入社後の定着までを視野に入れる
面接の目的は大きく2つで、1つはNGを出すために見極めるということ。ここについてはというマニュアルは機能していると思います。2つ目は「アトラクト」と呼ばれている魅力付けをする(という目的もあります)。
全員が全員、入社してもらうわけにはいかないので、一定の見極めは必要です。が、例えば面接時間が1時間だった時に、その面接官がどれぐらいの時間配分でアトラクトと見極めをやっているかはすごく重要。
今回のケースだと、結局は8割以上が見極めに時間を使ってしまっています。そうなると、求職者の体験としては良くないですよね。ずっと自分が見定められて、あら探しをされているというかたちになります。
そもそもホームページやネット上で見たその企業の魅力といったものの答え合わせは求職者からはできないので、ただただ見極められて終わる。「その状態で内定をもらっても……」という感じじゃないですか。
なので、見極めること自体は大切ですし、そのために例えば構造化面接のような、一定のマニュアルになっているような仕組みを作っていくことは大事なんです。が、本当にアトラクト、(つまり)魅力付けをする時間を面接の中で設けないと、結局は辞退につながってしまいます。
歓迎体制がない場合は早期離職リスクが
あとは、「合否連絡が1週間(後)」という、(スライドの)4番目の「候補者体験の軽視」ですね。業務連絡が1週間後ってあり得ないので、そのようなところのオペレーションが回っていないのは、もう言語道断です。基本的にはもう12時間以内に合否連絡や次のメールを送るべきです。
なので、もし、こういったところができていない採用チームがあるようであれば、そこはオペレーションの改善にコストを投下するべきかなと思います。
続いて、穴のポイント。「求人媒体に掲載」というケースが多くて恐縮です。先ほども口頭で説明しましたが、「過去はこうだったから今もこうだろう」というやり方は、別に採用に限ってではないですが、通用しないケースが増えてきています。
人々が可処分時間の中で見ているアプリケーションや媒体として、どういうチャネル(があるか)。例えば昔はテレビだったけど今はショート動画だとか、そのような行動変容とか消費者行動心理も変わっている。それと同様に採用のチャネルも、数年前に成功したからといって今も成功するわけではない。
だからこそ、スポットバイトの「タイミー」さんのような新しい採用手法が生まれてきた。また、アメリカの「LinkedIn」に影響を受けた「ビズリーチ」さんのようなダイレクトリクルーティングが6、7年前から日本でもはやってきた。
そのようなかたちで、いろんな採用手法にも移り変わりがあります。ターゲットごとにどの媒体やチャネルが適正かは、会社やターゲットごとにも違います。が、その都度競合分析や自社の強みを分析した上で、過去の実績にとらわれずに選定していければなと思っています。
「定着の穴」が空いている状態とは
講義パートは最後なんですが、「採用決定と定着」ということで、「定着の穴」になります。内定承諾の後のフォローを実施したのに辞退が続出してしまうとか、入社したばかりの社員なのにモチベーションが低いとか、現場社員との関係構築ができず、入社後すぐに辞めてしまう。これはもう本当に最悪なパターンですね。

この原因は、採用をゴールと考えてしまって入社後の育成や関係構築の設計がないことですね。このようなのを僕たちは「定着の穴」が空いている状態と定義しています。これが続くと早期離職や立ち上がりの遅れを招いて、費やした採用コストがすべて無駄になります。

