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言葉が変われば組織が変わる!──ロジックでも感情でもない、リーダーのための組織マネジメントの極意(全4記事)

スローガンや会議名を“行動レベルの言葉”に変えるコツ 「安全第一」だけでは現場は動かない

【3行要約】
・「言葉が伝わらない」「指示通りに動いてもらえない」という悩みを抱えるリーダーが増えています。
・井上健一郎氏は、相手の心の扉が閉じていることが根本原因だと指摘し、共通言語の重要性を強調。
・抽象的なビジョンではなく、現場で動く具体的なスローガンや「リーダーの軸となる言葉」を作り、繰り返し伝えることが必要です。

前回の記事はこちら

心に残る言葉のエピソードを思い出すワーク

井上健一郎氏:さぁ、心が開く・心に響く。両方ありますけれども。ちょっと3分ほど横の方とお話をしてください。みなさんの今までの人生の中で、とても言葉に響いた言葉。「どなたが、どんな場面でどんなことを言われたのか」。ないなら、「ないな」でもいいです。それから、響くとまではいかなくても「あれはすてきな言葉だったなぁ」とかね。

別に、語りかけられたものでなくてもいいですよ。何かで聞いたものでもいいです。有名人が話したことで「すごいな、この言葉」と、みなさんが言葉として魅力的に感じたものを隣の方とお話ししてください。

(ワークショップ開始・終了)

はい、ありがとうございます。さぁ、どうでしょうかね? まずは、情報を受け取る相手の心の扉が開いていないと、何を言っても相手に入っていきません。ここが、閉じている場合が多いです。

「なぜなんだ?」「なぜ伝わらないんだ?」「なぜ言ったとおりにやらないんだ?」っていうのは、実はここが非常にネックになっているからだと思います。(スライドを示して)この上の2つと共通言語の枠を変えてお話をしているのは、ちょっと種類が違うからです。今日は、共通言語というのを先にお話ししたいかなと思います。

MVVにとどまらない「自分たちの言葉」で価値を語る

社長さんなんかは特にそうですね。「私たちが行くところは、こっちなんだよ!」とか「そのために私たちは何が大事なのか?」みたいなことを、やはり言語化しておく必要があります。これを大きく束ねる言葉として必要なので、先にそんなお話をしておこうかなと思います。

ビジョン・ミッション・バリューというのは、まさにそのとおりなんですが、ちょっとそういう言葉をあえて置いておいて。じゃあ、どんな言葉を出したらいいのかな?

特に中小企業の経営者の方たちは、ある種、大きな組織の1つの部署と同じぐらいの人たちを束ねます。その点で言うと、あまり「ビジョンだ」「ミッションだ」とかまえても、なかなか伝わらない。ただし、自分たちの仕事の価値や意味は、やはり語っていきたい。どんな言葉がいいでしょうか。

1つは、みなさんが提供している製品やサービスが果たしている役割ですよね。機能的な価値みたいなものでしょうかね。提供しているものの価値です。

それからお客さまや、社会や、仲間。要するに「関わっている人たちに、どんな影響を与えているかな?」ということも、1つの方向としてはあるんじゃないかなと(思います)。存在価値みたいなものですね。

それから、信頼を得るための姿勢や心情。モットーみたいなものですね。「私たちは丁寧さが大事なんだよ」とかね。やはり「こだわろう!」というのは、いろいろあると思います。それから、自分たちの仕事の価値や意味も言葉に。全部はする必要はないと思いますが、ポイントになるところは、ぜひ言葉化しておくといいんじゃないかなと思います。

あともう1個。「リーダーの軸の言葉」なんて書きました。「リーダーは自分の価値観を押し付けちゃいけない」なんて言う時もあると思うんですけれど。やはり、リーダーですから。「このチームを束ねるために、私はこれを大事にしたい!」というのは、ぜひ言ってほしいんですね。これは、ぜひ口癖にしてほしいんです。

なぜかというと、おそらくみなさんが作った言葉は、1回では解釈できないことが多いと思うから(笑)。いろんな場面で言い続けると「あ、そういうことか」とわかりますね。ちなみに私が初めて課長になった時には、そんな言葉も持っていなくてボロボロになりました(笑)。「ヤバいなぁ……」って思って、マネジメントの勉強をいろいろしました。そんな中で「やはりリーダーには、自分の心情というのが必要だよね」という気づきがありました。

