「誰も管理職をやりたくない」と言われる中で考えるべき問い
高橋:本の中では、他にもいろんなテーマを扱っています。例えば、仕事や職場について、「むしろリモートが大事なのか、リアルが大事なのか」とか、「リアルで集まる意味って何なんだろう」とか、「リアルじゃないと本当にできないことって何だろう」といった問いもあります。
管理職についてもそうです。「誰も管理職をやりたくない」と言われる中で、責任や負担が管理職に集中して、誰もやりたがらない役割になってしまっている。このまま放置しておいていいのか。管理職とは、どういう存在だったら、みんながやりたいと思えるのか。あるいは、責任って、本当に誰か1人が負うものなのか、という問いもあります。
リーダーシップも同じです。「踏み出したくない」と言う人が増えている中で、リーダーシップって、強いリーダーシップじゃなきゃいけないのか。お互いが影響し合って、応援し合える関係があったら、自然と踏み出したくなるような状態が生まれるんじゃないか。そういうところから、リーダーシップが生まれるんじゃないか、という問いもあります。
こうした、今なんとなく行き詰まっているようなことや、スタンスが違っているがゆえに、正面から向き合えていないテーマに対して、「ちゃんと向き合ってみませんか」という投げかけをしながら、対話をしていく。その時間を、ぜひつくっていただけたらいいなと思っています。
今日は時間の関係で、この「7つの対話」は、1つひとつ丁寧に扱うことができませんでしたが、また別の機会に、実際に1つずつ、きちんとやっていきたいと思っています。

あらためて、こうしたテーマを探求し続ける対話を通じて、会社のあり方や、会社という場所を、一緒に働く人たちがどうやって自分たちで考え、自分たちでより良くして、自分たちで変えていけるのか。その力を育てていく必要があるんじゃないかなと、僕は思っています。
「職場の中でどんな感情が広がっているか」に向き合う
高橋:最後に、少しだけ付け加えさせてください。「対話を通じて、いい感情の連鎖を起こしていきましょう」ということです。これは、ジェイフィールでずっと扱ってきた「組織感情」という概念でもあるんですけど、職場の中でどんな感情が広がっているのかに、あらためて向き合ってみよう、という取り組みです。
今、自分たちの中で起きている感情が、お互いにどんな影響を与えているのか。そして最終的に、対話を通じて、どんな感情に変えていきたいのか。どんな感情が行き交う場所にしていきたいのか。そこを1つの目標にして取り組んでいくといいんじゃないかなと思っています。
大きく見ると、4つのステップがあるんですけど、今日やったのは左下の1つ目だけです。

「違いを超える関係づくり」。人と人との分断を超える、というところですね。
次は、人と仕事の分断を超えるために、主体性を取り戻したり、創造性を取り戻したりする取り組みが必要になる。その上で、マネジメントそのもの、マネージャーや会社の運営のあり方を変えていく。
さらに最後は、社会との分断を超えていく。企業と人、社会がつながっていくことが、これからますます大事になっていくんじゃないかなと思います。そうすると、自分の中から湧き上がる思いも、もっと強くなっていくはずです。
「この場所は自分の場所だ」と思える職場づくり
高橋:その時の鍵になるのが、最初にお話しした「コミュニティシップ」だと思っています。コミュニティシップというのは、ヘンリー・ミンツバーグの造語ですが、この場所はいい場所だな、この人たちはいい人たちだな、いい関係があるな、そう思えると、その場所をもっと良くしたい、一緒につくっていきたい、と思えるようになる。それがコミュニティシップです。
コミュニティシップが生まれるためには、仕事や職場、会社との間に強いつながりが実感できるようになることが必要です。これがエンゲージメントです。強いつながりを実感しているからこそ、「この場所は自分の場所だ」と思えるようになる。だから、一緒につくりたい、育てたい、と思えるようになる。そこから、本当の意味でのリーダーシップが生まれて、踏み出していく人が出てくる。
会社として、こうした活動をやる意味は何かというと、表向きには「みんながリーダーになる」とか「もっとリーダーシップを発揮しよう」と言われがちですが、その前に必要なのは、エンゲージメント、本当のつながりをつくることです。この場所を、みんなでより良い場所に変えていこう、という対話ができるようになること。
そこから、踏み出す人をみんなで応援し合う。そういう変革が、組織の中で起きていく。そんな状態をつくれたらいいんじゃないかなと、僕は思っています。
最後に、少しだけ補足させてください。これは話し始めると長くなってしまうんですけど、人や組織、社会のあり方って、生態系とすごく似ていると思うんです。
多様性が育まれる森があって、そこから流れが生まれる。その流れが、やがてリーダーシップやマネジメントといったかたちで大きな川になっていく。そこから価値が生まれて、また循環して、いい森が育っていく。そんなイメージです。
だから、人と組織と社会を、切り離して考えてほしくないと思っています。すべてがつながって、いい循環をつくっていく。その循環の中に、自分たちがいる。人も、組織も、社会も、同じだと思うんです。
その感覚を取り戻せないと、「つながる」ということの本当の意味が、なかなか見えてこないんじゃないかなと思っています。このあたりは、また別の機会に、ゆっくりお話しできたらと思います。