「心理的安全性」を勘違いしている企業の多さ
対極にあるのは、行動のレベルアップとか、思考の質の向上とか、組織の人間関係とか、さっきのダニエル・キムでいうところの関係の質とか、思考の質とか、行動の質を目指していく。いわば、長期目線の取り組みですよね。

これ、やろうと思っても、結果の質、短期目線のプレッシャーがかかった瞬間に、ものすごく引っ張られやすいということです。一般的な順番のイメージっていうのは、このダニエル・キムの成功循環モデルで、(スライドを示して)この位置で図解されていることが多いんですね。一番上に関係の質がきています。ということは、だいたい多くの方が、1・2・3・4って感じで考えがちなんじゃないでしょうか。
ただし、この関係の質が上げにくいのは、心理的安全性っていう言葉があって、これはチームや組織の中でメンバーが自分の意見とか行動を自由に表現して、ミスや失敗を恐れずに行動できる状態ではあるんですけど。

かたや、マネージャーとしては「いや、目標達成に集中してほしい」とか、メンバーとしては「いや、数字は人格だから目標未達の自分には発言する権利がない」みたいに考えがちです。
となると、とにかく心理的安全性云々の前に「もう結果出せよ」みたいな感じになりやすいし、結果が出ていないと「もう自分はダメなんだ」となりやすいわけですね。いろんな組織がありますけど、営業組織は特にこの難しさがあるんじゃないでしょうか。
さらにそれだけではありません。心理的安全性は、実は誤解が多くって、本来の意味はミスや失敗を恐れずに行動できる状態ということです。ざっくり言うと、意見がぶつかって関係を悪くするんじゃないかとか気にせずにガンガン言い合えると。これが心理的安全性です。
単なる「ぬるま湯組織」になっていないか
ただし、世の中で多くの捉えられ方というのは「心理的安全性を大事にしなくちゃいけないから、こういうことは言っちゃいけないんだ」みたいな。こっち側で捉えられている方のほうが圧倒的に多いというのが、日々いろんな組織に関わっている自分の実感でございます。
ただ、そうすると、単なるぬるま湯組織になってしまいやすいです。心理的安全性の意味合いが、本来の意味と真逆に捉えられているということなんですよ。
要するに、もう失敗とか衝突とかを気にしないでいいんだっていう状態が心理的安全性なんですけど、失敗とか衝突を気にしてケアをするみたいなことが心理的安全性という文脈で使われやすいんです。本来の意味と180度逆です。
となった時に、多くの営業組織が現実的に目指し得ることっていうのは、実は順番がちょっと違うんじゃないかと私は思っておりまして。まず、関係の質から入ろうとしても、「それで数字上がるの?」って言われてしまうわけです。
数字の1個手前、行動の質をまずしっかり上げるとなると、結果が良くなりますよね。結果が良くなると関係に着手しやすい。そうすると思考の質も上がるということです。
まず、その長期目線で取り組むいろんな施策に対して、要するに数字とか業績とか、もう営業組織はこの仕組みからは逃れられませんし、心理的安全性への誤解というのもあります。そうなった時に、行動の質をまずしっかり上げるという着実な地に足のついた一手が必要ではないかと。
放置プレーなマネジメントは「やらされ感」につながる
今日のメッセージは順番です。仕組みとPDCAの土台を築くということです。まず、その順番の話をしていきたいと思うんですけども。さっきグラフをお見せしましたけど、結果プレッシャーに頼った指導というのは、「目標達成を意識しなさい」とか、「今達成率何パーセントだ」と。これって、営業スキルとの相関が低いんですよね。
これ、1,041人への調査で明らかになりました。要するにこういう指導をして、能力が伸びるかというと、そうではないわけです。
また、結果プレッシャーというのは、その裏側に放置が生まれやすい。縦軸に、目標とか重要な指標、いわゆるKPI、あるいは状態、メンバーの行動っていうのを挙げてみました。放置プレーというのは、この部分を握ってあとは「もう知らんがな」みたいな感じになりやすいんですけど、そうするとやっぱり、やらされ感が高まりやすいわけです。

適切なマネジメントは、ちゃんとここは握るんだけど、丹念に追いかけて、しっかりと行動とかプロセスに近いところを把握した上で適度なサポートを行うと。こうすると成果も出やすいということです。マネージャーで、「いや、私はもうとにかく結果を見ています。結果さえ出せば細かいこと言わないんですよ」。
これ、一見すると、とってもきれいで、メンバーに対してやりやすさを強調するマネージャーのように思えるんですけど。「結果を見てます」って時に「結果以外は見ません」だと、これは放置プレーじゃないですか、ということです。
安定して目標達成するメンバーは何が違うのか?
じゃあ、何をやったらいいのっていうことなんですけど、行動の質をしっかり上げにいきましょうと。まず、どういう方向に行動の質を上げることが、行動の質を高めることになるのか。ここで5つ、出したいと思います。

上流の原則。受注間際、下流の状態よりも案件発生段階、上流で実質的な決着をつけていくと。どういうことかっていうと、安定した目標達成するメンバーは、案件が発生した段階で、ほぼ決定的なところを押さえにいく。見積もりを出すとか、価格交渉とかでがんばるっていうのは、達成が不安定なメンバーのやることです。だから、なるべく上流で決着をつけにいこうということですね。
そして間接の原則。今すぐのお客さまだけを大切にしていると、すぐリストが枯れますし、毎回毎回、自転車操業で直近の目標を追いかけることになります。ですから、そのうちのお客さまを大事にすると。
そして、悲観の原則。たぶんうまくいくという楽観だけだと、やっぱり、うまくいかなかった時に困ってしまうわけですから、うまくいかないリスクは何かという悲観で考えるということです。
そして分散の原則なんですけど、一部のロイヤル顧客に売上を依存するのではなく、顧客数を増やしておく。すなわち分散するということですよね。
そして、先行の原則。期末にがんばるのではなく、期初に貯金を作っておくということです。こういうことができている人は、やっぱり安定して達成することになります。