【3行要約】・目標管理制度では「目合わせ会議」が公平な評価のカギとなりますが、期初の忙しさなどから後回しにされがちな実態があります。
・目標の粒度や難易度にバラつきがあってしまうと、「部署によって目標の難易度が違う」といった不満の声として現れ、組織の士気に影響してしまいます。
・人事は制度のPMOとして、目合わせ会議を通じて目標の質を揃え、収集した声を組織改善に活かす仕組み作りが求められています。
前回の記事はこちら 目標の粒度や妥当性のバラつきを調整する「目合わせ会議」
相坂幸子氏:次にいきまして、目標設定会議・目合わせ会議についてです。この目合わせ会議ですが、目的はみなさんよくよくご存じのところだとは思います。
大切なところなので今一度お話をさせていただきますと、部門・評者間で「何をどの水準で・どう測るか?」の事前の備え、目標の粒度、難易度、指標の妥当性のバラつきを減らして、期末の評価調整が必要となる状態をできるだけ未然に防ぐ、軽減させておくところが目的になってまいります。
ただ、この目標調整設定面談なんですけれども、実際、みなさんの会社では行われてますかね? どうでしょう?
評価調整会議に比べると、部門で実施しないで「管理はチームに任せてますよ」みたいな企業さまも多いかなと思っています。「それはなんでですかね?」というところなんですけど。
目合わせ会議の実施が後回しになりやすい理由
(スライドを示して)左側に評価調整会議が行いやすい理由、右側に目標設定調整会議が後回しになりやすい理由を書かせていただきました。
評価調整会議が行いやすい理由というのは、まずは処遇に直結するので、やらないと不公平とか、説明不能がすぐに顕在化する。あとは、アウトプットが数値・評点で比較がしやすいというところがあります。
一方で目標設定調整会議が後回しになりやすい理由としては、どうしても期初が忙しくて、後回しになりやすいというところもありますが、一番は、この目標がどうしても文章が中心になってくるので、横並びの比較が難しいんですね。実際に目標設定の調整会議を行っていなくても、期初の段階では問題が顕在化することってあまりなくて。顕在化してくるのが期末の評価調整会議になってくるということもありまして、どうしても後回しになってくるのかなと思います。
あと、ここに書き示してはいないんですが、日本国内の企業においてよく問題になってくるところでは、「部門裁量を大事にしたい」という会社さまも多くあります。部門裁量を大事にすること自体は、決して悪いことではないんですけれども、これはむしろ、スピードや現場への適合性という面では、望ましいことも多いです。
ただ、その裁量の中身が管理職ごとにバラバラだと、企業内で目標の質とか難易度が異なってしまい、公平性というところが揺らいでしまう。なので、部門裁量を大事にされる企業さまにおかれましては、きちんと戦略を踏まえた目標設定ができて、他部門との目線合わせというところも加味した目標を立てていくことができる管理職を育てていく。ここに少し注視をしていただく必要があろうかなと思います。
目標や実績は人事評価のためのものではなく、事業のためにある
この評価運用ですが、さらりとポイントだけお話しさせていただきます。そもそも評価運用は、事業を推進させて自己成長を促すためにあります。なので、目標や実績は人事評価のためにあるものではなくて、事業のためにあるということをしっかりと押さえておく必要があります。
目標設定とか、取り組み課題、実績について、「人事が所管だよね」というような捉え方をしている企業さまもあるんですけれども、目標管理自体が「事業のため」となってくると、左側の図のように「事業部の所管」という意識に変わってくると私は考えています。
人事は、人事評価制度のPMOとしての立場をもつ必要があるので、「何をしなければいけないか?」「適切な目標がきちんと設定されているのかどうか?」という確認とかは、人事の立場としてもしっかり見ていく必要があるのかなと思います。
目標設定に関する不満の声
次にケース2です。「目標設定の難易度や粒度がバラバラで、同じ土俵に乗せられない」。目標設定調整会議・目合わせ会議でよく挙がるコメントでございます。(スライドを示して)下にもいくつか載せさせていただきました。
「管理職・課長・部長の方々は、どういった視点で見ているのか?」というところは、人事の方々もよく耳にしているところですし、人事自体も期初のところでしっかりと押さえておかないと、期末の評価会議で揉めるという経験をみなさんされていらっしゃるかなと思います。ここではいくつかコメント、リアルな言葉を少し見ながら説明をしていきたいと思っております。

(スライドを示して)これは「目標管理制度への不満」というアンケート調査で、ちょっと古いもの、2021年のものなんですけれども、見ていただくと、上位のほとんどに「目標設定に関する不満の声」というものが挙がっています。
「部署によって目標の難易度が違う」とか「同じポジションでも、人によって目標の難易度が違う」とか、あとは「明確化することができない業務がある」といったような目標に関する問題が多いわけなんですね。

