【3行要約】・人事評価は組織内の摩擦を生む原因になりがちですが、その多くは中間面談の不足と期末での唐突な評価伝達に起因しています。
・評価制度の運用では、成長フェーズの変化に伴う基準の変更や複線型キャリアパスの形骸化など、時間経過で生じる課題が増加しています。
・人事部門は制度設計の定期的な見直しを行い、管理職は中間面談で予見性を持たせることで、評価に対する納得感を高め組織との信頼関係を構築すべきです。
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中間面談で予見性を持たせる重要性
相坂幸子氏:次にケース9です。これはパフォーマンスが明らかに低いんだけれども、ご本人は「自分はやれている!」と主張をされているような場合です。このケースの場合ですが、上司の本音としては「明らかに成果やアウトプットがないので、CとDを付けたよ」というところで考えています。
しかしメンバーとしては、「もうこれ以上は無理!」「他の人だってそんなにやってないし」「現状維持は、私だってやってますよね」というような主張をされるケースがあります。発生しがちな組織としては、フィードバック、中間面談などが少なくて、期末に初めて厳しい話が出てきたりしている組織は、こういったことで揉めてしまう。
そのため、先ほど申し上げた中間面談のところで、しっかりと予見性を持たせるということが必要になってきます。あとは期初の目標設定で、きちんと期待値、「この3のレベルっていうのは〇〇なんだよ」ということをしっかり本人とつかめていないようなケースもあります。
対応する方法としては、期末面談の前に、中間面談とかをやっておくところが前提にはなるんですけれども、しっかりと事実、ファクトの部分。数字であったり、納期であったり、ミスの件数などを上司の方がしっかりと整理をして、まとめておく必要があります。

否定から入らず、まずはご本人の自己評価を受け止めた上で、しっかりとこの事実の部分と、求める水準を並べて、メンバーと上司の方でギャップを見ながら話していく必要があります。
コロナ禍で停滞していた企業も最近は右肩上がりになってきている
最近の傾向として、コロナ禍の時期は業績なんかも少々停滞していたりというところで、現状維持でも評価されていたケースがあった企業さまで、(最近では)ググッと右肩に上がってきたような場合、スピード感もだいぶ違ってきますので。
こういった上昇によって、従来と同じ仕事をしていた場合は評価が下がるんだよというところも、しっかりとお伝えをしておかないといけないのかなと思っています。
この部分を期末に言われたとて、なかなか納得いかないところもありますので、そこの部分はしっかりと、期初の部分で言っていく、人事の方々も、「今までと同じのスピード感であったり、今までと同じだと、なかなか評価はされないんだよ」というところを、被評価者研修などを行っている会社さまであれば、しっかり伝えていただくことが大切かなと思います。
等級の上限に達した高パフォーマーの処遇
最後のケースです。これはメンバーの方ですが、一般職の最高位等級で、等級の給与が上限に達している場合ですね。「A評価はうれしいですが、結局、賞与のみの反映で、給与は昇給や基本給の改定はされませんよね」というケースです。
(スライドを示して)ここの図で示していますが、一般職の4等級で、ここ以降は管理職になってくるものですから、ポストオフしないと、昇給できない状況です。
この方については、上限の37万円になっている。昇給としてはA評価を取った場合、本来であれば1万円加算されるんだけれども、(この方の場合は)加算されない。月例は動かないといったような状態のケースですね。

