【3行要約】・組織内で肩書に頼らない「キャリア自律型リーダー」の重要性が高まっていますが、その育成方法については多くの企業が模索している状況です。
・現代のビジネス環境では、指示待ちではなく自律的に判断・行動し、組織のゴールを自分の言葉で語れるリーダーが求められています。
・リーダー育成には「正解の型を教えない」アプローチが効果的であり、内発的動機を引き出す環境デザインが組織の成長と個人の成功の両立につながります。
前回の記事はこちら キャリア自律型リーダーは肩書ではなく個で影響力を持つ
森隆剛氏:続きまして「Lead Self」の次の段階は、他者を動かす、つまり「Lead Others」です。ここからいよいよ「組織がリーダーに何を求めるのか?」に入っていきます。

まず、我々はキャリア自律型リーダーをどのように定義するか? 大きく分けて3つです。まず、「役職に依存しない」という言葉の意味ですが、「リーダーだからメンバーが指示を聞く」「リーダーだからこそ他に影響を与えられる」という状態ではありません。
肩書ではなく、個としての影響力を発揮する。つまり、「あの人が言っているから、自分たちもしっかりと一緒に進んでいかなければいけない」と、肩書ではなく個としてメンバーをリードできる状態。ここがまず1つ重要なポイントかなと感じております。
そして2つ目は、「指示待ちにならない」。これは冒頭のリーダーに対する課題感のところでお伝えしました。やはりリーダーに求められることは、環境変化を察知し、自律的に判断し、行動すること。
つまり、「こういったことをやったほうがいいんじゃないでしょうか? なぜなら……」と、WHYの部分からしっかりと自分の意見を伝えられる。多くの組織から、そういったリーダーの登場が待ち遠しいといった言葉を聞きます。なので、2つ目は「指示待ちにならない」。
そして3つ目の「組織のゴールを自分の言葉で語れる」も非常に重要です。ここに関しては、いろんな理想はあれども、現実として組織がグロースしていかなければいけない現状において、例えば数字目標が与えられているケースが多くあると思います。
数字の意味を自分の言葉で語れるリーダーになる
重要なことは、その数字の意味です。つまり、その数字を個人もしくはチームとして達成することは、我々にとってどういう意味があるのか? そしてもっと広い目線でいくと、組織に対してどういう意味があるのか? ここをリーダーとして自らの言葉で語れる状態です。
この3つを作り出せることこそがキャリア自律型のリーダーと我々は捉えています。だからこそ、リーダーの方に持っていただきたい目線は(以下のようなものです)。
「自分のチームをどうしたいのか?」はもちろん大事な観点かと思いますが、これはリーダーの方の「アイデンティティ」です。なので、ここばかりに偏重してしまうと、例えば部としてやりたいことがある中で、「いや、うちのチームは……」(という発言をするかもしれません)。
もしかしたらみなさんも「いや、うちのチームでは……」という発言をよく聞いたことがあるかもしれません。確かに、メンバーを守ることは非常に重要ですが、「なぜ、メンバーを守るのか?」。
ここも広い理由でいきますと、組織と個人の目指すゴールが一致している状態で、メンバーがより気持ち良くご自身の心理的成功のために働けるようにするためにチームがあると定義されます。
ですので、「チームとしてどうしたいか?」も大事ですが、大きな組織として、どのようなパーパス・ミッション・ビジョンがあるのか? そして、リーダーの方個人として、チームとしてはどのようなパーパス・ミッション・ビジョンがあるのか?