この『
138の事例から導き出された「採用の勝ちパターン」を実現する方法 採用大全』を書かせていただくに当たって、(タイトルに)「採用」って書いているので、多くの読者さんが、冒頭に申し上げた「点」の解決策という採用のテクニカルな面を求められていました。実際にイベントで登壇をしたり、ブース出展で実際に読んでいただいた方から話を聞いたりしても、そういうご意見をいただくことが多かったですね。
採用の成功は入社後のオンボーディング設計も重要
採用活動というと、「じゃあ、スカウトを送りましょう」とか「エージェントさんと会話しましょう」とか、さっきのところでいうと、第3部の「実行(の穴)」のようなわかりやすい部分がフォーカスされるんです。
が、「どう採用と向き合っていく姿勢があるか?」という、そもそもの向き合い方(が問題となる)第1部の「認知の穴」とか、「採用した後に人がすぐ辞めてしまう」という、この「定着の穴」までしっかりとフォローしておかないと(あまり効果がありません)。
結局、採用の目的って、組織にいる人間の質と数を共に拡大していくことじゃないですか。なのに、人がせっかく採用できたのにすぐ辞めてしまうといったことは、それは結局、採用活動の意味をなさないことにもつながってしまいます。なので、入社から活躍までをサポートするような採用チームや人事チームでありたいなと思ってこの4部構成にしている。そのような思いもあるんですよね。
「なんとなく」ではない採用基準を作る
ケースに入らせていただくと、(スライドを示して)「明確な採用基準がなく」とか、答えの部分に赤線が引かれているので、(赤線が引かれている部分は)それぞれが穴だなと思っていただいて大丈夫かなと思います。
面接官は、イケイケというか、わりと自分は努力で成長してきたタイプのケースだとこのようなことが起きます。自分もできたからといって人の伸び代に期待しちゃう傾向があります。
「なんとなく雰囲気的に良さそう。気合いが入っていそう」、それぐらいの雰囲気で合格を出しちゃうケースってあるんですね。基準があれば合格を出すのは別に悪くはないんですけど、ここは基準がないです。
意思決定フローが複雑で、最終面接を通過しても、内定を出していいよという最終の決裁が下りるのに2週間も空いちゃうと。2週間空いてしまったので、他で内定が出た会社さんに結局奪われましたよと。
あと、(スライドを示して)「焦った人事部は……」というところです。入社した方にオファーレターをただメールで送るだけで対応してしまっています。候補者はなんとなく「問題はないかな」とか「せっかく面接を通過したし」ということで入社したんです。
早期離職は社内の空気を悪くしてしまう
が……今の時代はあんまりないと思いますが、「OJTが一番大切だよ。OJTがすべてを解決する」という、いわゆるOJT志向。パソコンの設定も終わっていないようなデスクと、忙しそうに「見て覚えろ」という現場の放置により、初日から歓迎されていないという疎外感を抱くことになったんですね。
これは、当日もしくは1ヶ月以内に辞めてしまうパターンですが、このケースでは、もう試用期間中に3ヶ月で辞めてしまった。3ヶ月で辞めてしまうと、そこにかけた採用コストが無駄になってしまいます。人材紹介さんだったら手数料が一定返ってきますけど、100パーセントではありません。
また、スカウトの求人媒体の掲載費もかかりますし、なによりそこに向けて一生懸命動いた採用担当者とか日程調整していただいたアシスタントの方とかアルバイトさんの方とか、そのような方たちの工数が無駄になります。現場の方も、「見て覚えろ」というOJT志向であったとしても一定の育成コストがかかっています。
それと、早期離職ってなにより社内の空気を悪くしちゃうケースが多いので、本当に早期離職ほど採用にネガティブに働くことはないかなと思っています。
これが、採用面接や選考でミスをしてしまって、「明らかに自社と合わないよね」という方であれば、それは別に早期離職していただいていいと思うんです。が、そうじゃない方であった場合、本当にこのような痛手を負うのはよろしくないので、こういった穴は塞いでおきたいなと思っています。
クロージングの視点で採用した人材を定着させる
「定着の穴」に空いている5つの穴ということで、「受入体制の未整備」は駄目ですし、「クロージング不足」(という穴もあります)。オファーレターといったものをただメールで送って、あとは承諾するかどうか決めてくださいというのは熱意が伝わりづらいですよね。
「このような理由であなたのことを内定としたいと思っていますし、このような面で今、競合他社さんとも迷われているかもしれませんが、うちは魅力があります。このような点であなたのキャリアをより良く成長させることができます」というクロージングというかオファー面談というものがあってもいいと思います。
あとは、そもそもの話なんですが、特に定性的な採用の基準をしっかり定めていないと、入社してから「合わない」ってなっちゃいます。合わないと人はすぐに辞めてしまいます。なので、「合う人ってどういう人なのか?」という基準は、将来的な人材の定着や活躍を見据えた上ではすごく大事かなと(思います)。
あとは、言わずもがなですが、「意思決定の遅さ」ということで、内定を出すまでに1週間も2週間もかかっている会社さんは、本当にすぐ他社さんに奪われますので、そのような危機感が必要です。

(スライドを示して)こちらも、ある程度話してしまいましたが、3つポイントがあります。
僕がいた会社ですと、オンボーディングもおろそかにせずに、入社時に風船を飛ばして、新入社員の方の名前とかを覚えてもらうようなかたちで、会社の中でウェルカムな雰囲気を作っていました。
また、新入社員の方のオンボーディング設計(をしていました)。2日か3日ぐらい人事が(オンボーディングする役割を)持って、役員一人ひとりから入社のお礼や会社の紹介をしてもらったりしました。そこで、中途社員であっても同期のようなものを作って同期会をしたり、そういう受け入れ設計をやっていたりしました。