【3行要約】
・プロダクトマネージャーは多くの関係者との間で「孤独な戦い」を強いられがちですが、そこには組織的な課題が潜んでいることが多く、期待と権限のアンバランスが原因となっています。
・TDCソフトの山田氏は「役割やゴールの違い」を理解することで孤独を再解釈し、信頼されている証と捉え直すことができたと語ります。
・プロダクトマネージャーは自身を「チームの中の1つの駒」として客観視し、孤独を前向きな力に変えることで、組織を導くことができると提言します。
プロダクトマネージャーの孤独と戦う実践的アプローチ
山田和宏氏:それでは、このセッションは「太陽はひとりだけ?」というテーマで、TDCソフトの山田がご紹介いたします。

今回は、私の過去の経験をもとに、孤独な中でどういうことが起きて、どう立ち向かっていったかを、実践値、経験ベースでお話ししようかと思います。
テクニカルな内容というよりは、マインドセットなどの内容になりますのでお付き合いいただければと思います。
簡単に会社の紹介と、自己紹介をいたします。まず、当社はTDCソフト株式会社と言いまして、創業60年を超えるSIerです。金融などを中心に、ほとんどSIでやってきている会社になります。
私はそこに新卒で入り、10年ほどエンジニアとしてやっておりまして、その後、自社のクラウドサービスのプロダクトマネージャーに任命されています。

担当しているのがB to B向けのサービスで、ストレスチェックを扱う「M-Check+」、あとはワークフローのサービス「Styleflow」などをやっておりまして、Styleflowはレビューの口コミサイトなどでもかなり良い評判をいただいているものになっています。
最近はプロダクトマネージャーから少し離れまして、デザインやセキュリティなど、当社の中で新しい事業を推進していく立場になっています。
ステークホルダーが多く、それぞれ言うことが違う苦しい状況
本音はこの後出てくるんですけども、一言で言うと、本当にステークホルダーが多くて、みんな言うことが違うので、誰かに賛成していると誰かに反対しているような、かなり苦しい状況でした。これ、みなさんもあるあるかなと思います。
先ほどSIerと紹介したんですけれども、当社の中でのプロダクトマネージャーがどういった立ち位置かというところをご紹介したいと思います。
組織としては一応、15年ぐらい前からあるんですけれども、立ち上げ当初はほぼみんなが兼務でスペシャリストはいませんでした。独学でかじった人たちをなんとかかき集めてやっている状態です。上司や経営層もずっとSI畑の人なので、プロダクトの知見がありません。なので、やることはたくさんあるけれども、いわゆる有識者に気軽に相談できる立場ではありませんでした。
「じゃあ、なんでそこでプロダクトをやっているんだ?」というところなんですが、これは経営戦略的なところがありまして、やはりSIですと、どうしても人月モデルのビジネスなので、そこから成長するためには新しいビジネスモデルを作りなさいと。サブスクリプションなどで、人に依存しないモデルを作るんだという経営からの熱い期待があって作られた組織です。
ただ、実験的に作られているので、期待は大きいんですが、実際のコストやリソースなどの割り当てはなかなか渋いような環境でした。
プロダクトマネージャーが直面する3つの壁
そういうところで、大きく3つほど困難、壁がありました。1つ目が「熱量のギャップ」。2つ目が「意思決定の多さ」。3つ目が「板挟み」。これだけでも「あー」って想像できるところがあるんじゃないかなと思います。