そこを自分の言葉で語り、そしてメンバーの個人としてのパーパス・ミッション・ビジョンと、チームと組織のそれらをうまく重なり合わせるようにリーダーの方が働きかける。そうすることによって、メンバーご自身がより心理的成功に向かって走っていけるように目指していくことが非常に有効だと考えております。
ですので、チームという目線に限らず組織の目線で「ご自身がどうありたいのか?」と「組織としてどうありたいのか?」を重ね合わせることがリーダーの方にも重要になってきます。
リーダーシップを具体的な言葉で定義しなおす
また、「リーダーシップ」という言葉も非常に抽象度が高く、広義な言葉です。他者に影響力を持っていて、しっかりと後押しして、引っ張っていく。いったん「リーダーシップ」という言葉を抽象的に定義しようとした時には、やはりこういった様子が頭に浮かぶのではないかなと思っております。
「役職や権限ではなく、周囲にポジティブな影響を与え、人を動かす力としてリーダーシップを再定義する」と(スライドに)書いてあります。このリーダーシップをもう少し具体的にした時に、みなさんはどのような言葉が頭に浮かぶでしょうか? ここをさらに言語化していき、「どのようなリーダーシップを実現したいのか?」にまで一歩踏み込むことによって、リーダーの方の不安は大きく解消されます。

(スライドを示して)例えばですが、私がこの中で自分のリーダーシップや得意なリーダーシップ像を選ぶとすると、4番の「夢・ビジョンを語る」、9番の「部下・後輩を大切にする」、15番の「わくわくさせてくれる」とかです。このあたりって、自分にとってわりと得意領域なリーダーシップかなと思っております。ただこれって、現状の自分がどんなことができるかという話です。
もちろんそれも大事なんですが、じゃあ、先ほど申し上げましたように「理想のリーダー像って何なんだろうな?」となった時に、例えば私は10番の「信頼できる」という言葉。
これは、私自身が信頼されることももちろん大事だと思うんですが、「私自身がみんなのことを信頼できるかどうか?」を非常に大きなテーマとして捉えています。そして、自分が真に目指すリーダー像は、「信頼されるし、信頼できるリーダーである」と捉えています。
このように、リーダーシップという言葉から一歩踏み込み、「どのようなリーダーシップを発揮したいのか?」「どのような影響力を発揮したいのか?」。ここにしっかりと意識を向けて言語化することによって、「リーダーの方が具体的にどのような行動を取っていきたいのか?」を言語化できます。
“指示待ちリーダー”にさせない指導法
そして、2つ目に大事なポイントとしては「正解の型を教えない」。これはなぜかという話で、この後のところにつながってくるんですが、やはり正解を教えてしまうと指示待ちになってしまいますね(笑)。
ですので、本来目指す「主体的に動くリーダー像を育成したい」というところに対して、「いや、こうしたらいいよ」というコミュニケーションを取ってしまうと、「気がつけば指示待ち」のパターンになってしまいます。ですので、正解の型ではなくて「そこに対して、どのようなリーダーシップを発揮していきたいのか?」という、ある意味コーチング的な関わりをしていくことが非常に重要かなと思っております。
そして、最後の3つ目は「過去の成功体験を言語化」と書いてあります。やはり最終的に大事なポイントとしては、内発的動機に基づいてリーダーシップを発揮できる状態を目指していくことが非常に重要かと考えております。
この「内発的動機」というのも非常に抽象度が高い言葉ですので、我々はこれを3つに整理しております。内発的動機を発揮できるとはどのような状態か? 1つ目が自律的であること。つまり、自分の意志で行動を選択・決定できる感覚がある。そして2つ目が「有能感」。自分の能力を発揮し、目標を達成できる感覚です。そして3つ目が「関係性」。他者とのつながりを感じられる感覚です。
これらを全部逆にすると自律的ではない状態になります。つまり「リーダーとは、こうあるべきだ」と上司の方からガンと押し込まれて、「あぁ、それをやればいいのかな」と思ってやっている状態は、まったく自分の意志で行動できていない状態です。なので、内発的な動機が出てこない。
内発的動機に必要な自律性・有能感・関係性
そして2つ目の有能感として、例えば先ほど私がお伝えした4番の「夢・ビジョンを語る」や「部下・後輩を大切にする」などが、ご自身としてはすごく力を発揮しやすい領域だとします。それにもかかわらず、例えば5番の「調整(力がある)」の部分をひたすら要求される。
そうした場合に、ご自身に足りないところや自信がないところで業務を遂行していきますと、やはり能力を発揮している感覚が持てない。そして、目標を達成できている感覚が持てないので、内発的な動機が削がれる要因になってしまいます。
そして最後は、関係性です。我々が危惧するキャリア自律の1つの形としては、「いや、環境はあるじゃないか、あとはもう、自分で自律的にどうするかだけだから、どんどん自分で考えて行動していこうよ」(というものです)。
例えばこういう関わり方を上司の方がやってしまうとどうなるのか。「最終的には1人で全部決定してやっていかなきゃいけない。誰も助けてくれない」。
こういう感覚になると、ヘルプシーキング(周囲に助けを求める行動やスキル)ができない、つまり、周りに助けを求めずに自分でなんとかしようとして、結果的に非常にしんどくなり、業務もストップしてしまって、メンバーも非常に混乱する。組織としてこういったことが散見されるようなお話をうかがうことがあります。
ですので、上司の方が定期的にリーダーの方と接触する機会を持つこと。そのリーダーの方が横の部署のリーダーとの関わりを持つこと。いろんな縦・横・斜めの関係性の中で「リーダーが今どんな状態で、どこを目指していて、何が苦しいのか?」を言葉にする機会を作り続けること。やはりこの3つをかたちとしてしっかりとデザインしてあげることが、リーダーの内発的動機付けを構成する要素であると捉えております。
以上が「Lead Others」ですね。このようなかたちで、リーダーがご自身をLead Selfするだけではなくて、横にいる人も含めてリードしていく状態を作ってあげる。これが、2つ目のデザインとなっています。