【3行要約】
・日本の中小企業は人材不足に悩む一方で、既存社員の能力を十分活用できていないという課題を抱えています。
・株式会社O:(以下、オー)の三島拓人氏は、「オルフェウス・プロセス」による交代制リーダーシップで既存人材を最大活用するアプローチを紹介します。
・小さなリーダー体験の積み重ねと権限委譲により、社長依存から脱却し組織全体の学習能力向上を目指すなど、具体的な取り組み方法を解説します。
前回の記事はこちら 既存の社員のポテンシャルを活用していく
三島拓人氏:(オルフェウス型組織が日本の中小企業の文化と相性が良いという話を受けて)最後に、やはり日本の中小企業って資金はないけれども、優秀な人材はいるので、新たに優秀な人材を活用するよりも既存の社員を最大活用する現実があります。

意外に上の人は下の人を評価はしてないので、下の人をバッターボックスに立たせない。打っているとしても0打数0安打みたいな。(だけれども)下の人も上の人をあまり評価していないので、「ヒット打ってねえよ」みたいになっても(下の人からすれば)「いや、打つ人がいないでしょ」みたいな話です。
もうひたすらバッターボックスに立たせるという意味合いにおいて、こういう取り組みを入れていくと、リーダーシップを学ぶ成長機会と、「人材を伸ばしていくことってすごく大事だよね」という、成長を促進するんじゃないかなっていうお話です。やはり導入していかない手はないんじゃないかなと思っております。
オルフェウス型組織は、まさに今の中小企業のためにあるんじゃないかなっていう理由をケース別に見ていこうと思います。
交代制のリーダーシップが生む効果
まず1つが、組織の成長が経営者の能力に依存しすぎている。

大企業でも同じことは言えるんですけども、創業者とか所長の意思決定が絶対で、トップの座がそのまま組織の成長限界になっているケースが非常に多いですね。社長が全部決める構造があって、管理職や経営者が育っていないと、社長が倒れたらもう終わりな会社。すぐに潰れるわけではないんですけども、いずれ最終的にはだめになってしまうケースがけっこうあるなと思います。
やっぱりトップの決断だけではなくて、自分がいなくても組織が回れるようになっていくように決断してもらうことが、オルフェウス・プロセスを導入するメリットという話になるかなと思います。
また2つめのケースとして、人的資源の活用が不十分ということがあります。

今、日本の中小企業って慢性的に資金がないので、大企業のように「人が足りないから人を採ろう」「高額な研修をしてスキルアップしよう」みたいなことがなかなかできません。社員の能力を最大化させていく、ポテンシャルを活かす取り組みもできていないのが現状かなと思います。
中小企業のお話を聞いていくと、現場に優秀な人材がいるのになかなか活躍の場は与えられないとか、上長の好き嫌いで物事が決まるだとか、社長が社員に成長しろっていう割には、仮に成長してもそれをまったく評価しないとかですね。
オルフェウス・プロセスでは、お金をかけずに既存の人的資源を最大活用できるというところ。交代制のリーダーシップによって、社員が主体的に、自律的に動くようになります。それによって上長がすべて決めるのではなく、社員が育って組織の活性化、生産性が向上しやすいところがあります。
組織全体で成長していく機会を導入する
あと、学習効率が少ないというケースでございます。

中小企業とかに限らないんですけども、経営陣が意思決定をして、下の方には「これ、決まったからやっといて」みたいな話をしているので、結局、組織全体の思考力が育たない。だから部下が、上が何を考えているかとか「なんでこんなことを決めたんだよ」って言うようなことが起き、知識の総量が増えないんですね。
だから指示がなくなると誰も決められない組織になってしまいがちです。やっぱりリーダー、上長の交代がほとんどないケースだと、組織に学習が蓄積していかないんですね。
やっぱり同じ人が(リーダーに)5年~10年も居座ると、新しい視座って生まれないんですね。あなたの会社の課長は何年課長をやっていますかっていうお話なんですけども。アメリカの大統領も2期までしかないので、同じ人がトップだと組織って成長しないんですね。人に変わる圧力が生まれないので、ゆゆしき事態というわけです。
社長はしょうがないにしても、部課長クラスの入れ替わりがほとんどないことは問題だと考えるべきです。オルフェウス・プロセスは、自主的にリーダーを交代することによって組織が学習し続けられるし、上層部の判断に頼らない経営ができます。
上層部でかまわないんですけども、組織全体で考えて知識を蓄積していくように変わっていかないと、これから勝っていけないですよね。ということで、オルフェウス・プロセスみたいな、意図的に組織を変化させるかたちでやらない限りどうにもなりません。
組織の成長が停滞していることを認めた上で、そのために組織全体で成長していく機会を導入することが大事かなと思ってまして。やっぱり持続的成長の阻害要因をクリアしていってもいいんじゃないかなと思っております。
新しい取り組みと組織の文化の賞取るというジレンマ
ただ、こういった新しいことをやると、「文化的障壁があるよね」という。ここではその障壁の具体的な突破アイデアについてお話しさせていただきます。

