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午後4時に帰る国の経済がなぜ回るのか?「競争力も幸福度も高い」デンマークに学ぶ働き方(全7記事)

“残業できる人”に仕事が集中する職場の問題点 “残業代が激安な日本”を変えていくために必要なこと

【3行要約】
・労働時間の上限緩和が議論される大きな要因として「人手不足」が叫ばれる中、実は日本の労働力人口は2025年が過去最多を記録しています。
・小室淑恵氏は、日本の女性人材流出を「大脱出」と表現し、柔軟な働き方を導入した企業が人材確保に成功していると解説。
・時短勤務社員やシニア層を本格活用する「横方向の経済成長」への転換と、労働基準法の抜本的な見直しが急務だと語ります。

前回の記事はこちら

なぜワークライフバランスが重要なのか

小室淑恵氏:それでは少しお時間をいただいて、私からもお話をさせていただきたいと思います。みなさん今日はお忙しい中、お越しいただいて本当にありがとうございます。ワーク・ライフバランスの小室です。

働き方改革を事業としているワーク・ライフバランスは、2026年で創業して20周年になります。私も含めて全員で残業ゼロ、有給消化率100パーセントでやってきており、この20年間、ほぼ増収増益でやってまいりました。

今日は井上(陽子)さんがこの話をしてくださるということで、私も本当に感動して、「これはもう永田町でやるしかないんだ!」と思って(笑)。すごく短期間で企画をしたんですが、これだけの方に来ていただいてありがたいなというふうに思っております。

「ワークライフバランス」と「経済成長」が、よく二項対立みたいに言われるんですが、私は20年間、ひたすらこの国の経済発展を思ってやってきています。誰よりも視野を広く、多くを見て、長期の戦略で経済発展するならこれしかないと思ってやっているんです。

なので、人手不足と少子化を解決し、組織の成果と意欲も最大化する日本の新しい働き方がワークライフバランスなんだというふうに思っています。また、自己紹介は後ほど(スライドを)見ていただければと思います。

実は「日本の労働力人口」は2025年が過去最多

今、労働時間の上限緩和が議論される大きな要因として「人手不足だ」というんですね。ところが、その人手不足というのは本当でしょうかね? 実は、日本の労働力人口は2025年が過去最多なんです。労働力人口は減ると思われて、1回ピークアウトしているんですが、実は働き方改革関連法の施行の年から再度増えている状況なんですね。

これはどうしてかというと、各社が働き方を柔軟にして、特にコロナ前後でテレワークが可能になったことによって、仕事を辞めざるを得なかった方がもう1回復活してきているのが最大の要因なんです。

そういう方たちを(労働力として)うまく取り込んだ企業は、実はそんなに採用に困ってないんです。先日も「1人募集の枠に800人が来た」という企業があったんですね。

逆に誰が困っているかというと、働き方を変えられてない企業が他の業界以上に人手不足に陥って、「みんなもそうなんだろう」と思って、国に対して「(労働時間の)上限を緩和しないとこの国は終わっちゃう」と言っているんです。ただ、これはあなたのところに人材が来てないんだよという話なんですね。選ばれてないわけです。

人手不足を解消するカギは、自社が働き方改革をしていけば、むしろもっともっと多くの人に選ばれるのに、「今はワークライフバランスは捨てたほうがいい」みたいな話になってきていることが非常にもったいない。せっかく増えた労働力を捨てちゃうんですか?

(スライドの)図で言うと、緑の三角の部分は働き方改革が生み出した労働力ですので、ここを捨てちゃいけないよねというふうに思っています。

「少子化」ではなく「女性の大脱出」が起きている

特に、先ほど井上さんがおっしゃっていましたが、日本の女性には未曾有の可能性があります。日本の教育と健康は、なんと世界トップなんですね。世界でもっとも教育されて健康な女性を、政治と経済で使っていないことが最大の要因です。

本当に優良な資源が埋まっていて、しかも私たちの税金で教育したわけですが、優良な資源を掘削せずにエネルギーを採掘していない。そんなふうにすごくもったいないことをしていて、それが今は他国に採られています。

「子育てするならフランスだね」「男女が均等に働くんだったらシンガポールだね」というふうに、海外に流出する人材の6割は女性という状態です。今の日本は少子化が起きているんじゃなくて、女性の大脱出が起きているんだと言えるのかなと思っています。

