【3行要約】・社会課題解決型ビジネスが注目される一方、慈善活動で終わってしまうケースも多いという問題があります。
・今、SDGs以降の投資マネー流入と技術革新により社会課題ビジネスが急増しています。
・企業は「商機の発見」「ストーリー構築」「実現と発展」の3ステップで、社会課題を収益化する仕組みを作るべきです。
前回の記事はこちら 「社会課題」から新規事業を作るステップ
岩泉謙吾氏:では続きまして、我々はEYストラテジー・アンド・コンサルティングの中川と岩泉と申します。よろしくお願いします。私、岩泉と中川は、特にEYストラテジー・アンド・コンサルティングの中で、企業戦略や新規事業を担当しております。翔泳社さんから本を2冊出させていただいております。
今日お話しするのは社会課題ということで、新規事業のノウハウ本はたくさんあるんですけど。特に我々が着目しているのは2点です。1つが社会課題をベースにして、その解消とともに新規事業化するというものですね。こちらが社会課題となっております。このノウハウをふんだんに記載した本を、2025年4月に発刊させていただいております。
また、2年前になるんですけど、真ん中の業界課題というところに記載させていただいているデータビジネスということで、企業でいろんなデータが社内にあったり、商売を通じていろんな顧客データを取得されていたりすると思うんですけど。そういったものを実際にマネタイズするための手法について記載した本を発刊させていただいております。
先ほど、社会とか環境という文脈でのビジネスモデル・キャンバスというお話がありましたが、今日これからお話しするのは、先ほどの2025年4月に発刊した本ですね。社会課題で新規事業を作るという内容に沿って、要点だけになりますがお話しさせていただければなと思っています。
「社会課題解決型ビジネス」に注目する企業が増えているわけ

最初に、3つの丸が右側にあると思うんですけど。これは課題提起になっております。やはりSDGs着目以降、社会課題に対しての投資マネーが非常に流入している流れがあります。
一方で、左下なんですけど。特に脱炭素とか、非常に規模の大きないろんな社会課題を解消する技術革新も進んでおります。有史以来、今まで技術革新は何回か起きているんですけど、今、第6の波が起きていると言われています。その中身としては、当然再生可能エネルギーのようなものもあるんですが、昨今起きている社会課題は、解消しうるようなものも多いと言われています。
一方で、右側ですね。実際にその社会課題を解決するというお題目で、新たな新興企業が出てきたり、新たな新規事業を立ち上げたりするような企業も多くあります。実際にスタートアップ企業を中心にそういったもので利益を上げるような会社も出てきているのが背景としてあります。
次のページです。最近、実は我々のコンサルティング業界にも、大いなる反省があります。数年前からやはり、バックキャストで物事を考えるというようなことが非常に多くうたわれております。
例えば新規事業を考えるとか企業の戦略を考える上で、2040年とか2030年からバックキャストして考えましょうということを申し上げています。実際のコンサルティングとしても、いろんなかたちでサービスをご提供してまいりました。

2030年~2040年に出てくる社会課題とは?
一方で、正直に言うと2~3年前に行った未来予測ですね。「2030年にこうなる」とか、「2040年にこうなる」というものがすでにけっこう外れ始めています。何かというと、このメガトレンドはたぶんこのまま進行し続けるだろうと我々が思っていたものが、意外とそうでもなかった。というのが、やはり一国の大統領が変わるといきなり揺り戻しがあったり、政策が逆転したりしてですね。
例えばグローバル化はこれからどんどん進んでいくと思っていたんですけど、今そういう流れになっていないとかですね。あと気候変動に対応するために脱炭素の取り組みが進むと思ったんですけど、いったん止まっているとかですね。そういった未来予測が外れるようなケースもあります。
あらためて未来を予測して事業を考える、戦略を考えることの必要性が再度出てきているなと思っています。その時に、やはり2030年~2040年に、こういう社会課題が出てくるので、その将来の社会課題を目がけて新規事業を考えたらどうかというようなご提案を差し上げる機会が多くなっています。次のページ、お願いします。
いろいろな社会課題をビジネスにするパターンがいくつかあります。左側に4つのパターンがありますけど、基本的な考え方として、まずその社会課題があるのでビジネスを立ち上げますとかそういうケース、これが「社会課題起点」というものです。

