【3行要約】 ・管理職の負担が課題になる中、合同会社Growth Goals 代表の山田氏は、短い会話を積み重ねることで部下との信頼関係を築く「10分間マネジメント」を提唱します。
・この仕組みは日常業務の中で継続可能であり、自発化促進・上司の負担減少・ 会話の質向上・現場の混乱減少という変化が期待できます。
・山田氏は、マネージャーは支援者の役割から「応援と自律促進」する役割へと転換が求められており、その実践が部下の成長とマネージャー自身の市場価値向上につながると提言します。
前回の記事はこちら 「10分間マネジメント」の3ステップで現場に生まれる変化
山田弘志氏:(「10分間マネジメント」の応援・支援・自律という)このスリーステップを1回1回、10分間回し続けると、現場には次のような変化が起きていきます。
(スライドを示して)まず1つめが構造の変化です。自発化ですよね。部下が次に何をするかを自分で決めるようになるため、指示を待たなくなります。

2つめが、上司の負担が減るということです。今は、本当に上司が忙しくなってきています。なぜならば、任せきれないからですよね。でも、これによって判断を部下に任せられるようになるので、上司が全部を抱え込む必要がなくなり、マイクロマネジメントをする必要がなくなります。
そして3つめですね。会話の質が上がる。作業の確認や叱責だけではなくて、意思決定や成長の話が中心になっていきます。そして最後に現場の混乱が減るんですね。やるべきこと、優先順位・判断基準が10分の中で毎回整えられるので迷いや手戻りが少なくなっていきます。
これは、関わり方を変えただけで起きる構造的な変化です。10分間マネジメントは、現場を無理なく強くしていくための続けられる仕組みということです。
部下の特性を見ながら指導内容を調整していく
実際にマネージャーのみなさんと面談する機会がある中で「これを実践した結果どう?」と聞くと、「部下の反応が変わった」と言う人は多いです。「『○○さん、変わりましたね』って部下が言うようになりました」って。
「どう変わったの?」って。「いや、なんだかよくわからないですけど、変わりました」「それって良い変わり方なの。悪い変わり方なの」って。「いや、よくわからないですけど、良い変わり方だと思います」っていう話を笑いながら話してくれた上司がいました。
本当に自分が型化をして、型を実践していくだけで、部下の構造が変わってくるんですね。それを実感することによって「あ、効果があるんだ」。さらにそのスキルを高めていく循環になっていく。これがこのインターアクションマネジメント(IM)、10分間マネジメントの非常にいい特徴だと思っています。
そして、もう1つ。今回は触れられないんですけれども、これに部下の特性というものも見ていく。判断軸として入れていくことも実際の研修では入れたりしています。
マネージャー自身が自分の特性を理解しながらも、メンバーにも特性があります。例えば自己主張が強いのか弱いのか。思考系なのか感情系なのか。そういったマトリックスで見ていった時に、思考が強くて自己主張が強い人はこんなタイプだなってなった時には、このインターアクションマネジメント(IM)のメリハリをつけていくイメージですね。
事実ベースの振り返りができる
最初にしっかりと共感をしてあげたほうがいい人もいれば、しっかりと理論・目的を説明して、共有もそこそこにしながら、しっかりと選択案作りに行ったほうがいいとかね。そういったものも加えていくと、よりマネジメントのレベルは上がっていきます。
実際の研修ではそういったものも組み合わせることによって、さらにこのインターアクションマネジメント(IM)、10分間マネジメントのスキルの精度が上がってくるということもしております。
ここでぜひ押さえていただきたい一番のポイントがあります。これは、このやり方を振り返ることで、上司と部下が事実を共有できるという点です。どんな状況だったのか、どんな選択肢を検討したのか、どんな合意をしたのか、どんな支援を行ったのか。これが毎回の対話の中で言語化されて積み重なっていきます。
だから評価の場では「あの時、こういう話をしましたよね。この選択を一緒に決めましたよね」と、事実を一緒に振り返ることができるんですね。これが非常に重要です。評価の納得性というのは、いかに事実で話ができるかですよね。これが評価の原則でいう、事実を押さえるということになります。
そして、評価の原則でいう範囲の原則があります。評価の基準になるのは、あくまでも仕事上のやりとりだけだよねと。その人の特性とかは評価の基準にならない。ついそれを入れてしまうから、部下の納得性が低くなっていく。
フェアな評価につながる効果も
(スライドを示して)インターアクションマネジメント(IM)、10分間マネジメントで評価の基準になるのは、この図に示されているやりとりの範囲だけということが明確になります。

