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静かな分断を超える実践型ワークショップ(全4記事)

○か×かで評価する職場が新しい発想を止める? 一歩踏み出すことを恐れさせる構造とは [1/2]

【3行要約】
・効率化ばかり追求する現代の働き方では、真の生産性向上は実現できない……多くの企業が二元論的思考の罠にはまっています。
・ジェイフィール代表の高橋克徳氏は、ドイツの「時間主権」制度を例に、個人の幸せと会社の成長を両立させる新たな働き方改革の可能性を提示しました。
・創造性を重視した職場環境づくりと、対話を通じたコミュニティシップの構築こそが、持続可能な組織変革の鍵となります。

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“効率的に最短距離でつくる”発想が“まったく新しいもの”を遠ざける?

高橋克徳氏(以下、高橋):僕ら自身が、ずっと二元論のわなにはまっている。個人の幸せと会社の幸せ、働き方を考えた時に、「両方が幸せになる働き方ってないんでしょうか」と、そこをちゃんと議論していかないと、本当の解決策は出てこないんじゃないかと思うんです。

でも、それが「私の幸せ」と「会社の幸せ」で立場が分かれて、「もっと働け」と言う経営層と(笑)、「もっと自由に働きたい」と言う側でぶつかっているだけだと、やはり何も生まれない。なので、何が大事かと。どなたか……。

参加者6:私も本当に、今、頭を抱えています(笑)。ただ、決めたことを効率的に、最短距離でやり切るという生産性と、「今までとぜんぜん違う発想で、どうしていったらいいだろう」と考えて、次元の違うものを創造する生産性って、まったく別物だと思うんです。

前者は、何パーセント改善とかの話だけど、後者は、2倍、3倍どころじゃなくて、何倍かも測れない世界に行く。今は、自分も会社も、「とにかく決めたことはやり切ろう」というモードで、追い詰められている感じがします。やったか、やっていないか、○か×か。そういう二元論の中で評価され、評価する構造にはまり込んでいる。

一方で、安心安全な状態の中で、「そもそも」というところから考えた時に、「どうやったっけ」と問い直すと、今までの「どう効率的にやるか」とは違う発想がポンと出て、「あ、確かに」となった瞬間に、問題自体が問題じゃなくなっている、ということも起き得ると思うんです。

でも、そういう創造性が生まれる体験が少ないから、「最短距離で効率的にやる」「決めたことはやる」というモードから、怖くて離れられない。そこから離れたら、最低限担保している土台さえ崩れてしまう気がする。何が得られるのかという保証がない中で、飛び込む勇気が持てない。

その恐れから、結局、嫌だなと思いながらも、決められたことをやり続ける。そこに、一人ひとりがしがみついている。しかも、その構図の中にどっぷりいると、なかなか気づけない。気づいたとしても、一歩踏み出すとか、やめるとか、怖すぎてできない。

ただ、誰かが一度、その境界を越えて、違う景色や違う体験を生み出すと、「そんなこともあるんだ」と、少し勇気づけられて、また越える人が出てくる。そんな連鎖が起きる可能性もあると思っています。

生産性って一言で言っても、質感がまったく違うものがある。「なんか、おもしろいことを、みんなでつくっていかへん?」みたいな方向に、本当は行きたい。でも、なかなかできていない自分がいて、そこに悩んでいます、という感じです(笑)。

日本より労働時間が短いのにGDPが高いドイツが行ったこと

高橋:これは、実は僕の中では、もう1つの大きなテーマだと思っています。本当に問われているのは、働くということ、働き方を通じて自分で自己最適を図るのはいいとして、それが、みんなにとっていい状態になるのを、どうやってつくれるのか、ということです。

自分が自由に働くことで、誰かの負担が増えてしまう。一人ひとりの休みが増えても、生産性や創造性が下がってしまう。それだと、結局、回り回って、自分に返ってきてしまう。

