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井上陽子氏:その国の経済力というのは、そこにいる国民のポテンシャルの総和のことです。この視点を持つと、デンマークおよび北欧の短時間労働も男女平等もけっこう理解できるんですよ。
デンマークは小さい国なんですが、昔は大国だったんです。ただ、どんどん戦争に負けて、今の九州のサイズまで小さくなっちゃったんですよね。その時に彼らが何を考えたかというと、天然資源もないし、もう持っているものは人しかない。
人を最大限に活かす方法は、やはり学び・教育ですよね。そうやって人材の質を上げていくしかないということで、こうなっているんです。だから、ダイバーシティというのはなんでやっているかというと、才能をムダにする余裕がないからやっているんですよね。
そういう国の視点から見ると、日本はもったいないんですよ。デンマーク人のエコノミストとかも見ていて、(日本は)何がもったいないかというと、教育を受けた女性が労働者として活かされていないのが一番もったいないんですよね。
例えば40代、50代ぐらいの女性がいるとしますよね。その方が大学時代に同じように勉強をしていた男子学生とその女性たちは、たぶんポテンシャルは同じだったと思います。
だけど、なんやかんや出産して、非正規(雇用)になったりとかして、男性が稼いでいるお金と女性が稼いでいるお金を比べると、いつの間にか収入が開いているわけですよね。これがもったいない。だから「女性も働いている」と言ったって、男女の賃金ギャップがこれだけ開いているのは、ポテンシャルを活かしてないということです。
デンマークがすごいというよりかは、他の国がもったいないでしょという視点を持っていただいて、「この人が同じように稼げるためには、どうしたらよかったのかな?」というふうに見ていただけるといいかなと思います。
もう1つ、「労働時間」と「企業競争力」は別の話と書きました。「デンマークは短時間労働で競争力が高い」という、今のデンマークのそこだけを切り取っちゃうと、「効率的な仕事をしたら競争力が上がる」みたいに見えちゃうんですよね。でも、そうじゃないんです。
ややこしいのは、確かにそういうところもありますし、日本もムダなことをやっているところはあるとはいえ、それは本質的なことじゃないんですね。デンマークのフルタイムが週37時間という今の基準になったのが1990年なので、もう35年前の話です。
当時のデンマークの様子を聞くと、首都のコペンハーゲンのけっこうな数のアパートにはシャワーがなかったらしいです。だから、労働時間は短いけど、当時の日本人の感覚からしたらけっこう貧しい国だったんですよ。
そこから労働市場政策改革というものが始まるのが1990年代の半ばで、ポール・ニューロップ・ラスムセンという首相がそれをやったんです。失業者が溢れていたので、失業手当を無期限でもらえるような状態で期間を短くして、しかももらうためにはリスキリングとかをやらないといけないというふうに、労働市場政策改革をやっていったんです。
もう1つ、これがけっこう大事だと私は思っているんですが、2000年代から主要産業が製薬、再生可能エネルギー、ITとか、そういう知識集約型産業にグーッとシフトしていくんですね。デンマークの豊かさって、こういう企業の競争力から生まれているんですよ。その代わりに造船業とかは、人件費が安いアジア人に太刀打ちできなくて壊滅しているんです。
ただ、そこなんですよ。デンマークの稼ぐ仕組みを簡単に言うと、最初に言ったように働く人数を増やします。男性も女性も、それとあとはお年寄りも働いています。今は定年が67歳なので、もうすでにけっこう(定年年齢が)上なんですよ。たくさんの人を働かせて、人数が多いだけじゃなくて人材の質を上げる。
デンマークって、大学だけじゃなくて大学院まで無料です。しかもSU(返済不要の奨学金)という、返さなくてもいいお金を月17万円ぐらいもらっているんですね。だから、学びたい人が経済的な理由で断念しないようにしている。
その人たちが価値のある産業を生み出すわけですから、やはり人材の質を上げることを国の役割だと思っているからです。そのあとはわかりましたよね? 人が多くて、人の質が高い。でも、せっかく質の高い人材が斜陽産業にいたら良くないんですよ。なので、やはり競争力のある企業で力を発揮してもらいたいわけですよね。
じゃあ、どうやったら競争力のある企業で力を発揮してもらえるか? というと、競争力のない企業に(市場から)退場してもらうしかないですよね。
ノボノルディスクという、一時期肥満症の治療薬が世界的にヒットしたデンマークの会社があるんですが、先日そこが全世界で9,000人を解雇したんですね。これは会社の(従業員数の)11パーセントにあたるというものすごい規模なんですが、(デンマークの企業は)解雇とか、そういうことをけっこうやります。
だから、デンマークってなんか優しいイメージがあるかもしれないんですが、キャリア人生という意味ではけっこう厳しいです。企業の倒産をさせないようにするというのが日本のアプローチですが、デンマークは福祉国家なので、企業が倒産するのはもうしょうがないんですけれども、失業に対する補償は個人に直接救済するわけなんです。
失業手当が手厚いとか、リスキリングがほとんど無料で受けられるとか、労働者はそういったかたちで保護しつつ、企業の新陳代謝を良くしているということなんですよね。
次が、短時間労働についてです。先ほど「時間と競争力は別」と言いましたが、今言ったような稼ぐ仕組みを短時間労働でもできますよ、という話なんですよね。「どうやって短時間労働をやるか?」とか、How toみたいに「How」の部分が日本でもけっこう言われますよね。ただ、実はHowってWhyがあればめちゃくちゃ単純な話なんですよ。
Whyというのは、短時間労働は合理的だという共通理解が社会に浸透していること。それで言うなら、「なんでそれが(デンマークでは)社会に浸透しているのか?」という部分について、日本とは顕著に違うところをここに挙げました。
全員がすべてをやる社会というのは、男の人も女の人も同じように働いて、同じように家事・育児を担う社会。だとすると、両方が長時間労働ってできないんですよ。長時間労働って(夫婦の)どっちかにシワ寄せがいくので、だからもう短時間労働しかないんですよね。
それと、やはり知識労働者になっているので、「そんなに長く働いたって成果が比例しないよね」「むやみに長時間働いても成果は出ないでしょ?」ということを、本当に当たり前の常識みたいにパパ友とかママ友もみんな言うんですよね。
あともう1つは、バーンアウトした場合の医療費を国が全部持っているので、医療費はかかるわ、その人が働いていないので税収が入ってこないわで、二重の意味で国にとってマイナスになっちゃうわけですよ。
やはり、人が少ない国では人を使い捨てにできないので、大事に大事に使っていかなければいけないわけですよね。そういう意味で、短時間労働は合理的だということです。
最後に書いたのは、(デンマークは)やはり労働組合がすごく強い国で、100年かけて交渉してきた歴史があります。だから、この「誰もが、仕事以外の人生を大事にしていい」という健全な権利意識がありますし、私もそれが健全だと思います。そういうWhyがあるから、短時間労働のHowというのは優先順位の話なんですよ。
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