一部の人に残業が集中する「ギリギリ職場」

私なりに、これから日本はどういう構造転換をしていかなければいけないのか? というものを書いてみたものがこれです。

私たちは今まで3,000社の企業にコンサルとして入ってきたんですが、コンサルする前の状態が左側の図です。一本一本のバーが労働力だと思ってください。誰かの労働時間が欠けると、それを誰かの残業で賄うというふうに、黄色の部分にどれだけ乗っけるか競争というものをやっていて、一部の人がものすごく苦しくなっています。

今の議論は「ここに(残業時間を)もっと乗っけられるんじゃない?」と言っているものなんですね。ただ、そんなことをしたらどうなるのかというと、日本は残業できる人の割合が今後ますます減少することがわかっている国ですので、左側の図の黄色い残業部分に上乗せする手法では、毎年毎年上乗せできる量が減っていく。先細りしていくことになります。

私はこれを「縦方向の経済成長」と呼んでいますが、本気で労働力を増やそうとするなら、この方法では焼け石に水ということです。一方で、右側の図を見てください。残業という手法には頼らず、むしろ勤務間インターバルを導入することによって、時間外労働に頼る手法を封じていきます。

すると、マネジメントは仕事の総量をこなすために、育児時短や介護時短勤務社員、週4日勤務社員や定年延長しているシニア社員の本格的な活用に乗り出します。これを私は「横方向の経済成長」と呼んでいます。日本は、この横方向の経済成長にはものすごく伸びしろがある国です。

日本は経営者にとって“残業代が激安な国”

2040年には労働力人口が1,100万人足りなくなると言われているのですが、 実は65歳から75歳の人口だけで1,700万人いらっしゃいます。また現在パート労働をしていて、「正社員を打診されるけれども、正社員だと残業や休日出勤が伴うから断っている」というような、働き方が原因で本格的な労働力に活用できない女性が290万人いらっしゃいます。

しかも、この横方向の経済成長にはいい点があります。介護中や出産後の方も働き手でいてくれると、年金の払い手や社会保障の担い手がいなくならないで済むわけです。

ここを(働き手として)維持することができると、一人ひとりの税金の額が増えないですし、男女の賃金格差が埋まる。そして、デンマーク含めて日本以外の先進国はすべて時間外労働の割増賃金率は1.5倍ですが、日本だけ1.25倍です。日本は経営者にとって残業代が激安なんですね。

だけれども、(時間外労働の割増率を)1.5倍の世界にしていくと、「時間外をやらないで成果を出してくれる人」が企業にとってありがたくなるので、その人の評価が正当にされるようになって、男女の賃金格差が埋まる。

「時間外労働は高コストだからデジタル投資をしよう」ということで、AIの活用が進む。何よりも経営者の意識が一番変わるのが、毎月出ていく人件費がすごく読めるようになることですね。黄色の部分+青い部分が毎月出ていく人件費ですから、「この分を押さえておけばいい」というふうになります。

先日、誰もがご存知の食品会社の社長が、「小室さんに言われて残業をギューッと減らしてみたら、毎月出ていく固定費が決まった額になったので、ベースアップしようと思ったんだよね」とおっしゃっていました。今までは残業代がいくらまで膨らむか毎月予測がつかないので、安心してベースアップできなかったとのことでした。

今は人手が取れないので、若い人に(給料を)乗せようということで、なんと10パーセントのベースアップをされたということでした。私たちのコンサル先には、なんと基本給が1.5倍になったという150名の製造業もあります。

「均衡割増賃金率」を1.5倍にすべき理由

「均衡割増賃金率」という概念をぜひ知っておいていただきたいんです。新たな仕事が生まれた時に、今いる人に残業させたほうが安いのか、新たな人を雇用したほうが安いのかは、この割増残業代の割増率で違ってきます。これが1.5倍を超えると、新たな人を雇用したほうが安くなるので、1.5倍という均衡割増賃金率以上にしないとダメなんですね。

このことを知っているから日本以外の国は全部1.5倍以上にしているのに、60年前の日本の厚労省の議事録を読んだら、「1.25でも国民が不満を言っていないから、このままでいいんじゃない?」という会話をしていたんですね(笑)。そういうことじゃないんです。これは1.5以上にしないと、経営者に「残業を促進する」という効果が出てしまうんですよね。

私が3,000社のコンサルをして思ったのは、経営者はめちゃくちゃいい人が多いんです。こんなにいい人ばかりが経営して、どうしてこんなことになっちゃうのかな? というと、これは労基法がブラックなんですね。

「残業させること」にインセンティブを働かせてしまっていることの原因が労基法にあるので、今後、労基法改正は必ずやったほうがいいなと思っています。

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