【3行要約】・ビジネスモデル・キャンバスは広く知られているが、実際の活用では「項目埋め」に終始し、質の高い事業構築に至らないケースが多発しています。
・本記事では、現在のミドルマネージャーには外部リソース活用やM&A提案レベルの高度なスキルが求められていると指摘。
・企業は単なるフレームワーク活用ではなく、ビジネスの「解像度」を上げ、部門横断的な共通言語として活用することが成功のカギとなります。
前回の記事はこちら 「ビジネスモデル構築」 段階が成否のカギ
中川遼氏(以下、中川):続きまして、このビジネスモデル・キャンバス利用の実態というところで、じゃあ果たして現場でビジネスモデルがどのような扱い、どのようなものとして実施されているのかについて、この後のトークセッションの一題材としてご紹介させてください。
今ご覧いただいているのが、冒頭にご紹介させていただきました、弊社が2年前に出版した
『3つのステップで成功させるデータビジネス 「データで稼げる」新規事業をつくる』で実施したアンケートの結果です。データビジネスと銘打ってはいるんですけれども、もうざっくりと新規事業に関してのアンケートというふうにご覧いただければなと思っています。

左側がビジネスの成否ですね。データビジネスをあらためてその新規事業という取り組みをやっていて、成功したかしていないか、目標を達成したかどうかというところです。
左側を見ていくと、達成しているとか成功している企業さんの割合が34.9パーセントと意外と多いなという印象を受ける一方で、じゃあ今度課題に目を向けた時にどうかが右側です。成功した・していないにかかわらず、課題があるとご回答いただいた企業さまに対して、じゃあどこでつまずいていますか? というもののご回答をまとめた資料になっています。
見方なんですが、横軸が新規事業を考えてから作って、スケールアップして、事業化していくまでのステップをざっくり5つにまとめているものです。それぞれのグラフがつまずいているところとして特に回答が集まったところになるんですが。もうパッと見てわかるとおりですね。ビジネスモデル構築のところ、やはりここにすごくつまずきが集中しているのが見て取れるかなと思っています。
ビジネスモデル・キャンバスを実際に活用する方法
中川:ビジネスモデル・キャンバスのお話ですね。冒頭に小山先生にもご説明いただきましたが、ああいったノウハウであったり、先ほど弊社の岩泉からもご説明させていただいたような社会課題を対象とした新規事業等々というようなノウハウ本も世の中にいっぱい出ています。
ビジネスモデル・キャンバスだけでなくて、リーンキャンバス等も含めていくと、やはりビジネスモデル策定のフレームワークがけっこう広がりつつあるかなと思っています。使ったことがないにしても、聞いたことがない人のほうがかえって少ないんじゃないかなと思っています。
一方で、それらをうまく使いこなせていますか? というのが、やはり依然あるかなというのが、現場でコンサルタントとしてやらせていただく中で感じるところです。先ほど小山先生のお話の中でもチェックリスト的に使うな、というようなお話があったと思いますが。
そうは言っても、じゃあ実際に見ていくと、やはり各項目を埋めていくだけになっているのがどうしても出るなと。その結果何が生まれるかというと、右側のお話ですね。これは弊社がコンサルとして現場のみなさまのお声を聞いていく時によく集まる声ではあるんですけれども。各項目を埋めていくだけだとなかなかいいアイデアが出ない。「確かに埋めたけど、これって筋良いんだっけ」と腹落ち感がない。

しかも、担当者の目線からいくと、どうしても項目を埋めること、このシートを量産していくところが目的になってしまって、数は出るんですけど……というところですね。特に生成AIの普及でこの真ん中のところをよく聞かれるんですけど、量は出せるようになりましたと。じゃあ一つひとつの質は上がっていますか? というと、なかなかそうではないというところがあります。
そういった状況を経営層や上位層から見ていくと、やはりそれらしくは見えるんですけど。それが良いか悪いかがなかなか判断できん、というのがどうしても生まれてきています。何を申し上げたいかというと、やはりこれは、観点を抜け漏れなくちゃんと考えていくこともそうなんですけど、さっきのストーリーの項目がどうして必要なのかというところ。やはりそこをしっかりと押さえていく。
項目を埋めるための単なる枠組みだけではなくて、何をどうして考えなきゃいけないのか、その契機としてやはりこのビジネスモデル・キャンバスを活かしていかないと、どうしても腹落ち感のあるビジネスにはなかなかならないのかなと思っています。
ビジネスモデル構築で抜け漏れがちなポイント
中川:次のページ、これはよく我々が抜け漏れがちな観点というふうに整理させていただいてるんですが。項目を埋めるだけに終始してしまうようなアイデアに対して抜け漏れがちな観点と、そういった観点が抜け漏れてしまいがちな思い込みみたいなところでございます。

これがすべてではないんですが、例えばビジネスモデルの流れが左側にあった時に、やはり一つひとつ課題があって、解決策があって、それを提供すれば儲かるという話では決してなくて。例えば同じ課題でも、そこに対してお金が流れているんですか? というところですね。お金を払ってでも解消したい課題でないと、解消したとしてもお金にならないという話もあります。
仮に良いサービスを提供したとしても、やはり慣れ親しんだ方法を変えるのは難しい。そういった現状維持バイアスもあるので、そこをどう解消するかも考えていかないとなかなかうまくいかない。
逆に言うと、そういったものを考える契機としてもビジネスモデル・キャンバスを利用していかないと、ちゃんとうまくお金になるようなアイデアに落ちていかないものなのかなと我々は考えています。というところが、現場から見ている声ではあるんですが。
というのを受けて、どうですか。現場で、特に教授の立場として教えられている目線から見た時の感覚と比べてみてどうかというところに、僕は非常に興味があるんですけれども。