なので、目標の目合わせ会議の時には、管理職の方々からもいろいろなコメントが出てくるというところなんです。
いろいろなコメントが挙がってくるんですけれども、これに対応していく時に、スライドでお示ししたように、「粒度の違い」とか「業務記述じゃないか」とか「定性表現」とか「等級定義との不整合」みたいなカテゴリで区分しておりますけれども、少しカテゴライズしながら、自社の傾向を捉えていかれるといいのかなと思っています。
目標設定調整会議でよく出てくる声と修正方法
左側に「目標設定調整会議でよく聞く声」を挙げております。右側に「その場での直し方」ということで、少しルールを抜粋したかたちではありますけれども、示している表になっています。
例えば、上から2つ目の「業務記述」ですね。これは「〇〇を実施」とか「〇〇を運営」というような記載だけで「誰にどんな価値が出るのか?」が不明な場合。このような表現というのは、比較的コーポレート部門で発生しがちかなと思います。これは、実施することが本来の目的だけではないと思われますので、きちんと「誰にどんな価値が出たのか?」という成果物であったり、数値であったり、期限であったりを明記、追記していって、評価できる目標に設定する必要があります。
あと、みなさんがけっこう悩まれるところで、定性表現ですね。例として「主体的に取り組み、担当領域の課題を自ら見つけて改善する」みたいな目標を立てるケースがあると思います。でもこれは評価できるかというと、なかなか今のこの文言だけでは評価がしづらいかなと思っています。
じゃあ「行動例としてどういうふうにこれをやっていけばいいの?」というところですが、一例としては、期間を入れる。毎月1回、成果は「課題を1件提案して、関係者の合意を得て、実行まで進めて」というところ。観察点というところでは、3ヶ月後には成果を(出す)。例えば時間の軽減であったり、品質であったり、件数であったり、定量的なところもしっかりと交えながら設定をしていただくとよろしいのではないかなと思います。
こういうかたちで、ルールというところも少し参考にしていただきながら、目合わせで出てくるコメントの対応をしていっていただくといいかなと思っております。
その場しのぎの対応ではなく、データとして活用する
目合わせ会議のところでお話しさせていただくと、みなさまの会社ではどんなふうに行っていますか?
ものさし、基準になるような等級定義というところを、しっかりと資料などに交えて、等級定義の提示されたものを見ながら、それに対して「目標はどうなのか?」と見ていかれていますでしょうか? どうでしょう。
そういうかたちでやっていくと、よくあるケースとしては 、等級定義があまりにも広い定義なために、評価の中で目合わせとして使おうと思うと、なかなか使えないというような企業さまもあります。
そういったところにおいては、例えば職種ごとに定義を策定している企業さまもあります。やはり専門性の高い職種を多く抱えているような会社さまですと、職種ごとの等級定義を設けることによって、その職種内での評価をしっかり押さえていくという会社さまもあります。
あと、いろいろな声が上がってくるんですけれども、この声をどれだけきちんと活用していけるのかというところも、人事のみなさんにとってはけっこうかかってくるところではないかなと思っております。人事の方におかれましては、管理職から上がってきている貴重な声をしっかりと記録をして、対応策について検討していく。
その結果を次年度のまた目標設定の際に活用していただけるように、研修とか仕組みでサポートしていくといいのではないかなと思います。私の人事の経験で言いますと、こういった声を「〇〇部長だから」という、個人の理由にして、その場しのぎで対応しているケースもあったかなと思っております。
せっかくの貴重な意見なので、カテゴライズしながら部の傾向・組織の傾向を捉えて、次年度に活かしていかれるのがよろしいのではないかなと思います。
ストレッチ目標の活用
(スライドを示して)ここは最後の文脈に少しありました、等級定義と不整合の対応です。原則として「同じ等級であれば、原則同じ目標を設定してください」というところが、ベースにあります。
右側の×印のところなんですけれども、理由としては、仮に同じ目標が設定されていない場合、同じ成果を同じ等級の人が上げた場合でも、結果的に評価がブレてしまうところが発生するためになってきます。なので、先ほど申し上げたような等級定義をしっかりと提示して、目合わせをしていく必要があります。

とはいえ、等級に見合わない目標を設定した場合、こういったケースもあります。「ストレッチ目標」というふうに一般的に言われるケースもありますけれども、この場合の方法としていくつかあります。
1つは「難易度が高いので、同じ求めている標準3をクリアした時には、4として加点をしていきますよ」という方法とか、あと最近けっこう多いなと思っているのが、その目標に対して難易度係数を少し掛けまして、スコア調整をするとか。
あとは目標を、いわゆるコミット評価の土台部分と、ストレッチ部分という2段組みにして、ストレッチについてを加点枠とするというようなケースを導入している会社さまもあります。