【3行要約】・フルリモートの働き方には、偶発的な会話から生まれるアイデアや、迅速な意思決定が失われるという問題が浮上しています。
・freeeの川西氏は会社の急成長を背景に、リモートでは新メンバーの組織への順応や文化の浸透が困難になったという実感を語ります。
・企業には、自社の成長速度や事業内容を鑑み、コミュニケーションを活性化させる働き方を模索し続けることが求められています。
前回の記事はこちら フルリモートから出社に戻したfreee社
川西康之氏(以下、川西):なんかもう私が聞きたいことを何個も聞きまくる会になっているんですけども、(参加者の方の)ご質問とかってどうですか?
司会者:(質問が表示されている画面を示して)お二人が気になるテーマとか、もしお話いただけそうなものがあったら。
青木耕平氏(以下、青木):「出社とフルリモートの違い」みたいなのは、おもしろい議論ですね。コロナの時はアレだったんですか?
川西:フルリモートになりました。
青木:なったんですか?
川西:はい。
青木:いつから戻ったんですか?
川西:「出社に戻していこう」というのは、比較的早かったです。
青木:へー。
川西:原則出社にしたのが2024年なんですけど、「週3日出社にしよう」としたのは、2020年中にはやってましたね。
青木:早かったんですね!
川西:早かったです。
青木:ということは、フルリモートみたいなのは。
川西:すごく短い期間でした。4ヶ月、5ヶ月ぐらいでしたね。
フルリモートにしたことで意思決定のスピードが極端に遅くなった
青木:それはかなり最初に「これはマズいぞ」という感じがあった?
川西:ありました!
青木:へー!
川西:freee社も独自のカルチャーを大事にしていて、フルリモートになった時に「効率はいいけど、会社の意思決定のスピード自体は、極端に遅くなったな」という実感が当時はありまして。
今でも覚えてますが、2020年2月28日に佐々木(大輔)が急に経営陣を集合させて「来週の金曜日からフルリモートに」って。
「いやいや、今金曜日の何時だと思っているんですか! 大輔さん勘弁してくださいよ。せめて来週は準備期間にして、その再来週、第2週からにしませんかね?」と。(それがあったのが)上場した直後なんですよね。うちは2019年の12月17日に上場していて。
青木:そっか!
川西:どんどん株価も上がっていましたし、上場した後の、決算を作っていく、とっても大事なタイミングなので。
青木:確かに。
川西:(私は)その当時、ビジネス側の責任者と全体の責任者をやっていたので、「ちょっと勘弁してください」と。
青木:(笑)。
川西:BtoBの営業組織における追い込みの期間で。「さぁ! 1月、2月に作ったお客さまとの案件を一気に黒字にしていくぞ!」というタイミングで。「営業はいいですよね。お客さまのところに行くのはありですよね?」って言ったら「ダメですよ」「それはフルリモートって言わないですよ」って。
青木:えー!
川西:「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ」「何考えているんですか?」みたいな話からスタートして、極端にフルリモートにガンッと(舵を)切ったんですよね。
青木:でもすごい意思決定ですね。
川西:その時は社会の進化を担う責任感というかたちで。手前味噌ですけど、「佐々木大輔っていう経営者はすごいなぁ」って思ったんです。
青木:いや、すごいですね。
川西:「これって世の中が本当にガラッとモードチェンジするような危機だから。一刻も早くフルリモートに慣れないと、freeeだけ置いていかれちゃうから。もう今すぐやれ」「それで売上が落ちても、逆に言うと無事に上場もできたし、説明はなんとかするから、できるから」ってことでやって。
リモートで働くということに一気にモデルチェンジをしていく中で、いいところもたくさんあったんですけど、損なわれるものも、スピード感のこととかもあって、「いや、これはアカンな」と。
「面と向かって話す機会を作り出さないとな」と思って、週3日出社みたいなものに2020年中になり、ちょっとずつ適用範囲とか(を広げながら)、週3日を週4日にして、原則出社にしてみたいなことをしていきました。
青木:へー。
本来は当日午前中で決まっていたことが、2週間かかるように
青木:一番難しさが出るポイントって、どういうところなんですか? 結果としてスピード感が落ちるとか、そういうのになる(と思う)んですけど。最初のその手前側にある……。
川西:我々は、今もそうですけどいい意味でスピード感を出すために、意思決定プロセスというものがあまり明確にはなくて。「大輔さん、これでいいですかね?」とか「川西さん、こんな感じでやろうと思っています」みたいなことを、立ち話とかで決めてくるカルチャーだったんです。
なので、ご入社された方にとっては「この会社って、結局誰に何を言えば決まるんだっけ?」というのが、たぶん非常にわかりにくい会社なんですけど。
逆にわかっている人からすると、めちゃくちゃスピードが速い。「そんな感じで、こんな感じで、こうなので、これでいいですか?」「あぁ、いいよ」みたいに、億円とかの単位の決裁もだいたいそんな感じで進んでいける会社だったのが、リモートになると「じゃあMeetの予約を発行して、カレンダー見て」っていう。「〇〇さん、ここを空けておいてください」みたいなのになると、ちょっと億劫になって。
青木:確かに。
川西:「来週の月曜日に1on1が入っているから、そこで言おう」みたいなのがどんどん積み重なって。本来は午前中で決まっていたことが、AさんがBさんの1on1が翌週になり、Bさんから私に来る1on1が翌週になって。「2週間かかっているんじゃない?」みたいなのが3ヶ月、4ヶ月すると出てきて。我々の技術不足もあったと思うんですけど、「これはさすがに苦しいな」と
青木:いやいや。
川西:「これはキツイな」ということで、出社に回帰していったのが今です。
