Amazonのジェフ・ベゾス氏の経験談
岸良:そしてAmazonのジェフ・ベゾス。GAFAの一角であり、世界の大金持ちであり、しかも世界で一番本を売る人です。その人が「これを読め」と言っている。彼の経験が語っています。良いビデオですよ、見てください。
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ジェフ・ベゾス氏:私をホワイトボードの前に立たせてくれれば、30分で100のアイデアを思いつくことができます。
Amazonが初期の頃、ジェフ・ウィルキーが私のところにやって来ました。彼は25年間Amazonで働いてくれましたが、当時は彼と知り合って1年ぐらいの頃でした。彼は私に言いました。「ジェフ、君はAmazonを破壊するのに十分なアイデアを持っている」と(笑)。
これは非常に衝撃的な言葉でした。私は創業者として、常に優れた先生を雇うことができる環境に恵まれていました。経験豊富なシニアエグゼクティブを雇う中で、ディエゴやジェフ・ウィルキーのようなすばらしい人々に出会いました。
彼らの話を聞いて、彼らから学びました。ジェフは言いました。「あなたはAmazonを破壊するのに十分なアイデアを毎分、毎日、毎週持っている」と。私は「どういう意味ですか?」と聞きました。
彼は「組織が受け入れられる適切なペースで作業(タスク)を投入しなければならない」と言いました。彼は生産の専門家であり、彼の世界観では、アイデアを発表するたびに「バックログ」「順番待ち」「作業中のタスク(WIP)」を作り出していました。
そして、それがただ積み重なっただけでは価値を生み出しておらず、実際には集中を阻害する原因になっていました。そして彼は言ったのです。「組織が新しいアイデアを受け入れられるペースと、投入するタイミングを見極めなければならない」と。
今になっては非常に明白ですが、当時の私にはよくわかりませんでした。ただ、私にとって極めて深い洞察だったのです。
私はアイデアに優先順位をつけ、リストを作り、それらを自分の中に留めておき、組織が受け入れる準備ができるまで待つようにしました。そして多くのアイデアに対応できる組織をどのように構築できるかを考え始めました。
適切なシニアチームとリーダーシップをそろえ、経営的な余力(実行できる時間とリソース)を与えることで、彼らが単位時間あたりでより多くのアイデアを実行できるように組織を構築したのです。
私たちは同時に複数のことを発明し実行するのが得意な会社を作りました。あなたも会社が大きくなるにつれて、複数のことを同時に行えるようにしたいと思うでしょう。
ただ「作業(タスク)を投入する」というアイデアは私にとって非常に深いもので、オペレーションをより効果的にしながら、同時に発明的であることを可能にしてくれたのです。
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集中しないと良い仕事はできない
岸良:これがAmazonの創業者、ジェフ・ベゾスが語っている
『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』から得た考察なんです。生産現場の本ではないということがすでにわかりますよね。
実はこのアドバイスはどこから来たかというと、「早く始めると早く終わる?」というところから来ています。どんどんぶち込んでいって、どの案件も最優先で優先順位がコロコロ変わってバッドマルチタスクになったら、早く始めても早く終わるとは限らないでしょう。
やはり人間だから、1個ずつ流したほうがいいんだと。どうですか? 集中しないと良い仕事はできないんだから、1個ずつやったほうが良いに決まっている。
ボトルネックを考えずに仕事をぼんぼん掘り込んでも現場は混乱するだけで、それではAmazonをデストロイしてしまうということを学んだと。今のAmazonはこうやって作られているんだって。どうですか。
TOCと他のマネジメント手法の大きな違い
岸良:TOCって、実はこういう理論からできているんです。仮説という言葉があります。(スライドを示して)「自然科学その他で、一定の現象を統一的に説明し得るように設けた過程。ここから理論的に導き出した結果が観察・計算・実験などで検証されると、仮説の域を脱して一定の限界内で妥当する法則や理論となる」と書いていますね。
ということは、限界内、境界条件が前提です。システムにつながりとばらつきがある場合は、制約に集中すれば必ず全体に成果をもたらします。なぜならば、システム全体のパフォーマンスは制約で決まるから。
どうですか? こうなるとTOCは科学において予測することができる、そして再現可能な、今のところ40年間ずっと立証され続けている理論と言えませんか? これが(ほかのマネジメント手法と)TOCの大きな違いだというところなんです。
ゴールドラット博士が語るTOC
岸良:で、TOCは圧倒的に何が違うのかというのは、ゴールドラット博士自身が語っています。
(動画再生開始)
エリヤフ・ゴールドラット氏:TOCを特徴づけるものは何でしょうか? 一般に信じられていることと何が違うのでしょうか? 私は、TOCはハードサイエンスから来ており、ほかのマネジメント手法は社会科学から来ているという事実に起因しているのではないかと思います。
我々は、社会科学という帰納的な考え方で育ちました。例を使って説明しましょう。大きな財を築く最も良い方法は何でしょう? 親や学校の先生から教わった方法は、コツコツと1セント1セント貯めていく方法です。
「ローマは一日にして成らず」、ゆっくり少しずつ積み重ねて大きくする。それが是とされている。いかがでしょうか。この考えでみなさん育ってきましたよね。
ではハードサイエンスの考え方はどうでしょうか? 成果や改善は小さな積み重ねでできていると考えているでしょうか。それとも異なる考え方でしょうか?
古代のある科学者が言ったことを考察すれば、科学的アプローチとは何かがわかります。2,000年以上前にもかかわらず、彼はなかなか良い表現をしたと思います。「我に支点を与えよ、さらば地球も動かさん」と。
これは漸進的変化ではなく、一気に大きく変化させることです。ご存知のように、これは偉大な科学者アルキメデスが残した言葉です。科学や技術において、私たちは小さな変化を求めていません。大きな変化をもたらすレバレッジポイント(てこの支点)を見つけようとしています。
私たちはちっぽけな進歩など期待していません。巨額の利益を生み出すような大きな飛躍を期待しているのです。

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「銀の弾丸はない」は思考停止ワード
岸良:世の中ではまことしやかに「銀の弾丸はない」なんて言葉が出てきます。これって、完全にないと言っている瞬間に、思考停止ワードになっている。
(なので思考停止にならないために、銀の弾丸が)あるはずだと考える。そうすると、明らかにボトルネックだけをやるべきだと。
全部やっても無理だから一番重要なところだけやるというのは、たいていの成功している人たちが原則でやっています。そこに理論を持ち込むならば、つながりとばらつきがある時には常に制約があるんだと。そこの制約に集中することで、全体に成果をもたらす。
レバレッジポイントを見つけるというのは、科学として当たり前のこと。だから最初から目覚ましい成果を期待していいということなんです。