過去について話すか、未来について話すか
岸良:さらにプロジェクトマネジメント。進捗管理するとか納期を守るとか、プロジェクトマネジメントオフィスをやったりとか、みなさんいろいろやっているじゃないですか。
それをすることでプロジェクトが良くなったことって(私は)聞いたことないです。進捗管理はできました。「じゃあ納期は守れたんですか?」っていったら「いやぁ……」と。どうしたらいい?

過去は変えられますか? 未来は変えられますか? みなさんの貴重な時間をどっちに使えばいいのか。プロジェクトメンバーにどのくらい(仕事が)済んだかって進捗管理をする人いませんか? みんな過去をしゃべっているんですよ。
変えられない過去を議論してうまくいくはずがない
岸良:変えられない過去を議論してうまくいくはずがない。あなたの会社は、変えられる未来を議論していますか? 過去を議論している限り、ほぼ良いことはないということですね。マツダの金井(誠太)元会長がこういうことを言っています。
(動画再生開始)
金井誠太氏(以下、金井):PDCAについてちょっと語りたいです。みなさんご承知の言葉だと思いますが、Plan・DoとCheck・Actionをちょっと分けて考えてみます。この図はCheck・Actionを重視するマネージャーです。
最初は部下に仕事を丸投げ。そして納期が迫った時に「どれ、どこまでできたかな?」とチェックをする。多くの場合、結果が期待外れのことが多いから、残された短い期間で自分が先頭に立ってリカバリーする。
だいたい実務に長けていた人が出世してマネージャーになる例が多いんですが、そういう人が大幅に陣頭指揮で挽回します。これをすることで、このマネージャー本人は自己満足をします。「やっぱりこの職場には俺がいないとダメだ」と。この図はそれでもちょっと納期遅れと目標未達があったと、皮肉ってみているんですが。
有能なマネージャーは社内で目立ちにくい
金井:一方でPlan・Doを重視するマネージャーもいます。初めにしっかり部下と話し合って作業計画を練る。そして日々こまめに進捗を見る。必要なら微修正をする。こういうことをやっていると、実はその後のイベントじみたCheckとかActionとかは不要になってきます。
本当に有能なマネージャーは私はこのタイプだと思っていますが、こういうマネージャーは社内ではなかなか目立ちにくいですね。問題が起きたと言っては騒いで、陣頭指揮をしているマネージャーのほうが目立つんです。一見、有能そうに見えるんですね。
ですから、経営者のみなさんはそれに騙されてはなりません。これはあなたがどちらのタイプかというチェックシートです。PDCのCheckのタイミングになった時に、もしこういう質問を部下に投げかけていた覚えのある方は、立派なCA重視のマネジメントをされていると思います。
マネージャーが陥る権威の罠
金井:いいですか? 言うまでもありませんが、ここにある質問はすべて最初に明確にしておくべきことです。経験上、私も何度もこれを感じたことがあります。我々は設計(の仕事)でしたから図面を書くんですが、出図というタイミングがあります。
例えば、それまで2、3週間かけて描いた図面の課長検図を、出図の1週間ぐらい前にやるわけですよ。課長のところに持っていくわけです。そこで課長が「こう直せ、ああ直せ」「この材料はこれじゃなくてあっちに直したほうがいいんじゃないか」と、いちいち指摘をする。
その指摘をすることが彼にとって、あるいは彼の感じている彼自身の権威にとって気分がいいみたいな。わかります? 私もその後、その罠に自分ではまったことがあります。本当に楽しいんですよ。自分の有能さを見せたような気になれる。
私もずっとそれで育ってきたんです。そういう上司の元で検図をされて、目標の説明から始める。(目標の設定を始める)それまでに作業は何週間もしているんですよ。場合によっては何ヶ月もしている。
それをリリースの1週間ぐらい前になって「目標からしておかしいよ」と。それって本当に有能なマネージャーがすることだろうかと。これがものすごく重要な気づきだったんですね。目標がおかしい責任を、部下に押し付けようとしているってことですよ。
目標って最初に決めることでしょう。最初に合意するべきことですよね。それをギリギリになって「君、目標がおかしいよ」って言うとしたら、そのマネージャー自らに直してもらわないといけませんね。
職場の忙しさはCA重視のマネージャーが原因
金井:もう1回言います。なぜCA重視マネージャーがそんなに多いのかというと、育ち方がそうだったということもあるが、もう一方で、最初に「何も考えずにやっとけ」って言うのは、ものすごく楽なんですね。
それから今申し上げたように、後から部下のやった結果を見てケチをつけるのも楽だし、しかも自分の有越感をそこで発揮できるんですよ。これが気持ちがいいんですよ。
でも本当の気持ちの良さは、チームがトータルで一番効率良く仕事をできるようにすること。ここにぜひ気が付いていただきたいと思います。いつも忙しくしている職場って、たいていCA重視のマネージャーがやっていることが多いというのが実感です。
(動画再生終了)
岸良:このビデオを上司に見せたいって方は多いと思いますので、ぜひ活用していただければと思います。変えられない過去より、変えられる未来に集中したほうがいいだろうっていうことなんですよね。
過去だから時間がかかるんだけど、変えられる未来に集中するんだったら、たった3つの質問でいいんです)。「あと何日ですか?」と。この質問をすると現場の見積もり力が鍛えられて、(その次は)「問題があるとしたら何?」って聞くんです。
「問題ない?」って言ったら「問題ない」と答える。「問題あるとしたら何?」って言ったらリスク予知能力が鍛えられて、そしてその後に「あれやれ、これやれ」(と言うん)じゃなくて、「何か助けられることない?」って聞くことによって、考える力が鍛えられる。
朝礼とかでこの定型質問をするだけで、毎回何かが出てきます。そして上司が問題を拾いにいくことになる。部下は一生懸命やっているから、自分でなんとかしようとしている。それは良いことなんですよね。だから(問題は)上司が拾いにいかなくちゃいけないというところなんですね。
この3つの質問で人が育てられる。なぜか。現場の見積もりを鍛えるのは簡単です。リスク予知能力を鍛えるのは簡単ですか? 考える力を鍛えるのは簡単ですか?
なのに「あと何日ですか?」「問題あるとしたら何ですか?」「何か助けられることないですか?」という質問で全部できちゃう。こんなシンプルな質問でできるんだよ。なぜ? 未来に集中できるからです。

「変えられない過去」と「変えられる未来」、みなさんどっちのほうに多くの時間を使っているでしょう。もし「変えられない過去」に使っているんだったら、伸びしろは大きいということになります。
「変えられる未来」に集中してマネジメントする
岸良:進捗管理をちゃんとすれば納期を守れるっていうのは間違いで、「変えられない過去」を管理してもプロジェクトは良くならない。「変えられる未来」に集中してマネジメントすることが大事。
最優先で仕事を進めれば早く完了するとか、走りながら考えないと納期は間に合わないとか、先手管理をするためには現場が問題を早めに報告する必要があるとか、品質チェックすれば品質は上がるとか、「問題ない?」と聞けば問題は上がってくるとか、目標はプロジェクトリーダーが示すものとか。
経験と知恵の伝承には時間かかるとか、サバを読むのは悪いこととか、個々のタスクに安全余裕は必要だとか、組織を超えて助け合うのは大事だとわかっていても実際やるのは難しいとか、これらは全部間違いです。やり方を知らないだけだということです。