【3行要約】
・繰り返し指示するリーダーは「丁寧」と思いがちですが、実は権威を削り、信頼を失う結果になっていることが多くのチームで問題になっています。
・リーダーシップの専門家は「繰り返し」が起きる理由を「信頼の欠如」と分析し、これが「結果ではなくリマインドをマネジメントする」文化を生むと警告します。
・リーダーは「リマインド」ではなく「守られなかった事実」に対応し、期待が「本物」である環境をつくることで真のリスペクトを得られます。
「同じことを繰り返し伝えること」が忍耐やコミットメントの証だと思ってしまう
Michael Ashie(マイケル・アシー)氏:多くのリーダーは、「同じことを繰り返し伝えること」が忍耐やコミットメントの証だと思っています。会議で同じポイントをもう一度言い、フォローの場でもまた言い、チャットでもう一度念押しをする、という感じですね。
ここで、ちょっと耳が痛いかもしれないことを言います。もし、何度も同じことを繰り返さないといけない状態になっているとしたら、それはチームの理解が遅いからではありません。どこかのタイミングで、あなたの言葉の「重み」が薄れてしまっています。
誤解しないでほしいのですが、「あなたがダメなリーダーだ」と言いたいわけではありません。むしろ、しっかりしたリーダーほど、この落とし穴にはまりやすいんです。良い意図を持ち、高い基準を掲げていて、本気でメンバーをサポートしたいと思っている人ほどです。
丁寧な反復が増えるほど、チームには「待っていていい」が伝わってしまう
会議で方針を伝える。そのあと、まとめメールでもう一度書く。さらにSlackでも軽くリマインドする。次の会議では、「ちゃんと認識をそろえておきたいから」と、また同じことを言う。
本人の頭の中では、それは「根気」「コミットメント」「リーダーシップ」です。でも、チーム側の体感はまったく違います。彼らが感じているのは「不確かさ」「ノイズ」、そして最終的には「待っていてもいいんだ」という暗黙の許可です。
多くの人が、なかなか教えてもらえないポイントがここです。「繰り返し」は、権威を強めるのではなく、権威を置き換えてしまいます。
最初は、まったく無害に見えます。「ただ丁寧にしているだけ」「思い込みたくないだけ」「誰かを不意打ちにしたくないだけ」。そう思うのは、とても自然なことです。でも、人間は「パターン」を読む生き物です。チームはすぐに学習します。
最初に言われたことは、そこまで重要ではない。実際に動くのは、だいたい3回目のリマインドが来てからでいい。締切は、本当に怒った声になるまでは「提案ベース」だ。
こうしたパターンが一度染みつくと、それを元に戻すのは本当に大変です。メンバーが反抗的だからではなく、あなた自身が「あなたの言葉をBGM扱いしていい環境」を結果的につくってしまったからです。
「繰り返し」はコミュニケーションではなく、信頼の問題としてチームに伝わる
多くのリーダーが見落としている、もう一段深い問題があります。「繰り返し」は、コミュニケーションの問題ではなく、「信頼」の問題です。
何度も同じことを言い直してしまう時、あなたは、自分がつくった仕組みを、どこかで信じきれていない。自分がその場に張り付いていないと、期待は果たされないと思っている。自分が常に見ていないと、きちんと進まないと思っている、というサインを出しています。
口に出さなくても、チームはその雰囲気をきちんと感じ取ります。そうなると何が起きるか。メンバーは「結果」に責任を持つのをやめ、代わりに「あなたのリマインド」をマネジメントし始めます。そのタイミングから、ジワジワと権威は抜けていきます。
なぜ、この変化がこんなに早く起こるのか。ほとんどの人が、ここを甘く見ています。
一度、「結果が出ていないのに、何も起きないまま同じ指示を繰り返す」と、それは「ルール」になります。そのルールとは、「行動は、本気のリマインドが来るまで『任意』だ」というものです。
そして、そのルールが一度できてしまうと、以後のリマインドは1回ごとに、あなたの権威を少しずつ削っていきます。
ここで多くのリーダーは焦って、逆方向に走ってしまいます。もっと大きな声で、もっと細かく、もっと「わかりやすく」、もっと長いメッセージで、もっと頻繁に確認しようとする。でも、それはすべて「ノイズ」を増やすだけです。
明確さは「ボリューム」の問題ではない。権威は「しつこさ」からは生まれない。尊敬は「同じことを上手に言い直す」ことからは生まれない。権威が生まれるのは、「最初に言ったあと、何が起こるか」です。
リマインドではなく、「守られなかった事実」に落ち着いて対応する
具体例で考えましょう。あなたは会議でこう言います。「金曜にレビューしたいので、木曜までにドラフトが欲しいです」
