【3行要約】・組織内の分断は世代間や部署間など多様なかたちで表れていますが、価値観を無理に合わせるのではなく、架け橋をかけることが重要です。
・昭和型の帰属意識から、現代では組織を相対的に見る時代へと変化し、価値観の違いが顕著になっています。
・現代の組織マネジメントでは「意味」「関係」「成長」という3つの報酬を先に渡し、自発的な行動を引き出すことが分断を乗り越えるカギとなります。
前回の記事はこちら 分断型組織との関わり方
永島寛之氏(以下、永島):1つずついくんですけど、今、人と組織っていうのは分断しているんですよ。分断型組織との関わり方というのがキーなんですね。答えから言うと、分断を埋めにいくんじゃなくて、分断の架け橋をかけていくということがキーだと言われています。その理由を含めてお話していきたいんですけど。西田さんは、今いくつですか?
西田友宏氏(以下、西田):48歳。
永島:48歳。(スライドを示して)じゃあ右側に入ります。若手の人へのジェネレーションギャップはあまり感じなさそうかな? 感じる?
西田:最近感じる時があります(笑)。
永島:感じる時が出てきた(笑)?
西田:例えば生成AIの使いこなし方。「早いなぁ」とか。
永島:なるほどね。
西田:働き方の価値観というか。私は子どもが小学生、中学生と3人いるじゃないですか。やはり彼女、彼らを見ていると「そんなのできるの?」とか。ちょっと価値観違うなみたいな。それはやはりあります。
永島:なるほど。まぁ、まだ良いほうです。
西田:良いほう(笑)?
永島:リスペクトを出しているから。
西田:はい(笑)。
永島:なんだけど、ある会社さんの「ミライのお仕事」という調べが出てたんですけど。おもしろかったんですよね。若い人が、先輩に(対して)「愛社精神がすごい」「根性・ガッツで仕事をしている」(と思っている)。つまり、根拠なく「会社のために働いているって何だ?」「なんだこいつは?」みたいなことを、若い人は目上の人に(対して)思っているんですね。
西田:わかる。例えば60代、50代の人とかは「24時間働けますか?」世代じゃないですか。(スライドを示して)だから、そういうのがこの3番になるわけですね。
永島:「気持ち悪い」っていう話になっちゃう人が増えていると。
西田:なるほど。
永島:女性の回答者が多いので、若干極端になっている可能性はあるけど。今度は、我々の世代が若い人に感じることというのは「出世欲がない」「課長になりたくない」「モチベーションが低い」「仕事よりプライベートを優先する」とか、そういう話があるじゃないですか。
逆じゃないですか。「忠誠心がないな」みたいな。「なんで自分のことをやるんだ?」とかの話がけっこうあったりして。これをつないでいく。同じ考えにさせるコストってけっこう大きいので。であれば「この状態のまま、どうやって仕事をさせるか?」と。
社内の人同士の価値観は合わせる必要はない
永島:僕のよく(使う)例えがあって。お笑いコンビがいるじゃないですか。
西田:例えば? ダウンタウンとか、ロザンとか。
永島:そうそう。ダウンタウンはたぶんプライベートというか、人間関係はそれなりに悪くないですけど。仲が悪いお笑いコンビっていますよね。
西田:ふだん連絡を取らない。
永島:そうそう。楽屋は別だとか、言葉も交わしてないとか。ただ、テレビの前に出てくると、楽しそうにしゃべる。
西田:はい。いますね。
永島:僕は、極論はあれでいいと思っているんです。
西田:え!? 仲良くならなくていいってことですか?
永島:仲良くなれればいいですよ? でも、ならなくても仕事の現場でいい仕事をして、帰ったら一切付き合わないっていうぐらいでもいい。会社としては、会社の仕事をする時にベストパフォーマンスを発揮してもらって、あとは絡まないという関係性の作り方でぜんぜん良くて。だから何に苦労するかっていうと、みんなを仲良くさせようとするから苦労するんですよ。
仕事をする時の行動が合っててくれればいい。価値観までは揃える必要はなくて。極論を言うと、仲が悪いままでも、仕事をちゃんとやっててくれればいいよ。
西田:そこはわかる気がします。例えば、部門が違うと、同じことでもアプローチが違ったりするじゃないですか。気になる点が違ったり。別にそれはそれでいいから「お互いプロとしてやろうよ」と。
永島:気になる点は解消したほうがいいと思うけど。
西田:なるほど。
永島:価値観は無理に合わせる必要はなくて。価値観のことで、声が大きい人に「(声を)小さくしろ」って言う必要はない。大きいまま、2人がうまくいく方法を考えていく。
分断してきた組織の架け橋をどうかけるか?
