【3行要約】 ・多くのリーダーが「好かれること」と「成果を出すこと」を混同し、決断力を失っているという問題が指摘されています。 ・リーダーシップコーチのマイケル・アシー氏は、現代の職場では「みんなを気持ちよく」が前提となり、リーダーの境界線が溶けていると警告。 ・承認を追いかけるのをやめ、「予測可能なリーダー」として一貫した基準で判断することが真の信頼獲得につながると提言します。
「好かれること」と「成果」を混同すると、決める力が小さくなる Michael Ashie(マイケル・アシー)氏: ほとんどのリーダーは、「好かれること」と「成果を出すこと」を混同しています。正直に言うと、僕も長い間そうでした。「承認されること」は、安全に感じます。リーダーとして「権威」を持つことより、ずっと安全そうに見える。少なくとも、両方を失う瞬間が来るまでは。
たいていのリーダーは、そのダメージに気づくのが遅いんです。自分の「決める力」がどんどん小さくなってきて、ようやく気づく。
じゃあ、「好かれたい」という欲求の代わりに、本当は何が必要なのか。それは、自分の「軸」がもう一度、ハンドルを握り直すようなシフトです。
頭の中の“架空の委員会”は「共感」ではなく「恐れ」 あの瞬間のことを思い出してください。判断を下そうとした時、頭の中に“架空の委員会”みたいなものが立ち上がる感じ。
「これで誰か怒らないかな」「不公平だと思われないかな」「これを言ったら嫌われないかな」。一見、無害そうです。一見、とても思いやりのあるリーダーに見える。でも、誰も教えてくれない大事なポイントがあります。頭の中のその小さなディベートは、「共感」に見せかけた「恐れ」なんです。
あなたを「臆病者」と呼びたいわけじゃありません。ただ、多くの人が「調和している状態=リーダーシップ」だと教え込まれてきた、と言いたいんです。
「みんなを気持ちよく」が前提の職場では、境界線が溶けていく ほとんどの職場は、「あなたの仕事は、みんなを気持ちよくしておくことだ」という前提で回っています。そのせいで、あなた自身がずっと居心地の悪さを抱え続けることになっても、です。
ここが本当の問題です。あなたのゴールが「誰も怒らせないこと」になった瞬間から、あなたの決断は、柔らかくなり、遅くなり、小さくなっていきます。
チームと話す前から、自分の中で自分と値切り交渉を始めてしまう。誰かのために引いておこう、と先に“割引”を入れてしまう。ためらいのない、健全な境界線さえ、「ため息」や「白い目」や「皮肉なひとこと」を避けるために、じわじわ溶かしてしまう。
しかも、その人たちは、どうせ何をしても完全には満足しない人たちなんです。「どうやったらみんなをハッピーにできるかな」と考え始めた瞬間、あなたはすでに「自分の自信のハンドル」を相手に渡してしまっています。相手は気づきもしないまま、それを握っています。
あなたを削るのは「人」ではなく「承認チェイス」 今、あなたをじわじわ削っている“見えない正体”は、人そのものではなく、「承認を追いかけること」なんです。一度この「承認チェイス」が始まると、それが起きていることに気づくのは難しくなります。なぜなら、見た目は「いい人」でいることと、ほとんど同じに見えるからです。
ここから、ちょっと耳の痛い話になります。承認を追いかけることは、実は「相手に好かれるため」じゃありません。多くの場合、「自分が嫌な思いをしないため」にやっているんです。
チームはためらいを見抜き、静かにテストしてくる そしてチームは、「みんな納得してくれるといいな」をベースに決めているのか、「これが必要だ」をベースに決めているのか、ちゃんと見抜きます。その違いは、決断の形ににじみ出ます。
それは、アクセルとブレーキを同時に踏みながら、車を運転しているようなもの。一応は前に進んでいるけれど、ガクガクしていて、ぎこちなくて、タイヤの音ばかりうるさい。
リーダーがそういう「ためらい」を見せ始めた時、少しずつ、尊敬が漏れていきます。もちろん、誰もそれを口にはしません。「あなたが私たちの顔色を気にしすぎているから、信頼が揺らいでます」なんて、わざわざ言いません。
代わりに、テストしてくるようになります。締め切りを少しずつ遅らせてみる。決定や方針に質問を重ねてみる。あなたの言葉を「本気」では受け取らなくなっていく。「ちょっと押せば、きっとブレる」とわかっているからです。リーダーがほんの少し居心地悪そうにしている時、そのことは、周りの全員に伝わっています。
承認を追いかけていると、別のタイプの「モヤモヤ」も育ちます。多くの人がイメージするような、「わかってもらえない怒り」だけじゃありません。「こんなにがんばって、波風が立たないようにしているのに、誰も感謝してくれない」というあなた側のモヤモヤもあれば、「この人、どこが基準なのかよくわからない」というチーム側のモヤモヤも生まれます。
人は、判断が好きかどうか以前に、「はっきりしているかどうか」を尊重します。「好かれたい」という軸で動いていると感じた瞬間、あなたのリーダーシップは、「一時的な居心地のよさ」と引き換えにされてしまいます。