参加者はみんなうなずきます。会議が終わり、木曜日が来ました。でも、ドラフトは来ません。多くのリーダーは、ここでこう返します。「ちょっと確認ですが、ドラフトはどうなってますか?」
とても自然で、サポーティブで、優しい対応に見えますよね。でも、実際に起きているのは「木曜の締切は、『本物』ではなかった」というメッセージを、あなた自身が教えてしまっている、ということです。
ここで、直感に反するけれど大事な解決策があります。「繰り返さない」ことです。リマインドする代わりに、「起きたこと」に対応します。
「金曜にレビューするために、木曜までにドラフトを出すって合意していたけど、それが守られなかったね。何が起きたのか教えてもらえる?」
同じ落ち着いたトーンで、怒鳴らず、説教もなし。でも、ここでの会話のテーマは「物覚え」ではなく「責任」です。
「繰り返さない」を貫くと、沈黙・試し行動・言葉の重みが戻る
もちろん、最初はやりにくく感じるでしょう。「優しくない」ように感じるし、摩擦を生んでいる気もする。でも、摩擦そのものは無礼さではありません。それを避け続けることこそが、むしろ無礼です。
多くのリーダーが聞きたくない真実がひとつあります。もしあなたのチームが、「リマインドされた時だけ動く」のだとしたら、彼らはだらしないのではありません。あなたが作った環境に、正確に反応しているだけです。
あなたが権威を失ったのは、「説明が足りなかったから」ではありません。メンバーを「責任を取ることの居心地の悪さ」から守り続けてしまったからです。
だから、解決策は「コミュニケーションをもっとうまくすること」ではなく、「フォローの仕方を変えること」です。一度「繰り返さない」と決めると、3つのことが早い段階で起こります。
1つ目は、沈黙が増えること。これは、かなり怖く感じます。あなたが方針を伝え、そのあと黙って待つ。追加の説明も、フォローも、すぐにはしない。この「間」の中に、リーダーシップが宿ります。そこを慌てて埋めないことが大事です。
2つ目は、人があなたを「試す」ようになること。意地悪ではなく、好奇心としてです。あえて期日を少し外してみて、「その時あなたがどう反応するか」を見ます。この瞬間が、一番重要です。ここで折れて、またリマインドしてしまえば、元のパターンが勝ちます。落ち着いて「約束が守られなかったこと」について話せれば、新しいパターンがかたちになり始めます。
3つ目は、あなたの言葉に、再び「重み」が戻ってくること。話し方を変えたからではなく、「話したあとに起きること」を変えたからです。
アカウンタビリティは叱責ではなく、「一貫性」で責任を返すこと
権威とは、「予測可能な一貫性」です。人は、「過去に何が起きたか」に基づいて、「この人をどれくらい真剣に受け取るか」を決めます。
ここで、多くのリーダーは、良かれと思って自分を台無しにしてしまいます。「アカウンタビリティ(説明責任)=きつく叱ること」と勘違いするからです。
でも、本当は違います。アカウンタビリティで重要なのは、「一貫している」ということです。余計なリマインド(叱咤)で、期待の重さを下げないこと。大人として、任せた責任があることを本人に自覚させ、できなかった時にはその事実について話すこと。
もうひとつ、実践で役に立つ小さなシフトを紹介します。期待を言い直すのではなく、「コミットメント」を確認する習慣をつけることです。単に「金曜日締切ですからね」と言う代わりに、「金曜日までに出せそうか、もう一度確認させてくれる?」と聞いてみてください。
そうすると、「責任の所在」がはっきりと相手側に戻ります。締切を覚えているかどうかではなく、「引き受けるかどうか」の話になるからです。そこで「大丈夫です」と言っておいて守れなかったなら、それはもはや「コミュニケーションの問題」ではなく、「フォローの仕方について話すべきテーマ」です。
そして、あまり語られない静かなメリットがひとつあります。あなたが「繰り返すのをやめる」と、ハイパフォーマーは心底ホッとするということです。彼らは、ノイズが大嫌いだからです。
彼らが必要としているのは、リマインドではなく「明確さ」と「信頼」です。無駄な繰り返しを減らすことは、「あなたのことをきちんと見ている」「プロとして信頼している」「プロフェッショナリズムを期待している」というメッセージそのものになります。それが、双方にとっての「本当のリスペクト」です。
もちろん、最初はこのやり方に苦戦する人も出てくるでしょう。それは「失敗」ではなく、「情報」です。
リーダーシップとは、全員を快適にさせることではありません。期待が「本物」である環境をつくることです。もし今の話が、「自分のことだ」と少しでも感じたなら、あなたは遅れているわけではありません。ただ、「今のリーダーシップの段階から、次に進むタイミングに来ている」というだけです。
では、コーヒーを手に取って、カフェインを補給してきてください。次の動画でまた会いましょう。チャオ。