【3行要約】・PMへのキャリア転向は注目されているが、理想と現実のギャップや適性の見極めが課題となっています。
・SmartHRの松栄氏は、現在多くの企業が短期的な採用に偏りがちな中、3年先の組織図作成が重要だと語ります。
・マネージャーは「お試し期間」で適性を見極め、複数の候補者をパイプラインとして育成することを提案しています。
前回の記事はこちら 「意思決定がしたいから」というマインドではPMは難しい
横道稔氏(以下、横道):私も一言だけ。「プロダクトマネージャーって名乗りたいです」とか「名乗っていいですか?」みたいな話って、社内だとあると思うんです。これはもちろんいろいろ賛否あるのでいいんですが。
私としては、「名乗ったらいいじゃん。名乗ればいいじゃん」ってすごく思うスタンスなんですね。なんでかっていうと、期待できるようになるんですよ。
「プロダクトマネージャーっていう非常に難しいリーダーシップロールをやっているんだったら、これぐらいできないといけないよ。これもやらないといけないよ」みたいなことを期待しやすくなるんですよね。マネージャーって今の時代、やはりハードなことをやってもらうって、正直言うと見極めが難しいんですよ。
そこで躊躇するリミットをちょっと外せるっていうところもあるので、そういう大きな挑戦をしたい時にそれを言っておくことで、上司の期待マネジメントもできるっていうところはあるかなと思います。その分ちょっとハードになる覚悟は要るかなと思うんですけどね。
久津佑介氏(以下、久津):その時やはりロール(リーダーシップロール)の定義って会社によってぜんぜん違うかなと思っていて、「うちにおける、あるいは今におけるPMってこういう役割だよね」みたいなすり合わせはちゃんとやらなきゃいけないですよね。
横道:そうですね。それがないとお互い何を期待して、期待されたのがずれているっていうのは、大前提、あれですもんね。
松栄友希氏(以下、松栄):ちなみにSmartHRは、PMは新卒を採っていなくて中途だけです。だから全員経験者なんですね。ただ、「社内でエンジニアからPMになりたいです」っていうパターンは受け入れています。
ただ、この時に、ちゃんと見極めていて、「エンジニアからPMになりたいです」の時の理由が「意思決定したいからです。言われたものを作るんじゃなくて自分で決めて作りたいです」というマインドの場合は、なかなか難しいです。
「お試し期間」で見極める本当の適性
松栄:いきなりPMにするんじゃなくて、お試し期間みたいなのをやるんですよ。「あなたはこのプロジェクトを3ヶ月なり半年なり、PM見習いとしてやってください」と。
その時に、ちゃんとPMの動きができるかっていうのを見るし、本人も「思っていたのと違う」ってなることが多々あるんですよね。「やってみて、あなたはどうですか? やはりPMをやりたいですか?」っていうのは、コミュニケーションを取ります。
この時に思うのは、「何でも意思決定をしている人と思っていたけど、実際やってみたら、いろんなところのメリット・デメリットだったり、要望だったりを加味して、現実的にここってやっている。ただ好きに決めているわけじゃないっていうことがわかりました」っていう人もいます。「自分がPMを誤解していて、だから僕はエンジニアに戻ります」っていう人もいます。
でも逆に、PMをやってみて、「こんなにお客さんの近くで一次情報を取って、本当に何が大事か。これからの社会にとって、こういうことができるようになるほうがいいんだとわかりました。それを僕が作りたいと思いました」でいる人は、そのまま継続しています。
結局話をした時も、「なんでPMになりたいんですか? あなたがPMに求めていることはPMのお仕事ではございません」みたいなことも多々あるので、そこをちゃんと見極めて職種転向はしています。
横道:お試し、めっちゃいいですよね。会社によっては真似は難しい領域かもしれないんですけど、できるところはどんどんやっていいなって、事前ミーティングでも聞いていて思いました。
ちょっとだけ触れると、この手挙げに関して若干の相関があって、大企業的なのかスタートアップ的なのかで負の相関がありました。スタートアップほど手挙げを重視しない。これも一言で言うと誤解があるんですが、このあたりも、OST(オープンスペーステクノロジー)とかで議論してもらえればと思います。
じゃあ、ちょっと総括できたらというところですかね?
