【3行要約】・メンタルケア面談の重要性は認識されていますが、効果的な実践方法がわからないという課題が多くの管理職にあります。
・浅井隆志氏は、社員のメンタル不調が増加する中で「相手の言葉をそのまま返す」手法の有効性を実証。
・管理職は第三者による定期面談と自責的行動を引き出す質問技術を身につけ、組織のコミュニケーション活性化を図るべきです。
前回の記事はこちら メンタルケア面談ですぐに使える質問
浅井隆志氏(以下、浅井):メンタルケア面談のコツは、言葉で説明してもなかなかわかりづらいので、今日は簡単なデモで、みなさんにお見せしたいと思っています。では、うちのアシスタントの古内さん、いらっしゃいますか。
古内亜希子(以下、古内):はい。
浅井:古内さん、よろしくお願いします。
古内:よろしくお願いします。
浅井:今回、デモなので、あまりガチの重い話をいきなりされても困るので(笑)。
古内:(笑)。
浅井:半分くらいリアルで、少し温度感のある内容でお答えいただければと思います。ちなみに面談の方法として、すぐに使える質問のきっかけを僕のほうで用意していますので、みなさんも、このとおり使っていただければ大丈夫です。

ポイントは、古内さんの回答に対して、僕がどう返すかです。相手が使っている言葉をそのまま返したり、言葉や表情から感じ取れた感情を返してみたり、時には要約して返したりする。そうしたやり取りの中での、僕のレスポンスの仕方。このあたりを、ぜひ見ていただきたいと思っています。
古内さん、今のモチベーションやメンタルの状況を自己採点すると、何点くらいですか。
古内:そうですね……70点ぐらいでしょうか。
浅井:70点。これは、けっこう合格点かなと勝手に感じました。ご自身の中では、良い点数ですか、それとも悪い点数ですか。
古内:良いほうですね。
浅井:良いほうなんですね。
自己採点でマイナスをつけた要因を探る
浅井:ただ、70点ということは、100点満点で言うと30点足りていないわけですよね。逆に、その30点が足りていない理由は、どんなところにあるんでしょうか。
古内:今、営業の方をサポートする業務が多いんですが、複数の方から同時に、何個も何個も依頼をいただくと、少し負担に感じてしまうところがあります。
浅井:自分でスケジューリングして、ちゃんとやろうと思っていたところに、方々から一気に「わーっ」と来る感じですよね。ちょっとイラッとするというか、「もう……」みたいに、もどかしい状況になったりしますよね。
古内:はい、そうですね。
浅井:この状況が改善されるとしたら、どんな状態でしょうか。
古内:依頼そのものが嫌なわけではなくて、同時に来ることで負担に感じてしまうので、依頼をいただいた都度、優先順位を明確にできたらいいなと思っています。
浅井:なるほど。依頼はちゃんと受けるけれど、自分の中でプロセスというか、「何からやっていけばいいのか」が明確になっている状態が理想なんですね。
古内:はい。
浅井:すごく良い観点ですね。ちなみに、優先順位をつけたり整理したりするために、ご自身としては、どんなことを意識していけばよさそうですか。
古内:いただいた依頼の期限だけではなくて、その期限がその日に設定されている理由というか、背景をうかがえると、そのあと別の方から依頼をいただいた時にも、優先順位がつけやすくなるのかなと思っています。
浅井:なるほど。「いつまでに」だけではなくて、重要度や背景も含めて聞いておけば、自分の中でも整理しやすくなる、ということですね。
古内:はい。
浅井:何か、僕のほうで協力できることはありますか。
古内:時折、はまってしまう業務の棚卸しとして、その都度の重要度を教えていただけると、すごく助かります。
浅井:そうですね。毎週PDCAもやっていますし、そういった内容を書いておいていただければ、僕が定期的にフィードバックする中で、「こっちのほうが重要かもしれませんね」といったこともお伝えできますね。では、そんな進め方にしていきましょうか。
古内:ありがとうございます。
自己採点でプラスに作用した仕事の手応えや実感を聞く
浅井:合格点ではありますが、30点足りていない要因は見えてきましたよね。一方で、70点をつけられているわけじゃないですか。どういうところに手応えや実感があって、70点をつけられているんでしょうか。
古内:職種や立場に関わらず、みんな忙しくはしているんですが、どれだけ忙しくても、困りごとがあれば他人ごとではなく、自分ごとのように親身になってくれるところがすごく大きいです。ストレスが少ないという点で、70点かなと思っています。
浅井:すばらしいですね。殺伐とせずに、「みんなで仲間」という感じがあるのは、やはりうれしいですよね。今後、古内さんがもっと楽しいとか、やりがいとか……楽しいはあるかないかわからないですけど(笑)。仕事への励みややりがいを、さらに感じられるようになるとしたら、どんなことがあると良さそうですか。
古内:できれば一生働いて生きていきたいと思っているので、今後のキャリアプランというか、「何をどうがんばったら、どうなっていくのか」というのが明確になると、「がんばろう」と思いやすいかなと思います。
浅井:なるほど。今の整理で言うと、古内さんは現状、合格点はつけられる。ただ、100点満点に足りていない部分としては、仕事の優先順位を自分で判断して、交通整理していきたいというところですよね。
それから、今やりがいを感じているのは、みなさんとのコミュニケーションや絆、「仲間みんなでがんばろう」という雰囲気があるところ。今後さらにやりがいや仕事への励みを高めていくには、自分の行く先やビジョンを思い描きながら仕事をしていきたい、ということですよね。
古内:はい、そうです。
浅井:わかりました。では、その方向で一緒にやっていきましょう。
古内:はい。
メンタルケア面談では“相手の言葉や感情を受け止めて返す”が効く
浅井:ということで、みなさん。多少言葉を整理している部分はありますが、今のやり取りの流れで、メンタルケア面談のイメージは、だいたい掴んでいただけたかなと思います。
なんとなく相手の感情が汲み取れたら、「それ、楽しいですよね」とか「イラっとしますよね」とか「もやっとしますよね」とか、「うれしいですよね、わかります」といったように、相手の言葉から感じ取れた感情を、そのまま返してあげることが大切です。
それから、もう1つ大事なポイントがあります。今のデモの面談では、古内さんに「どのような環境や状態になると改善できますか?」とお聞きした時、すでに自責的な行動を挙げてくれていました。
ただ、メンタルがマイナスに落ちている方に同じ質問をすると、「周りが協力してくれたら改善できます」といったように、いわゆる他責の話が出てくることが多いんです。
その場合は、それを否定せずに、いったん「そうですね、周りの協力があったら解決しやすいですよね」と受け止める。その上で、「その中で、自分発信でできることは何でしょうか?」と、自責的な行動に少しずつ導いていくことが大切です。
結局、メンタルケアというのは、「よしよし」と話を聞いてあげて終わる面談でも、もちろん意味はあります。特に、メンタルが大きく落ち込んでいる方に対しては、それが必要な時もあります。
ただ、本当に大事なのは、ケアをしながら、少しずつ良い方向に持っていくことです。そのためには、自責的な行動を引き出していくことが欠かせません。その時に、「1人でやりなさい」ではなくて、「私も一緒に支援するよ」というスタンスをしっかり示しておく。この姿勢が、メンタルケア面談において、非常に重要なポイントになります。
メンタルケア面談は直属の上長が行わない
浅井:ではまとめさせていただきます。面談のポイントです。

