【3行要約】・プロダクトマネージャーが組織変革を目指す際、正論だけでは抵抗に遭い、孤軍奮闘に陥りがちです。
・クルト・レヴィンの組織変革理論を基に、「小さな成果で方向性を示す」「同志を集めて広げる」「組織体制を変える」の3ステップが効果的とされています。
・PMは本来孤軍奮闘すべきではなく、仲間を増やしながら上司や経営陣を巻き込み、プロダクトと組織の未来を切り拓くことが求められています。
前回の記事はこちら 抵抗に遭って失敗するパターン
野口大貴氏:ここからは私の失敗ケースも交えながら話したいなと思います。「抵抗に遭って失敗するパターン」ですね。いきなり「本質から変えにいく」というのは、けっこう難しいというか失敗するパターンかなと思っています。
このへんって、やはりトップダウンでガッとやるといける。社長が「こうだ」と言ったらみんなやるってなったりもするんですけど、結局ボトムアップからやると、うまくいかないケースがあるなと思っています。
例えば、「アウトカムドリブンのOKRを目標にしたい」とか、「プロダクトマネジメントがちゃんと評価されるようなグレードにしたい」とかがあったとして、やはり惰性とか心理的反発から抵抗が起きるケースがけっこうあるなと思っております。
抵抗がなかったとしても、やはりそもそもこういう本質の組織だったり評価を変えにいくところは、未成熟な、それまでできていない組織でいきなりやるのはけっこう難しい。そういう意味では、あとは組織施策というのは時間軸的にも、すぐやってぱっと変わるわけでもないので、そのへんの難しさもありますね。
現場にかかる「労力」を読めていない
あとは、ステークホルダーの「労力」を読めていない。これは私も失敗したことがありますけど、「営業の失注記録を全部、顧客管理表に残してください」というのを依頼したことがあって。
僕は自分で営業していて思うんですけど、やはり失注記録を書くのって本当に面倒くさい。すごく嫌な気持ちになるので、本当に「なんであんな正論で戦いにいったんだろう」と今となっては思うんですけど、そういうところとか。
あとは、例えばこれはXで最近見たのをちょっと引用しているんですけど、「採用のためにブログを書いてください」。こういうのも、やったら良さそうなのはわかるけど、けっこう工数がかかるし、「それでほんまにうまくいくんかな」みたいなところで成功イメージが湧かなくて、なかなか抵抗されるケースがあるんじゃないかなと思っております。
PM完結プロジェクトになってしまい、他部署を巻き込めない
あとは、これも私の失敗ケースですけど、PM完結できれいにプロジェクトとしてやっていますけど、他部署のステークホルダーを巻き込めないみたいなケース。
昔あったのが、「ちゃんと顧客のセグメントを分析して、定量・定性インタビューをして、特定の顧客層に刺さる商品を作って、そこから広げて拡張して展開していきたい」。そういうことをやろうとしたことがありまして、営業の役員からも「どうぞ自由にやってください。ただ、うちらはあんまり関わらないから、リソースは使わず、そっちでやってね」というところがあって。
その時に、PMでインタビューの分析をしていろいろやったりはしていたんですけど、結局自分たちでPMが営業するとか、そのへんの営業組織を巻き込むみたいなのもできずに、結局プロジェクトとして優先度が下がってしまって絵に描いた餅で終わってしまった。こういう失敗もあったかなと思います。
あとは、「正論をそのまま主張する」ですね。「良いプロダクト組織はこうあるべき」「pmconfでこう言っていました」「業界ではこうです」みたいに、それをやはりそのまま言ったとしても、「また言うてるな」「わかるけど、それ難しいやん」みたいな、そういう話になってしまうかなと思っています。
これも感情が動かず、共感されない。だから、抵抗に遭ってしまうケースかなと思います。孤軍奮闘じゃなくても、何かしら身に覚えがあることも、昔経験されたとか、そういうのもあるんじゃないかなと思うんですけれども。
上司と組織をどう動かすか?