一方で多くの上場企業が、社会課題があるからビジネスをやっているというよりも、もう既存のビジネスがあって、それを社会課題に絡めて新たなビジネスにしたいというようなニーズも多いかなと思っています。これが「既存事業起点」というものです。
あとは縦軸ですね。解決する社会課題が本当に社会課題そのものを解決しにいっているのか、社会課題から派生した課題を解決しているのかというものですね。解決を目指している社会課題がどういうレベルなのかでまた2つに分かれて、2×2の4パターンがあるなと思っています。
慈善活動で終わらせず利益につなげる3ステップ

実際に社会課題を解決しながらそれをビジネスにするのはなかなか難しいところがあります。本の中でも3ステップと定義しておりますが、最初のステップ1が、特に社会課題は解決しにいけば必ずビジネスになるものではなくて、その中に商機が見出せないと本当に慈善活動的になってしまうというものがあります。まず社会課題を解決する中にどういう商機があるのか、この商機の同質というのがステップ1になります。
ステップ2は、先ほどお話がありましたビジネスモデル・キャンバスにもつながっていくんですけど。やはりストーリーの強さや太さが本当に構想として策定しうるのかが非常に重要になっていきます。
ステップ3が、本当に実現、発展というところで、特にここが一番難易度が高いなと思っています。当然、新規事業である以上、実際に利益を生み出すのは難易度が高いことではあるんですけど。特に社会課題はどうしても、一つひとつの取り組みの規模が大きくなりますので、それを動かすというところが非常に難しいと思っています。次のページですね。
社会課題があると、じゃあそれをビジネスにしようと言って、すぐビジネスにできるかというと、そうじゃないというのがあります。当然準備に時間がかかるというのもあるんですけど、それ以上に実は社会課題をビジネスにする上で、3つの前提条件があるなと思っています。

1つが、そもそもその社会課題があって、それを解決しなければならない社会課題だと世の中に認知されないと、まずビジネスにはなり得ません。例えば気候変動も昔から同様の課題は提起されながら、数十年、対応されてこなかったというのもあります。「いよいよ気候変動による実害がいろんなかたちで出てきているぞ」ということで、これはもう社会全体で解決しなきゃいけないよねという認知が広まったのかなと思っています。
「社会課題ビジネス」の3つの前提条件
一方、2番目ですね。そもそもその解決可能な課題だと認識されないと、これはまた解決に向けたお金も動かないというところは当然あります。
3番目が、じゃあ解決のための手段があるのかということになってくるんですけど。社会課題を解決するような先端テクノロジーがある程度発展し、それが実用化されて実際に解決しうるぞということが広がっていくと、そこにまたお金が流れていって、大きなビジネスになっていきます。
この3つの前提条件が揃わないと、社会課題ビジネスがなかなか始められません。

そのためにある程度、社会課題があり、ビジネスとして立ち上げたいですと。ただ、先ほど申し上げた3つの条件が揃っていません。じゃあそれをずーっと待っていますかというと、いつまで待っていればいいんだという話になりますので。
我々が提唱させていただいているのはやはり然るべき機関、それは政府とかないしは国家レベルのものかもしれませんし、ある種の業界団体や世の中の人々ですね。そういったものへの働きかけを能動的に行っていく必要があるかなと思っています。でないと、待ちぼうけの状態になってしまいます。
一方で、社会課題を解消するというのは、今まで誰も解消してこなかったことをビジネスとしてやることになっていきますので、先行事業者がリスクを負う部分もあるんですが。どうせリスクを負うならということでルール形成の戦略を立てて、ルール自体を作りながらやっていくということですね。
そういうことをやっていけば、ビジネス的な優位性も保てるのかなと考えています。特に実行の部分でのノウハウですね。これは本当に難しいところがあるんですけど、こういったかたちで書籍の中でもご紹介させていただいております。