永島:例えば、今の若い人は成長環境を求めているんですね。昔は、会社の知名度とか規模が大きければ、いくらでも「あそこに入れば成長できるだろう」と(思ったけれども)。
西田:そうですね。思いますね。
永島:ソニーは実際に成長できる場だからいいんですけど、(そうでない会社でも)その前提で盲目的に入ってくるじゃないですか。
なんだけど、今の人は「本当か?」「そこが成長できる現場か?」というのを、先ほど言ったように、面接の中で確認していくんですね。
西田:なるほど。付き合いだけじゃないですもんね。

例えば新卒からベンチャー企業に入る人とか。それも別に悪くないと思うし。そういうことですよね。大企業でもいいけど、結局何を持って「自分の成長ができる」と感じるか。
永島:そうそう。だから、仲良くさせようというところから、「どうやったらうまく付加価値を一緒に出してくれるか?」「コラボしてくれるか?」っていう視点でやると、けっこういろいろなことができるんですね。それもあとで……。
西田:ぜひぜひ。おもしろいです。
永島:「価値観が合いそう」とか「共感できる」とか。価値観を揃えにいくんじゃなくて、「ああいう価値観は共感できるよね。別に自分はそうなりたいわけじゃないけど」と。経験・勉強したことが活きていくことが必要になってくる。成長する根拠を、常に上司やマネージャー、人事は与え続けなきゃいけないということですね。

この年代以外にも、いろいろな部署ができましたよね。ITの部署とか、20年前にはあまり大きくなかったところが中心になってきた。仕事の内容が複雑化して、隣の人が何をやっているかわからない状態とか。そんなようなことで、実は組織って分断してきているんですね。ただ、それを埋めにいくコストを払うのであれば、「架け橋をどうかけるか?」ということを考えていくということなんです。
関係の質が低下して生まれた「静かな退職」
永島:関係の質が低下していくと、最近は静かな退職をする(ようになる)っていう人が多いんですよ。
西田:静かな退職とは、具体的にどういう?
永島:要は、意欲とか向上心はないんだけど、言われたことはしっかりこなす。だから、評価も5段階の真ん中。4は取りにいっていない。「2にならないためには最低限何なのか?」「コスパのいい仕事をしよう」と。年配者は「こいつは見るからに大人しくて、やる気ないなぁ」「何のために生きているんだよ?」みたいに見るんだけど。
その人は、例えば週末はサーフィンの大会とかに出たりして(笑)。実は静かでもなんでもないんです。ただ、会社の中で静かに、恙なく過ごすことを選択しているという人が増えているということですね。
西田:これは日本だけですか? それとも世界的にそうなんですか?
永島:それを言うと長くなっちゃうんだけど。中国にこの前行ってきたんですけど、同じでした。「こういう人が増えている」って。「なるほど」って言っていたので、まぁ増えているみたいですね。だから、会社目線で言えば「やる気のない人」。ただ、人生で見たら「会社以外のところにやる気を持っていて、全体としてはやる気のある人」ということ。そういう人がやはりけっこう増えてきていて。
西田:お金を稼ぐために仕事はするが、別にそれは生きていく手段としてであって。趣味とかは違うところにあると。
永島:そうなんです。これは価値観じゃないですか。ただ、会社としては1人なのに、0.8人分ぐらいしか仕事をして(もらえて)いない。
西田:もったいないですね。
永島:プラスαで、場合によっては1の仕事を本当は1.2とかでやってほしいんだけどということになるので「この人たちとどう仕事していくのか?」というのも、1つのキーになるんですよね。
西田:キーになりますね。