【3行要約】
・多忙なマネージャーほど成果が出ない現実。「忙しさ」が安全地帯となり、本質的な問いから逃げる罠に陥っています。
・リーダーシップコーチのマイケル・アシー氏は、現代のオーバーワークの正体は仕事量ではなく方向性の欠如だと指摘。
・マネージャーは「もっと働く」より先に「ノーススター」を決め、チームに明確な方向性を示すべきです。
「忙しさ」は問いから逃げるための“安全地帯”になる
Michael Ashie(マイケル・アシー)氏:もっと一生懸命働くことって、ある意味「安全」に感じます。なぜかというと、もっと答えにくい質問から逃げられるからです。その質問とは、「自分がやっているこの仕事は、本当に意味があるのか?」です。
ほとんどのマネージャーは、その問いを考えるために立ち止まることがありません。なぜなら、立ち止まることが無責任に感じるからです。サボっているみたいだし、人をがっかりさせているようにも感じるからです。
だから代わりに、ひたすら走り続けます。メッセージにもっと返す。もっと会議に出る。「ちゃんと貢献していますよ」と証明するために、もっと仕事を抱え込む。外から見ると、それなりにすごく見えます。忙しいし、レスも速いし、あちこちの仕事に顔を出している。でも、内側では疲れている。ヘトヘトだし、ちょっとイライラしているかもしれない。
というのも、こんなにがんばっているのに、現場はどこか散らかったままだからです。チームはいまいちはっきりしていない。火消しは次から次へと出てくる。そしてなぜか、自分が有能になればなるほど、引き受けるカオスの量も増えていく。
これが「罠」です。もっと働くことは安全に感じます。なぜなら、こんな質問を問わなくて済むからです。「この全部って、そもそも正しい方向を向いているのか?」
オーバーワークの正体は「量」ではなく「方向」
多くの「オーバーワーク」は、仕事が多すぎることが原因じゃありません。方向性のない仕事が原因です。はっきりしたターゲットがないと、どのタスクも同じくらい「急ぎ」に見えてきます。どの依頼も同じくらい「重要」に感じます。
そしてあなたは、エネルギーの大半を「リアクション」に使い、「リードすること」には使えなくなります。だから、ハイパフォーマーなマネージャーでさえ燃え尽きてしまう。弱いからでも、プレッシャーに耐えられないからでもない。明確な方向性がないまま努力を重ねると、成果じゃなくてカオスが増えていくからです。
ここからは、「ちゃんとコントロールできているマネージャー」は何をしているのか、その話をします。答えは、タイムマネジメントの小技とか、生産性アプリとか、早起き(朝4時とか)ではありません。
一流のマネージャーは、1日に詰め込む「努力」の量で勝っているわけじゃありません。まず“方向”をつくる。その上で、ようやく「努力」が自分の味方になるようにしているんです。
チームが求めているのは「もっとやる」ではなく「決める」
ここで、多くの人が聞きたくない「不都合な真実」を1つ。あなたのチームは、あなたに「もっと手を動かしてほしい」とは思っていません。彼らが必要としているのは、あなたがもっと「決める」ことです。
何が大事なのかを決める。何が大事じゃないのかを決める。どこに向かうのかを決める。たとえ、その道筋がまだ完璧じゃなくても。方向性がないと、チームはその空白を「ノイズ」で埋めます。
みんながんばってはいるけれど、同じ方向に向かっているとは限らない。あれこれイニシアチブが積み上がり、優先順位はあいまいになり、あらゆる判断が最後にはあなたのところに戻ってきて、あなたがボトルネックになります。
これは「仕事量の問題」じゃありません。「明確さ(クラリティ)の問題」です。その明確さは、私が「ノーススター(北極星)」と呼んでいるものから始まります。
かっこいいミッションステートメントでも、壁に貼ってあるラミネートのポスターでもありません。もっとシンプルです。たった1つの質問への答えです。
「“今”勝つって、具体的にどういう状態?」
今年とか、いつかの未来じゃなくて、まさに今です。もしあなたがチームのみんなにこの質問をして、10人いたら10通りの答えが返ってくるとしたら……それが問題です。同時に、それが大きなチャンスでもあります。
ノーススターが「判断のフィルター」になる
ノーススターは、他のすべてをわかりやすくしてくれる「たった1つのアウトカム」です。アンカーであり、判断のフィルターであり、新しい仕事が来た時に「やる・やらない・今じゃない」を決める時に、必ず立ち返る場所です。
優れたマネージャーは、これを最初に決めます。気持ち悪いくらい曖昧に感じても、不完全だと思えても、とにかく決める。ちょっとぼやけた方向性でも、「方向ゼロ」よりは圧倒的にマシだからです。
ノーススターが決まると、少しおもしろいことが起こります。1日が、少し軽く感じられ始めるんです。仕事が減ったからではありません。頭の中で、すべてを同じ重さで抱え込まなくてよくなるからです。
「どうやって全部終わらせるか?」という問いから、「これは本当にゴールに近づく仕事か?」という問いに変わります。
この問いのチェンジが、すべてを変えます。じゃあ、これを現実の仕事に落とすにはどうするか。「明確さ」は、口で言うだけでは意味がなくて、日々の仕事に出てこそ価値があります。
優れたマネージャーが次にやるのは、これです。毎日のタスクと、大きなゴールをつなぎ直す。しかも、それを口に出して伝える。「みんな当然わかってるでしょ」とは思いません。「こんなの見ればわかるよね」とも思いません。ちゃんと“言語化してナレーション”します。
これは、〇〇だから大事なんだ。これは、〇〇を達成するためにやっている。これは、単なる雑用じゃなくて、〇〇というゴールを支えているピースなんだ。こういう一言一言は、小さく見えるかもしれません。でも、影響はものすごく大きい。
「なぜこの仕事をやっているのか」がわからないと、人はそこでエネルギーを失っていくからです。逆に、それがわかっていると、同じ仕事でも軽く感じられて、「意味のあること」として集中しやすくなります。
明確さは「一度言えば伝わる」ものではない
エネルギーは「どれだけ休んだか」だけで決まるわけじゃありません。その仕事が、自分たちにとって意味のあるものとちゃんとつながっているかで決まります。
もしチームが疲れて見えたり、バラバラだったり、集中していないように見えるなら、「仕事量が多すぎるからだ」と決めつける前に、こう問いかけてください。
彼らは、自分たちが何に狙いを定めているのか、ちゃんとわかっているのか? 目の前の仕事が、「何か大事なこと」ときちんとつながって見えているか?