こうなると、上司の方の本音は「ポジションが空いていないので、昇格させられないんだよなぁ」と。メンバーの気持ちとしては、「がんばってもがんばらなくても一緒だよね」というところで。
A評価でハイパフォーマーの方にもかかわらず、モチベが下がっていってしまうというような状況ですね。発生しがちな組織としては、人材ポートフォリオと要員計画と、評価制度が十分に連動ができていない。あと、管理職に昇格する道しかないような場合ですね。ポストに空きがないと昇格できない。あとは役割拡大とか、裁量、プロジェクトのアサインとかの金銭的ではない、非金銭的の報酬の設計が弱い企業さまなども、こういったケースが見られます。
3つの対処法
対応方法ですが、ここはけっこう難しくて。「管理職の方がどうこう……」というより、人事であったり経営であったり「組織として、どうするか?」というところになってくるわけです。
「基本給レンジを守るのか?」「例外で調整給などで対応するのか? 例えば、特別賞与みたいなかたちで、賞与のところで別途賞与をやる。賞与を加算をするというかたちで上乗せでしのぐのか」、もしくは「制度変更をするのか」という、大きくこの3つの方法の検討になってくるかなと思います。
上司の方や本人への対応としては、現行の仕組みの説明をした上で、「自分としては何を評価してAになったのか」というところをしっかりとお伝えをいただく。報いる方法については、ここは組織と決めていく。あとは今後の見通しであったり、非金銭的な機会を示していく必要もあるのかなと思います。
管理職以外のコースにより等級制度自体が崩れることも
ここのケースでいくと、最近の傾向として、みなさまの会社でもいかがでしょうか? 等級制度として、複線型と呼ばれている、管理職以外のコ-スを設定する企業さまも増えてきているかなと思っています。そうした場合には、マネジメントではないんだけれども、専門職というようなかたちでいくとか、専門職になる1つ手前のプール的な、そんな等級の箱として使っているようなケースもあります。
ただこの時、最初のうちはそういったかたちが機能していくんですけれども、管理職がポストオフした人が入ってくるとか、今お話ししたような「マネジメントはしないけど、専門性のある人はいれます」みたいな箱としていろいろな人が入ってきてしまうと、本来の使用の仕方がわからなくなるということが、長年経っていくと発生していきます。
そういった場合、そもそも等級制度自体が崩れていってしまっているというようなことが、その背景には見え隠れすることが多いですね。なので、そういう場合は一度、人員構成から見た現状の分析であったり、直近の評価の傾向とか……。
「評価の傾向」と申し上げたのは、これは本来はあってはいけないんですけれども、ハイパフォーマーな方が昇格ができないので昇給もできないという状況に陥っている時に、本来であればA評価なんだけれども、上司の方がB評価にして、他の方をA評価にしてしまうというような使い方をされる管理職の方も稀にいらっしゃる。
というところで、人事としては、評価の傾向をしっかりチェックをしていく必要があります。昇格の状況などもしっかり踏まえて、評価から見る等級制度の形骸がないかどうかを、しっかり見ていく必要があると思っております。
人事評価の運用は万能なものでも魔法の杖でもない
(スライドを示して)今回は、ここに挙げた1から10のケースを見ながら、評価制度のご説明をさせていただきました。

1から6の目標設定面談からフィードバック面談まで、今回お話ししたところを、少しまとめてお伝えをさせていただいております。
最後に、人事評価というのは、万能なものでも魔法の杖でもございません。運用は泥臭くて、時間もかかります。正直、評価・目標設定、目合わせ会議は、とても難しいです。しっかり等級定義を定めて、評価のところも管理職の方々がしっかり説明ができるように、管理者の研修に落とし込むというのは、本当に難しいなと感じています。
これはあくまでも「人の評価ではなくて、この一定期間の仕事の評価」になるんですけれども、それであっても難しいのが状況です。
ただ、セミナーを通して、この運用のルールというところを、1つの理屈として理解するための仕組みの話や、今回のリアルなケースというところを紹介しながら、それに対して「人事部は、どのような仕組みを作っていったらいいのか?」(ということ)を、管理職の方々を始め、組織が従業員と信頼関係を築きながら、評価に対して同意であったり、共感……。
まぁ共感って言葉はちょっと語弊があるかもしれませんが、共感を得ていただいて、少しでも歩み寄っていく。それが最終的には納得感につながっていくと思っています。
管理職の方々の負担を減らす方法を、今回もいくつかの中間面談の経験の仕方などで挙げさせていただきましたが、人事の方々の仕組み作りで対応できるところも多くございます。一方で、人事のみなさんの負担を減らす方法というところはなかなか難しくて。
今回はPMOのレベル感でお話をしていますけれども、現在の、いわゆる人事データの蓄積をしながら人材の流動化であったり、有効活用を進めていくというスピード感の中において、人事の方が行わなければいけないことというのが、本当に増えてきています。
これはもう弊社に限らず、サービスをうまく活用しながら、人事のみなさまも、組織全体も、スピード感のある現代の流れに乗った対応を行っていただければと思っております。私からは、以上となります。