【3行要約】 ・組織の成長に欠かせないリーダー育成だが、新任リーダーは孤独や不安を抱え、十分なサポートを得られていないケースが多発しています。
・「斜めメンター」という制度では、部署を超えた先輩リーダーとの関係構築により、評価を気にせず本音で相談できる環境が生まれています。
・企業はリーダー育成のために「斜めメンター」を含む5つの支援システムを整備し、リーダー自身も助けを求める姿勢を持つことが重要です。
前回の記事はこちら 直属の上司ではない「斜めメンター」の効果
森隆剛氏:(リーダーを孤立させないための5つの制度デザインの)2つ目が、「斜めメンター」です。先ほどの話ですが、とはいえ直属の上司に対してはなかなか相談しにくいという声も非常に多く聞いております。ここで、斜めメンター。つまり、「ご自身と利害関係がない部署で、過去にリーダーを経験されている方との1on1をどうデザインするのか?」。こちらも非常に有効であると考えております。
会社名はちょっと割愛させていただきますが、某食品メーカーさまの人事の方とお話をすることがあったのですが、この斜めのメンター制度を導入されておりました。
なぜ、これが有効なのかについては、「評価を気にせず、弱音や愚痴を吐き出せる」「心理的な逃げ場として機能する」と(スライドに)書いてあります。
私がぜひみなさんにお伝えしたいことがあります。「とはいえ、メンターになる人ってどのぐらいいるんだろう?」と気にされる方もいらっしゃるかと思うんです。実際にメンターを募集した際には、「本来、これぐらいの人数が欲しいなぁ」と思っていたメンターの数を超えたと。つまり、メンティーの数よりメンターの数のほうが多かったというのが実際に起きた事象だったようです。
つまり、個人を支援したいと思っている方って、おそらく組織の中にいると思うんですね。ですが、機会がなかったりご自身の業務が忙しかったりして、なかなかそれを自分から言い出せない方もいらっしゃるかと思います。「いったん募集をかけてみたら意外と集まる」みたいな声も聞きましたので、こういった取り組みは有効ではないのかなということでご紹介をさせていただいております。
正解ではなく考え方の型を提供する
3つ目が「判断フレーム(の共通化)」ですが、こちらに関しては別のスライドで、「具体的にはこんなフレームがある」というのを私は準備しておりますので、そちらでご紹介をさせていただきます。
ただ、基本方針と役割としては、正解を教えるのではなくフレームを提供するということです。その目的や役割としては、未知の事態に直面しても1人で抱え込まずに分解して考える思考習慣を形成することです。こういった目的で思考フレームをリーダーの方に提供することが非常に有効であると考えております。詳細は後ほどご説明差し上げます。

4つ目は「同期リーダーコミュニティ」です。これも先ほどご紹介しましたように、やはり同じ悩みを持っている方々とつながりを持つことが非常に有効であると考えております。我々のワークショップでも、研修をした後のDay2に必ず振り返りのフォローアップセッションを実施するんです。
このフォローアップ、つまり「みなさんが今、どんな苦労をしてきて、どんなチャレンジをしてきたのか?」の共有は、多くの方にとって非常に励みや刺激になるという現場を何度も目にしてきました。ですので、月に1回もしくは2ヶ月に1回、新任リーダーの方々がコミュニケーションを取る機会を作るのは非常に有効であると考えております。
役割と期待効果に関しては、(スライドの)左下に書いてあるとおりでございます。「自分だけではない」という安心感や視点の相対化と視野の拡大です。やはり日頃の業務をずっとやっていますと、どうしても自分の組織だけの目線になってしまいます。
なので、「他の組織ではどんなことをしているのか?」と、失敗事例や成功事例を含めていったん視野を広げる。そうすることで「次にそれをどう自組織に活かしていくのか?」という視野の拡大ができ、自組織へ焦点化するという、ここの行き来は非常に大切なことかなと考えております。
日常の「いいね」を伝えるフィードバックの設計
最後に5つ目は「行動フィードバックの詳細」です。とはいえ最後は「できていないことではなく、できていることにどう目を向けるのか?」。
自己肯定感や自己効力感という言葉が叫ばれて久しいです。けれども、やはりご自身のいいところを自分だけで見るのは限界があります。ですので、他者から見た時に「その方の『グッド』はどこなのか?」をしっかりと伝えてあげられるような仕組み化は非常に大事です。
認知科学という学問で「エフィカシー」という言葉があります。これは「なんだかわからないけどやれる気がする」(という心理状態)。つまり、自己効力感の自己評価です。「自分だったらなぜかやれそうな気がする」ということがあるからこそ、未知の困難な事象に対しても取り組んでいけます。
ですので、やはりこのエフィカシーを高めるためには、自分の「グッド」や可能性にもっと目を向けていく必要がある。こういった観点でいきますと、他者からいいフィードバックをもらえる構造にすることは非常に重要です。
ですので、内容・頻度としては、例えば助かった行動や変化、「ありがとう」みたいなものを、月1回必ず本人にお伝えすること。役割・目的は、先ほど言ったとおりですけど、小さな成功体験の可視化や、「周りの人が自分を見てくれている」という安心感と自己効力感の向上です。
これは、(すでに)日常業務でいいことがあったら感謝をするような仕組みを持っている会社さまに関しては、特にこういったことは必要ないかなと思います。もし、そういった取り組みがない場合は、半ば強制的にそういう「グッド」を伝え合う会(を作る)というのは、小さな成功体験を可視化し、エフィカシーや自己効力感を上げるために非常に有効なのかなと考えております。
相手を尊重しつつ意見を伝える技術
ここまでが仕組みの話です。最後に、先ほど言った思考フレームや「実際にフレームとして何を渡すのか?」というところです。大きく分けて3つ、私の中で有効なものをご紹介差し上げます。その3つは、この(スライドの)左上、右上、左下のところです。
まず、こちらは非常に有名ですが、アサーティブコミュニケーションスキルです。相手を尊重しつつ、自分の意見を伝えるコミュニケーション方法の1つです。人ってやはり、自分の話を聞いてもらえずに「いや、それは違う」って言われると、もう次に話す気が失せることがよくあります。でも一方で、話をずっと聞いているだけで本当に伝えたいことが伝わらないと「これはこれでビジネスとしてどうなのか?」という観点があります。
ですのでそうならないために、「他者を尊重しつつ、どのように意見を伝えるのか?」という、このアサーティブコミュニケーションスキルは、1つのフレームとしては非常に大事かなと思います。
そして次に、(スライド)右上のDESC法です。こちらもコミュニケーションスキルです。(まず「D」は)「客観的に事実を描写する」ということです。