「好かれようとする」をやめて「予測可能であろうとする」 ここから、変えなきゃいけないのは何か。「好かれようとする」のをやめて、「予測可能であろうとする」ことにフォーカスを切り替えることです。
ここでいう予測可能というのは、「退屈」という意味ではありません。「一貫している」という意味です。「このリーダーがどんな基準で決めるのかがわかる」という状態のことです。
承認を追いかけることの、本当の対立概念は「冷たさ」ではありません。「自分の軸(インテグリティ)」です。相手のリアクションではなく、自分の価値観に基づいて決めることです。
あなたが予測可能なリーダーでいるとは、相手がこうわかっている状態のことです。この人はフェアであろうとする。この人は正直であろうとする。ちゃんと話は聞いてくれるけど、「顔色」だけでは曲がらない。
あなたの仕事は、「みんなの感情をマネジメントすること」ではありません。「基準(スタンダード)をマネジメントすること」です。そして皮肉なことに、「承認を追いかけるのをやめた時」にこそ、信頼は増えます。
たとえ、その決定に毎回賛成できなくても、人は「いつもニコニコしてくれる人」ではなく、「頼り方がわかる人」についていきます。
予測可能さは、メンタルエネルギーと信頼を取り戻す ここまで聞いていて、「そう、確かに承認を追いかけちゃう。でも、やめる方法がわからない」と思っているなら、ここからが、「カチッとつながる」ポイントです。
「予測可能である」ということは、チームを「当てずっぽうで推測させない」ということです。誰かが眉をひそめたからといって、その場で基準が変わったりしないということでもあります。
そして何より、「みんなの機嫌を読むこと」に、あなたのメンタルエネルギーを使わずに済むようになる。
予測可能なリーダーシップで動いていると、人はあなたの境界線をテストしなくなります。なぜか。どこが境界線か、すでに知っているからです。承認を追いかけていると、その線がどんどんボヤけていきます。「予測可能さ」は、その線をもう一度、太く、はっきりと、見えるかたちで引き直します。
ここで、あまり語られないけれど大事なシフトがあります。あなたが避けたいのは、「ガッカリさせること」そのものではありません。「不意打ちでガッカリさせること」です。
がっかりは、起こります。正直に言うと、絶対に起こります。でも「不意打ちのがっかり」は、信頼を揺らします。チームは、「情けないくらい弱い決定を、震えながら伝えられること」より、「しんどいけれど、はっきりした決定を、落ち着いて伝えられること」のほうを望んでいます。
締め切りの話は「お願い」ではなく「基準」として伝える 例えば、チームに「期限を守れない人」がいるとします。致命傷ではないけれど、毎回じわじわ遅れてくるタイプです。
そのたび、心の中の声がこうささやく。「あんまりきつく言わないほうがいいんじゃない?」「そこまで大ごとじゃないかもしれないし」「変な空気になったら嫌だな」。
そこで、あなたは言い方を弱めます。10個くらいの前置きをつける。「もちろん状況もあるよね」とか、「ぜんぜん責めているわけじゃなくて」とか、クッションを山ほど挟む。気づけば、本来はちゃんとしたパフォーマンスの話なのに、「ちょっとしたお願い」くらいのニュアンスになってしまう。
話を聞いた本人は、こう受け取ります。「あ、なるほど。締め切りは“あくまで目安”ね」。では、同じ場面を、「承認」ではなく「予測可能さ」を軸にしてやり直してみましょう。
こんなふうに言うだけでいいかもしれません。「最近、締め切りが後ろ倒しになっているのが気になっていて。あなたらしくないなと思うから、何が起きているのか一緒に整理させてほしい」。
ドラマもいらない。怖がらせる必要もない。感情の綱引きも必要ない。落ち着いて、率直に、何が基準なのかを明確に伝えるだけです。この「一貫性」こそが、時間をかけて尊敬を生むものです。愛想の良さでも、好感度でも、「怒らないでくださいエネルギー」でもありません。
チームは「この人はブレない」「この人がどう動くか、だいたい見えている」と感じ始めます。その時、あなたの権威は「状況次第で変わるもの」から、「積み上げてきた信頼」へと変わっていきます。
人がついていくのは「一番優しい人」ではなく「一番頼れる人」 あなたのハンドルを握っているのが、「好かれたい気持ち」ではなく、「自分の軸」になった時、人はあなたについていきます。一番優しい人だからではなく、一番「頼れる」人だからです。
そしておもしろいことに、そういうリーダーこそ、結果的に一番「好かれる」ようになります。「好かれよう」と必死な人より、「好かれることを必要としていない人」のほうが、好かれるんです。
もしこの話が響いたなら、チャンネル登録して、コーヒーでも用意してください。次の動画でまた会いましょう。チャオ。
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