言葉が変われば組織が変わる!──ロジックでも感情でもない、リーダーのための組織マネジメントの極意(全4記事)
正論だけでは部下は動かない 心に響く言葉をつくるトレーニング法 [2/2]
コピーリンクをコピー
ブックマーク記事をブックマーク ブックマークブックマーク解除
過去のパワハラ経験で「鎧を着た部下」とどう向き合うか
質問者1:すでに着てしまっている鎧を脱がせるにはどうしたらいいですか? 要は以前にパワハラとかを受けて、鎧を着て毎日過ごしている人。
井上:具体的に、その人が鎧を着ていることによって、どんなところで困りますか?
質問者1:自分から行動しないとか。「どうしましょう?」って聞くだけで考えてないとか。責任を取りたくないみたいなところです。
井上:うんうん。なるほどね。「自分のせいにされたくないし」ということですね。
質問者1:そうです。
井上:上司の方は変わったんですか?
質問者1:そうです。本人が転職する前に、そういう嫌な記憶があるみたいです。
井上:なるほどね。
質問者1:毎日のスタンスがそうなっています。
井上:それは、ご自身にも聞いたんですか?
質問者1:はい、そうですね。本人に聞いたり、周りの人たちから聞いたり。「前にこういうことがあったらしいよ。だから今、こうなのかな?」みたいな。
井上:なるほどね。「一緒に仲間としていこうよ」という気持ちがもしおありであれば、まずは「ねぇねぇ」って近寄って行って、あまり構えないようにそこでもさせたいですね。
「聞いたところによれば、前にパワハラとかあったらしいね? どんなことだったの?」って言って。起きていることをまず具体的に、ちゃんとこちらが理解してあげる。どういう状態で、そう本人が感じたか。「それはひどいね」という話なのか、「本人の取り方がちょっと過度なんじゃないか」と、いろんな場合がありますよね。
それを聞いた上で、相手の感情がどういうところにあるのか、ちゃんと痛みをわかってあげる。「でも、その痛みは実は、こんなふうなことに転換することができるよね」なんていう文脈が作れたら、言ってあげられるんじゃないかなという気もします。「あまり言いたくないです」という状態だったら別ではあるんですが。やはり時間がかかるかもしれないけど、理解してあげることかな。
「どうしたらいいですか?」って、どうしても受け身になっているんだったら、「あなたは受け身になっているね」って言うよりも、「仕事をする中でどんなふうに自分が振る舞えたらいい?」なんてことから、少しずつ紐といていくとか。周辺から触っていく感じなんですけど……。難しいですよね、そういうガードを着ちゃった人はね。
こっちもわかってあげちゃっているつもりになっている場合もある。「なぜ?」って聞くんじゃなくて、もっと素直に「え! どうした? 何があった?」って聞いてあげるといいかもしれないですね。
「何があったの?」って、事象はもう聞いているかもしれないけど。「その時、どんなふうに感じたの?」とか「それはマズいね。そんなふうに感じたら確かに動けないよね。怖いよね。じゃあ、ここではそうならないようにしたいじゃないか」というところで、「いろんな話をしていくということはいい?」というような入り口をまずは作る感じですかね。
質問者1:ありがとうございます。
井上:具体的にその方がどうなのかがわからないと、正解例はわからないんですけど。概念としては、やはり理解してあげることと、それから「私は、あなたの味方ですよ」という感じを作っていく感じかなという気はします。
(会場挙手)
家族との会話で「期待しすぎる自分」から抜けるには
質問者2:ちょっと無理くり絡めての言い方になってしまうんですけど。組織の最小単位は家族じゃないかという話があります。私自身が、家族と話す時に、アサーティブじゃない会話になりがちです。そこから脱するにはどうしたらいいですか?
1個、自分の中では「相手に期待してしまっているのかな?」とも感じます。組織ないし仕事という場だと、期待ではなく冷静にみたいなところが持てるのかなと、ちょっと思ったのですが。何かヒントがあれば教えてください。
井上:家族というのは奥さん?
質問者2:はい。
井上:そうですよね。
質問者2:一番大きいですし、親に対してもそうかなという気がします。
井上:この部分は僕が答えると危険かもしれないですね(笑)。
(会場笑)
井上:いや、わかります。苦手ですよね。僕、こんなふうにしていてもやはり、妻と話す時にすごく注意しなきゃ、危険な言い方をしている時がありますもん。わかります。逆に言うと、鎧どころか反対に、素っ裸な状態だと思うんですよね。だから自分が無防備。(言葉を)発する時にもう無防備で垂れ流しちゃっているんじゃないかと思うんですよね、気持ちとか言葉をね。これは僕のことですよ(笑)?
(会場笑)
先ほど「期待がある」とおっしゃいましたね。「本当は、こうしてほしいんだよね」というのがあると思うんですね。それで、そうじゃない時にギャップにイライラしたりして、思わず言ってしまうとか、ということかなと推察するんですけど。
これも事象によって違うんですけど。これは危険な言い方なんだけどね、私が、妻に対して思っているのは、基本「期待をしない」なんですね。ちょっときれいごとに聞こえるかもしれないんだけど、期待するんじゃなくて「この人と何を作れるんだろう?」と最近は考えるようにしています。旅行するのもいいんですよ?