「じゃあ、そこをどうしたらいいのか」と考えた時に、最後にテキストにも書いてありますけど、「海外ではどうしているのか」という問いがありますよね。そういうことを、みんなで探求してみるのも、1つの答えなんじゃないかと思っています。

1つ、筑波大学名誉教授の田中洋子先生から教えていただいたドイツの事例を紹介します。ドイツは、日本の人口のおよそ3分の2で、8,000万人ぐらいです。総労働時間は日本の8割で、1,341時間。日本の平均総労働時間は1,607時間ぐらいですから、それより少ない。実際には、日本はもっと多いかもしれません。

バカンスは日本の3倍ぐらいで、だいたい1ヶ月は休む。それなのに、名目GDPは日本を抜いてしまった。名目なので、為替の影響などもありますが、それでも、働く時間は少なく、人口も3分の2なのに、GDPは上回った。

なぜかというと、実は2000年代の初頭に、大きな動きがありました。これから、介護や子育てなど、人生のフェーズによって働き方が変わるのは当たり前の時代になる。その時、働き方を選ぶ権利は誰にあるのか。それは個人にある、という考え方です。

そこで、「時間主権」という考え方がつくられました。例えば、「週4日で働きたい」「1日5時間で働きたい」と個人が会社に申請したら、会社は理由を問わず、それを認めなければいけない、という法律ができたんです。できてしまった。

そうすると、何が起きたか。本当に、週5日ではなく、短い時間で働く人がどんどん増えていきました。でも、それは逆に、いろんな人生のフェーズにある人たちの社会参画を促した。特に女性の社会参画が進んだんですよね。

時短勤務だけではない、「マネジメントシェアリング」の効果

高橋:最初は、上の立場の人たちから始まったそうです。例えば、校長先生を2人にする。週4日の校長先生と、週3日の校長先生がいて、共同で仕事をする。そういうことを、まず上のほうからやり始める。そんな動きが起きていったんです。

今、マネージャーの中でも「マネジメントシェアリング」が起きています。例えば、これも女性のマネージャー2人の事例ですが、1人は週4日、もう1人は週3日で、それぞれ働く時間が違う。

ただ、重なっている時間帯があるので、その時間にいろんなことを相談する。情報はグループウェアですべてシェアされていて、困っていることは毎日ちゃんと送られてくる。それを確認して、会える日、重なっている日にすぐ相談する。「こうしたいね」と決めたら、すぐに動く。「その場で解決しよう」と、どんどん進めていく。

1人で抱え込まないから、いろんな知恵が出てくるし、結果としてイノベーティブにもなっていく。そこで起きているのは、さっき話してもらったように、生産性というのは効率性を上げることだけじゃなくて、創造性を高めることなんだ、という発想への転換なんですよね。みんなが、より創造的な働き方に変わろうとしている。

目の前のことを、短い時間で効率的に進めるために、会議を短くするとか、立ちテーブルでやるとか、そういう仕組みや仕掛けもどんどん増えていった。でもそれだけじゃなくて、「このやり方でいいのかな」とか、「これ、やめたいよね。どうしたらやめられるだろう」といったことを、すぐに相談して、解決していく動きも出てきている。

個人が幸せな働き方をすることを、むしろ本気で追求するなら、それと同時に、会社が抱えているいろんな問題を一緒に解決していく。そのために、1人で考えるのではなく、つながりながら一緒に考えていく。そういう仕掛けをつくることで、変えようとしている。それが、ドイツで実際に起きてきたことなんですよね。

こうした事例も含めて、「海外では本当にどうやっているんだろう」とか、「他にやり方はないんだろうか」とか、「試しに、こんなことをやってみない?」と問いながら、自分たちでやり方を見つけていく。そのプロセスが持てると、本当はいいなと思っています。

ここまで一気にいくとは、もちろん思っていません。こうしたヒントがあること自体が大事なんだと思うんです。あらためて、そうやって見てみると、働き方というものを、もう一度問い直すことができるんじゃないかなと思います。

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