(スライドを示して)例えばこの仕組み。みんなが嫌だと言えてしまったりとか、ワンマン経営(の傾向)が強いとか、組織内の変革への抵抗感があるだとか、責任を持ちたくないとか、いろいろとあるかなと思います。
1つめにやっぱり社長が権限を手放せない組織ってあるかなと思います。そういった場合には、社長がいなくても回せる組織の実績を作っていく(ために)、部分的に権限委譲をやっていくことが非常におすすめです。
まずはこういった小さな決定事項を社員にやらせることで、業務改善だとか社内イベントの運営みたいな、社長自体がやらないような仕事のリーダーを決めて、みんなで分担して回すことによって「結局、できるじゃん」って話になってくる。
そうすると、「じゃあ次は、これやらせましょう」って話になってくるので、部分的な権限委譲を徐々に進めていくのがいいかと思います。まさに飲み会の幹事とかもそういった類の話ですね。毎回同じ人ではなくて、意図的に別の人にやらせると効果的です。
社員に「小さなリーダー体験」を積ませていく
(スライドを示して)リーダーになりたくない社員が多い。これが一番多い障壁になるかなと思います。

まず、そういった方はリーダーが固定された管理職であると思っています。そうではなくて、部分的に小さなリーダー体験を作ります。
いきなり「業務に慣れたらリーダーになれ」と言われたら「嫌だな」となるので、「リーダーとして業務の一部をしてください」ということ(が大切)です。
例えば「毎朝朝礼で、5分間のファシリテーションの司会とその感想を言ってください」という話から始めていくとか。もしくは「チーム内で1つプロジェクトを任せたい」など、小さな仕事からやっていって「やればできるじゃん」っていう話をしていって、とにかく褒め倒すことが大事ですね。
そうするとリーダー候補の人は「そのようなことだったらできます」って言い始めるので、「じゃあこれもできるんじゃないの」という話をしていきます。
リーダーはあくまで調整役という認識を広げる
2つめが、リーダーは指示を出す人じゃなくて、調整役と認識させることです。基本的にオルフェウス・プロセスにおいて、リーダーは調整するのが仕事なので、決めないんですね。リーダー=偉い人と思っている人がいるんですけども、みんなの意見をまとめる役割だという定義を強調していくかたちです。
「とにかくあなたが決める必要はありません。みんなが決めるためのファシリテーションをやってください」と話をしていくことが大事です。そうすると「ファシリテートなんてやったことありません」って言うんですけども「じゃあ、朝礼からやってみよう」って話にしていく。
とにかくずっとやれっていうわけではないので、1ヶ月だけやって次の人に変わっていくかたちでやっていくと、徐々に心理的障壁がなくなっていくので、こういうやり方が有効です。
「シャドー意思決定」という人材育成のテクニック
そして3つめに、「意思決定は上がするもの」「社員は指示を待つもの」という固定観念を持っている方がいることです。

これに関しては意思決定を急に分散させるとみんな混乱し始めるので、シャドー意思決定というものを導入しております。これは1on1ミーティングでも使えるテクニックだから覚えていくといいかなと思います。
どういうことかというと「もしあなたが向こうの会社の課長だったら、この案件は何が決め手になる?」というふうに、疑似意思決定をさせるんですね。「こういう提案だったら、たぶん導入すると思いますよ」という内容に対して、「その意思決定、いいじゃん」っていう話をしていくんですね。
いきなり意思決定すると(うまく)動かないんですけども、こういうふうに疑似的に意思決定をする機会を与えて、シャドーボクサーみたいな感じで(リーダーシップを)盛り上げていくことが1つめになります。
現場で意志決定をしやすくなる仕組みづくり
もう1つが、意思決定にガイドラインを用意することです。「ここまでだったらあなたが決めていいよ」というふうにしてあげて、お金のかからないような業務改善のアイデアは現場判断でやっていいとしていきます。
例えば金額的にも30万円以下ってけっこう大きいので「5万円以下の購買だったら決めていいよ」みたいな話をしていく。そのようなエンパワーメントによって、上が意思決定をするのではなくて「ここまでだったら自分たちで決める」と慣れさせてあげると、比較的(障壁を)突破しやすいですね。いきなり全部をやらせないということが非常に大事になっていきます。
まとめです。「日本企業の未来を変えるオルフェウス型組織の可能性」とい書かせていただきましたが、やはりバブル崩壊以降、日本って戦略的HRMを見失ってるなと。戦略的人事って言ってますけれども、戦略的運営が形骸化しているケースがけっこう多くて。
やはり政府のHR施策は補助金頼みのところもあって企業の実態に即した改革に至ってないなと思っています。やっぱりワンマン経営の限界だとか。組織の学習能力の欠如が深刻化していて、これが日本経済の停滞(要因)になっているんじゃないかなと。
日本の企業が生き残るための成長戦略に
一方で、日本が今までモデルにしていた米国のHRが個人主義に走りつつあるので、参考にはできないんじゃないかなとも思っています。
そういう意味で言うと、オルフェウス・プロセスは特定のリーダーに依存せずに、全員がリーダーシップを経験して学習しながら成長する組織というアプローチです。本当に日本企業、特に中小企業が抱えている集団的知識の創造だとか、長期的成長戦略みたいなものと非常に親和性が高い。日本の企業が生き残るための成長戦略の処方箋になり得るんじゃないかなと思います。
そんなに難易度は高くないと思うんですが、オルフェウス型の組織(運営)を導入していき、誰かが率先して旗振り(役)をしていくことによって、バブル前の日本のような、日本型HRが世界の企業から注目されるキーになるんじゃないかなと思っている次第でございます。