないと「あの件どうなった?」ということが起こるわけですよね。これは絶対にダメという話です。
任せる際の原則2 優先順位の明確化
2つ目、「優先順位の明確化」。これは、必要であれば絶対にやってあげてください。「明後日までにキャンペーンの企画を考えてほしい。今お願いしている〇〇の件は来週でもいいからさ」と、優先順位の調整をしてあげる必要があれば、きちんとしてあげてください。じゃないと、仕事がいっぱいいっぱいになっちゃいますよね。任せた結果、部下が苦しくなる。これは避けたいです。優先順位を明確化してあげてください。
任せる際の原則3 目的の明確化
そして3つ目、「目的の明確化」。「またやらされた!」と思われないためにも、「これは重要なことなんだよ」ということをお伝えしないといけない。「キャンペーンの企画を明後日までに考えてもらいたいんだけど、なんでかというとね……」というふうに、「なぜかというとね」という理由をしっかりと伝える。こういうことを言うことで、「タスクを任された」というよりも、ちゃんと必要な、重要な役割を任されたと思うわけですよね。
あまりよろしくない比喩ですが、私は以前の本でこんなことを書きました。映画とかに出てくるスナイパーっていますよね? ヒットマンです。ヒットマンに対して「よし、奴をやっつけてくれ」「わかりました。理由はありますか?」「いや、理由は言えない。とりあえずやっつけてくれ。いいからやっつけてくれ!」と。(そう言われたとしたら)怖くてできないですよね。
ところが「やっつけることが、この国を守るためには必要なんだ。なぜかというと……」「そうか。国のためか」ということですよね。人にお願いをする時って、大義名分がけっこう大事なんです。
任せる際の原則4 成果の明確化
そして4つ目と5つ目、一気にいっちゃいましょう。4つ目が「成果の明確化」。がんばるのではなく、「これをちゃんとやってくださいね」と(伝える)。
「キャンペーンの企画を明後日までに、この状態にしてくださいね」ということを伝えながら範囲の明確化をする。「この項目と、この項目と、この項目あたりを考えてもらった上で、プラス『これを入れたほうがいいかな』と思うことがあれば、ぜひお願いしたい。これと、これと、これは、マストで絶対入れてね」といったこと。
任せる際の原則5 範囲の明確化
あとはプラスαで「こういった要件があればなおさらいいよね」というふうに、ちゃんと範囲を明確にしておかないと、「せっかく考えたのに抜け漏れがある」なんてことになるんですね。
私もやられたことがあります。部下の時に、「伊庭くん、キャンペーンを考えてね」と言われて考えました。最高のものを持っていきました。(そしたら)「ごめん伊庭くん、そこはもう〇〇さんがやってくれてるの」と言われて、「言ってくれよ!」って思いました。
これはどちらが悪いんでしょうね? 私は部下として思いました。まぁ部下として確認しなかったことも悪かったなと思いましたけれども、上司からもやはり言ってほしかったなと思います。「あの何時間かを返してくれ」と思いました。なので、範囲をちゃんと明確にしておくこともけっこう大事です。
今、原則を1から5つ目まで書きました。さぁ、どうでしょうか? 当てはまっているもの、当てはまっていないものもあるかと思います。「ここを押さえておきましょう」という話です。
「丸投げ」になってしまっている時に欠落している3つのこと
じゃあ今度は「丸投げ」と「任せる」の違い。丸投げになっている時、3つのことが欠落しています。それを確認していきましょう。
では1つ目、「欠落1 進捗把握をしていない」。任せたあと放ったらかし。2つ目、「サポートが不足している」。任せたあと「もう任せているから」ということでノーサポート。この2つは要注意です。
私は偉そうに言ってますが、私自身が上司の時に失敗しております。部下から言われました。「伊庭さん、丸投げですよね」と言われました。ベテランの部下だったので、こちらからすると「いやいや、丸投げじゃないよ」「任せているんだから」と。「いやいや、伊庭さん。やはりサポートはほしいですよ」「え!」ということがありました。最初は「あなたほどの方が、私のサポートを必要としている」と驚きました。しているんですよ。
それは、上司と部下では役割が違うからですね。「環境を整えてほしい」とか「あの人にきちんとアサインを明確にしてほしい」とか、そういったことがあるわけです。進捗把握とサポートの欠如。意外と部下はデリケートなので、ご注意ください。
そして3つ目。先ほど任せる際の原則を5つお話ししました。これがどれか欠けていると、部下は「丸投げじゃん!」と思うこともよくあるのでご注意ください。期限が明確になっていない、優先順位が明確になっていない、目的がよくわからない、成果が曖昧、範囲が不明確。このあたりがあると「やりにくい!」という方もいらっしゃいます。ご注意ください。
丸投げにならないようにどうすればいいのか?
では最後に、丸投げにならないようにどうすればいいのか? 信用と信頼について、「ここが違いますよ」ということをお伝えしていきます。
部下を信頼しつつも信用はしない。これがポイントになります。信頼というのは、「部下はやるポテンシャルは持っている」という期待です。「あの部下は必ずここまではやってくれる」「部下が思っている以上に、彼は・彼女はここまでポテンシャルがある」というふうに、ポテンシャルに期待します。
一方で「信用はしない」なんですよ。必ず抜け漏れはある。だから、定期的な報告の機会を持つことが重要になります。私は最初の頃、これをやってなかったんですよ。だから「丸投げですね」って言われました。でも週に1回これをやるだけで、丸投げはなくなります。なぜか?
それは、進捗状況を報告してもらい、サポートの必要性があれば一緒に確認をして進めていけるようになるからです。定期的な報告を、1週間に1回程度持ちながらでもやってみることをおすすめします。
サポートがなければ計画から勝手に離脱していくだけ
私は前職でこんな経験をしました。「報告会ってやはりいいなぁ」と思いましたね。私は部下で、上司に報告をするという場は2週間に1回でした。
ある商売の事業の責任者をやっていた時に、2週間に1回、役員さんと経営企画の方が来られて、3人か4人ぐらいで打ち合わせをするんですよ。進捗どおりになっていないこともあるから、部下としてはちょっと苦しいこともありました。「進捗が遅れてます」という話をした時に、上司が言うわけですよね。「そうかそうか。で、要因は何?」と。「こういう要因です」「なるほどね。それに対して、伊庭はどうしようと思っている?」「次はこうしようと思っているんですけど、ただこれはちょっと不安があるんですよね」「そうか」と。
そこで経営企画の方がポロッと言ったりします。「でも伊庭さん、それってね……」と。「確かに。じゃあ、今度の2週間はその方向で、一度伊庭のほうで考えてもらっていい?」「わかりました!」と。
経営企画の方も「ちょっとサポートをしてもらっていい?」「わかりました!」。それで2週間後には新しいスタートが切れているんですね。
つまり、私は部下として、ポテンシャルはあるけど抜け漏れがある状態ですよね。部下にとって、定例ミーティングは進捗どおりに行ってないと、確かにちょっと苦しいんですよ。
でもね、サポートがほしいんです。サポートがなければ、完全に計画から離脱していくだけじゃないですか。なので、サポートは絶対に必要なんですね。そんなに心地の良いものばかりではありませんが、「それを通じて部下が成長するならば」と、あらためて私は実感したことがあります。
研修先でそういったお話を聞くと、やってらっしゃる上司の方は多いんですよね。だからやってなかったら、そういったことは必ずやっておいてください。