じゃあ、「上司と組織をいかに動かすべきか」という話に入っていきたいんですけれども。こちらはドイツの1940年代ぐらいに活躍された、組織開発領域の心理学者の方。クルト・レヴィンという人の、「三段階組織変革プロセス」というものがございます。
これは「解凍」「移行」「再凍結」というふうに書かれています。ここからいろんな組織開発理論が多数発生しているので、ここは本当にそこの原点的なところかなと思うんですけれども。
最初に、現在の水準を解凍しましょう。こういう基準、こういうやり方でやっているというのを解凍しましょうと。例えば「ここは危機的状況で、変えたほうがいいですよ」という、そこの認識を共有して、目的や目標を設定しましょうと。
次に、移行すると。新しい水準に向けて移行をしていく。最初の方向性からいろいろ変化も推進して、改善のサイクルを回していく。最後は再凍結ですね。新しい水準で組織を再凍結する。新しくうまくいった基準、うまくいったやり方があるので、それで組織をしっかりと固めていきましょうと。定着・習慣化させましょうという話でございます。
これはトップダウンの変革・改革をしていく時とかにも使える話ではあるんですけれども、これをじゃあボトムアップ、イチPMとして、そこから起点に組織の未来を切り拓いていくならば、こういうステップがあるんじゃないかなと思っております。
ボトムアップ起点で組織を変える3つのステップ
解凍の段階では、現状を認識して動きを変えて、小さな成果で方向性を示すということですね。「小さな成果はやはり大事ですよね」という話が、今日のセッションでもありましたけども。まず言うよりやるが早いというか、行動、結果で示すのがいいかなと思います。その上で、同志を集めて、学習して、試行錯誤する。最後は、組織体制・目標・評価を変えていくというかたちです。
①と②は1人でやれる。②は1人でまずチームアップしていくというところになります。上司とかは、アピールするだけで①、②はいいかなと思っていて、③だけ上司をちゃんと巻き込んで、一緒にやっていくというのがいいんじゃなかろうかと思っております。
たくさん書いているんですけど、ここは後で見ておいてもらえればなと。基本的には、やはり「勝手に進める」というのが本当に大事かなと思っています。上司とか組織の合意を取って、「こういうことをやったほうがいいんじゃないか」みたいな感じでやっていたら遅いので、あとは抵抗されちゃいますし。
勝手に成果を出して、認めさせる
やはり自分で勝手にやって、小さな成果を出して、それを周りに「楽しそう」「やれそう」「それだと成功しそう」みたいに思わせてモメンタムを作るという。そういう期待感を出すのが、惰性を壊しにいけるポイントかなと思っています。本当に時間は無理やり作るべきかなと思います。
やはり「20パーセントルール」みたいなのがけっこう良しとされて、いろんな会社さんが真似されたりとかもあったと思うんですけど。今は20パーセントルールみたいな、そういう「新しいことのために時間を取りましょう」みたいなのって、なかなか余裕がないかなと思っています。
そういう意味では、自分でしっかり時間を確保して、そこから変化の兆しを作っていくと。勝手に成果を出して、上司を、周囲を認めさせるという、そういう動きがこの段階では大事かなというところです。
第2段階は移行なので、決まった方針でしっかり施策を回して、成果を出して広げていこうよという話なんですけど、この段階で同僚とかを巻き込みながら、成果を社内で宣伝していくみたいな、アピールしていくところがいいかなと。小さな個人の成果を、チームの大きな成果に変えていくというフェーズかなと思っております。
「そもそもPMは孤軍奮闘すべきじゃない」
「孤軍奮闘PM」と題を打ったんですけれども、そもそもPMは孤軍奮闘すべきじゃない。1人でやるのではなくて、仲間、他の職種の同僚を巻き込むとか、顧客を巻き込んでやるべきかなと思っております。
社内で勉強会をするとか、私も人を増やすところで言うと、自分で開発メンバーを採用したりしております。あと、社外のPMに頼るのもいいかなと思っています。僕もこんな感じで、「最強のヘルスケアスーパーアプリを検証なく作ろうとした」というのが創業期だったんですけど、じゃなくて、けっこうPMの人に壁打ちをしたんですね。
「やはり最小限のMVPで既存のSaaSを組み合わせながらやるのがいいね」となって、その後けっこうスムーズに、今のサービスまで展開できたかなと思っています。「あの時スーパーアプリを作ったら、だいぶ大きな工数で無駄にしてしまったな」と思うんですけど、そうやって1人でやっているからこそ社外の人に頼るというのもいいかなと思っています。
みなさんセッションを聞いて学ばれたと思うんですけど、そこから交流するみたいなのもいいと思います。やはり悩みを本当に打ち明けると、相手にも気づきがあってGiveになることもありますし、ぜひ本当に踏み込んだ話をこのpmconfでがんがんやっていって、仲間を作っていっていただけたらなと思います。
上司を説得して味方につける
いろいろ成果が出た後は、組織体制・目標・評価を変えにいくところだと思っています。ここは自分1人でできる部分ではないので、上司をしっかり巻き込んでいく。トップダウンで進めてもらえるよう暗躍する。上司を説得して、しっかり味方につける。それはこれまでのアピールがあったからこそ味方につけられるのかなと思うので、そういうところですかね。
あとは、組織として進める上では、やはり他の文脈と合わせることが大事かなと思っています。昔、評価制度を私が変えた時もそういうことをやったりしているので、組織を変革できる人というのは、文脈を捉えるのがうまいんじゃないかなと思っております。
あらためてこの3ステップ、「解凍」「移行」「再凍結」ということで、小さな成果から同志を集めて、最後は組織まで変えにいくというところ。いきなり3をやるのは非常に難しいので、小さな成果からプロダクトや組織を変えにいくというところを、ぜひやっていけたらなと思います。
私自身、こういうところを本当に覚悟を持ってやっている部分でございますが、やはり相当な努力というか、大変なこともあるとは思うんですけれども、やはりこういうのをやっていけると、自分のレベルも気づいたら上がっていたり。
プロダクトを良くするところに対して、小さな成果を武器にしっかり向き合うと、上司・経営陣と向き合うところをやっていけたらなと、自分自身も思っています。プロダクトと組織の未来を、自らの手で切り拓いていきましょう。
短い時間でしたので、またPittaとかも出していますので、そちらのほうでもいいですし、懇親会もこの後ございますので、しっかりいろいろとお話ができたら、個人的にはうれしいなというふうに思っております。
最後にアンドエルの話に戻るんですけど、ミッションとして、「あらゆる挑戦に、安堵を」と掲げております。みなさんも未来に挑む挑戦をされていると思うんですけれども、私の発表で何かしら挑戦に対して安堵を得られるような時間になればうれしいです。
孤軍奮闘せず、仲間を増やしながら、みんなで全力で未来に挑戦していきましょうということで、セッションを終了とさせていただきます。ありがとうございました。
(会場拍手)