メンタルケアの内容や状況にもよりますが、僕は通常、「面談は大事なので、週1回はやってください」とお伝えしています。ただ、その通常の定期面談とは別に、メンタルケア面談を設ける場合は、直属の上長ではない方が担うのが望ましいと考えています。人事の方や、他部署の先輩、他部署の上司などですね。
というのも、愚痴って、上司にはなかなか言えないじゃないですか。「うちの上司が丁寧に教えてくれないんですよ」なんて、本人には言いづらいですよね(笑)。だからこそ、メンタルケア面談は上長ではない第三者が担当したほうが、本音を吐き出しやすくなります。
もう1つ大事なのは、メンタルケア面談で話した内容は、直属の上司などに一切他言しないと、きちんと約束することです。そして、それを本当に守ること。この信頼がないと、面談は機能しません。
それから、定期的に開催することも重要です。定期的に「言える場所」があるというだけで、今週ちょっとつらいことがあっても、「また話せる機会があるから、今週は何とか乗り越えよう」と思えたりします。そうやって踏ん張れる人も多いんです。ですので、メンタルケア面談は継続的に行っていただきたいと思います。
メンタルケア面談が組織にもたらす効果
浅井:基本としては、上長による通常の定期面談を行う。その上で、人事などが担うメンタルケア面談を組み合わせる。この2本立てが、一番バランスがいいと考えています。
ただし、上長がメンタルケアも含めた定期面談を週1回きちんと行えていて、相談ごとを吸い上げ、適切なフィードバックができているのであれば、人事によるメンタルケア面談は必須ではないかもしれません。四半期に1回にするなど、頻度を下げてもいい場合もあります。このあたりは、状況や上司と部下の関係性によって変わってくると思います。
大事なのは、適切に情報が上司に上がり、それに対して上司が親身になってコメントやフィードバックをすることです。さらに、横のつながりとして、気持ちやノウハウも含めた情報共有ができていると、会社内のコミュニケーション量が一定水準で保たれます。そうすると、いわゆるコミュニケーションが活性化された組織になっていきます。

報連相をどう上げるのか、対面なのかデジタルツールなのか。上がってきた情報に対して、上司がきちんとコメントやフィードバックを返す。横の関係でも、情報共有をしたり、指摘し合ったり、励まし合ったりする。こうしたコミュニケーションを密にしていくことが、ものすごく重要になってきます。
ちなみに、こうしたことが会社内で当たり前にできているのであれば、外部研修は正直いらないと思っています。PDCAの学校も必要ありません。本気でそう思っています。
逆に言えば、こうした仕組みや制度を会社の中に作っていくことを、僕たちはゴールにしています。これらを1つひとつ、どう充実させていくのか。それが、今後みなさんの会社にとっての課題になっていくのではないでしょうか。