避け続けると会話は「怪物化」する
僕も過去に、「避けていたせいで、必要以上に巨大な“怪物”にしてしまった会話」が何度もあります。その場でちゃんとやっておけばよかったのに、後になって「なんであの時やらなかったんだ」と思うようなやつです。
この手の会話は、「回数を重ねる」と、本当に変わります。「リストアップして、どんどん仕掛けろ」という意味ではなく、避けられない会話があるのだと受け入れて、それに1つひとつ向き合っていくうちに、感覚が変わります。
チームの空気を変えるのは「向き合ってくれる」という実感
僕が昔、空港やレストランでスーパーバイザーをしていた時は、何か問題が起きても「マイクが何とかしてくれる」と周りは思っていました。それはヒーローみたいに「僕が全部解決してくれる」という意味ではなく、「マイクはちゃんと向き合ってくれる」という意味です。
話を聞いてくれる。相手の立場に共感しようとしてくれる。全部の側面を理解しようと時間を取ってくれる。最初の頃の僕が、その会話の最中に落ち着いていたかというと、ぜんぜんそんなことはありません。
でも、そういう会話のあと、相手からのリスペクトが一気に増えるのを感じました。チーム全体と話した時も同じです。「この人、本気で向き合ってくれている」と伝わった瞬間、空気が変わるんです。
他のことへのパフォーマンスにも影響してくる
ここからは、「避けていることの隠れたコスト」について話します。
まずは自分自身へのコストです。その会話を後回しにしている間、あなたの中には消えない緊張がずっと居座ります。電源を切っても完全には消えないような、うっすらとしたストレスです。
税金の締め切りを、ちょっとずつ後回しにしている時の感覚に近いかもしれません。「まだ大丈夫」「来週やろう」と思いながら、そのことが頭のどこかでずっと重くのしかかっている。その重さが、他のことへのパフォーマンスにも影響してきます。
難しい会話を避けている時、僕たちは反応的になりやすくなります。イライラしやすくなったり、人に対して気が短くなったり、我慢できる幅が狭くなったりする。頭の上にいつも雲がかかっているような状態です。
さらに、その問題を「避けるための動き」に、たくさんのエネルギーを使うことになります。その人との接点を意識的に避けてしまったり、その人に任せるべき仕事を、別の誰かに回したり、自分で抱え込んだり。
こういった回り道は全部、時間とエネルギーを食います。その分、大切な人や家族との時間に使えるエネルギーが削られていきます。
沈黙がチームの「基準」を下げる
次に、チーム全体へのコストです。あなたが黙っているあいだに、チームの「基準」は静かに下がっていきます。誰も口には出さないけれど、「このくらいでいいんだろうな」というラインが、じわじわ低くなってしまう。
他のメンバーは、そのギャップに気づき始めます。「何かおかしい」と感じる。あなたの雰囲気が変わっているからです。もし問題が「締め切りを守らない」ことだとしたら、あなたの沈黙は、チームにとって「暗黙の許可」に見えます。
「締め切りって、守っても守らなくてもそこまで変わらないんだ」、「この日って書いてあるけど、別に1日や2日遅れても平気なんだろうな」。こんな受け取られ方をしてしまいます。
本当はそうじゃないのに、あなたが何も言わないことで、「そういうルール」ができてしまう。それが、「話さなかったこと」の影響です。ここで、自分に問いかけてほしい。「自分がその会話をしていないせいで、ほかの誰が行動を変えざるをえなくなっているのか?」
リーダーとしての「できる感」を失っていく
最後に、「リーダーとしてのコスト」です。難しい会話を避け続けると、自分自身の「できる感」を失っていきます。「自分はこういう場面をちゃんと扱える」と信じられなくなり、
そのうち「自分は難しい場面を処理できないタイプなんだ」と思い込んでしまう。
さらに、上司や経営陣から見ても、「難しい局面を任せにくい人」になってしまう危険があります。気づかないうちに、「対応すべき問題を扱えない人」というラベルで見られ始めてしまう。