熱量のギャップですが、先ほどステークホルダーがいろいろいたんですけれども、相談すると、何かしら言ってくれる人がほとんどなんです。
多いんですけど、「こうしていこうよ!」「仲間だ!」という感じよりは、「こうしたほうが良いんじゃないの?」とか、「普通はこうだと思うよ」という評論家的な感じで、当時の私は受け止めていて、「うーん」と思っていました。
根拠を求められる苦しみと周囲とのギャップ
次に、意思決定の多さです。前例が少ない中で、やらなくてはいけないことはたくさんあって、そのたびにゼロから考えなくてはいけない苦しみはあったんですけれども、その中でも特に感じていたのが、上司や経営層などに「こういうことをしようと思います」って持っていった時のことです。「じゃあ、それはやる根拠は何なんだ?」と。「それで本当にうまくいくのか?」とよく聞かれました。
先ほどの話のとおり、うちは前例がないのでわからないから試したいんだけれども、そう言われるとなかなか前に進まない苦しみもけっこうありました。
最後、板挟み。これが一番ですね。先ほどお伝えしたように、いろんな関係者のところも調整しなくてはいけないし、コストやリソースが少ない中でバランスを取らなくてはいけない。「当然、こういうバランスを取るのがプロダクトマネージャーの仕事でしょ?」と。
それはそのとおりなんですが、当時の私は、「それにしてもちょっと、みんな好き勝手に言い過ぎじゃないですかね?」と思っていました。その時は「なんて人ごとな組織なんだ」と思った時もありました。

今、よくよく振り返るとですね、これは個人の問題というよりは、組織的な課題が実は大きかったんじゃないかなと思います。
先ほど言ったように「新しいモデルをやってくれ」と、期待値はすごく高かったんです。ただ、それに対して権限や割り当てが少ない。そうなってくるとどうしてもひずみが起きるので、今思い起こせば、期待値と権限のコントロールがやれていればよかったんだろうけど、当時の私はそこに気づく余地もありませんでした。
組織としてはコミットされていたので、本当に誰も付いてこない孤独というよりは、誰かしらはいるんです。でも、なんだか自分とちょっと距離を感じるところで、周りに人がいるからこそ、より孤独感を持っていた時がありました。もしかしたら、みなさんにも通じるところがあるんじゃないかなと思います。
葛藤から抜け出すきっかけ
そんな中で、私がどこでそう感じたかというと、「やはり役割、ゴールがみんな違うんだ」というところに、あらためて気づくきっかけがありました。
ついつい無意識のうちに、自分と完全に同質のクローンみたいな存在を助けに求めていた。当然、そんな便利な存在はいないわけで、自分で勝手に失望して負のスパイラルに陥っていました。
そこで、「じゃあ、違うんだ」というのに自分なりに気づいて、「じゃあ、どう違うんだろう?」と整理してみました。これも当たり前っちゃ当たり前なんですけども、当時の私にとっては、けっこう目からうろこみたいなところがありまして。
ちゃんと当たり前のことを書き出してみると、「みんなの責任範囲はこうなのかな?」とか「役割はこうなのかな?」と考えていくうちに、好き勝手に言っていた人たちは、あくまで自分の責任の中で最大限の貢献をしようと考えてくれていたのかなと、あらためて思うようになりました。
孤独を「信頼の証」として捉え直す
そう考えると、意外に悪い会社ではないんじゃないかなと、ここであらためて気づきました。こういった気づきをしっかり書き出すところが大事だなというところが、私のスタートラインでした。「じゃあ、もっとここから先、どうポジティブに変えていこうか?」という気持ちになっていきました。
そこで、達観って言うとあれなんですけども、正直、同じチームで同じ熱量の人は増えないというのは、実感としてあります。ただ、これはネガティブな意味ではありません。
やはりマネージャーはそこの中で一番大事なポイントなので、孤独に感じるというのは、信頼を失った状態ではなく、しっかり信頼を得て、役割を任せられているからこそ唯一無二の存在になっている。そのように自分の中であらためて解釈し直して、「よし、がんばっていこう」となりました。
メタ認知を活用した自己把握
とはいっても、それはあくまで自分が変わっただけなので、周りとの関係性は変わっていない状態です。そんな中でどういうふうに取り組んでいったか。ここからが本日の主な話になってきます。

当時からメタ認知という言葉があったかはわからないんですけども、客観的に自分を捉えることをすべてに適用しようとあらためてやってみました。
最初の、プロダクトを0から1にするというところは、パッションやエネルギーが非常に大事なんだなと思っています。
ただ、そこでプロダクトの芽が出て、そこから大きくしていくとなった時には、1人の力だけではどうにもならない。チームとして一番最適な行動ができるようにするためにはどうするか。
それを実現するためには、自分自身もそのチームの中の1つの駒として客観的にアプローチしていく。そういったところが大事だと考えております。