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「語られた戦略」を「語れる戦略」へ──共通言語をつくるPdMの試み(全2記事)

“部門ごとの正論”が異なり戦略がバラバラに… 社内がすれ違う「視点のズレ」のチェックポイント

【3行要約】
・社員に戦略を伝えても「なんとなく理解している状態」と「人に説明できるほど解像度が高い状態」の間には大きな壁があり、多くの組織が直面する課題となっています。
・株式会社コドモンの重山氏は、組織内の価値・レイヤー・文脈の違いが戦略理解のズレを生んでしまう、構造的問題があると分析します。
・プロダクト開発における戦略共有の課題解決には、単なる説明改善ではなく受け取り方の差分を確認し「語れる戦略」へと再編集するプロセスが効果的だと語ります。

どうしたら経営と現場をうまくつなげられるのか?

重山由香梨氏:こんにちは。このセッションにお越しいただきましてありがとうございます。それではさっそく始めていきたいと思います。「『語られた戦略』を『語れる戦略』へ──共通言語をつくるPdMの試み」というテーマです。短い時間ですが、どうぞよろしくお願いします。

あらためまして、株式会社コドモンの重山と申します。ふだんはプロダクト企画部の部長職として、プロダクト戦略の策定であったり、組織の仕組み作りを担当しています。

ちょっと余談なんですけど、実は今日が初めての外部登壇になっていまして、めちゃくちゃ緊張しています。そんな初チャレンジがpmカンファレンスというありがたい舞台で、数日前から「ちょっと夜眠れないな」みたいな日々を過ごしていました。なので、温かい目で見ていただけるとうれしいです。

話を戻しまして、前職から一貫してプロダクトに向き合ってきたんですけれども、コドモンに来て特に強く向き合ってきたのが、「どうしたら経営と現場をうまくつなげられるか」というテーマです。どこの組織でも、やはり同じ課題を抱えているんじゃないのかなと思います。

この1年は、「経営戦略をどう現場に届けるか」というところに真正面から向き合ってきました。今日はそのプロセスの中で見えてきた気づきを、具体的にお話しできればなと思っています。

説明できるほど戦略の解像度を上げられているか

これは、私自身が戦略を伝えられる側にいた時からも感じていたことなんですけれども、戦略を聞いて理解した状態と、それを自分の言葉で語れる状態の間には大きな壁が存在しています。

実際にコドモンにおいても、「Vision Meeting」という戦略共有会があるんですけど、実施した後にメンバーと会話する中で、「戦略の理由や背景が見えにくい」「戦略は理解したんだけど、日々の施策とのつながりが見えにくい」「話す中で、人によって若干受け取り方に差があるな」という気づきがありました。

つまり、なんとなく理解はしているんだけれども、人に対して説明できるほどの解像度は持てていない状態です。当初は、「もっと丁寧に伝えればいいんじゃないかな」と考えていました。(ですが)資料を作り込んだり説明を改善したりしても、根本的なズレはなくならないというところで、思い切ってアプローチをちょっと変えてみることにしました。

初手として、どこに受け取り方の差分があるのかを確認して、伝わるかたちに再編集することにトライしてみました。このセッションは、日々プロダクト開発の中で、組織への戦略共有に課題を感じている方が、明日から一歩前に進めるヒントになればなと思っています。

子ども・先生・保護者をデジタルでつなぐ

ここからは、少しだけコドモンの背景と事業の構造についてご紹介していければと思います。どのような前提がある組織なのか、どこが戦略理解のズレにつながってくるのかイメージしながら聞いていただければなと思います。

コドモンのミッションは、「子どもを取り巻く環境をテクノロジーの力でよりよいものに」です。単なる業務効率化ではなくて、子どもの育ち・学びの基盤を社会全体で支えられる状態を目指しています。

具体的には、保育園や学童の先生方がゆとりを持って子どもたちと向き合えるように、業務支援SaaSを提供しています。もしかしたら、この中にもユーザーさんがいらっしゃるかもしれないですけど、「実はコドモンを使ったことがある」という方、手を挙げていただいてもいいですか。

(会場挙手)

ありがとうございます。思ったよりいらっしゃった。うれしいです。

少し補足させていただくと、以前は保育園から保護者に渡す連絡帳ってすべて手書きだったんですけれども、最近ではアプリを通じて配信できるようになっていて、保護者とのコミュニケーションがスムーズになっています。

他にも、園内で先生が、子どもの記録などをすべて紙で残していたんですけれども、そこもデジタル化されています。これまでは、そのクラスの先生にしかクラスのことがわからないケースもあったんですけれども、園全体で情報を共有することで、業務効率化や保育の質(の確保)につながっていっています。このようにコドモンのプロダクトは、子ども・先生・保護者の3者をデジタルでつなぐラインナップで構成されています。

続いて事業のところなんですけど、コドモンはよく「保育ICT」という紹介をされるんですけれども、実際には保育ICTだけではないのが特徴です。「こども施設」「保護者」「行政」という、性質がまったく異なる3つのステークホルダーと同時に向き合っています。