社員の増加スピードもフルリモート可否に影響する
青木:あとは、すごく人数が増えるスピードが速い。要は、会社の信頼関係をある程度の時間で築けていない人たちも、どんどんオンボーディングしていかなきゃいけない時に……。
入学当初からオンラインだった当時の大学生とか、たぶん人間関係を作るのは相当大変だったと思うんですけど。
川西:そうですよね。
青木:たぶんそこは僕らの間でけっこう差があると思っていて。僕らはこの1年間で人数が純増ゼロとかだったんですよ。2025年はたぶん1人も増えてなくて。となると、信頼関係(の構築に)は時間を使ってやれているからこそ、リモートでやれているみたいなところはけっこうあって。これが例えば「毎月のように『どんどん人が入ってきます』みたいな状態でやれたのかな?」と考えると、自分たちでもちょっと自信ないなと。
川西:その違いは大きいですね。コロナ禍の2020年、2021年はむしろビジネスとしてはめちゃくちゃ追い風で、伸びた時代。日本の会計ソフトとか、給与計算が一気にクラウドシフトした時代だったので。従業員も一気に増えたタイミングだったというところがあったと思います。
青木:ですよね。そこで急に「リモート」と言われてもね。
川西:お聞きしたかったのは、フルリモートでカルチャーとか世界観を強固にし続けられたのは、シンプルに、そんなに人が増えていない影響みたいなところが一定ある。
青木:1つはそれだと思いますね。あとは、実はめちゃくちゃ生産性が高い状況を作れてるんですよ。僕らで言うと、今期予測はたぶん社員1人あたりで1億円ぐらいの売上なんです。
そうすると、コミュニケーションの時間をけっこう使えるんですよ。なので、1on1もそうですし、部署のミーティングもそうですけど、かなりコミュニケーションをしている。「忙しいから声をかけられない」という雰囲気が、たぶんあまりないことによって、コミュニケーションの時間をかなり優先的に取れているというのが1つあります。
従業員の増分がゼロなのに、ビジネスは20パーセント増の理由
川西:ちょっと待ってくださいね。若干不思議なんですけど、2025年から2026年にかけて従業員の増分がゼロ。
青木:ゼロ。
川西:なのに、ビジネスは伸びているじゃないですか。
青木:20パーセントぐらいですかね。
川西:なんか変じゃないですか(笑)? 人は増えていません、ビジネスは伸びています、余裕はありますって。めちゃくちゃなことをおっしゃっていると思うんですけど(笑)。算数として変なことをおっしゃっていませんか?
青木:僕らのビジネスは物販をやっているんですけど、小売業っていうビジネスって、金融業に似ているんですよ。どういうことかというと、ファンドだったとしたら、調達したお金で有価証券を買って、売ったり買ったりして、その差分を取って利益を出していくという仕事ですよね。
小売業も、調達したお金で在庫という商品を買って、売ったり買ったり回転させて、利益を出していくという仕事で。特にeコマースのようなかたちになっていくと、物自体が稼ぐようになるので、大きくなればなるほど、効率が上がっていくんですよね。
インターネット上のチャネルも自社チャネルだけでずっとやってきているので、そういう意味でも利率も一定担保しながらやったというのもあって。そういう意味では、今は人が増えなくても伸びていく感じは作れてきているという感じですね。
川西:へー。じゃあ本当に贅沢なビジネスモデルというか、そんな感じ(笑)。
青木:はい。ただ雑貨の販売ですからね。別にすごい儲かる土台があったわけじゃないんですけど。
社員の時間外の交流は推奨もしないし反対もしない
青木:あとは個人の感覚としては、うちはそもそも仕事の時間外での社員の交流みたいなものを、推奨も反対もしないという立場を表明しているんですよ。なので、例えば「飲み会をやるので経費で!」とかというのは「いや、絶対に無理」という。
川西:へー。社内交際費みたいなものは。
青木:ないですね。
川西:えー!?
青木:むしろ「別にそんなことまでしないと交際しないんだったら、しなくていいんじゃない?」と。
川西:はいはい。じゃあ別に好きで、自腹で払う分には「勝手にすれば?」と。
青木:そう。要は「楽しくてやるのに、なんで会社が金を払うの?」と。逆に「楽しくないなら、やらなくていいじゃん」ということなので、イベントとか、交流がないんですよ。なので僕らは、上場した当日も何もしてないです。だから気づいてないスタッフとかいたかもしれない(笑)。
(会場笑)
普通に仕事してた。なので本当に役員だけ行って、ポンッと鐘をついてスッと帰ってきただけなので。
川西:かっけー!
(会場笑)
青木:だからそういう意味では本当に、仕事上のコミュニケーションの設計がしっかりできていて、あとは本当に価値観が明確であれば。「どういうことを会社は求めていて、その求めていることに貢献している人がフェアに評価される」という状態さえ確保すれば、「意外とそういうのっていらないかも?」と思ってやってきているんですね。
川西:だから冒頭のほうに話したケアの話のウェットな感じというか。一見ですよ? 直感的に思うウェットな感じとか、温かい感じとかと真逆なことをしたというか。
青木:そうですね。
川西:我々は真逆で。社内交際費をもうしっかりと予算を取って。
(会場笑)
青木:大事ですよね(笑)。それは大事。
川西:コミュニケーション、飲みにケーション大歓迎みたいな感じで。わざわざ会社で飲み会をして、飲み会やリッチな体験をするための社食という会議室、キッチンスペースみたいなものがあったり、カラオケもできるような会議室みたいなものも用意したりして。まぁそういう、いわゆる日本的な飲みにケーションみたいなものって、その会社のカルチャー醸成とかに寄与するよねみたいな思想でやっているので。そういうところは真逆かな? 勤務形態も、フルリモートでというかたちと……。
青木:そうですね。
川西:このあたりの違いもまたおもしろいですね。