ここで、1つ僕が好きなフレーズを紹介します。「言葉にしない期待はあなたの中に残り続け、チームのみんなは失敗して初めてその期待を理解することになる」。これがまさに、「話さないこと」の正体です。
やりがちなミス1:完璧なタイミングを待つこと
次に、「避ける時にやってしまいがちな3つのミス」について話します。1つ目は、「完璧なタイミングを待つこと」です。
ちょっと耳が痛いかもしれませんが、完璧なタイミングなんて来ません。完璧な日も、完璧なコンディションもない。待てば待つほど、その会話は重くなり、余計に話しづらくなります。
だからこそ、自分に聞いてほしい。「自分が頭の中でイメージしている“よいタイミング”って、実際にあり得るのか?」
やりがちなミス2:言わないまま変化を期待する
2つ目のミスは、「何も言わないまま、相手の行動が変わることを期待すること」です。「辛抱強く見守ること」と「明確さを伝えること」を、ごちゃまぜにしてしまうパターンです。
サポートだけあって、方向性のない状態は、相手にとってはかなり霧がかかった状態です。
もし相手が、その行動や結果、状況が「許容できないものだ」と知らされていなければ、なぜそれが変わると期待できるでしょうか。
「それがあなたを困らせている」と知らないのに、相手が勝手に変わることを期待するのはフェアではありません。
やりがちなミス3:意図ではなく苛立ちに任せて話す
3つ目のミスは、「意図ではなく、苛立ちに任せて話してしまうこと」です。本来伝えたいのは、「こういう理由で大事だから、この日までにこれを仕上げてほしい」という事実です。でも、溜め込んだ結果として話し始めると、言葉の中身よりも、声のトーンや言い方が強く出てしまう。
相手は「内容」ではなく、「感情」に反応してしまいます。「怒られている」「責められている」と感じた瞬間、防御モードに入って、肝心な中身が届かなくなってしまう。
これは練習で変えられる部分です。僕も昔は、いわゆる「すぐ熱くなるタイプ」と言われていました。感情と事実を分けて扱えるようになるまでには、時間がかかりました。
でも、状況と感情を分けて見られるようになると、本当に楽になります。感情的に噛みつく代わりに、「事実ベース」で話せるようになる。事実はごまかせません。飾られることはあっても、嘘にはなりません。
ゴールは勝つことでも好かれることでもない
では、どうマインドセットを切り替えればいいか。難しい会話のゴールは、「勝つこと」ではありません。「相手に好かれること」でもありません。
ゴールは、その人やチームと、一緒に前に進める状態をつくることです。それができた時が、本当の意味での「勝ち」です。会話で論破することがゴールではありません。
だからこそ、自分に問いかけてほしい。この人、このチームが成功するために、何をちゃんと理解しておく必要があるのか。どんな期待や基準が、「なんとなく察して」ではなく、「はっきり言葉として」共有されるべきなのか。本当は、そこまで伝えていないのに、自分は「言わなくてもわかるはずだ」と決めつけていないか。
そしてもう1つ。その「居心地の悪さ」と引き換えにしてでも、守りたい結果は何か。
何が、自分のちょっとした不快さより大事なのか。この視点があると、「一歩を踏み出す」力になります。
「最初の一歩」だけ決めてみる
最後に、あなたにお願いしたいことがあります。今、この瞬間に、あなたが避けている会話を1つだけ思い浮かべてください。ずっと先送りにしてきた、でも「いつかはやらないと」とわかっているやつです。
その上で、「最初の一歩」だけ決めてほしい。全部を一度にやろうとしなくていい。その会話を「いつ入れるのか」カレンダーに入れることかもしれない。話すべきポイントを3つだけメモすることかもしれない。
そして、もし相談できる場や相手がいないなら、「どこでそのアプローチにフィードバックをもらうか」も考えてみてほしい。僕らは、自分の成長のためにも、チームのためにも、少しだけ居心地の悪い一歩を踏み出す必要があります。メンバーが問題に気づいていないなら、変えようがないのだから。
ここまで聞いてくれて、ありがとう。ではまた。