【3行要約】・株式会社O:(オー)の三島氏が、米国最新の組織開発理論「オルフェウス・プロセス」を紹介します。
・オルフェウス・プロセスは日本の中小企業や人材育成重視の組織には親和性が高い一方で、効率重視のブロック式マネジメント企業には適さないケースもあります。
・三島氏は経営者は組織文化と事業フェーズを見極め、オルフェウス・プロセスの適用可能性を判断する必要があると提言します。
前回の記事はこちら オルフェウス・プロセスが有益な組織のパターン
三島拓人氏:オルフェウス・プロセスが有益な組織のパターンは、大きく分けて3つあります。まずは組織の持続性を重視したい会社ですね。例えば病院とか老舗企業、地場の産業会社みたいなところで、中小企業とか家族経営で中長期的に組織を持続させたい企業には向いているかなと思います。

こういった会社はリーダーの交代があまりないんですけども、リーダー制を導入することによって、事業継承することが非常に多いかなと思います。やはり、こういった会社って「社長しかできない仕事が多すぎる」ということが起きやすいのかなと思います。
これを分担していくことによって、1人じゃできないことが5人でできるようになったりすると、それをぐるぐる回していくことで、なんとかできる人材が増えるかたちで有益になっていきます。
全員をリーダー候補で育てていく
2つめが、組織の学習適応力、戦略を求めている会社ですね。例えばDX化を進めていきたいとか、新規事業を開発したいような会社にも強いです。
市場の変化に柔軟に対応しようと思った時に、いわゆる事業開発部長1人で考えようと思っていると、だいたい失敗するんですね。でも、社員全体がリーダー経験を持っていることが課題解決能力を高めていく機会では大事ですし、固定観念にとらわれないことが大切なので。
そういった意味では、このオルフェウス・プロセスを使って新規事業開発をやっていくと、うまくいく確率が高まります。そういうことができる人材が社内にわらわらと増えてくるといい影響が出てくるかなと思います。
最後に、基本的には人材育成のための仕組みなので、社員全体にリーダー経験を積ませていくことで、人材(育成)には非常にいい上に、定着率も上がっていくだろうと。
いわゆるアメリカ式のマネジメントでは特定のエリートを育てていくんですけども、(オルフェウス・プロセスでは)全員をリーダー候補で育てていくという、従来の調和的、日本的な教育に近い考え方なんです。教育機関であったりとか、医療・介護・福祉、エンゲージメントを重視する企業に関してはプラスになるんじゃないかなと思っております。
オルフェウス・プロセスが機能しにくいパターン
逆に不向きなケースもあります。やっぱり急成長だとか危機的状況(にある)とか、そういった組織は、とにかくもう時間がない。意思決定を急務にしなければいけない局面ですよね。みんなでリーダーシップを取って議論ばかりしていたら会社が潰れてしまうので、短期間で迅速な意思決定が求められている会社には向いていないかなと思います。

2つめに、やっぱりカリスマ的経営者がいる会社もやっぱり向いていないかなと。極めて優秀なリーダーがいる組織は、わざわざやる必要がない。その人が生きている限りにはなりますが、そういった方々の(カリスマ的な)やり方ではやっていけないという話ですね。
最後に、徹底した分業効率化を重要視してる会社。例えばトヨタのカイゼン方式だとか、大規模なBPOをやっているような会社には、基本的には向いていないです。「この部署ではもう、これだけをやってください」とか、「これ以上のことはやらなくていい」「他の部署は間に合っているかには興味を持たなくてもいいですよ」みたいな会社はやらなくていいのかなと。
別にそれを否定しているわけではないんですけども。こういったブロック式マネジメントも生産性(向上)には極めて有効ですが、そういったところは別にオルフェウス・マネジメントが最高という話ではありません。これはあくまでもツールなので、組織のカラーに向いている・向いてないというところがあるんじゃないかなと思います。
組織における進化の段階
先ほど組織的にはハードとソフトがありますよとお話しさせていただいたんですけども、実は組織には進化の段階があります。
(スライドを示して)ご存じの方もいると思うんですけども、これまではオレンジ型のような数値を追う合理的な組織が主流でした。

しかし変化の激しい時代だと、そのやり方に限界を感じている企業も多いんですね。そこで今、注目されているのが最上位にあるティール組織という考え方になります。
ティール組織と聞くとけっこう難しく感じられますが、身近な例で言うと『ONE PIECE』の麦わら海賊団のようなイメージです。やっぱり誰かに命令されるのではなくて一人ひとりが自律的に動く状況ですね。
逆にトップが絶対的な権力を持つレッドとか、ルール重視のアンバーといった段階と比較すると、自分たちがどのステージにいるのか、そして理想のチームはどこにあるのかが見えてきます。
みなさんの今のチームは、この5つの色のうち、どの色のチームに近いでしょうか。成果第一のオレンジでしょうか。それとも合意を重んじるグリーンでしょうか。実は、どの段階が良い・悪いではなく、組織が成長するプロセスとして捉えることが重要になります。
今回私たちが目指すべき次世代の組織の姿、ティール(組織)がオルフェウス・プロセスと似たようなモデルになっております。
オルフェウス・プロセスを取り入れている組織の例
ここで「オルフェウス・プロセスって実際に使われてるの?」というお話なんですけども、オルフェウス型と謳っている会社はほとんどないんですけども、いくつかの企業はすでに取り入れております。
企業文化の醸成と非常に相性がいいというところなので、その道を究める系の組織だと(相性が)いい。あと、「イノベーションをしたい」みたいな会社では、今の延長線上ではない未知を探したいという、発想力の問題になってきます。
なので、「やっぱり有能な個人がいたほうがいいよね」ということで、百なる凡人よりも天才が1人いないとたどり着けないので、そういった意味では(導入には)向き・不向きがあるかなと思います。
それと、近しい概念としてホラクラシー型組織というものがあります。「役割をみんなで分担していきましょう」というところはあるんですけども、オルフェウス型のほうがより融通が利く。正しく運用さえされれば人材の育成にはなるのかなと。
ホラクラシーやティール組織は自己組織型が求められます。勉強とかそういうのは「あなたが勝手にやってくださいね」みたいなところがあるんですけども、オルフェウスはあくまで組織で人を育てながら、組織の成長と個人の成長をリンクさせるところがポイントになります。そういう取り組みでいくと、(スライドを示して)ここで挙げているような5社がオルフェウス・プロセスに近しく取り組んで導入している感じでございます。
実は日本の中小企業と相性が良い
このオルフェウス型組織って、今の日本の中小企業のためにあるんじゃないかなと思っています。(日本企業は)もともと全員参加型の組織文化に親和性が高い組織が多く、(一説には)日本人の半数以上はチームワークと協調性を重視すると言われています。

オルフェウス型って(組織の)誰もが支援していくんだったら非常に回りやすいので、日本人の集団主義と相性がいいということですね。やっぱり上司vs社員という対立ではなくて、全員で会社を作るという意識は、日本人にとっては文化的に醸成しやすいんじゃないかなと思います。
2つめが、中小企業で経営の属人化が深刻な問題になっているというところ。やはり日本の中小企業が伸びない(要因)には、知識の総量が伸びないところが一番大きいんじゃないかなと。全部の意思決定を上層部がしていると、次世代のリーダーがなかなか生まれてこないし、事業継承がうまくいかないんだろうなっていうところがあります。
次世代の育成も含めて、リーダー交代を自主的にしていかないと、経営の属人化は解決できないんだなと思います。