「一緒にやると何ができるんだろう?」。「相手に〇〇をしてほしい」は、もう私が1回ブチ切れて終わりました(笑)。
(会場笑)
その時に相手もブチ切れたわけですよ。「何言っているのよ、あなただって!」に、なるわけですね。意味がない会話がずっと続いたので「あ、これは言うことに何の意味もない」って気づいて、冷静になって。ちょうど出張があったのでラッキーだったんですけど(笑)。
(会場笑)
出張先できれいなアセスメントとかを眺めながら「そうか。もし、俺のいけないところがあるとしたら何だろう?」と思った時に、ふと降りてきたのが「期待しないほうがいいんじゃない?」と。「あなたの期待どおりに相手はならないよ」というのがちょっと降りてきて。「じゃあ、どうするのよ夫婦じゃん」。「じゃあ、一緒に何を作れるの?」というところがスタートになるんじゃないかなと。
そうすると「相手は何ができるのか?」が、目に入るようになるんです。例えば「奥さんはこんなことが得意だよね。じゃあ俺がこれをやって、一緒にやるとこんなことができるかも」。実は、私のオフィシャルな写真が足りないものですから、今日は妻にフォトグラファーになってもらって撮ってもらおうかなと思ったんですよ。でも今日直前になって「いや、ちょっと久々だし、俺もてんぱってるからさ、今日はいいや」。言っておいてよかったです。
(会場笑)
(もしこの場に妻が)来て、こんな質問をされたら「あ……。ん!! 懇親会で話そう!!」みたいな話になったと思うので(笑)。よかったです。何かの参考になるかわかりませんけれども。
部下も、そうなのかもしれない。部下の方とは、ある意味では距離をもう少し置けるので。それこそ「今はそんなに急速に(期待)してもしょうがないな」というのが冷静に見えたりする。
でもね、奥さんはとにかく一緒にいるので。やはり、そういう気持ちにはなるのかなと思いますね。なんか私の話ばかりして申し訳ないけど、そこから家事の役割分担が変わりました。自分から「これと、これと、これは俺がやる」って決めて、やりだしました。「やる」っていう宣言はしていないですよ。「やる」って決めました。
そうすると、相手もだいたい気づきますよね。「なんか、いつも最近やっているよね」って。「やってくれるよね」とは言わないんですよ。
(会場笑)
「なんかいつもやっているよね」(笑)。「やっているよ」って。「なんで!?」「なんか役割だと思うから」って、一言言ったらファーって解けたものがありました。特に夫婦には、焦った答えはないなぁって気がしますね。決して私も……。実はバツイチだったりするので(笑)。
会場:えー!
井上:「本当に、こんな質問に答えていていいのか?」って(笑)。
(会場笑)
思うんですけどね。失礼いたしましたという感じですね。
質問者2:ありがとうございます。
井上:他にどなたかいらっしゃいますか?
(会場挙手)
部下育成で抽象と具体の指示をどう使い分けるか
質問者3:先ほどの「心を開く」の言い換え例の抽象的なところについておうかがいします。「しっかりやれ」というのを具体的に伝えてあげることによって、相手が動きやすくなるという話があったと思います。具体的に伝えればすごく素直にやりやすく動く部分はあると思うんですけど。
本人の成長を考えた時に、あえて少し抽象度を高くしたりすることも必要かと感じたんですね。そうなった時に「どんな感じでこの抽象と具体を使い分けていったらいいのかな?」と思いました。
井上:すばらしい質問ですね。指示自体がめちゃくちゃ具体的である必要がある人もいるんですよ。でも、今言うように「ちょっと考えさせたいな」というところに来ているとしたら、少し抽象度を上げて投げてもいいと思います。
しかし、何をやっているかの進捗は、ずっと細かく見てあげる。具体的に聞き出す。「ところで、あれはどうなった?」「どういうポイントだと思ってやっているの?」「今回、どこが大事なの?」とか。とにかく相手に「こうだよ」って言うんじゃなくて、相手はどう考えてこの指示を自分なりに分解して組み立てているかを、しっかりと引き出す。
「どうしてそう思うの?」と聞いて、その時に、ちょっとズレているなと感じたら「こういう見方もあると思うけど、そこはどうなの?」というふうに、伴走感を持っていけばいいのかなと。
先ほどちょっと言いましたが、本当にベテランで仕事のできる人には、それをやるとかえって失礼になるから。確認も、もう少し大雑把な区切りにして。「ところで〇〇さん、すごいですよね。どうしてそのように考えたんですか?」って、逆に聞いてみるのもいい。相手の、プライドをくすぐるからです(笑)。そうすると、さらに関係性も良くなる感じですかね。
理屈でも根性論でもなく「心を開く言葉」で組織を動かす
司会者:(今日のテーマが)言葉だったので、最後に私の感想を言わせていただければと思います。今日、井上先生から「心を開く言葉」というキーワードがあったんですけど。組織を動かす言葉というのは、理屈だけではなくて感情や、関わりの積み重ねがすごく大事なのかなと思って、今日は聞かせていただきました。
今、相手に対して「言ったとおりにやる・やってほしい」とかを言うのではなくて。相手が納得して、自分で選んで、自分で動ける状態を作ってあげることが、今来ていただいているリーダーの方や経営者の方に求められているんだなと、感じました。
私自身、違和感や本音を「わかってくれているだろう」と思って、なかなか言葉に出さないことが多いんですけれども。やはり「私自身がどう思って、どう関わりたいのか?」というものを言葉にした上で、心を開く言葉として伝えることが、結果的にチームの動きにつながっていくのかなと思いながら、今日みなさまと一緒に聞かせていただきました。本日はありがとうございました。
(会場拍手) 続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。
無料会員登録
すでに会員の方はこちらからログイン
または
名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!
スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ
名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は
ボタンをタップするだけで
すぐに記事が読めます!