ここにマネージャーがつまずきがちなポイントがあります。明確さを「1回だけの宣言」だと思ってしまうことです。一度ミーティングで話したからOK。一度チャットで書いたから、もう浸透したはず。
現実はそうじゃありません。クラリティ(明確さ)は「練習」です。何度も繰り返すことです。同じことを、少しずつ表現を変えながら何度も伝える。意思決定をする時に、毎回ノーススターに結びつけながら説明する。
特に、物事が忙しくなった時。物事がごちゃついてきた時こそ。そのタイミングでこそ、人は一番「方向性」を必要としています。
「忙しさ」を価値の証拠にしない
ここで、ちょっとした「豆知識」をシェアします。もしあなたがいつもキャパオーバーなら、心のどこかで「忙しさ」を、自分の価値の証拠として使っているかもしれません。
必要とされるのは、気持ちいい。「この人がいないと回らない」と言われると、重要な存在になれた感じがする。そのうち、気づかないうちに、「よく動いていること」と「リーダーシップ」を混同し始めます。
でも、厳しい現実を言うと、何もかもあなた次第になっている状態は、決してリスペクトではありません。あなたがすごいから、というより、方向性が欠けているからそうなっていることが多いんです。
そして、その穴は、どれだけハードワークしても埋まりません。優れたマネージャーは、「ヒーローであること」を手放します。その代わりに、「コンパス(方位磁針)」になることに集中します。
方向がクリアになると、「努力」の形が変わります。何かを「ノー」と言う時に、罪悪感なく言えるようになります。何を守っているのか、わかっているからです。自信を持って任せられるようになります。「タスク」を渡すのではなく、「アウトカム(成果)」を渡しているからです。
すべての“急ぎ”に、毎回全力で反応しなくて済むようになります。何が本当に「ステージ5の火事」なのか、区別できるようになるからです。
簡単な例を出しましょう。同じように10時間働くマネージャーが、2人います。マネージャーA。1日中、メッセージに答え、会議に飛び込み、目の前に現れる問題を、その場でひたすら処理していきます。1日の終わりには、ヘトヘト。でも、何も本質的には進んでいない感覚が残る。
マネージャーB。週のはじめに、「今週いちばん大事なことはこれだ」と1つ決めます。そして毎日、自分にこう問いかけます。「今日は、その『一番大事なこと』を前に進めるために、何をやった?」メールのいくつかは後回し。いくつかの会議はお断り。いくつかの仕事はチームに渡す。
同じ10時間を働いています。でも、インパクトはまったく違う。これがクラリティの力です。努力を「ただの消耗」から「レバレッジ」に変えてくれます。
そしておもしろいことに、それはエネルギーも取り戻してくれます。仕事が易しくなったからではありません。「何が一番大事か」を、頭の中でずっと争わせておく必要がなくなるからです。
1つひとつの判断で、いちいち迷わなくてよくなる。「これは本当に正しいのか?」という不安を、1日中抱え続けなくて済む。行き先がわかっている。その「安定感」がすべてなんです。
圧倒されたら「減らす」より先に「クリアに見る」
もしこの動画から1つだけ持って帰るとしたら、これにしてください。
圧倒されていると感じた時、いきなり「仕事を減らそう」とするのではなく、まず「もっとクリアに見る」ことから始めてください。
自分に問いかけてみてください。今、本当に大事なのは何? 自分は今、何を最適化しようとしている? どの仕事が、うまくやれば他の仕事をラクにしたり、そもそも不要にできたりする?
こういう問いこそが、リーダーシップです。それは「根性」ではありません。
そして、もしこういった「明確さ」を、机上の理論ではなく、リアルな仕事・リアルなチーム・リアルなプレッシャーの中で育てたいなら、『Manager’s Playbook』をぜひ見てみてください。
努力ではなく「方向」でリードできるようになるための、落ち着いた、実務的なガイドです。大げさな煽りも、フワッとした話も抜きで、あなたの仕事を軽くしながら、インパクトだけ大きくしていくための中身だけが入っています。
じゃあ、コーヒーを手に取って、プレイブックも手に取って。次の動画でまた会いましょう。