つまりオープニングで確認した状況、合意決定した内容、変更計画として決めた行動、プロセス評価で確認した結果、この対話の中で扱った範囲が、そのまま評価の対象になっていくんですね。
逆に言えば、ここに含まれていないものは評価に入らない。本人の性格とか上司との相性とか話しやすさとか印象の良さですね。これらは評価には一切反映されません。評価されるのはあくまでも、このプロセスの中で何が起きたか。何を合意し、どう行動したかという事実だけです。これが10分間マネジメントで、評価から主観を切り離せる理由なんです。
上司は「私はこう感じた」ではなく「私たちはこのやりとりを積み重ねてきた」と説明できるんですね。上司がフィードバックにおいて一番重要なのは、説明責任を果たすことです。説明責任が果たされないと、部下からの信頼を一気に失います。なぜこの評価なのかをプロセスとして部下が理解できる。だから評価が納得に変わっていくわけです。信頼が評価される。
“フィードバックの材料がない”を防ぐ習慣
10分間マネジメントは、評価を厳しくする仕組みではなく、評価を事実ベースでフェアにする仕組みと捉えてもらったらいいと思います。
上司の大きな悩みである部下への評価。いざフィードバックをしよう、評価をつけようとした時に材料がない状態。けっこう多くの上司の方(に経験)があります。その結果、よくあるのが直近の成果に目がいく期末効果と言われるものだったり、象徴的な動きに目がいってしまうハロー効果であったり。そんなバイアスがいろいろ起きてきます。
それを防ぐ意味でも、こうした型をしっかりと実践していく。そして事実をしっかり押さえていき、説明責任を果たしていく。そうしたことが上司への信頼につながりますし、部下の側からすれば、「説明責任を果たしてもらっている。自分はこのやりとりの中で成長していっている」という実感が持てるようになります。
マネージャーをめぐる厳しい環境がある
(スライドを示して)最終まとめになります。お伝えしたいことをシンプルに3点でまとめます。1つめは、支援だけの時代はもう終わってしまいました。やり方を教える、助ける、管理する。それだけでは、もう人は動かなくなっています。

2つめは、応援のベースにあるのは、日頃の好意的関心です。部下の価値観や願望に関心を持ち、その人の可能性を信じて関わる。この土台があって初めて、支援も自律も機能していきます。
そして3つめです。10分間マネジメントは特別なスキルではないです。忙しい現場でも続けられ、部下が自分で動き、上司の負担が減る。マネジメントとは、部下を動かす技術ではなく、部下が自分で動き出す環境を作ること。そして誠実なフィードバックを実現する根拠となります。
10分間マネジメントは、その環境を誰でも無理なく再現できるかたちにした次世代マネジメントの仕組みと捉えていただければいいと思います。
そしてこの10分間マネジメントの中で私が一番伝えたいことです。正直に言いますと、今のマネージャーの役割は決して目指したい役割にはなっていません。忙しい、自己犠牲が求められる、責任は重いのに成長実感はない。役割給はつくけど、その見返りに自分のキャリアをすり減らしている。だから今、マネージャーをやりたい人がいないという状況が起きていると思います。
これは個人の問題ではなくて、マネージャーという役割が報われない構造になってしまっているからなんですね。だからこそ、この10分間マネジメントの意味が出てきます。
10分間マネジメントは、ただ部下を楽に動かすための手法ではなく、どこでも通用するマネジメントスキルを日常の仕事を通じて身につけられる仕組みなんですね。人を自律させる力、判断を委ねる力、短時間で本質を引き出す力、組織を構造で動かす力。
マネージャーが市場価値を高める成長の機会
これは会社が変わっても、環境が変わっても使える力です。だから、この10分間マネジメントを使って、自分自身を鍛えていく。これによってマネージャーという役割が自己犠牲の役割から、自分の市場価値を高める役割に変わります。
そんなスキルが身につけられるのであれば、マネージャーになりたい、実践したい(という方も出てきます)。それを可能にする仕組みです。
マネージャーを消耗させるための仕組みだけではなくて、マネージャー自身を成長させるため。マネージャー自身が「あ、自分はマネージャーをやりながら成長していけている」「ビジネスパーソンとして市場価値が高くなっている」。それが実感できるのが、このインターアクションマネジメントであり、10分間マネジメントなんですね。
先ほども話があったように、自分の行動によって部下の行動が変わっていく。そうすることによって、スキルとしてのマネジメントを自分が身につけていく。その充実感が、マネジメントというものへの興味を高めていくし、やりがいも高めていきます。
その結果、マネージャーはやらされる役割から、目指したい役割に変わっていきます。これが今日お伝えしてしたかった10分間マネジメントの本当の価値になります。