施設向けには、現場のオペレーションを支えるICT。保護者向けには、連絡帳や写真販売(アプリ)など日々の体験そのもの。行政向けには、現場の負荷を減らす制度や支援。この3者は、それぞれ価値基準であったりとか意思決定のルールもまったく異なります。ただ、「子どもを支える」という軸でつながっています。私たちはこのハブとなってステークホルダーをつないでいくという役割を担っています。

戦略の理解がズレる3つの要因

ここからは少し話を戻して、なぜ戦略の理解がそろいにくくなるのか。その構造についてお話ししていければなと思います。これはちょっと抽象化しているので、コドモン特有の話ではないです。複数プロダクトとか、複数の職能が関わる組織では、程度の差はあれ、必ず起きることかなと思います。

理解がブレるポイントには、大きく3つの要素があると思います。1つ目は、価値提供の違い。これは誰に価値を届けているかによって、優先したいことが変わる。2つ目は、レイヤーの違い。「事業」「プロダクト」「開発」の、どの高さから見るかで「重要」の定義が変わるということ。

3つ目は文脈の違い。領域の成熟度であったり、そのメンバーの入社のタイミングによって触れてきた情報が違うことで、「当たり前」が変わる。この3つが重なると、同じ戦略でも違う戦略として受け取られてしまうことがわかってきました。

では、実際にコドモンではどうだったかというところなんですけど、この3つの要素がすべてそろった状態でした。横軸の部分では、保育・学童という複数の領域を持っていて、誰に価値を届けるかが領域ごとに異なっています。優先順位が揺れやすい構造ということですね。

縦軸では、事業側・プロダクトマネージャー・開発側で見る高さが異なっていて、同じ戦略でも違う話に聞こえてしまいます。奥行きでは、事業・プロダクトの歴史が異なっていて、前提の量がバラバラになってしまうというところ。

組織の横軸・縦軸を貫く共通理解がない

ここからはそれぞれ3つの要素について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。まずは、横軸の価値提供の違いの部分です。コドモンは保育園・学童・小中学校と、複数の領域に価値を届けているんですけども、本当にそれぞれまったく別の世界です。制度とか課題とか現場の状況が根本から違っています。

例えば保育領域では、国の制度や指針が明確になっているので、改善すべきポイントも比較的そろった状態です。一方で学童の領域では、運営基準やユースケースがかなりバラバラで、同じ学童という名前でも、実際にはまったく違う。何を優先すべきかの共通解がそもそも作りにくい環境にあります。

こうした違いによって、同じ戦略を聞いていても、「なんで今、これをやるんだろう?」という意味付けが、領域ごとに変わってきてしまう。これが横軸で生まれてきたズレでした。

続いて、縦軸のレイヤーの違いです。これはみなさん、いちばんイメージしやすいところかなと思います。やはりそもそも、職種によって見ている高さや時間軸が異なることで生まれるズレです。事業側は、事業成長や収益性を軸に戦略を捉えているので、1年後とか3年後の状態から逆算して、今何を仕込むのかを考えていきます。

プロダクトマネージャーは、その事業戦略をベースに、プロダクトの価値だったりとか、体験の一貫性を中心に考えていきます。ユーザーの視点と中長期の価値を行き来しながら、どうあるべきかを判断していきます。

同じ言葉でも職種によって違う意味を持ってしまう

一方で開発は、実現性だったり負荷、品質、安全性というような、作る側としての現実のリスクを最も敏感に捉えています。当たり前なんですけど、これはどれも正しいです。正しいんですけど、正しい視点が複数存在しているということが、理解に揺れを生みます。

同じ言葉を使っていても、例えば事業側はKPIインパクトの話をしているつもり。プロダクトマネージャーは価値と体験の話をしているつもり。開発は実現可能性の話をしているつもり。同じ言葉が職種ごとに違う意味を持ってしまうことで、「なんだか、かみ合ってないな」というような会話が自然と増えてしまう。これが2つ目のズレを生んでいたポイントでした。

最後が奥行き・文脈の違いです。これは領域とかプロダクトによって、これまで積み上げてきた歴史や成熟度が異なるというところです。入社時期によって、触れてきた課題や知っている背景も違う。

例えば過去の判断を全部経験している人と、伸びた領域だけ知っている人。最近入ってきて、最新の情報だけ知っている人。こうした違いが積み重なることで、その戦略がなんで今必要なのかという腹落ちの度合いに差が出てきてしまいます。単純に持っている物語の違いが、理解のズレを生んでいました。

この3つを並べてみた時に、個別の問題というよりも、行動としてズレが起きやすい土台があったということがわかります。私たちはこの構造を理解した上で、戦略そのものを作り直すのではなく、戦略の再編集プロセスを回すことにトライしました。ここからは、そのプロセスを具体的にご紹介していきたいなと思います。

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