松栄:ちなみに、たぶん事前の打ち合わせで言っていたことで今話していないことは、マネジメントする側の人の話をしていないので……。
久津:そうですね。
横道:ぜひ。
3年後の組織図まで書いている
松栄:今、どちらかというと「メンバーの方がどうやったら機会を得られるか」を中心に話したんですけど、事前打ち合わせの時に横道さんに、「世のPMマネージャーに言うべきことはありますか?」って聞かれて、私がまず答えたのは、人のアサインとか採用を短期的に考え過ぎだと思うっていう話をしました。

今、私はSmartHRで、3年後の組織図まで書いています。「1年後のPM、タレマネ(タレントマネジメント)PM組織、こうなります。2年後、こうなります。3年後、こうなります。誰がチーフをやって、誰がマネージャーをやって、どのくらい領域が増えています」っていうのをやっています。
そうすると、1年後までにもう1人チーフを増やさなければいけない。1年後までにもう1人マネージャーを増やさなければいけないっていうのが見えます。その逆算のスピード感で誰かを育てないといけないんですよね。
候補として目星が立っていない時には、誰を候補にするか。どうやったらその人が、それができるようになるか。そのために何のタスクをアサインするかっていうのを考えて逆算で渡します。
これを社内でパイプラインって呼んでいるんですけど、候補が1人ってすごく危険なんですよ。その人が例えば「育休に入ります」って言っちゃうとか、「辞めます」って言っちゃったりとか。
SmartHRは全社的にどんどん拡大しているので、タレントマネジメント領域の中でパイプラインはいるんだけど、隣の新しい領域ができたので、こっちにマネージャーが欲しいってなったら、全社最適を考えると、異動してもらったほうがいい場合もぜんぜんあるんですよ。
なので、1年後に1人マネージャーが欲しいのであれば、2人は育てたいみたいなかたちで、それに逆算してどういうアサインの仕方をするか。アサインされる側は自分の仕事を持っているのでだいたい兼務でオンされたりして(笑)、タフにはなります。
でも、その中でその人がマネージャーとして活躍できるために何を教えなきゃいけないかをちゃんと具体化します。強みは何で、弱みは何で、求められる役割に対してどこがギャップなのか。ソフトスキルもハードスキルもどこがギャップなのかっていうのを考えて育成しています。
多くのPMマネージャーに足りないもの
松栄:もう1個、育成に対する解像度が粗過ぎるっていうのもすごく思っています。私、子どもが小学生なんですよ。勉強を見た時に、例えば「あなたは算数が苦手ですね」って言うのはすごく解像度が粗いと思っているんですよね。算数が苦手って言われて、算数の力を上げるのはめっちゃ難しいじゃないですか。
そうじゃなくて、「あなたは算数の分数と図形が苦手ですね」みたいなことは、たぶんもっと言えるはず。じゃあ、図形の中でどういう図形の時が苦手っていうのは、ちゃんと見ればわかるはずなんですよ。普通の角度を求める問題はできるけど、相似になったらできませんねとか、わかるんですよ。というのを仕事でもやるっていうことです。
あなたのプロダクトマネージャーとしてのスキルを見た時に、単純に「ユーザーヒアリングが苦手ですね」、ざっくりじゃなくて、ユーザーヒアリングの中のどこの工程が苦手で、何が足りないのか。それを上げるためにフィードバックをするぐらいまで解像度を上げる。
そうしないと、人間はそんなに育たないです(笑)。「算数、点数を上げてがんばれ」では上がってこないので。その中のどこで、その次のポジションをするためにはどこが足りないか。伸ばさなくていいところは伸ばさなくていいと思うんですよ。進学先が理数系だったら国語を置いておいてもいいとか、社会を置いておいてもいいとかあると思うんですよ。
結局、「ポジションに求める役割って何で、それに対してどのスキルがどのレベルで必要なのかっていうのをちゃんと言語化したか?」が、PMマネージャーに対しては、今足りないところかなと思っています。
久津:さすが、タレントマネジメントの管掌をしているだけあって、めちゃめちゃ解像度が高いし、熱量がすごかったなっていうのを思いました(笑)。
忙しいマネージャーに対しては自ら提案していく姿勢が大事
久津:マネージャーの育成っていう話と、育成のさらに細分化みたいな話だったんですけど、根津さんも組織規模としてはかなり近いのかなと思います。今の話で何かありますか?
根津陽氏(以下、根津):正直耳が痛い部分もありまして、あんまり付け加えることはないんですけど、おっしゃる通り、「今短期的に組織をどうするか」というよりは、長期的な視点で「どういう事業になるからどの組織が必要で......」というバックキャストは絶対に必要だと思っています。
ただ、そこと現状の課題感を結びつけるってけっこう難しいと思っていて「とはいえ、手元で今リソースが足りないんだよね......」というのは実際あると思っていて、そのバランスに今私自身が苦しんでいます(笑)。
久津:いや、そうですよ。基本みんな悩んでいて、松栄さんがおっしゃったことをパーフェクトにできているマネージャーなんて、世の中にほとんどいないんじゃないかと思いますけど、やはりそこは目指さないといけないと思います。
マネジメントなんていつまで経っても完成しないと思うので、今日出たようなものを、ただ鵜呑みにするんじゃなくて、うまく活用してほしいという思いが、たぶん横道さんからこの後語られるんじゃないかなと思っています。
横道:(笑)。
久津:実はあと3分ぐらいなので、総括に入りたいんですけど、横道さん、今回やってみてどうでしたか?
横道:このサーベイって本当にどうやって活用してもらうのがいいのかっていうのは、今でも悩んではいるんですけど、やる前から間違いなく考えていたのは、これで1つの言語化っていうものが可能になるので、これを使った対話ができるようになると思うんですね。
対話って数少ない、銀の弾丸に近いものの1つだと思うんですよ。なので、マネージャーからでもいいですし、もう1つ僕のすごくお勧めは、マネージング・アップと言われるものなので。
マネージャーは今聞いたとおり、めちゃめちゃ忙しいんですよね。そういう時に、やはり自分から提案をしにいくとか、自分から「こういうことですか?」っていうことを当てにいく、筋のいいことを伝えにいくことがすごく重要です。
そういうためにも、こういうものを使って「こういうことが結果として出ていたんですけど、こういうところってこの会社はどう見なされるんですかね?」みたいな、コンテキストを探る時に使ってほしいなっていうのは1つ思っているところですね。
久津:ありがとうございます。というわけで、濃密な議論ができたかなと思っています。かなり情報量が多かったと思うんですけど、何かしらのヒントになればいいなと思います。