私が初めて作ったのは「先を見る」という言葉でした。それは先を読むことであったり、いろんな意味です。いろんな場面で「もうちょっと先を見ようよ」とか「これ、先を見るとどういうことかな?」と言っていたら、伝わるようになっていた。なので、リーダーの軸の言葉は、ぜひ持っていたほうがいいです。やはりチームなので、スローガンや、行動指針みたいなものは必要なんじゃないかなと思います。

スローガンは「安全第一」ではなく現場の具体行動に落とす

けっこう、スローガンを唱えているところもあるんですが。(スライドを示して)やはりここにあるように「現場でわかりやすい具体的な言葉にする」。10文字から20文字程度がいいですよと書いてあります。

製造業の大きな工場なんかでは必ず「安全第一」って書いてありますよね。安全第一って「わかるよ」「そのとおりだよ」って思うんだけど、どうでしょうかね? 私が初めて社会人になった時に某電機メーカーに行って工場研修を1ヶ月やりました。その時にも「安全第一」って、書いてあったんですよ。その中で、職場を3ヶ所くらいまわりましたが、3ヶ所とも、安全のために「この部署は、これ」というのが決まっているんですよ。

「ヘルメットを被れ!」とかね(笑)。「動く前に2秒!」というのもありました。そうやって具体的にしていくと、何をやろうとするのかがわかるので、スローガンや行動指針は、できるだけ具体的にしましょう。現場の言葉に置き換えていただくとわかりやすいんじゃないかなと思います。


「全社ミーティング」を「語る場」に 名前の工夫で場の意味を伝える

そしてもう1個。これは私の経験上で言います。「会議室などで集まる場合は、会議の名前などを変える」。「なんのこっちゃ?」ですよね。例えば、私の知っている会社では、月1で全社ミーティングがあります。全社ミーティングって、「オールスタッフミーティング」って言うところがよくあるんですが、その会社は、その場を「語る場」と言っていました。

全社ミーティングとか、オールスタッフミーティングとかじゃなくて、語る場と言われると、何をしなきゃいけないかがわかるじゃないですか。

私が前にいたCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)という会社では、大賀典雄さんという方が2つの言葉を言い続けていました。1つは「ベクトルを合わせる」。もう1個は「Think once more」。Think once moreのT・O・Mを取ってTOM。リラックスできるような会議室が2、3個あってTOMルームっていうんです。こんなふうに、何か意味を感じる名前を付けていく。

例えば、私なんかも管理者研修をよくやります。管理者研修というと、グッと構えませんか(笑)? 「あなた、今度の管理者研修に入りなさい」。でも、例えばたった一言。「管理者のための研修」「マネジメントを考える研修」と言われた瞬間、ちょっと違うでしょ? 違う言葉に置き換えることによって、入り方が変わりますよね。

これも変な構えをといてあげるということです。こんなことも、ぜひ工夫されるといいと思います。例えば「評価会議」も「成長確認会議」とか。そんな言葉に置き換えていくと、おもしろいんじゃないかなと思ったりします。ということで共通言語作りなんですが、スローガンや行動指針みたいなところも、この例を書いています。

抽象的な価値を現場で動くスローガンに落とし込む

共同性、連携、積極性、自発性、責任感など、5つのテーマみたいなものを、具体的な言葉にしていきましょう。私がいろんな会社さんで見た言葉も、けっこうこのスライドの中に入っていますね。

(スライドを示して)この「私がやる」というもの。製造業で男性社会だったので、「俺がやる」という言葉だったんですけど。「誰がやる? 俺がやる!」って、A3ぐらいの用紙が至るところに書いてあるんですよ。これがみんなのモットーになっていました。

あとは、この「待ち時間をゼロにする」というのも、ある会社さんでありました。お客さんに対しての待ち時間をゼロにする。どこからゼロにするかというのは、私はちょっと見ただけなので、よくわからなかったんだけど。でも「待ち時間をゼロにする」。こんなようなことを具体的にしていく。

例えば「挑戦しようよ!」と言った時に、「チャレンジ!」という言葉が書いてあることがあるんですけど、それではなかなか響かないです。「ここでいう『チャレンジ』とは、どういうことか?」ということを言葉にしていくことが大事です。それぞれの場面や職場環境や仕事の種類によっても違うでしょうね。

やはり究極的には、企業が経営理念を掲げる時には、みなさんがそこに参加する。構成している社員全員、メンバー全員が、同じ方向を向いて考えたり、動いたりできるようにするために束ねるための言葉なのでね。人と人とのやり取りやコミュニケーション上のというよりも、1つ言葉として大事なポイントだろうなと思います。

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