(話し合いの場において、まず客観的に事実を描写するのではなく)「自分はこう思う」というアイ(I)メッセージ。このアイメッセージは他者に対してプラスのことを伝える観点では非常に有効かなと思います。
ただ、ビジネスの中で物事を決定していかなければいけない時に、主観だけで話をしていても、水掛け論と言いますか言葉の応酬になります。そうではなく「今起きている事実は何なのか?」と、まずは事実を明確にする。
その後に、(「E」の)「自分の感情を率直に伝える」ということです。そして、「S」が「具体的に提案や依頼をする」ということです。「いいようにやっておいて」っていう依頼をされることがありますよね(笑)。こういう依頼が非常にやりやすい人もいるんですが、中には「その依頼のされ方をしても何をしたらいいかわからない」と感じる方も多数いらっしゃいます。
そして「いいようにやっておいて」とお願いしてきたのに、いざ出してみたら「いや、こことこことここは微妙だね」とフィードバックされる。その時に(また)「いいようにやっておいて」と言われる。そんなフィードバックをされると、「何往復するんだろう?」と、非常に不安を感じる方もいらっしゃいます。ですので、具体的に提案や依頼をするというところです。
課題を1人で抱え込まないための「ヘルプシーキング」
そして最後に「C」ですが、「相手の行動に応じて自分の行動を選択する」です。やはりいろいろな選択肢があり、行動が取れますが、大事なことは目的を達成することです。
例えば、ビジネスやコミュニケーションにおいても、理想の状態や「これを達成したい!」というところに対して、いろいろなアクションや方法、HOWがあります。そのHOWの中で、「自分にとってもメンバーにとってもいいアクションって何なんだろうな?」というところをしっかりと選択していくことも重要です。
ですので、こういったDESC法でコミュニケーションの取り方や、どのように相手に関わっていくのかというフレームを習得していくことが非常に有効かなと考えております。
最後に3つ目が、この(スライドの)左下のヘルプシーキングです。こちらも研修で非常に好評なコンテンツでございます。1人で抱え込まずに、周囲に助けを求めるスキルです。
やはり仕事をしていく中で、リーダーやその上のポジションでは、責任感を持つことは非常に重要であるとは認識しております。けれども、その責任感を「自分で最後までやらなきゃいけない」と捉え違えてしまって、誰にも相談できずに抱え込んでしまう。最終的には期日を超えてしまって、結果として全体に迷惑がかかるといったお話もよく聞くところではないでしょうか。
ですので、「早い段階でどのようにヘルプを出すのか?」ということもスキルとして定着させることによって、リーダーの方が抱え込まずに業務を前進させることができます。ですので、困った時に適切に助けを求めることはもちろん、ビジネススキルとして、周囲と連携して1人で何とかする以上の成果を上げる考え方と技術をリーダーの方に習得していただくことが非常に大事かなと思っております。
リーダー自身がキャリア自律を徹底しいく重要性
最後に(スライドの)右下です。こちらに関しては、スキルやフレームワークというよりは、その前提として持っていてほしい考え方として大事なことですね。

キャリアは1人で作っていくものではなくて、組織とパートナーシップ、つまり「組織と個人の関係性の中で、ご自身のキャリアを作っていくものだ」という前提条件があります。だからこそ、その条件の下、助けを求めることやアサーティブなコミュニケーションを取ることが必要です。
だからこそ、DESC法的な関わりをすることによって、みなさんが働きやすい状況を作っていくことが必要です。ひいては、それが組織のためになるし自分のためにもなるという、抽象度の高いところで(スライドの)右下のような考えを持っていく必要があると考えております。
我々のワークショップにおいては、今ご説明差し上げたこの3つのフレームワークをキャリア自律の研修に組み込んでおります。リーダー自身がキャリア自律をしていくのが、この(スライドの)上の黄色の部分で、リーダーとして必要なフレームワークを習得していくかたちです。
ご自身のキャリア自律と、リーダーとしてのスキルを(研修を)通して学んでいけるようなワークショップをご提供しております。もし、ご興味がある方はお問い合わせいただきましたら、どういったものがあるのかを私からぜひご紹介、情報交換させていただければと思っております。ご興味がある方はよろしくお願いいたします。